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のらのら

男性 - 東京都

はじめまして。レビュー開始から一年が経ち、二年目の目標を全国制覇にしました。一杯のラーメンに出会うまでの経緯も書き記しているので、前置き等が長くなりがちですがお許しください。しかし採点に関しては立地 接客 衛生面 価格設定などは考慮せずに、ラーメン一杯に対しての評価にしています。自分の好みだけで評価しているので不快な文面もあると思いますが、何卒宜しくお願いします。

平均点 73.470点
最終レビュー日 2019年7月24日
574 466 14 1,867
レビュー 店舗 スキ いいね

「味噌らーめん ¥780」@麺屋 彩未の写真日曜日 晴天 14:45 外待ち10名 中待ち12名 後待ち15名

〝諸国麺遊記 北海道編〟

と本来ならばいきたい所だったのだがラーメン以外の目的で訪れた北海道で、課せられたスケジュールの中には朝昼晩みっちりと食事の予定が組み込まれていたのだ。

北海道一泊目は定山渓温泉という札幌駅から送迎バスで一時間ほどの距離だが、周囲を山に囲まれた温泉地なので夜中に抜け出して札幌でラーメンという訳にはいかない状況下に置かれていたのだ。その夜は温泉旅館お決まりである女性受け間違いなしの、ちょこちょこと出てくる和懐石をいただいた後に渓谷がライトアップされている人気スポットへと出向いてみた。

宿泊している旅館はいわゆる温泉街からは少し離れた隠れ家的な宿だったので温泉街らしい雰囲気を味わえずにいたのだが旅館の専用車で向かった先には、いかにも温泉街と言った感じの昔ながらの土産屋さんや古びたスナックのネオンの灯る街並みで哀愁が漂っていた。おじさん好みの素晴らしいロケーションの中に数軒のラーメン屋の看板を見つけたが、デザートや水菓子までも食べてしまった胃袋にはラーメンを食べる余裕など残ってなかった。それよりも同行者にラーメンを強要する威厳などないのが本音だった。

せっかくの北海道に来てラーメンを一度も食べられないかと思い、非常に残念な気持ちになっていた私に起死回生のチャンスが訪れたのだ。それは一泊目の定山渓温泉を後にして札幌大通まで午後1時に送迎バスで戻り、二泊目の札幌駅近くホテルに荷物だけでも預かってもらおうとチェックインの手続きだけをしに行くと、すでに部屋の清掃が済んでおり早めのチェックインとなった。

北海道二日目の晩メシだけは私のワガママを聞いてもらいプロ野球選手がチーム全員で押し寄せるという老舗ジンギスカン屋を予約しておいたのだが、さすがに日曜日でも20時までは席が無かったので20時過ぎの予約となっていた。しかしホテルのチェックインを済ませた時間は午後2時過ぎと夜のジンギスカンまでは随分と時間があるので、どうにか同行者を丸め込んでラーメンへと誘い出してみた。すると近くなら行っても良いと承諾は得たのだが、最有力候補としていたコチラは札幌駅から近くはなかった。しかも昼営業の終了時間まで一時間を切っており、焦る気持ちの中で地下鉄で向かう事を諦めてタクシーでの訪問ならばと快諾を得た。

そうと決まれば多少のタクシー代など問題ではなく、もはや拉致犯とも思われる状態で同行者をタクシーに押し込んだ。ホテル前からは15分程で、タクシーの運転手さんも知っていた超有名店の目の前まで無事に届けられた。

昼の部終了の30分前にもかかわらず店頭には長蛇の列が並んでいる。慌てて最後尾に付けると、梅雨時期とは無縁の北海道の初夏の日差しを持参した日傘で避けながらの待機となった。大きな駐車場には警備員を雇っているほどの盛況ぶりで、札幌だけではなくもはや全国区の人気店である事がうかがい知れる。直射日光を避ける軒下などがないので、日傘がなければかなりの体力消耗を強いられそうだ。あまり列の進みが良くないので回転率の悪さを思っていると、店内からは2名ほどしか出てきていないのに一気に6名も店内へと案内された。

修行先とお聞きしている札幌を代表する老舗味噌ラーメン店「すみれ」の暖簾分けを象徴する、すみれから贈られたと思われる白い暖簾をくぐって入店した。しかし店内にも12名分の中待ちベンチが設けてあったので、不思議な行列の流れも納得できた。

中待ちと同時にホールスタッフさんからメニューを見せられお題を決めるのだが、勿論ここでは味噌ラーメンをお願いした。すでに追加チャーシューは売り切れで味玉もメニューにないのでシンプルに追加なしで注文した。コの字の中待ちベンチから店内を見渡してみると、テーブル席とカウンターがあり壁には多くの著名人のサイン色紙が飾られている。全国各地にサイン色紙が飾られたラーメン店があるが、正直どれが誰のサインなのか分からない中でも何故かいつも目に入るサインがあるのだ。それは北海道が生んだ人気演劇ユニットである〝TEAM NACS〟のサインなのだ。それは先日訪れた埼玉の「中華そば 四つ葉」でも見かけたので、さすがは地元の人気冠番組でラーメン特集をするほどのラーメン好きだと信じられる。そんな風格のある店内を本日は七人体制で回している。厨房が半個室となっているので調理工程や作業の手元が全く見えないが上半身の動きから推測すると向かって右手から〝麺上げ担当〟〝あおり担当〟〝盛り付け担当〟と三人の連携プレーによって手際よく続々と調理されている。よって実際には回転率はかなり早く、外待ちを含めても20分足らずにカウンターに昇格した。

カウンターに着席後は店内観察をする暇がない程の早さで我が杯が到着した。この計算された提供速度が回転率の早さを上げている仕組みなのだと思った。目の前に現れたその姿は、うぐいす色の多用丼の中で上品にも思える優雅さを見せている。味噌ラーメンと言えば粗々しいワイルドさを思ってしまいがちだが、特徴的な器の色と相まって品のある表情が印象に残った。今回の北海道での最初で最期となるラーメンだけに期待が最高潮に達した瞬間には、すでに右手に持ったレンゲは始動していた。

まずはスープをひとくち。〝ならでは〟のラード油膜が張り巡らされた液面にレンゲを落とし込むと、大量の油膜ではあるが波の打ち方が軽やかにすら感じた。ラード油の粒子もキメが細かく見た目には油っぽさは感じられない。破れた油膜から立ち昇った熱々の湯気の中のラードで炒められた具材の香ばしさが、とにかく美味そうな匂いの首謀者である事は間違いなかった。その匂いだけで完全に脳内のスイッチがオンになったところで、いざスープを口に含んでみる。最初に伝わってきたのは円やかな甘味で、動物系スープや味噌玉と炒め野菜など全ての素材の持つ甘味が全体を包み込んでいる。飲んだ瞬間に、ため息が出るほどに優しく穏やかなスープには全身の力が抜けるのを感じた。主体となっているのは豚由来のスープと思われるが、煮干しのような魚介の旨みのサポート感もある。見た目にはタマネギがないが、甘味の中にはタマネギと思われる野菜類の甘味が十分に感じられる。そんなスープに合わせる味噌玉も角がなく塩気は輪郭を付ける程度にアジャストしてある。味噌ラーメンの要とも言える味噌玉からは、塩分よりも味噌の香りが主張している。このスープの風味と炒め野菜の香ばしさが織りなすハーモニーは醤油派の私でも唸ってしまう仕上がりだった。

本場札幌の味噌ラーメンに興奮を抑えきれないままに麺を箸で持ち上げてみると、ここでも〝ならでは〟の麺の姿が現れた。それは透明感と黄色みを併せ持った味噌ラーメン特有の中太ちぢれ麺で、黄金色にまぶしく輝く麺からも熱々のスープの力で湯気が立ち昇っているのが見える。茹で麺機が見えないので推測ではあるが、麺上げまで100秒程と思われる麺を一気にすすってみる。するとスープに浮かんだ厚手のラードの役割を、いくつも感じられたのだ。第一にはスープの温度を下げない為のバリアとしての役割と、続いては麺をすすり上げる際の潤滑油としての役目だ。さらにはスープにコクを与える使命も担っていた。北の大地札幌に味噌ラーメンが根付いた理由も分かる気がしながら、個性的な麺を味わってみる。とにかく滑らかに滑り込んできた麺は独自の周波が舌触りに変化をつけて口の中を跳ねまわり、弾けんばかりのグルテンの弾力が本領を発揮すると口内ばかりでなく脳内にも悦びが訪れる。飛び跳ねる麺を奥歯で押さえ込むと、しっかりと咀嚼に応えてくれる歯応えと歯切れの良さが素晴らしく麺を噛みつぶす楽しみが止まらない。その咀嚼回数に比例するように小麦の香りが満ちてきて、スープの味噌の甘みと小麦の甘みが折り重なったハーモニーは他の味噌ラーメンでは味わった事のない最高傑作の組み合わせに思えた。そんな食べ応えの後に訪れる喉越しの良さも忘れられない感覚だった。

具材のチャーシューは豚肩ロースの煮豚型が盛り付けられていて、程良い厚みにスライスされている。チャーシューに箸を付けた瞬間に上に乗せられたおろし生姜がスープに拡散するので後半まで我慢して残しておいたチャーシューだったが、いざ口に含むと煮豚によくありがちな豚肉本来の旨みが煮汁に奪われている事が多いのだが、この煮豚には赤身本来の旨みがしっかりと残っているにもかかわらず煮汁の旨みも取り込んでいる絶品チャーシューだった。また歯応えも柔らかすぎず食べ応えもあり、麺の食感にも負けない個性を生んでいる。このチャーシューならば追加したいと思える仕上がりで、次回は早い時間帯に来るべきだと実感した。そんなチャーシューの切り落としが角切りで丼の底に沈んでいるのを見つけた時には小躍りするほどの喜びだった。食感の面だけで言えば主役のチャーシューを凌駕する食べ応えがあった。

メンマは不揃いな大きさで添えてあり、表面に滑りがあるのが特徴的なメンマだ。少し柔らかめの食感だが、麺やチャーシューの歯応えが強いのでメンマは軽やかなアクセントとして存在している。味付けも穏やかながらボヤけるような事はなく全体に溶け込んだ味わいとなっていた。

具材の中で最も感激したのが炒めモヤシで、豚ひき肉と共に鉄製の中華鍋で独特の〝あおり〟の工程から生み出された味噌ラーメンならではの具材としての真骨頂を表現していた。まずは下処理の丁寧さが短いモヤシに表れていて最初
細かく切りすぎかと思うほどに短い部分もあったが、それはモヤシのヒゲの根を一本一本丁寧に取られた結果そうなっているのだ。よほどの高級中華料理店でもない限りモヤシの根を取っている店などないのだが、こちらはその一仕事をしっかりとされていたのには相当驚いてしまった。そんな繊細な手仕事が施されたモヤシを高温のラードで焦げ目が付くほどに炒めてあるので、しっかりとした食感と香ばしさの両面でアピールしている。

薬味は青ネギの小口切りが多めに添えてあり、有名ブランド葱とは違った粗々しさのある食感が絶妙にマッチしていた。モチモチの麺とシャキッとした青ネギのアクセントはモヤシの食感を巻き込むと、三つ巴の食感となって食べ心地を増幅させる。

