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「特製中華そば ¥1000」@食煅 もみじの写真平日 晴天 11:05 先客8名 後客10名以上

〝ニューオープン パトロール〟

食べてる最中から誰かに伝えたくなるようなラーメンに出会ったのは久しぶりだった。

そんな出会いが待っているとも知らずに、昨夜は大宮駅前に宿をとっての大宮ナイトを楽しんだ。たらふく呑んだ割には今朝も快調に目が覚めると10時にチェックアウトして大宮駅に向かった。

それも全てはRDBの新店情報に挙がってきたこちらへの初訪問のためである。関東逆サイドの自宅からでは早朝の出発を強いられるので、ひとまずは通過地点の大宮で前泊してから向かう作戦に出た。

大宮駅からは宇都宮線にて20分ほどで人生初となる白岡駅に降り立つと、西口のバス停から朝日バス 白01系統 菖蒲仲橋行きで5分ほど揺られると最寄りの樋の口バス停に着いた。そこは白河市と久喜市の境に位置する私のような歩兵には難攻不落な場所である。バスを降りるとすぐ目の前には大きな看板のある店が見えるが、田植えが終わったばかりの田んぼに阻まれて大きく迂回しなければならない。11時開店を少し過ぎていたので店先の駐車場には数台の車が停まっており慌てて先を急いだ。

回り込むようにして店先にたどり着くと、あまりの立派な店構えにたじろいでしまった。大型駐車場を完備した一軒家の脇には古い木製のつき臼がオプジェとして飾られている。入口というか玄関の広い軒下の外待ち席に並びがなかったので引き戸を開けて店内に入ってみると、店内の設えには更に驚いた。そこはまるで古民家を移築したかのような大きな梁が目を惹く古風な造りとなっている。券売機は設置されてないので、ホールスタッフさんの誘導で対面式カウンターに座り卓上メニューから品定めをする。

スープが醤油と塩の二種類と、つけそばだけのシンプルなラインナップの中からマイスタンダードの醤油を選んだ。この後は連食予定もないので思い切って特製にしてスタッフさんに告げた。先客は8名ほどいたが、ご近所さんであろう年配の方々が注文に迷っているようなので私の注文の方が先に通された。私がおそらく最年少ではないかと思われるような人生の大先輩に囲まれながら店内を見渡してみる。さすがは駐車場の数に見合った多くの席数を設けてあり、現時点では稼働させてないテーブル席もあるようだ。

また内装の至るところにもこだわりを見せる。重厚な船箪笥などの古民具や、戦前のものと思われる木製看板も飾られている。玄関の上に飾られた木挽き鋸も歴史の古さを感じさせる。そんな古い設えに合わせて、お冷の器もグラスではなく陶器の湯呑み茶碗を使う細かな演出も心憎い。そんな古さを活かした客席に対して、独立した調理場内の厨房機器から放たれるステンレスの輝きが好対照に映る。調理工程が見られないのが残念だが、美味いものを作り出すオーラがあふれている店主さんの動きに期待が高まる。そんな店内を本日は盤石の五人体制で回しているが、調理作業の全てを店主自らが担っているので大変そうではあるが安心感はある。

そんな見所満載の店内を眺めていると、着席して15分で我が杯が到着した。その姿は盛り付けられた器にも、こだわりと高級感があふれている。有田焼と思われる多用丼を絵柄の違う数種類用意されていて使い分けられている。特にスープ毎に変えられているわけではないようなので、ご主人の気分次第という事だろう。そんな器の中には褐色のグラデーションが食欲の本能を視覚から刺激してくる。大胆さと繊細さを併せ持ったような景色に興奮を抑えながらレンゲを手に取った。

まずは柿渋色のスープをひとくち。やや霞がかかったスープに浮かんだ油膜の少ない部分にレンゲを落とすと、破れた油膜の隙間から飲まずとも美味いと分かる香りが立ち昇った。それは的確な表現かどうかは分からないが〝埼玉らしい〟美味さを感じさせる香りだった。東北から九州まで地方遠征で感じた関東のラーメンのレベルの高さの中でも、埼玉県のクオリティの高さは群を抜いていると常々感じていた。そんなラーメン王国の遺伝子を受け継いだかのような香りに一瞬で魅了されてしまった。そんな素晴らしい香りのスープを口に含むと、鰹節と煮干しの織りなす魚介出汁の旨みが先陣を切って口の中に広がった。すると直ぐさま動物系出汁のどっしりとした旨みも後を追いかけてきた。そこに香味油の軽やかなコクと、醤油ダレのキレが加わり一体感を生んでいる。魚介出汁が前に出てはいるが全体的にバランスに優れたスープは感動レベルの仕上がりだった。何も誇張せずに個性を主張できるスープには久しぶりに出会った。