この段階になるとチャーシューの上に添えてあった生姜はスープに溶け込んでいたが、業務用のおろし生姜ではなく本物の土生姜をおろしてあるので強い香りと辛味がスープに加わっていた。もちろん自然な辛味なので過度な刺激とかではないが、間違いなく味噌の甘みを際立たせてくれた。

味噌ラーメン特有のスープの熱さにもかかわらず、気が付けば丼の底が見えていた。まだまだ経験値の少ないジャンルではあったが、過去の味噌ラーメン史上最高得点を叩き出したラーメンに本場札幌で出会ってしまった。

しかしその事が北海道のラーメン文化を、もっと知りたいと思ってしまったキッカケになった一杯でした。

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「薬味中華そば ¥650」@中華そば 藤の写真平日 曇天 13:20 先客3名 後客なし

〝ニューオープン パトロール〟

本日の八王子界隈新店めぐりの二軒目に選んだのがコチラで、お店情報によると六月末にはオープンしていたようだが見過ごしていた。思い返せば、その頃は高崎めぐりに没頭していた時期だったので新店情報が目に止まらなかったのだろう。

そこで昨晩からの作戦通りに一食目を食べ終えると、往路と同じ西東京バスにて西八王子駅まで戻ってきた。しかし前食から時間がわずがしか経っていないので、駅前でコーヒーを飲みながら腹が減るのを待つことにした。私でも最年少ではないかと思われる大手コーヒーチェーン店は、人生の大先輩方で大賑わいとなっている。その賑わいの原因は他にもありセルフでアイスコーヒーのグラスをお盆に乗せてテーブルまで運ぶ際に、二人のご年配者がほぼ同時にグラスを倒して大騒ぎとなっていた。これから迎える年齢なので私も気を付けなければと心を引き締めた。前食から二時間も経過すると連食スペースも空いてきたので初訪問へと向かう事にした。

今度は西八王子駅の南口から発車する京王バス 西62系統 高尾駅南口行きに乗車すると、10分足らずで最寄りの西郵便局入口バス停に着いた。バスを降りると少し先には〝東京名物 八王子ラーメン〟と書かれた幟旗が風に吹かれて揺れていた。すぐにそこが店だと確信して近づいて行くと、屋号の入った白のれんと〝八王子ラー専門店〟と大々的に書かれた店先まで来た。ガラス越しに見える店内には先客はあったが空席も確認できたので、迷う事なく白のれんをくぐって店内に入った。

入店すると正面に設置された券売機と、その横の壁一面に書かれたメニューを見比べながら本日のお題を品定めする。やはり八王子ラーメン専門店だけあってメニューはシンプルで薬味やメンマ、チャーシューなどの具材を追加するか否かの単純な構成となっている。もちろん王道から外れるような味玉はラインナップにないので、今回は薬味を追加したメニューを発券してホールの女性スタッフさんに手渡した。調理場側に面したカウンターに腰を下ろして店内を見渡してみると、背面にも壁沿いにカウンターが設けてあった。テーブル席を置くほどは広くないので客席のスペースを最大限に活用されている。洒落っ気はないが、どことなく落ち着く雰囲気があるのは、内装などに手造り感があるからだろう。そんな店内を本日は男女お二人で切り盛りされている。客層もお馴染みのメンバーなのだろうか、店主さんが調理に集中している際もホールの女性スタッフさんは接客に余念がない。そんな、そつのない分業制を見ていると着席して6分程で我が杯が到着した。

その姿は川越の名店「頑者」や高崎の人気店「麺 & cafe Coi.Coi.」でも使われている器と同じ紋様だが、ひとまわり小ぶりな白磁に鳳凰の描かれた高台丼の中で〝らしさ〟を存分にアピールしている。いかにも八王子ラーメンらしい表情には、さすがは〝専門店〟を名乗る事だけあって三つの特徴を全て備えているように見えた。その八王子ラーメンの三大特徴をひとつずつ解き明かしていくためにレンゲを手にした。

まずはスープをひとくち。三つのうちの二つの特徴がスープの中に隠れているはずなのだが、そのうちの一つが〝液面を油脂が覆っている〟という事だ。それを確かめるべく見た目だけでなく、漆黒の闇のようなスープを覆い隠し油膜にレンゲを落とし込んだ。するとレンゲの中にたっぷりと香味油を湛えたスープが注ぎ込まれた。その油膜の香りからはラードを主とした香味油の香りが漂ってくるので、一つの条件はクリアしている。もう一つの特徴である〝醤油ベースのタレ〟は飲まずとも結果が分かるような醤油色を強く打ち出したビジュアルだが、確認するためにレンゲのスープを口に含んでみた。もちろん条件をクリアする醤油ダレをカエシに使ってあるが、見た目のような高圧的な醤油の主張が全くない事に驚かされた。さらには多めのラード油膜で守られていたスープの温度の熱さにも驚いた。不用意に取り掛かると口の中をヤケドしそうな程の高温なので、私にとってはありがたいが注意も必要だ。すでに二つの条件を満たしているスープからは四つ足系の風味を感じるので、豚ゲンコツや豚ガラ由来の動物系スープが土台を築いているのだろうか。そこには魚介の風味も見え隠れするが、とにかく何も前に出てこない控えめなスープは書き手泣かせでもある。ともすれば物足りなくも感じられそうな一歩引いた感じのスープだが、若干の旨味の底上げの力を借りて年配者にも受けそうな仕上がりとなっている。

続いて麺を持ち上げてみると、クチナシ色素を思わせる黄色みを帯びた中細ストレート麺が現れた。店内には麺が入っているわけではないが麺箱があり、八王子界隈でよく見かける製麺所の麺箱だった。と言う事は、その製麺所の麺だと思うが真相は定かではない。麺上げまで45秒ほどの麺を躊躇する事なく一気にすすり上げてみると、若干のカンスイ臭が伴ってきたのでクチナシ色素と思われた黄色い麺肌はカンスイ由来の色合いだったのだろう。低加水と思われる中細麺は、軽やかな口当たりで滑り込んできた途端に甘みを発散してきた。噛まずとも甘さが浮き出た麺に意表を突かれながら奥歯でプレスしてみると、細身ではあるがもっちりとした歯応えを感じた。

具材のチャーシューには豚肩ロースを煮豚型で仕込まれてあり薄味なのは良かったが、肉質本来の旨みが乏しいのでクセという悪い個性が主張していた。小ぶりではあるが厚みを持たせてスライスされていたので赤身の歯応えは楽しめたのだが、もう少し煮汁感があっても良かったかもと思う。

メンマには細めのタイプを採用されていて、シャキッとした食感よりも滑らかな口当たりの方が印象強い。味付けは程よく醤油の香味が利いていて、噛むたびに柔らかな歯応えとメンマならではの風味がアクセントになっている。

薬味には、八王子ラーメンの三大特徴で最も重要と思える〝刻みタマネギを使うこと〟は当然ながら初見の段階でクリアしているのは分かっていた。しかし追加トッピングしてしまったので基本でも入っているかどうかは分からないという凡ミスをしてしまったが、そこは間違いなく入っていると信じて先へと進んだ。見るからに不揃いでランダムな切り口からは、包丁ではなくフードプロセッサーで簡易的に刻まれた感があり少々〝薬味愛〟を感じられず残念ではある。しかしこの不揃いな大きさが刻みタマネギの魅力を多岐にわたって伝えてもくれていた。大根の鬼おろしのように天に盛られた薬味だが、最も細かく刻まれた部分は直ぐにスープを吸って色素も変化していた。そのスープと塩気とタマネギの甘みの組み合わせが全体の一体感を生んでいた。また大きく刻まれた部分はタマネギの甘みの他にも辛味と独特の歯触りを加えて存在感を発揮していた。

これで八王子ラーメンの特徴の三つ全てが揃ったが、序盤早々からスープの高温で麺が変化し続けていた。好みの食べ頃は各人で違うだろうが、私は前半の麺ディションがベストに思えた。中盤からは次第に麺のハリやコシが薄れていき、弾けるような食べ応えは無くなってきたのが残念だった。周囲の方はコショウを加えたり、お酢を投入したりと様々な味変を楽しんでいらした。私も最後は単調気味になってきたスープと麺に変化をつける為に、添えてあった海苔で麺を巻いて完食となった。薄味ではあったがスープは飲まずに箸とレンゲを置いた。

様々な進化と変化を遂げている〝八王子ラーメン〟ではあるが、私の中ではオーソドックスでクラシカルなタイプと位置づけされるラーメンだった。新しい出会いを楽しんで店を後にして都内に帰ろうと思ったら、午前中の京王線の遅延に続いて午後は中央線での事故の影響で運休となっていた。仕方なく京王バスで高尾駅まで向かい、復旧した京王線にて新宿まで帰ることになった。よく電車の運休や遅延のニュースを耳にするが本日は二度も足止めされてしまい、中央線ユーザーの大変さを身をもって知ることになった一杯でした。

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「醤油らーめん ¥700」@咲正の写真平日 曇天 11:03 先客なし 後客なし

〝ニューオープン パトロール〟

本日は八王子方面での新店めぐりの連食作戦を立てた。そうなれは中央線遠征のアジトとなっている、荻窪駅近くの常宿に昨夜から前乗りしてきている。

この宿の利点は施設内のBARにて 1980円での飲み放題プランがある点なのだが、飲み過ぎてしまうという弊害も出てくる。昨夜は会食で飲んできた事もあり飲み放題プランではなく〝せんべろプラン〟という 1000円で生ビール三杯と 380円のおつまみが楽しめるプランに初挑戦してみた。単純計算でトータル 2000円を超える生ビールとつまみを半額以下で楽しめるといった三次会なら十分なプランを堪能してから眠りに就いた。

翌朝も朝湯を浴びてから八王子界隈での新店情報をRDBで予習してみる。まずは一軒目に選んだのがコチラの新店なのだが、お店情報によると六月の初旬にはオープンしていたようだが見過ごしてしまっていた。まだまだレビューが少ないのは、西八王子駅からも遠いようなので立地のせいもあるのだろうかと思いながらも初訪問を決め重い腰を上げた。

出発前にネットニュースでは、京王線の停電のせいで中央線にも大きな遅れが出ているとなっていた。そこで予定していた時間よりも早めにホテルをチェックアウトして荻窪駅に向かってみた。

するとホームには普段よりも人があふれて、案内板の全ての電車に15分以上の遅れが案内されていた。実際には20分遅れの高尾行きに乗車したが、平日の下り電車とは思えないくらいに混んでいて満員電車さながらの乗客数に驚いた。さらには先頭車両の冷房の故障があり、途中の豊田駅で車両の入れ替えをするという不運にも見舞われながら西八王子までは辿り着けた。

西八王子駅北口からは西東京バス うえ01系統が20分ごとに運行しており、乗り継ぎもうまくいき10分もバスで揺られると最寄りの叶谷バス停に着いた。目的地はバス停の目の前のはずだが見当たらず困っていると、少し離れた場所につけ麺と書かれた幟旗を見つけた。道路を渡って近づいてみると〝らーめん 咲正 この裏〟と駐車場のブロック塀に貼り紙がしてあった。回り込んでみると淡いえんじ色の暖簾が掛かった店先に着いた。

外観的には新店舗らしい要素はないが、店内に入ると真新しい内装が出迎えてくれた。券売機はないので店内の壁に書かれたメニューや、卓上に綴られた写真入りのメニューを参考にしながら本日のお題を検討する。勝手に八王子ラーメンかと思っていたが、それらしいメニューはなかったのでマイスタンダードの醤油系を選び口頭注文して店内を見渡してみる。

ホールに置かれたウォーターサーバーからセルフでお冷を入れながらカウンターの背後を見ると、テーブル席が二つ用意されていて複数人向けのレイアウトとなっている。コンクリートの打ちっぱなし風の壁紙と真っ黒なカウンターなどの内装から男っぽい印象が強い。実際にも本日は男性陣の二人体制で回している。ユニフォームの背中には本店の屋号が書かれてあるが、未訪店なのでそちらのスタッフなのかは定かではない。そんな男気が前面に出ている雰囲気だが、接客も穏やかで明るく好印象を受ける。そんな店内でラジオをBGMに聴きながら待っていると、着席して5分とかからずに我が杯が到着した。

その姿は厚手の高台丼に大柄の雷紋が描かれた珍しいタイプの器の中で、素朴な色調を浮かべて出迎えてくれた。最先端といった感じでも、昔ながらといった感じでもない不思議と安心感のある表情に見えるのは盛り付けの丁寧さが思わせるのだろうか。なぜかほっこりした気持ちになってレンゲを手にした。

まずは黄唐茶色のスープをひとくち。清湯系とも乳化系にも属さないような半濁したスープの液面には、均一したドットの香味油が薄っすらながらも全面を覆っている。そんなスープにレンゲを落とすと、鶏を主体とした動物系出汁の香りが先陣を切ってきた。香りにすら重厚さがあるので豚ゲンコツなどの四つ足系も基礎を支えていると思われる。すくい上げたレンゲの中のスープの濃度は重たくはないが中濃タイプといった所だろう。そんなスープを口に含んでみると、香りの動物系とは違う乾物由来の旨みも潜んでいる。印象としては動物系が強く感じるが、昆布や節の風味もサポートしているWスープだ。不要な旨味成分やカエシも強めに利かせてあるが、麺とのバランスを考慮しての策なのだろうと麺に取り掛かってみる。

厨房内には八王子界隈では良く見かける製麺所の麺箱が積まれてあるので、箸で持ち上げる前からも少しは麺のタイプを想像できる。実際に持ち上がった麺を見ると、透明感のある麺肌が特徴の中太ちぢれ麺が香味油をまとって光り輝いている。思っていた通りの麺が現れたので安心感がより強くなった。そんな思いで一気に麺をすすり込むと、さすがのちぢれ麺なのでスープを飛び散らせながら滑り込んできた。中太タイプながら麺上げまでジャスト60秒の短さが生み出す、ハリとコシを残した硬めの茹で加減が最大の特徴だと思う。好みで賛否はあると思われるが、咀嚼の回数が増える事で麺の甘みが次第に湧いてくる感じは嫌いではなく食べ進められた。その小麦の甘みが強気なスープの塩分を少し和らげてくれるのも私には幸いした。となればスープと麺の相性は素晴らしいと言っても良いと思われる。

具材のセンターを飾っているのは存在感抜群のチャーシューだ。トンカツにも良く使われる豚ロース肉でじっくりと仕込まれた煮豚型が大判なままで盛り付けられている。しかも惜しげもなく厚切りスライスされているので食べ応えとしては肉料理を頬張っているような感覚だ。長時間煮込まれた割には味付けも優しく、過度な煮汁の醤油感などみじんも感じさせない薄味仕立てとなっている。それでも豚肉特有の獣臭さがないのは、豚肉本来の質の良さに依るところが大きいのだろう。豚ロース最大の魅力である脂身も多く残してあるが、臭みはなく甘みをしっかりと引き出されていた。

メンマには流行りの穂先メンマが使われていたが、こちらも非常に良い繊細な味付けで発酵食品特有の香りが残ってアクセントになっていた。少し硬めに仕上げてあるが、それがキレのある歯応えとなってくれ食べ心地の良さを生んでいた。屋号の〝咲正〟を掲げたメニューがあったのだが、この贅沢なチャーシューと穂先メンマが増量されるとあったのだが利益を度外視したメニューに違いないと思った。

残念ながら好物の味玉はトッピングには無かったのだが、代わりにうずらの味玉が一つだけではあるが添えてあった。小さいながらも鰹出汁を存分に含んだ味玉なので熟成感などはないが、口内リセットの役目は果たしてくれた。

薬味は素朴な白ネギが小口切りで添えてあり、粗々しくはあるが香りと食感の両面でスープや麺に変化をつけていた。このラーメンには高級九条ねぎよりも、このタイプの田舎ネギの方が似合っていると思う。青み役も兼ねた三つ葉は葉先だけが控えめに乗っていた。そんな三つ葉を噛んだ瞬間だけ、軽やかな清涼感が押し寄せるピンポイントのアクセントが楽しめた。

小さめに添えてある海苔は口溶けは良かったのだが、磯の香りを感じられるほどの大きさはなかったので黒色を使って見た目を引き締める役目の方が大きかったようだ。

中盤からも私にとっては強い塩気と不要な旨味に押され気味に食べ進めたが、スープには手を付けられずに箸とレンゲを置いた。

メニューの中には魚介を中心とした中華そばもあったので、次回の訪問時にはチャレンジしてみたいと思った一杯でした。

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「煮干しそば ¥780 +味玉 ランチ無料サービス」@らーめんキッチン かえでの写真平日 曇天 12:55 先客4名 後客1名

〝ニューオープン パトロール〟

本日は新店めぐりの連食計画のために群馬まで足を伸ばしてみた。今回の二店舗とも新店と言っても、どちらも前回の高崎めぐりで出会ったラーメン店と関係のある店ばかりなのだ。

午前中の一食目に訪れたのは高崎から渋川に移転されたばかりの店で、連食先のコチラは高崎市内の人気店の2号店となっていてオープンして二週間ほどのようだ。前回の高崎行脚は本店を皮切りにスタートしたのだが、その際に店内には2号店のオープンの告知がしてあったので存在自体は知ってはいたのだ。そこで本日は渋川での前食を終えると直ぐに渋川駅に戻ったのだが、次発の電車までは一時間以上もあったので別ルートを調べてみるとバスでの移動ルートが浮かんできた。

そのバスの時刻までも30分程あったのだが、長いバスの乗車時間を含めても高崎駅への到着がたった10分ではあるが早く着くようなのでバスルートを選択して連食先のコチラへと向かう事にした。11:57発までの30分を冷房の効いた駅構内のベンチに座って待っていた時に、執拗に流れる唄が耳に残ってしまった。それは「 ♪ ハラ出せヨイヨイ、ヘソ出せヨイヨイ」と繰り返される謎の唄なのだが、渋川市民の皆さんにはおなじみのフレーズなのかもしれないが妙に耳から離れずに東京に戻ってからも口ずさんでしまっている。そんな魔性のメロディを聴きながら待っているとバスの発車時刻が近づき、目の前のバス停に向かった。

定刻通りに高崎行きの関越バスに乗車すると、ほんのわずかな乗客だけを乗せて走り出した。途中のバス停からも乗ってくる人は少なく、終始バスの車内は運転手さんも含めて多くても三人といった感じで進んで行く。そんな穏やかなローカルバスで55分ほど揺られると、最寄りの連雀町バス停に着いた。途中のバス停が40ヶ所を超える数はあったと思うが、停車したのは時間合わせを含めても5ヶ所も無かった気がするくらいに平日の昼間は利用客の少ないバスだった。

バス停を降りて目の前の大きな連雀町交差点を左に曲がると、何故か見慣れた風景が飛び込んできたのだ。まさかの目指していた「らーめんキッチン いいづか」の2号店は、先ほど前食を食べた「らぁめん家 有坂」の跡地だったのだ。

移転前の「らぁめん家 有坂」訪問時には、あまりの隠れ家的な外観に前を素通りしてしまったのだ。しかし今回は店先には大きな日除け暖簾が飾られ店名も大きく書かれていたので、見過ごす事もなく直ぐにコチラが店だと分かった。その日除け暖簾の奥には以前と同じくガラス張りの調理場が見えて女性スタッフさんが麺上げされているのが見えたので、営業中だと確認して店内に入った。

入店して最初に驚いたのが店内の明るさだった。何も比較する事はないのだが、以前はロックテイストな男気あふれる雰囲気だったと記憶している。しかし今回は店内のレイアウトは変わってないと思うがライティングの照度をかなり上げている為、メタリックなカウンターの天板もシックな装いからポップな印象へと変わっている。インテリアのところどころに赤の差し色を使うなど、女性だけの二人体制で営まれている雰囲気に出来るだけ近づけた内装となっている。

券売機は設置されてないので空いていたカウンターに座り、卓上メニューから本日のお題を品定めする。数種類あるラインナップの中、変化球的なメニューも多いが初訪問なので直球の煮干しそばと味玉をオーダーして店内をさらに見てみる。

本店で見かけた女性スタッフさんが指揮をとっていて調理場のスペースは本店と比べると随分と手狭に感じると思われるが、そんな悪条件を全く感じさせず丁寧な調理工程と明るい接客で新規客の心をわしづかみにしているようだ。新店ながらも手馴れたオペレーションを眺めていると、着席して6分で我が杯が到着した。

その姿は胴が朱赤で口縁には雷紋柄のクラシカルな切立丼の中で、具材などの内容には変更はなさそうだがレイアウトを変えて盛り付けてある。昔ながらの器の中で整然と配置された美しさには女性らしさが感じられる。本店でも思ったのだが、この丁寧で美しい盛り付けが不得意ジャンルの煮干し系への警戒心を和らげてくれる。そんな初訪問での煮干し系への緊張感も薄れて、落ち着きを取り戻した所で赤いレンゲを手にした。

まずはスープをひとくち。液面の淵にはグループ店の代名詞とも言える魚粉が浮かんでいるのが見られ、煮干し系の一番の苦手要素のザラつきへの不安が再燃してきた。表層には一面に具材が盛り付けてあるのでチャーシューを押し込むようにレンゲを沈めてみると、思いのほか軽やかにスープがレンゲに注がれてきた。そんなレンゲを口元に近づけてみると、過度な煮干しを主張せずに美味しそうな香りが鼻先をくすぐった。見た目と香りでイメージが出来上がった所で、いざスープを口に含んでみる。先陣を切ってくるのは煮干しの旨みである事は間違いないが、必要以上の苦味などは排除されてインパクトよりも味わいに重きが置かれているようだ。スープが唇に触れた時に軽やかな粘りを感じたのが鶏由来のコラーゲンだと思う。旨みを支えているのが煮干しだけではなく鶏出汁も加わる事で、スープが単調にならずに深みと広がりを与えている。心配された魚粉のザラつきが全く無い訳ではないが、舌の上に残らないのが自家製魚粉ならではの特徴だろうか。相当メッシュの細やかな魚粉を仕込まれているのだと感じた。カエシも魚粉に含まれる塩分を計算されて低めの設定となっているため、トータルでジャストの塩梅となっていた。