これだけ美味いスープの後は自家製麺にも期待が高まり箸を手にした。スープの中で泳いでいる状態でも切刃のエッジがハッキリと見られる中細ストレート麺を持ち上げてみると、程よい加水と思われる手応えが箸先から伝わってきた。それと同時に少し柔らかめなハリの弱さも感じられるが、麺上げまでは推測して85秒くらいだろうか。いざ口に運ぶと、見た目のエッジの鋭さに反して滑らかな口当たりが唇を通過した。気持ち柔らかめではあるがハリもあり、口の中を躍動するかのような力強さもある。そんな弾ける麺を奥歯で捕らえようとすると、咀嚼から逃げるような麺質が顔を見せる。この捕らえづらい食感が苦手なのだが、麺が軋み泣くほどではなかったのが救いだった。ゆっくりと奥歯で押さえ込むと咀嚼に応えてくれて、小麦の風味があふれ出すオリジナリティのある良麺だった。

具材のチャーシューは大判な豚ロースの低温調理と豚バラの角煮の二枚看板が盛り付けられる。熱変化の早そうな豚ロースから食べてみると、薄切りかと思えたレアチャーシューだったが食べ応えのある厚みがあり赤身本来の旨みと食感が味わえる。豚ロースならではの脂身もしっとりと仕上げてあり、筋切りもされてあるので不快な食感は感じさせない。一方の豚バラのチャーシューは角煮仕立てとなっており、さっぱり目の豚ロースに比べて濃いめの味付けが施されて対照的な組み合わせとなっている。歯応えも豚バラの特徴を活かして柔らかく仕上げてあり、ほどけるような食感が楽しめる。

見た目には白身に裂け目があり、どうかと思われた味玉だったが抜群の仕上がりを見せる。下茹での半熟加減も程よく、熟成度もありゲル化した黄身も流れ出すような事なくネットリとしている。そんな熟成を感じさせながらも醤油感は少なく卵本来の味わいも残している。また午前中の開店直後にもかかわらず、常温以上に戻してある提供温度も素晴らしい。白身の裂け目も〝あばたもえくぼ〟に思えるような味玉だった。

メンマは極太タイプでよくある業務用味付けメンマかと思えたが、しっかりと店仕込みされたメンマだった。全体の中では強めに味付けしてあったが、噛めばほどけるような柔らか仕上げなので噛む回数が少なく塩気を感じている暇がなかった。

ここまで麺のテクスチャー以外は偏屈な私の好みに限りなく近いラーメンに喜んでいたのだが、ここからの薬味に対しては喜びを越えた感動すら覚えてしまった。

まず白ネギの笹切りは敢えての切りっぱなしで、水にさらしたりせずに白ネギ本来の辛みを感じさせてくれる。たしかに甘みのある白ネギも魅力的ではあるが、生の白ネギならではの刺激も捨てがたい。さらには白ネギを細かく刻んだ薬味も併用されていて、細かいだけにスープで加熱されて辛味が甘味に変化している。また青みには丁寧に下茹でされたホウレン草が使われていた。水菜で青みを手抜きする店が多い中で、ひと仕事が光る珍しい存在だ。最近では主流となりつつある小松菜も良いが、ホウレン草特有の苦味を味わえたのも久しぶりに思えうれしい。

これだけでは収まらず、屋号に掲げた〝食煅〟への思いを知ることになる具材があった。それは天に盛られたもみじ型の昆布で、本来ならば役目を終えた出汁昆布を型抜きして具材として食材の使命を果たしている。それだけではなく厚削りの鰹節の出汁ガラも丼の底に沈んでおり食材の使命を全うしていた。更には本来ならば捨てられるであろうホウレン草の根元までも、きちんと処理され具材として添えられてあった。最後の最後にスープを飲み干した時に丼の底から現れた栄養価の高いホウレン草の根元を見た時には、ご主人の食材に対する愛情の深さに涙が出るくらいに感動してしまった。

もしかしたら型抜きされた出汁昆布以外は偶然に入ってしまったのかもしれないが、ご主人が屋号に込めた食煅の〝煅える〟の文字の意味を噛み締めながら席を立った。

すでに名店の雰囲気に満ちた店を後にする時にも、外待ち席も埋まっており並びは増え続けていた。帰りのバスが一時間後にしかなく、40分ほど歩いて白河駅まで戻る事にはなってしまったが本当に来て良かったと思える一杯になりました。

投稿 | コメント (3) | このお店へのレビュー: 1件

コメント

どもです。今週オープンのこちらですか!また、遠い場所までわざわざと。
「食煅」これは食を鍛えるとそのままの意味なんですかね?
見てみたい古民家ですね。大きな梁は移動されたのでしょうね。今どき作れないかも。
それにしても高得点!特製のようですが、かなりの大盛ですね。
訪問してみようと思います。

昭和のBecky! | 2019年6月15日 13:25

こんにちはBecky !さん。友人の刀鍛冶から日本刀を煅える時の話を聞いた事を思い出したので、勝手に「食を鍛える」と思ってますが真相は不明です。車ユーザーの方なら第二駐車場まで完備されていたのでアクセスは良好かと思います。ボリュームがあるように見えるのは小ぶりな器のせいかもしれませんね。ぜひ行ってみて下さい。

のらのら | 2019年6月15日 14:45

本日、こちらに訪問してきました。鰹節香る煮干のスープは最高でした。
その後、とみ田、稲葉、輝羅すべて臨休でしたよ。

昭和のBecky! | 2019年8月21日 17:26