続いて、こちらもグループ店の真骨頂でもある自家製麺は中細タイプの麺を本店から届けてもらっているようだ。麺上げまで70秒の自家製麺を持ち上げてみると、真っ直ぐとは言いづらい程度に緩やかにウェーブがかかっている。切刃の角も程よく残っているが、ふっくらとしたハリも見せる麺肌がいかにも美味そうである。たまらずに一気にすすり込んでみると、口当たりの時点でもっちり感が唇に伝わってきた。グルテンを豊富に蓄えた麺質ならではの噛み応えが、食欲を更に増加させるようなオリジナリティあふれる仕上がりは自家製麺ならではの食感だ。この奥歯を押し返すような食感がパスタに用いられるセモリナ粉を配合している理由なのかと思った。持論の〝餅は餅屋、麺は麺屋〟を否定してくれるような自家製麺に今回は出会ってしまった。

具材のチャーシューは豚バラの巻き式煮豚型の表面にバーナーで炙りを施して香ばしさを加えている。サイズ感も十分で赤身と脂身のバランスが良い部位が切り分けられてあり、煮汁の味付けも薄味ではあるが足りなさは感じさせない。食感も脂身は柔らかくても赤身はしっかりと歯応えも残してあり、派手な印象はないが食べ甲斐のあるチャーシューとなっていた。

追加した味玉は後会計の時に知ったのだが、ランチタイムは無料サービスとなっていたのだ。たしかに周囲の客人はライスや麺大盛りを食べている方が多かったので、それらもランチタイムの無料サービスだったようである。しかし独自の〝味玉論〟を持つ私に、いくらタダとは言えど容赦なく評価したい。などと息巻いていたが、味玉を頬張った途端に目尻は下がり口角は上がってしまうような出来栄えだった。それは漬けダレが見事に黄身まで浸透して完全にゲル化していながらも、卵本来の持つ白身の旨みも残っている。提供温度も温かくはなかったが常温程度までは戻してあったので、旨みを感じやすくなっていた。無料云々は関係なしに追加して良かったと思える味玉だった。

メンマはよく見るタイプの中細メンマが多めに盛り付けてあり、正直言って特筆すべき点が思い浮かばないのが特徴である。スープや麺に個性があるので、このメンマの普通さが食中を和やかなものにしてくれていた。全てが普通では物足りないが今回ばかりは〝普通が一番〟と思えるメンマだった。

薬味は青ねぎと玉ねぎの両者そろい踏みで添えられている。青ねぎの小口切りは見た目にも鮮やかな緑を与えてくれ、スープに清涼感を加えてくれる。玉ねぎアッシェは辛味を抜いてあり、果物のような甘みを発している。それは旬の梨を噛んでいるような、みずみずしい食感と甘さを放っていた。薬味の両者に共通するのは切り口の新鮮さだった。

序盤から濃度の低いスープだと思い食べ進んできたが、すすり上げる麺にはしっかりと魚粉が絡みついてくる。不思議に思っていたら終盤になって理由がようやく謎解けた。上層部こそ濃度の少ないスープだが、下層部の丼底には大量の魚粉が沈殿していたのだ。よって、見た目以上にスープの旨みを持ち上げていたのだった。さすがに丼底の溜まり部分を飲み干す事は出来なかったが、その魚粉の沈殿物だけを麺と絡めたら魚粉好きには堪らない逸品となる事を思い描きながらレンゲを置いた。

私にとっては本店よりもアクセスが良く、バスに乗らなくても来られる利便性は大変ありがたい。ただでさえハイクオリティなラーメン店が名を連ねる高崎に、またひとつ通いたくなるようなラーメン店が誕生してしまった。〝してしまった〟というのも日帰りでの高崎めぐりはもったいなく、次回はホテル代と高崎のネオン街での飲み代が加算される事が不安になってしまう一杯でした。

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「らぁめん 醤油 ¥790」@らぁめん家 有坂の写真平日 曇天 10:58 先待ち1名 後客なし

〝ニューオープン パトロール〟

高崎から渋川へと移転されたコチラへの初訪問を含めた連食計画を果たすために、本当ならば昨晩は前橋に前乗りして人生初の前橋ナイトを楽しむはずだったのだ。しかし都内での夜の会食が長引いてしまい高崎へ向かう最終の新幹線を逃してしまい、仕方なく上野の常宿にて朝を迎えた。

近々の十日間のうち五日はお世話になっている上野のサウナだが、もはや〝家なきオジさん〟のような生活を送っている毎日だ。言いかえれば、それだけ上野界隈や上野以北での新店ラッシュが続いているという事にもなる。今朝も快調に目覚めると朝サウナで身体と精神を整えると身支度をして、午前9時前にチェックアウトした。

少し前にRDBの新店情報の中に見つけたコチラの少ないお店情報によると、11時オープンとなっているので開店前の現着を狙って北陸新幹線に乗り込んだ。上野 9:10発 あさま605号 長野行きにて、一路高崎を目指した。濃紺の全自動リクライニングシートに身を沈めると、たった42分で高崎駅に着いた。高崎駅からは30分以上の乗り継ぎ待ちを経て、上越線 水上行きに乗車すると20分足らずで最寄りの渋川駅に着いた。

ここからは少し距離があるようだが、路線バスがちょうど出発したばかりで次発まで40分以上もあったので歩いて向かう事にした。駅前の黄色い看板のラーメン店には11時前に数名の行列があったので、渋川のラーメン需要の高さが心配になり早足で店を目指した。駅前の大通りを進み小さな川を越えると住宅街の中へとナビが示す通りに進んで行くと、少ないながらも飲食店が集中した場所へと出てきた。すると交差点の角に開店祝いの花が並んだ店先に看板が見え、入口の方へと回り込むと一名の外待ちが出来ていたので二番手をキープした。

まもなく定刻になったが、店先に駐車した軽トラックの横では座卓を修理している大工さんらしき人がいて慌ただしく作業している。店内も準備が整ってないのだろうかオープンにならずに定刻を過ぎた。2分程して中からスタッフさんが営業中の看板を持って出てくると、無事にオープンとなり入店となった。

店内には券売機はないのでカウンターに座り卓上メニューから本日のお題を決めるが、仕込みが間に合わなかったそうで品切れのメニューが多くあった。あとで twitterを確認すると、どうやら前日に配管トラブルで臨時休業されていたようだ。なので仕込みが追いつかずに慌ただしかったのだと知った。そんな前日の影響だと思うが、本日はスープの塩系と味玉が仕込めてないとの説明を受けたのでマイスタンダードの醤油にして、好物の味玉がないので泣く泣くトッピングは無しで口頭注文した。

わずか三席だけのカウンター越しに店内を見渡すと、小上がり席も設けてあるがしっかりと座卓が置かれてあるので修理中の座卓はどこのだろうかと不思議に思った。移転前よりも手狭になった店内には以前は見られた製麺機もなく、10種類以上も山積みにされていた煮干しの箱も半分以下に減っていた。もしかしたら二階などの別場所に製麺室を設けられたのであろうか。移転前の黒を基調としたBARのような内装と違って、客席には朱赤色の壁紙が貼られカウンター内の壁にはボトルキープ用のガラス棚があるので小料理屋のような雰囲気もある。そんな店内を本日は二人体制で回しているが、厨房内に二人が入るとかなり狭く感じられる。しかしトラブルの最中に本日は営業してくれた事に感謝しながら待っていると、着席して6分の 1st ロットにて我が杯が到着した。

その姿は白磁の小さな切立丼の中で移転前とは少し異なる景色を見せている。奇しくも移転前の最期のレビューが私だったようで写真を見比べてみたが、やはりいくつか変更された点が見受けられた。そこには新たな進化があるはずと期待を込めてレンゲを手にした。

まずは紅檜皮色のスープをひとくち。店内のライティングのせいもあるかもしれないが、以前よりも醤油の色素が強く出ている感じのする液面にレンゲを沈めてみた。レンゲのくぼみに注がれるスープに粘度はなくサラリとしている。煮干しが主体ではあるが必要以上の苦味やエグ味などを全く感じさせず、親しみやすい香りだけが立ち昇ってきた。ニボ耐性が弱い私でも安心して口に運べるスープだと確信して口に含むと、香り同様に煮干しの個性を押し付けてこない旨みを中心とした煮干しが主張している。その裏側には鰹節と思われるキレのある酸味が存在しているのとカエシの醤油ダレの酸味が相まって、旨みは濃いがさっばりとした印象も受ける。私の感覚だけかもしれないがスープの複雑みが薄くなった分、ダイレクトに魚介乾物の旨みを感じられるような気がした。

続いて麺を持ち上げてみると麺肌には溶け出したグルテンが半透明になっており、麺の中心部には密度の濃い色合いを残した二層構造になって見える。そこには切刃の角がハッキリと残った中細ストレート麺で、見るからにハリとツヤを感じられる麺質だ。持ち上げた箸先には適度な重みが伝わってくるので、加水率もそれほど低くはなさそうだ。すでに麺肌にはスープの醤油色素を吸い始めて色合いが変化している麺を一気にすすり込んでみると、切刃のエッジが唇にシャープな印象を残しながら口の中に滑り込んできた。軽やかでキレのある口当たりかと思えば舌の上では滑らかさも表現しているが、歯応えの面では少し力強さが失われたようにも感じた。柔らかな歯切れの中には奥歯を押し返すような弾力がないので、麺の仕様をいくらか変えられたのだろうか。麺上げまでもジャスト90秒と、茹で時間も以前よりも長くなっているように思ったが気のせいだろうか。提供時がこの麺ディションのピークに思えたので、麺がダレるのを嫌って先に食べ進める事にした。

具材のチャーシューは豚バラの煮豚型が盛り付けられたいたが、こちらにも仕様の変更が見られた。移転前は豚バラの角ブロックで仕込まれて薄めに数枚カットされていたが、今回はミートネットで巻いて煮込まれた豚バラが厚みを持たせた大判のまま盛り付けてあった。味付けに大きな差はなかったが特筆すべきはチャーシューのジューシーさの違いである。本日分は赤身中心の豚バラが切り分けられていたが、大きなかたまり肉のまま煮込んであるので肉汁が抜け出す事なくしっかりと残っていた。それなので脂身が少ない部位にもかかわらず、しっとりと柔らかく仕上がっていた。そこに厚切りの食べ応えが加わり、バージョンアップしたチャーシューとなっていた。

また具材の一員としてタケノコの水煮の細切りが追加変更されていたが、細メンマならば良かったと勝手な好みを思ってしまった。それでもタケノコ特有の軽やかな食感は健在で、柔らかく感じた麺をサポートしてくれたのは間違いない。

薬味の白ネギは葉先の青い部分も刻まれているので、強い香りと粗々しい歯触りを残している。繊細な清湯スープには必要ない刺激かもだが、このスープにはこれくらいのワイルドなネギの方がしっかりしていると思えた。なので量の少なさが物足りなさを生んでしまっていたのが本音でもある。

序盤で一気に麺を平らげたがコシの強さを欠いていると感じながらの完食となり、味玉などの仕込み不足も重なって少しばかりモヤモヤの残る結果となってしまった。トラブル直後の来店となったようでイレギュラーが重なってしまったのかもしれないが、目の前のラーメンだけの採点としては少し低めになってしまった。

移転前よりもアクセスが大変になったが、設備やオペレーションが落ち着いた頃を見計らって再訪してみたいと思った。券売機の習慣に慣れてしまっているので、忘れぬように後会計を済ませて店を後にした。

計画している連食予定の為に急いで渋川駅まで戻ったが、タッチの差で高崎行きの電車が出てしまった後だった。次の電車までは何と一時間以上もあるので仕方なく駅の構内のベンチに座り時間を待つ事になった一杯でした。

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「特製真鯛白湯 (醤油) ¥900」@麺屋 鯛鯛の写真平日 曇天 11:30 先客なし 後客2名

〝ニューオープン パトロール〟

これは十日以上も前の話なのだが、早朝に発生した地震と豪雨情報によって昨日から考えていた新店めぐりを断念しようかと思ったのだが、都内でも強い揺れを感じた地震だったが交通機関も午前中には平常運転に戻っていた。そこで出発は遅くなったが新店を目指して自宅を出た。

昨夜はRDBの新店情報の中に新たな名前を見つけ詳細を調べてみるが、分かっているのは店名と所在地くらいで情報がとにかく少ない。定休日も営業時間すら分からない中での初訪問を決意するには大変な勇気が必要だったが、自宅からは遠いが乗り換えいらずとアクセスが悪くはないので東武スカイツリーライン直通の半蔵門線に乗車した。

移動の車内ではこちらの屋号の〝鯛鯛〟の二文字にラーメンの姿を想像しながら向かった。鯛干しを使った店なのか、もしくは得意ではない鮮魚系のスープなのかと期待と不安を胸に50分ほど進むと最寄りの草加駅に着いた。思い返すと草加市内のラーメン店には来た事があるが、草加駅にラーメンの為に降り立ったのは初めてだと気づいた。西口改札を出てナビの指示通りにたどり着いた店先には非常にも一週間後のオープンを知らせる貼り紙がしてあったのだ。

RDBの新店情報だけをたよりに草加まで乗り込んで来たが、まさかの誤情報だった。そこで日を改めて確かなオープン情報と他レビュアーのレビューを元に再び草加の地へと戻って来たのだったが、まさかの水漏れによる工事の為に臨時休業の貼り紙が貼られていた。十日で二度もフラれるとは何か因縁めいたものを感じて、三たび草加の駅に降り立ったのだ。

もうナビに頼らなくても道順は頭に入っているくらいに通いなれた道を進んで行き定刻の15分前に現着すると、本日はドアが半分開けられて中には人の気配も感じるので定休日や臨時休業ではなさそうだ。それを確認すると行列もないので周辺の散策に出掛けた。店のすぐ裏には立派な草加神社があり、お参りする為に大鳥居をくぐった。お参りを終えると神社の横には児童公園があり、なんと園内には蒸気機関車の C56 (通称シゴロク) が展示されていたのだ。なぜここに置かれているのか分からないが、保存状態は決して良いとは言えず残念な姿になりつつある。せっかくの公園のシンボルなので草加市も少し予算を組んで欲しいと願った。

SLを見つけて驚きと哀しさが同時に訪れた後に、再び店先へと戻った。すると定刻ちょうどのようで中からスタッフがメニュー看板を店頭に置くとオープンとなった。やっと三度目の正直となって初訪問が叶う時が来た。

店内に入ると入口右手の券売機にて本日のお題を品定めする。大まかに分けると醤油白湯か塩白湯と、つけ麺のラインナップなので迷う事なくマイスタンダードの醤油系を選んだ。不運にも二度もフラれているので、特製ボタンを押してカウンターに腰を下ろて店内観察を開始する。

妙な緊張感があるのは無音のBGMのせいだろうか。店内はカウンターだけだが、かなり広めのレイアウトとなっていて空調と換気の容量が少ないのかエアコンが全く機能していない。ただ座っているだけで汗が流れてくるような環境の店を本日は二人体制で回している。屋号から想像していた〝鯛〟のイメージからも海を思わせる、ボーダーシャツとキャスケット帽のユニフォームが店に映える。内装は流行りの白と木目を基調とした変則的なL字カウンターで清潔感があるが、やはり換気ダクトの容量不足のせいで店内にはスープの仕込みの生臭さが若干残っている。現に茹で麺機の湯気もダクトから随分と漏れて逃げているので換気がうまく出来てないのだろう。環境面は採点には考慮しないので気を落ち着かせて待っていると、着席して5分でワンロット1杯の丁寧なオペレーションにて我が杯が到着した。

その姿は、おそろいの白粉引の受け皿と玉淵丼で提供された。丼に屋号も描かれてありオリジナリティあふれる器の中で、あまり親しみのない第一印象を受けた。それは以前、錦糸町の鮮魚系で受けた衝撃が大き過ぎて、トラウマのような苦手意識が生まれてしまったからなのだ。それ以来は鮮魚系を口にしていなかったのだが、天然真鯛の名産地である徳島で食べた鯛ラーメンの美味さを知ってからは苦手意識も和らいできた。そこで本日は苦手を完全克服すべく草加までやって来たのも大きな理由なのだ。しかし見慣れない景色には戸惑ってしまったが、覚悟を決めてレンゲを手にした。

まずは丁子色のスープをひとくち。動物系の白湯のように完全に乳化を果たしていると言うよりは、半濁といった感じの穏やかそうなスープが湛えられている。液面には油膜も微かに見られるが、鯛 100%のスープとなっているので鯛由来の油分だと思われる。そんな液面にはレンゲを沈めてスープをすくい上げると、明らかに乾物を使った魚介系とは異なる鮮魚系の香りが立ち昇った。それは鯛のアラ汁や潮汁のような個性的な香りで、ラーメンのスープとして認識するには時間が必要となりそうだ。ウンチクには正直に〝愛媛県宇和海産養殖鯛〟と明記されていて、いかにも天然鯛を使用しているように謳っている他店とは違って消費者には信用できるウンチクだ。もちろん養殖鯛には配合飼料や日焼けによる問題で天然鯛には敵わないが、調理法を工夫される事で養殖鯛特有の臭みを軽減しているのだろう。そこにも潔さが感じられるのは、生姜や香味野菜などの香りでごまかさずに養殖鯛のクセと共にスープを仕上げている点だ。そんな独特のクセのある香りを伴ったスープを口に含んでみると、最初に感じたのはコラーゲンの豊かさで唇に張り付いた粘着質の強さに驚いた。ひとくち目では慣れないスープに味覚も戸惑ったが、次第にスープの個性を受け入れられるようになってきた。塩気も少し高めではあるが麺や、〆のお茶漬けとの相性を考えての設定なのだろう。口当たりのまろやかさの中に、ハッキリとした塩気が輪郭をつけているようだ。

続いて麺を持ち上げてみると、麺上げまでジャスト60秒の中細ストレート麺が現れた。麺肌にはスープの色合いに同調するような全粒粉のフスマ色が浮き出ていて、見た目にはしなやかそうに映っている。箸先の重みからも適度な加水率と思われ、しっとりとした口当たりを思いながら一気にすすり上げてみた。口先の感覚よりも先に反応したのは嗅覚の方で、すすった吸気に寄り添う鯛出汁の香りが印象強く残る。それだけに麺が主張の少ないタイプであるとも言え、口当たりや歯応えの全てが悪くないがスープの強さに押され気味に思えた。また全体的にスープの量が少ないので丼の中で麺の流れが悪くなってしまい、スープのコラーゲンと麺のグルテンが生み出したすすり心地の良さも半減してしまっていた。

具材のチャーシューは鶏ムネ肉の低温調理を極薄にスライスして山型に盛り付けてある。そのまま食べると提供温度の冷たさは気になるが、味付けは下味のソミュール液が利いているので淡白になり過ぎない。素材の鶏肉自体の品質も良いのだろうか、しっとりとしたレア感は残しながらも生っぽさを感じさせない。また燻製などの香り付けで逃げる事なく勝負されている点も素晴らしい。ほかの鮮魚系の店では、もともと生臭いスープに燻製チャーシューでフタをするといった、昔よくあった〝タバコ臭いタクシーが芳香剤でごまかす〟ような手法で逃げていると感じた事があったので、こちらの鶏チャーシューは正々堂々としていると思った。

鶏チャーシューには感心したが、ここからの具材は少し残念な仕上がりのものが多かった。鯛を謳っているだけにワンタンの餡にも鯛の身が使われていてフワッとした柔らかな食感が特徴的だが、ワンタン皮の厚みと餡の包み方による硬さが柔らかい餡の舌触りを邪魔していた。また餡にも余計な香りを付けていないので、鯛のほぐし身の魚臭さを感じてしまった。鯛本来の持ち味を活かした調理が、私には残念なワンタンとなってしまった。

特製には味玉が半個分入っていたが、私には物足りない味玉だった。メニューにも味付玉子となっているので醤油感か出汁感を味わえるものだと思っていたが、ゆで卵そのものを食べているようで味気なかった。

中太メンマは食べやすさを考慮してか短めにカットされて添えてあった。メンマの味付けには敢えて個性を削ぎ落とした平均的な味付けで、そこには店ならでは手作り感が見られなかったので汎用品なのだろうか。

薬味はいつ口にしたか覚えてないほど少量の白ネギとカイワレが添えてあった。そんな存在感のない薬味に対して、海苔とその上に乗せられた鯛のほぐし身を炙ったものは存在感を大いに発揮していた。海苔の上質な磯の香りと口溶けの良さと、ほぐし身の香ばしさがスープと一体となった時に口の中が本日最高の旨みと香りの頂点に達した。

この後も強気なスープの塩気をお冷で緩和しながら麺と具材は平らげる事が出来た。もともと少ないスープではあるが飲み干す事はできずに箸とレンゲを置いた。

周囲の方を見ると、お茶漬けセットがスタンバイされている客がいらした。普段はラーメンと炭水化物のセットを欲しない私なのだが、このスープ茶漬けに先程の海苔を合わせたならと思うと喉が鳴ってしまった一杯でした。

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「特製鶏中華そば ¥1100」@中華そば 馨の写真平日 小雨 11:30 店内満席 中待ち1名

〝ニューオープン パトロール〟

また新たな新店情報をRDB内で見つけると、居ても立っても居られずに品川駅に向かっていた。

これは昨晩の事で、入手した新店情報が小田原とあっては前泊して初訪問しようと思い立ったのだ。そこで 19:34 品川発 こだま683号 新大阪行きに乗り込むと30分もかからずに小田原駅に降り立った。とりあえずは新幹線の車内で見つけておいた温泉付きの宿泊施設に向かい寝床の確保には成功した。

都内の温泉施設とはスケールが違う屋上露天風呂と大浴場やサウナで汗を流した後は深夜を過ぎても利用可能な食事処で、神奈川ならではの工場直送の生ビールを楽しんだ。黒ビールの生が飲めるのは珍しいのでハーフ&ハーフにして飲んだり、そのままの黒ビールを日付が変わるまで楽しんだ。深夜のフードメニューにもラーメンがあったが、ここは自粛して仮眠室で眠りに就いた。

翌朝は快適に目覚めると小田原観光には目もくれず、11時半オープン前の現着を目指して温泉施設を出発した。歩いて向かうと20分近くかかるようなので、小雨が降っている事もありバスルートを利用する事にした。観光客で賑わいのある東口とは違い、地元の方の利用が多そうな西口から伊豆箱根バス 佐伯眼科行きという個人病院の名前が終点となっているローカルバスにて揺られること3分で最寄りの荻窪西バス停に着いた。このとき小田原にも荻窪がある事を初めて知ったが本当にバスに乗る意味があったのだろうかとルート検索を疑った。そこからは歩いて店を目指したが、より近いバス停もあったので別ルートの方が良かったみたいだ。バス停からは小田原市役所を大きく迂回するように歩いて行くと「ラーメン」とだけ赤文字で書かれた以前の店のものと思われる看板が見えてきた。明らかに観光地の小田原でなく、地元客優先の立地にも店主さんの強いこだわりが見られる。店先に近づくと開店祝いの花が雨に打たれて並んでいて、すでに店はオープンしており店内は満席となっていた。雨の中だったので少し早開けだったのだろうと思うと、店の心づかいが伝わってきた。

店内に入ると入口左手の券売機にて本日のお題を決めるが、開店しばらくは中華そばだけに絞ったメニューとなっていた。せっかく小田原まで足を伸ばしたのでハイエンドメニューの特製を発券して、三席だけある中待ちイスの二番目に座り店内を見渡してみる。外看板などからも居抜き物件と思われるが、新しく改装されていて清潔感があり居心地は良さそうだ。一直線ではなく構造上の都合で段違いに設置されたカウンターだけの店内を店主さんお一人で切り盛りされており、お冷などはセルフスタイルとなっている。調理場内に目を向けると新しい厨房機器や使い込まれた中古品などが入り混じった、開店資金を節約されているのが分かる。しかし直接客の口に入る食材を扱う電動スライサーなどの機材には新品が使われている辺りにも、ご主人のこだわりが表れている。それとは逆にガス台などには中古品で揃えてあり、その上に置かれた寸胴鍋の中では丸鶏や胴ガラなどが温度計で一定温度を守られて沸騰する事なくじっくりとスープが炊かれている。ご主人のこだわりは提供する器にも表れていた。今や器を温めるのは常識ともなってきたが茹で麺機の蒸気で温める店が多い中で、わざわざ大鍋で湯を沸かして器専用の湯煎で温めているのだ。これならば器がベタつくような事がないので最善の方法だと思った。そんな細やかな気配りに期待を大きくしていると、20分の中待ち待機を経てカウンターに昇格した。

セルフで水を汲んでから、卓台に食券を置くと店主さん渾身の調理が始まった。一度に大量生産をせずワンロット2杯を確実に仕上げていくスタイルで出来上がった我が杯が、着席して6分で到着した。その姿はシャープな切立丼の中で、最近よく見かける流行りの容姿でお目見えした。その姿を見た時に直感的に味の想像がついてしまい、初対面の楽しみを半減させてしまっているのが少し残念でもある。言い換えれば、それだけ鶏清湯のジャンルが広まった証でもあるのだ。もしかしたら見た目の予想を裏切ってくれるかもと期待しながらレンゲを手にした。

まずは赤銅色のスープをひとくち。醤油の色素を強く打ち出してはいるが、さすがに丁寧に炊かれたスープの透明感は美しく澄み切っている。そんなクリアなスープの液面には 20cc程と多めの鶏油が覆い隠していて、香りや湯気を閉じ込めている。そんな厚手な油膜をレンゲで破ると、醤油のキレのある香りが立ち昇ってきた。シャープにも感じる香りの中でスープを口に含むと、予想していた味わいとは少しだけ違った印象を受けた。鶏出汁の甘みやコクが先行する鶏清湯スープかと思ったが、どちらかといえば醤油ダレがキレと酸味を主張している。確かに丸鶏の旨みも強いがカエシが絶妙なバランスをとっているのでクドくない味わいに仕上がっている。甘みと酸味が折り重なる事で、スープが一辺倒にならずに複雑に感じられる。

多くの鶏油で口内に油膜が張り巡らされた所に麺を追いかけてみようと箸で持ち上げてみると、黄色みを帯びた切刃のエッジが微かに残る中細ストレート麺が現れた。麺上げまで100秒の麺を持つ箸先からは適度な重みが伝わってくるので、加水率は高くもなく低くもない平均的と感じとった。そんな麺を一気にすすり上げると麺肌にはグルテンが溶け始めて柔らかさを表現して、芯の部分にはコシの強さも感じられる二層構造的な麺質が特徴的だ。鶏油が潤滑油となって勢いよく滑り込んできた麺を噛みつぶすと、小麦の甘みが弾けてスープの塩気と酸味がスパイラルとなって昇天する。良くあると言ってしまえばそうではあるが、この安定感のある組み合わせは認めざるを得ないのも確かだ。

具材のチャーシューは二種類が切り立てにこだわって盛り付けてあった。一切の切り置きをせずにロット毎にスライスされた豚肩ロースの低温調理は、あまりの大判にも驚いたが厚みを持たせたスライスには更に驚いた。惜しげも無く分厚くスライスされたチャーシューを思い切り頬張ってみると、圧倒的な食べ応えとなってチャーシューではなく別の豚肉料理を食べているようだった。味付けは控えめなので物足りなさもあったが、豚肉本来の質が良いので獣臭さは出ておらず食べる事ができた。低温調理と言ってもレア感はなく、きちんと温度管理された安心できる仕上がりでもあった。一方の鶏ムネ肉も低温調理が施されていて、こちらは少しレア感があったが下味のソミュール液に使われたローズマリーなどの香辛料の香りが生っぽさを軽減して生ハムのような作りとなっていた。レアチャーシューならではのしっとりした舌触りが上手く引き出されていて、厚切りのカットも歯応えを良くしていた。

ワンタンは鶏肉餡が柔らかさが特徴的ではあったが、肉餡の劣化を避ける為に仕込んでから冷凍管理して保存されているようだ。なので今回分のワンタンは肉餡にギリギリ火が入ってない半生の状態で提供されていたのが残念だった。すぐに口から出してスープの中で再加熱して難を逃れたが、これには伏線とも言える理由があったのだ。実は写真からも分かるようにワンタンが最初は一個しか入っておらず、後から別皿で提供されたものが二つあったのだ。その後から追加されたワンタンを先に食べたのでオペレーションの手違いで店主さんが慌てて茹でられたのだと思うが、少し茹で時間が足りずにこの結果となってしまったのだろう。オペレーションのミスと言うよりは、もしかしたら冷凍によってワンタン皮のコシが弱くなって破けてしまったのだと思うが今回はイレギュラーなワンタンに当たってしまったようだ。それでもしっかりと熱を通したワンタンからは適度な香味野菜や中華香辛料の香りが個性的な肉餡となって支えている。やはりワンタン皮は溶けるほどに柔らかすぎたので喉越しとしては良いとは言えないのが本音だ。

味玉は黄身の半熟具合は平均的だが、白身の柔らかさには驚いた。もしや黄身よりも柔らかな白身の味玉には出会った事がなく、どんな調理方法で仕込まれた味玉なのか大変気になった。柔らかさでは申し分ないが、食べやすさの面では箸で割った瞬間に白身が崩れてしまいスープの中でバラバラになったのには困ってしまった。

メンマは穂先メンマで仕込まれていてスープの醤油感の強さに反して薄味となっていた。適度な発酵臭を残しながら、柔らかくも麻竹の繊維を感じさせては消えていく食感は面白いアクセント役を演じてくれた。

薬味は潔く青ネギの小口切りだけどシンプルになっている。不思議と香りを感じられず青ネギらしさは出てなかった。また舌触りも乾燥気味で違和感が残った。

中盤からも麺の食べ心地の良さで完食したが、ワンタンの不具合などがあったので採点は下がってしまった。もし全てがベストの状態だったならば80点オーバーは間違いないはずだった。食べ終えて席を立つ時にも、雨の中でも客入りが続いていたので地元の期待の大きさを感じながら店を後にした。

ちょうど良い帰りのバスがなくて、小田原駅まで歩いて帰る道の途中でも、観光地の海側の顔とは違った生活感のある山側の雰囲気を味わいながら20分かけて歩いて帰る事になった一杯でした。

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「味玉ワンタン麺 ¥950」@麺屋かなでの写真日曜日 小雨 17:45 先客2名 後客なし

〝ニューオープン パトロール〟

昨日あいにくの雨の中を初訪問した際に突然の昼営業中止の貼り紙を見て愕然としたコチラへのリベンジの為に、二日ぶりに立川駅まで戻ってきた。

本日は赤坂の劇場にて知人の舞台を観劇したあと普段は出来るだけ夜ラーを避けているのだがコチラの新店が当分の間は夜営業だけとの事なので、やむを得ず夜の部を目指してやって来たのだ。前回と同じく小雨がそぼ降る中で、まだ道順の記憶も新しいので道に迷う事もなく変則的な五叉路の交差点の脇に佇む店先が見えてきた。

前回と明らかに違うのは三角地帯の建物の側面にある看板が明るく照らされているのと、ガラスの扉が全開になっていて暖簾も掛けられている点だ。遠くからでも営業している事が分かり、ひとまずはリベンジの態勢は整った。

店内に入ると左手の券売機の中から品定めをするが、せっかくなので味玉とワンタンが入った贅沢メニューを発券してカウンターに腰を下ろした。店内を見渡すと飲食店の居抜き物件なのだろうか、現時点では使用されてないが二階への階段があり厨房内には配膳用エレベーターの名残りもあるので中華料理店の跡地にも思える。そんな調理場内のガス台では、沸騰させないように一定の温度を保ちながら寸胴鍋でスープが炊かれている。店の看板には鶏のスープと書かれていたので鶏出汁と思われるが、寸胴鍋の小ささが不思議に思った。本日はお二人で切り盛りしているが調理工程の全てを店主さんが担っていて、女性スタッフはカウンターを丁寧に拭いたりと片付けを中心に行っていた。カウンターの壁が高いので調理の手元は見えないが、期待に胸を膨らませて待っていると着席して5分で我が杯が到着した。

その姿は白磁の高台丼の中で、素朴な店の雰囲気とは違ったトレンドのド真ん中の姿を見せていた。それは悪く言えば〝またおま系〟にも見える景色ではあるが、どことなく野暮ったさがあり親しみやすくも感じられた。見た目からは、ある程度の味を想像が付きながらレンゲを手にした。

まずはスープをひとくち。液面には大量の鶏油が覆っていて、その下に閉じ込められたスープは清湯と呼ぶには少し曇りがかっている。そんな油膜を破るようにレンゲを沈めてみると、目に見えるほどの白い熱々の湯気が立ち昇ってきた。その中には丸鶏由来の香りがふくまれていて、まずはビジュアルと香りが一致した。その香りはレンゲが口元に近づく距離に比例して大きくなってくると、口に含んだ瞬間に鶏主体の味わいとなってビジュアルと香りがと旨みの全てが脳内で合致した。そんな中に独特の野趣も感じるのは鴨も使われているのだろうか、鶏だけではない厚みも出ている。かなり甘みとコクを際立たせた設計図となっているが、合わせた醤油ダレが酸味を持っているので飲み込んだ後は意外とさっぱりしていて飲み心地のとても良いスープだ。

続いて麺を持ち上げでみると、麺上げまでジャスト60秒の中細ストレート麺が現れた。箸先からも強いハリを感じられ、麺肌には多めの鶏油をまとって光り輝いている。そんな美しい麺を一気にすすり上げると、麺自体は軽やかな口当たりではあるが、鶏油が潤滑油となっているのでスピード感がある。やや低めの加水率と思われるが、淡白な印象の舌触りをサポートするように鶏油が潤いを与えてくれる。この組み合わせが功を奏して順調に箸が進んで食べ飽きさせないが、どこかで似たようなラーメンを食べた事を思い出した。それは都内はもとより、最近では横浜にもオープンした出店ラッシュが続いている「らぁ麺 はやし田」のラーメンだった。思い返せば初見のビジュアルもワンタンがなければ瓜二つだったので、何らかの関係性でもあるのだろうかと思ったが定かではない。

次にそのワンタンを口にしてみると鶏に特化しているかと思いきや、豚ひき肉で仕込まれていた。生姜などの香味野菜は控えめにして豚ひき肉の旨みで勝負してある。ワンタン皮から透けて見える赤身の強い肉質は、鮮度が良いので豚肉本来の旨みだけで十分に味わい深いワンタンとなっている。包んだ皮の滑らかな舌触りとパワフルな肉餡のコントラストが食感の面でもインパクトを残してくれた。

それに比べると二種類のチャーシューは好みから外れていた。まずは鶏ムネ肉の方だが、低温調理なのだろうがパサついてしまっている。温度設定か加熱時間の長さなのか分からないが、鶏ムネ肉のタンパク質が固まってしまっていた。下味の希薄さも手伝って味気なさばかりが目立っていた。一方の豚肩ロースも同じ低温調理と思われるが、こちらもしっかりと加熱されていた。もしかしたらレアチャーシューだったのかもしれないが、盛り付け方がスープに浸されているので熱々のスープで加熱が進んでしまったとも思えたが確かめる術はない。味も薄いので両者ともに物足りなさが残ってしまうチャーシューだった。

また味玉にも「はやし田」を思い起こさせる要素があったのだ。それは黄身の色の濃さがパプリカ色素による卵だったので、グループ店でも使われている〝マキシマムこいたまご〟だと思われる。そんな共通点からも、ついつい修行先を想像してしまった。そんな味玉は非常に柔らかい白身と、とても大きな黄身が印象的だ。歯を立てずとも唇の圧力だけで割れるような味玉は、漬けダレはしっかり浸透しているが不思議と浸透圧による硬化をしていない。好みの熟成感はなかったが面白い仕上がりを見せる味玉だった。

メンマも見慣れた感の拭えない穂先メンマで仕込まれていて、薄味ならではの発酵臭が残してあるタイプだった。香りと食感の両面で程よいアクセントとなっていた。

薬味は青ネギを使われているが券売機のメニューにある九条ねぎが販売中止になっていたので仕入れが不足していたのだろうか、残念ながら少なめに添えてあるだけだった。さすがに香りも高く舌触りも繊細だったので、次回は追加したいと思える抜群の薬味だった。

中盤からも慣れ親しんだと言っても良いような確立された味わいのままにスープと麺には満足だったが、チャーシューのコンディションか今回分だけかもしれないが好みと違っていたのが採点が下がった理由だと思いながら箸を置いた。

店を出る時にもう一度券売機を見直してみると試作中のメニューなどもあるようなので、多彩なジャンルのメニューで地元ファンに根付く事を想像する一杯でした。

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「特製醤油ラーメン ¥1120」@麺屋 武嶋屋の写真土曜日 曇天 11:20 先待ち7名 後客12名

〝ニューオープン パトロール〟

本日は難攻不落と思われた秩父で産声を上げた新店攻略のために所沢に前泊している。RDBの新店情報で見つけたこちらへの初訪問するには自宅からでは移動時間がかかるので、昨夜は深夜1時を越えた頃に所沢に乗り込んできた。

日本国内で二ヶ所しかないらしいサウナの聖地フィンランド産の木材で造られたサウナと、埼玉屈指の冷たさを誇る水風呂を有する宿泊施設で朝を迎えた。水風呂の冷たさは良かったが肝心のサウナの温度が今ひとつ熱さが足りずで肉体的は整いきれずで残念だったが、食事処の生ビールは裏切る事なく精神的には完璧に整った。

翌朝は西武秩父駅までの最短ルートとなっている所沢 9:52発 西武池袋線特急 ちちぶ9号にて向かう予定でホテルをチェックアウトしたのだが、三連休の初日なので有料特急は満席でチケットを予約してない事を悔やんだ。仕方なく小刻みに各停電車を小手指と飯能で乗り継いで向かう事になった。

休日の西武秩父線の車内は行楽を楽しむ家族づれや女子大生の仲良しグループの日帰り旅行でワイワイと賑わっている。そんな車内でラーメン一杯のためだけに秩父を目指しているのは私だけだろうなと思うと切なくなってきた。

少しセンチメンタルになりながら変わりゆく車窓の景色を眺めていると、最寄りの西武秩父駅に所沢駅を出てから1時間半程かけてたどり着いた。トレッキングシューズを履かずに秩父駅に降りたのは初めてかもしれないと思いながら、開店まで時間に余裕があったので久しぶりの秩父駅を見て回った。かなり立派にリニューアルされて食事も楽しめる温泉施設が併設されていて、以前のイメージとは全く違う風景になっていて驚いた。そんな施設内の食事処は昼時を前に多くの観光客で賑わっている。中には味噌ラーメン店も出店しているので、もしも目的の新店が臨時休業であってもリカバー出来ると妙な安心感が生まれた。

定刻の10分前になる頃に、いよいよ目指している店へと向かってみた。駅からはほんの数分歩くとパチンコ店の新装開店かと思うような、都内の開店祝いでは見かけなくなった大きな花輪がすごい数で出迎えてくれた。出迎えてくれたのは花輪だけでなく、大勢の開店待ちの行列もあった。失礼ながら、こんな所に開店待ちが出来ているとは目を疑ってしまった。待っている方々は偶然にもお知り合い同士のようで、会話の内容などから地元の方と思われる。そんな地元客の期待を一身に集めている新店なのだろうと、よそ者ながら私も期待を込めて最後尾を探した。

店頭には外待ち用の受付シートが置かれているが誰も記入せずに整列するでもなくバラバラに待機しているので最後尾が分からずに、少し間隔をあけてそれらしく開店を待つことにした。すると定刻よりも5分も早く暖簾が掛けられオープンとなった。

後待ちがなかったので先客が入店するのを見届けてから八番目で店内に入った。入口右手に設置された券売機の中から最上段に位置するのが醤油系だったのでためらう事なくメニューは決まったが、せっかく秩父まで来たので贅を尽くした特製のボタンを迷わず押した。ホールスタッフさんから「お好きなカウンター席へどうぞ」との事なので少しでも調理風景が見えそうな席を選んで腰を下ろした。

カウンター越しに店内を見渡すと新店舗らしく新しい木の匂いが残る客席は、カウンターよりもテーブル席を多く設けた複数人向けのレイアウトとなっている。所々に焼杉板を使われた内装はシックな落ち着きを感じさせてくれるが、打ちっ放しのコンクリート床と椅子の脚が擦れる音が大きく響くのが居心地の良さを半減させてしまっている。そんな店内を本日はオープン直後の週末なので、万全の六人体制の強化布陣をとっている。本日は土曜日という事でホールスタッフには初々しい学生バイトさんが実践を交えながら研修中のようで、慣れないオペレーションながらも着実に配膳が進む様子を眺めていると着席して20分で我が杯が到着した。

その姿は白粉引の八角丼の中で特製ならでは豪華布陣で出迎えてくれたが、少しやり過ぎではと思ってしまうような要素も含んで見えた。それだけお客様に喜んでもらおうという、店主さんの思いの表れでもあるとも感じながらレンゲを手にした。

まずは赭色のスープをひとくち。液面の油膜には細かな豚背脂と思われる脂片が浮かんでいて、強めの動物性を感じ取った。レンゲを落とし込んだ指先の感覚からは濃度の低さを感じるが、レンゲに注がれたスープには多めの香味油が伴ってきた。そんな四つ足系に思われるスープを口に含んでみると、意表をついて魚介系の香りが先行してきた。魚介系の中でも鰹節の香りが主で、節粉ではなく削りがつお由来のものと思われる。和出汁感の強いスープを支えているのはオーソドックスな鶏や豚主体の動物系清湯スープで、土台はしっかりとしているがクセにも感じる獣特有の臭みも潜んでいた。合わせる醤油ダレも少し強めに思われたが、塩っぱいほどではなくスープを引き締める役割を担っている。旨味の底上げも感じてしまったが、動物系と魚介系の基本的なWスープに仕上げてあった。

スープによって様々な麺を使い分けられているが醤油系には中細ストレート麺が採用されていた。麺上げまで60秒の中細麺を箸で持ち上げてみると、少しウェーブがあり透明感を見せる麺肌は丸みを帯びてグルテンが詰まっていそうに感じた。そんな麺を啜ってみると想像した通りの滑らかな口当たりで滑り込んできて、昔の中華麺にも共通するような啜り心地を思い出した。本日の客層が高齢だったので、皆さんにも馴染みのある麺質なのではと想像した。とりわけ小麦の香りが高いとか素材の甘みを感じるといった麺ではないが、幅広い年齢層に受け入れられるタイプの麺を採用されていた。オイリーな油膜の力を借りて口の中に飛び込んできた麺を噛みつぶすと、もっちりとした跳ね返りが食べ応えを強くしている。特別な個性がないのがかえって個性的にも感じるような麺だと思った。

具材のチャーシューは部位違いで二種類三枚が盛り付けてあった。いちばん手前には豚肩ロース焼豚が煮豚ながらも赤身がパサつくような事なくしっとりと仕上げてあり、味付けも適度に乗っており存在感のあるチャーシューだった。残る二枚は豚バラの煮豚型だったが、煮汁の味の薄さなのか豚バラ自体の質の悪さなのか獣臭が出てしまったいた。部位的には赤身と脂身のバランスの良い部分だったが、チャーシューとしての出来映えとしては私には残念な仕上がりだった。

初見で少しやり過ぎと思えた具材の味玉は、特製なのでだろうが一個半も盛り付けてあった、
きっと基本の醤油ラーメンでも半個入りなのだろうが、特製だからといって更に一個追加する事はないのではなかろうか。決して量が多くて文句を言っている訳ではないが、好みと違った固茹でたまごだったので不必要に思ってしまったのだ。

メンマは極太タイプを使われていたが手仕込み感はなく一般的な甘みを利かせた味付けは安定感はあるが、ここならではのメンマと言った仕上がりでなく残念だった。

薬味の白ネギは粗々しい切り口が素朴さを感じさせて、食感や辛味の面でも良い意味で〝洗練された〟とは真逆の野趣を味わえた。また清涼感を付け加えてくれる黄柚子の皮も彩りと共に爽やかな香りを中盤から与えてくれたが、この時期には黄柚子は珍しいのでハウス栽培の柚子だろうか。栽培方法や品種の改良で、食べ物の旬が曖昧になってきた事を実感する。

青みにはカイワレが少し添えてあったが、気が付けば食べていた程度の存在感しかなかった。提供時にはすでに丼に張り付いてしまっていた海苔は、ばら海苔のように溶けが早く香りも無かったので質の高さは感じられなかった。ナルトに関しては今回も口にする事はなかった。

中盤と言わず序盤から不要な旨味が箸の動きを妨げてきたが、なんとか戦いながら麺は大方食べきったがスープは残してしまった。

周囲を見ると極太のつけ麺や、中太麺の味噌ラーメンなどを楽しんでいる地元客で賑わっていた。こちらの店のもう一つのウリでもあり、屋号の由来と思われる有名店で修行された〝いなり寿司〟を食べている客がいなかったのが不思議に思いながら席を立った。関西ではうどんにおいなりさんの組み合わせをよく目にするが、ラーメンにいなり寿司のコンビが早く地元に根付いて欲しいと思いながら店を後にした。

今回は秩父観光をするでもなく次発のレッドアロー号にて帰路に就いたが、途中駅の飯能までを後ろ向きで走ると初めて知って驚きと戸惑いを感じる事になった一杯でした。

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「ラーメン 並 ¥600 +半熟味玉 ¥100」@中華そば つけ麺 音七の写真平日 小雨 10:55 待ちなし 後客7名

〝ニューオープン パトロール〟

久しぶりの八王子界隈での新店情報を元に昨夜から連食計画を実行している。もはや中央線遠征時の西の拠点として大活躍してくれている荻窪の宿に前泊して乗り込んできた。

昨晩はチェックインが深夜を回っていたので、大浴場でひとっ風呂浴びると大人しくベッドに入った。翌朝は少し早く目が覚めたので長めに朝風呂を楽しもうと思ったのだが、今朝の大浴場は塩素系の刺激臭が漂っていて目が痛いと感じるほどだった。仕方なく早々に風呂を上がり館内でコーヒーを飲みながら新店の予習を兼ねてRDBを開いてみる。

お店情報では武蔵境に半年ほど前にオープンしたばかり店ののグループ店となっているが、半年で二軒目とは勢いの良さを感じずにはいられない。武蔵境の方は存在は知っていたが未だに行けずの課題店なのだが先に2号店に伺う事になるとは、たった今気づいたのだ。しかし当初の計画は変えられずに初訪問を決めたのだ。

11時開店前の現着を目指すとしても前泊した荻窪からだと30分ほどで着く計算だが、本日は中央線の遅延情報が入ってきたので早めにホテルをチェックアウトして向かう事にした。10時前にホテルを出て荻窪駅に向かうと10分ほどの遅れが上下線ともに出ていた。とりあえず先へと進もうと最初に来た各停の高尾行きに乗り込んだ。途中駅で特急の待ち合わせなどのアナウンスもあったが、快速などの仕組みが今ひとつ分かっていないので多少の時間がかかったとしても各停で確実に先へと進んだ。

荻窪駅を出てから予定よりも時間はかかったが50分程で最寄りの八王子駅まで来た。この時点で定刻の10分前だったので慌ててナビを片手に店を目指した。大きなマンションに阻まれて最短ルートが分からずに迂回を強いられたが、何とか定刻5分前にたどり着けた。運良く並びも出来てなかったので先頭にて待機をはじめる。

ここがビッグターミナル八王子駅のそばとは思えないような味わいのある裏通りの中に、より一層に味わい深い佇まいの店構えを見てるだけで気持ちが落ち着くようだ。敷地面積を最大限に活かしたい極薄のかまぼこ板のような建物の中には、窓ガラス越しに小綺麗なカウンター席が見られる。店先に貼られたメニューを見ながら待っていると2分早くオープンしてもらった。

真っ白な暖簾をくぐり店内に入ると目の前に小型の券売機が置かれてあり、迷う事なくマイスタンダードのラーメンのボタンを押して好物の味玉のボタンを探してみる。一度最下部まで目線を落としたが味玉ボタンが見つけられず、もう一度よく見直してみると他のトッピングと共通になっているボタンを見つけた。その横には味玉半分50円のボタンもあったが、ここは100円で一個の方を選んだ。

自由着席でカウンターに腰を下ろして店内を見回してみる。やはり客席のカウンターは狭小で、背後のスペースは配膳するのに人が通れる最低限の間隔しかない。目の前の壁紙には石積みのクロスが貼られて、不思議な重厚感も醸し出している。新店舗の改装に伴って設えられたカウンターには清潔感があり居心地よく待つ事ができる。そんな店内を本日は二人で切り盛りされている。

店内左手奥には独立した厨房スペースがあり店主さんが腕をふるっている。一番奥には業務用の茹で麺機が設置されているが、なぜかガス台の上には三台の両手鍋で常にお湯が沸かされている。初めはスープを炊いているのかと思っていたが調理が始まると、その理由がすぐに理解できた。屋号にもあるようにメニューの二大看板であるラーメンとつけ麺に使われる麺の太さが随分と違うようで、卓上の説明書きにも茹で時間の違いが記されてあった。ラーメンの細麺は2分、つけ麺の極太麺はなんと14分となっている。東海道新幹線ならば、品川から新横浜を過ぎたくらいまでの茹で時間が書かれていた。それならば客席が少ないといっても麺上げのタイムロスを防ぐ為には必要な鍋なのだった。

厨房の全貌は見えないまでも、そんな創意工夫された調理工程を想像しながら待っていると着席して6分の第1ロットにて我が杯が到着した。その姿は初めてお目にかかるタマネギをモチーフにしたデザインの切立丼で登場した。輪切りや、くし切りにカットされたタマネギが描かれた器は、八王子ラーメンにお似合いのコンビで面白くも新鮮に映った。絵柄の中にみじん切りがあれば更にマッチしたのにと、余計な事を思いながらレンゲを手にした。

まずは唐茶色のスープをひとくち。液面には非常にドットのきめ細やかな香味油が浮かんでいて、店内の光を跳ね返している。油膜は多く見られるが粒子の細かさからオイリーな印象はないままにレンゲをスープに沈めてみる。表層が波打ったと同時に薬味のタマネギの香りが湯気に交じって先行して鼻先に届くと、自分が八王子にいる事を再認識させられる。視覚 嗅覚 味覚の全ての受け入れ態勢が整ったところでスープを口に含んでみると、ゆっくりとした助走のような始まり方が印象に残る。動物系のスープや魚介出汁の旨みが穏やかに感じられるが、何一つとして強要してくるような旨みではない。カエシの塩分もかなり抑えてあるので、物足りなさを感じる人もいるのではと思ってしまうくらいのスロースタートだ。過度な初動のインパクトを求めない私ですら味を探ってしまうような優しい味わいと思ったのも束の間、次なる旨味が潜んでいたのだ。ある程度は覚悟してきたのと、過剰な使用量ではなかったのが幸いだった。

続いて麺を持ち上げてみると、全粒粉のフスマを配合された色づきの良いストレート細麺が現れた。箸先に見えるのは切刃のエッジが微かに残った角のある麺肌と、あまりハリやコシの強さを感じない柔らかそうな麺質だ。この麺の形状で麺上げまで120秒なら茹で過ぎではと思ってしまうような箸を持つ指先の感覚だった。やや不安になりながら麺をすすり上げると、麺肌のグルテンが滑らかさを与えて勢いよく滑り込んでくる。懸念された柔らかさは、ひとくち目でもピークを少し過ぎているのではと思うような柔らかさだが、これが店主さんの狙った茹で加減なのだろう。個人的な好みとは違っているがスープの相性を考えると、柔らかに溶け出したグルテンがスープを良く吸っているので一体感は確かに素晴らしい。あまり見かけない製麺所の麺箱が積まれていたので、地元八王子ならではの麺質なのかもしれないと思った。

具材のチャーシューは豚肩ロースの煮豚型が大判のままで一枚盛り付けてある。赤身中心の部位なので柔らかく仕込まれているが、肉質の繊維を感じられる歯応えも残してあり食べ応えは十分ある。味付けも派手さはないが堅実に、スープや麺に寄り添った醤油の風味と豚肉本来の旨みでサポートしている。

追加した味玉は別皿で提供されたが記念撮影用にオリジナルで盛り付けてみたので、これはあくまで撮影上の演出です。最初から半カットされているので食べた時の驚きは半減するが、半カットならではの利点も感じられた。それは冷たいままで出てきた味玉だったが、ラーメンの中に盛り付けるとスープの熱を借りてすぐに温め直されいた点だ。ひと通り麺や具材を味わっているうちに味玉を食べる頃には適温まで温まっていたので、ノーカットの味玉ではこうはいかなかっただろうと半カットに感謝した。それほどに味付けもゲル化した黄身の熟成感が味わえて、追加して良かったと思える味玉だった。

メンマは不揃いな大きさが食感の違いを生んでいたのと、手作り感のあふれる味付けがうれしい。味付けの好みは多様にあるとしても、この手仕事感は業務用では味わえない最高の調味料だと思えた。

大変小さくはあるが良質の海苔も添えてあり、口溶けは良いが、スープに浮かんでも溶け出すような粗悪海苔とは違って素晴らしい。

薬味は〝ならでは〟のタマネギのみじん切りが分量も程よく添えてある。生タマネギ特有の辛味や刺激を残しつつも、鮮度の良い細やかな切り口が舌触りを穏やかに抑えている。またタマネギファンのために穴あきレンゲが用意してあり、丼底に沈んだ一片のタマネギまで見逃さないように配慮してある点もありがたい。スープを飲む事を諦めた私にも大変重宝した穴あきレンゲだった。

最後まで穏やかさの中に見える不自然な旨味とせめぎ合いながら麺と具材は完食できたが、スープだけは残してしまいレンゲを置いた。

後続の客人の中にはつけ麺をオーダーしている方も多くいたが、私が食べ終える頃でもまだ配膳されていなかった。さすがに14分の茹で時間となると回転率は必然的に悪くなりそうだと思った。一番客の私が席を立つ時には外待ちが発生していたが、これから夏場に向けてつけ麺需要が更に増えてくると回転率の悪さが店の存続に影響しないかと思ってしまった。

このあと連食計画を立てていた立川の新店を訪ねると、まさかの夜営業のみとの案内があり前泊してまでの中央線遠征は失敗のまま幕を下ろす事になってしまった一杯でした。

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