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のらのら

男性 - 東京都

はじめまして。レビュー開始から一年が経ち、二年目の目標を全国制覇にしました。一杯のラーメンに出会うまでの経緯も書き記しているので、前置き等が長くなりがちですがお許しください。しかし採点に関しては立地 接客 衛生面 価格設定などは考慮せずに、ラーメン一杯に対しての評価にしています。自分の好みだけで評価しているので不快な文面もあると思いますが、何卒宜しくお願いします。

平均点 73.103点
最終レビュー日 2019年10月23日
667 558 14 2,134
レビュー 店舗 スキ いいね
87

「中華そば 得のせ ¥950」@morrisの写真平日 晴天 11:10 待ちなし 後客4名

〝さえない中年オヤジの嘆き節〟

RDBの新店情報を信じて、意気揚々と乗り込んできた大山駅だった。地図を片手に辿り着いてみると、まさかの工事中と思わぬハプニングに襲われた。お店情報では確かにオープンとなっていたが、看板こそ掛かっていたが店内は改装中だった。

途方に暮れながら駅へと引き返そうと思ったが、この「遊座 大山」という商店街に見覚えがあった。実は前回の新店めぐりで訪れた「ラーメン モモジロウショウテン」がある商店街だった。前回は反対側の板橋区役所方面からのアプローチだったので、気付きづらかったが独特なネーミングの商店街だったので思い出した。たしか、そのラーメン店は月に数日の限定営業だったので、それ以外の日は通常メニューが食べられるはずだ。そう思うと自然と足が向かっていた。

降り立った大山駅とは反対方向の先に、わずかな希望の光を求めて進んで行った。するとオープン前ではあったが、前回とは違う木製看板の書かられた店先が見えた。店先のメニュー写真を見ても前回とはスープが異なるようで、奇跡のリカバリーショットを期待してオープンを待った。

私が開店前に並んでいるのに気が付いてくれたのか、定刻よりも少し早くオープンしてもらったようだ。ありがたく先頭にて店内に入り、セオリー通りに券売機の左上部のボタンを押してカウンターの奥に陣取り店内観察を始める。

とてもエアコンの効いたカウンター越しに店内を物色すると、前回同様にピカピカに磨き上げられた厨房がとても印象的だ。ガラス越しに見える奥の製麺室には複数の粉袋が見られ、室温計で室内の温度管理をされている。そこで打たれた麺が入った木製の麺箱には、鰹節屋の手ぬぐいが掛けられ麺の乾きを調節されている。そんな店内を本日は、玩具メーカーの「トミカ」のようなロゴ入りユニホームに身を包んだ二人体制回している。そんな二人の安定感のあるオペレーションを眺めながら待っていると、着席して5分で我が杯が到着した。

その姿は白磁の受け皿に乗せられた雷紋柄の屋号入りオリジナル多用丼の中で〝得のせ〟ならではの盛りだくさんな表情を見せている。一切の奇をてらったような素振りを見せず、優しい微笑みを投げかけてくるようだ。以前に食べた期間限定の「モモジロウショウテン」とは似て非なる景色を見せてくれる。前回は満足して店を後にした記憶があるので、今回も大きく期待を膨らませてレンゲを手にした。

まずは半濁した柿茶色のスープをひとくち。見た目には濃厚とは言えないが、かなりの濃度を感じるスープだ。表層に浮かぶ油膜が薄いので、かなり乳化されていると思われ液面にレンゲを押し込んでみる。すると見た目よりもスーッとレンゲの中に注がれてきたスープからは、強い濃度を感じられらなかった。いざスープを口に含むと、動物系スープならではのコラーゲンが唇に張り付くような粘着質がある。そのベースの後ろ盾をしているのが魚介出汁の旨みで、見事な豚骨魚介の組み合わせである。最良のバランスで炊かれて出汁に合わせるカエシの塩気も良く、出しゃばり過ぎない醤油感が全体を引き締めている。豚骨由来独特の臭みを一切感じさせずに、クセだけを排除して個性を引き出している。派手さはないが安心して先へ進めるスープに仕上げてある。

麺上げまではジャスト160秒だったが、茹で湯が沸騰を始めたのは麺を投入してから70秒後だった。本来ならば茹で湯が沸騰してから麺を投入するのがセオリーだと思うので、一番客ゆえのイレギュラーを心配しながら麺を持ち上げてみた。やはり箸先からは強いハリとコシが伝わってくるが、芯が残っているような手応えではない。切刃のエッジが鋭く残る中細ストレート麺を一気にすすり上げると、見た目通りにスクエアな口当たりで飛び込んできた。強めのハリは感じるが決して茹で不足ではない、抜群のベスト麺ディションと思われる。滑らかさと強さを持ち合わせた口当たりの後は、奥歯で噛みつぶして歯応えを楽しんでみる。しっかりと奥歯を押し返すような弾力の後で、適度な咀嚼に応えて弾けるような麺質が素晴らしい。常々「餅は餅屋、麺は麺屋」を訴えてきた私だが、こちらの自家製麺は勝手な持論を覆すような麺質である。前回同様に、よくぞこの麺を合わせてくれたと心よりの賞賛を送りたくなるような自家製麺だ。この麺質ならば食べ急がなくてもダレるような心配がないので、安心して具材陣を味わってみるとする。

具材のチャーシューは豚バラの煮豚が〝得のせ〟ならではの三枚も盛り付けてある。箸では持ち上げられないくらいに柔らかく煮込まれているが、逆に豚肉本来の旨みと食感を損なっている。好みの赤身中心の部位だったが、肉々しい歯応えや旨みが煮汁に奪われてしまっていると感じた。

大量に添えられたメンマは発酵食品ならではの香りを残した仕上げをみせ、手仕込みならではのランダムな歯応えがアクセントになってくれる。やはり、この特有の香りと食感は乾燥メンマにしか表現できない個性だと感じた。

半カットされて盛り付けてある味玉は、見た目のグラデーションからも一朝一夕には作り出せない熟成感が伝わってくる。実際に口にしてみても、適度な浸透圧によって余分な水分が抜けた濃厚な味わいが魅力的だ。それでいて白身は柔らかさをキープした物理的に矛盾するような仕上がりとなっている。漬けダレや浸透度などの全てにおいてレベルの高い味玉は自称〝アジタマスキー〟を名乗る私の中でもトップランクに入る逸品である。

海苔は見た目の黒々しさからも高品質の焼き海苔を目利きされているのが分かり、保存状態にも細心の注意が払われている。よって香りや口溶けに不快な要素がなく、脇役としては豪華すぎる海苔となっている。

青みにも一仕事が見られる茹でホウレン草が添えてあり、切っただけのカイワレにはない〝青み愛〟を感じてしまう。逆に今回は薬味のネギが少量すぎて持ち味を発揮できていないように感じた。

中盤以降も箸のスピードは減速する事なく食べ進んだ。もう、箸の短さくらいしか文句が見つからない素晴らしい仕上がりだった。先程はRDBの誤情報に振り回されて〝どん底〟の気分を味わったが、気が付けば完食して〝丼底〟が見えていた一杯でした。

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「特製インディー ¥1080」@INDIEラーメンの写真日曜日 曇天 17:05 先客4名 後客1名

〝ニューオープン 探検記〟

午前中に因縁のスパコン対決を群馬県内で終えると、運良くギリギリで帰りのバスに間に合った。11:30 オープンの2番手で食べ始めて 11:45発のバスに乗るのは至難の業だったが、幸運にも店の前がバス停だったので必死で食べ急いで何とかセーフだった。そこからは本日の二食目に計画しておいたコチラを目指して、先ほど降り立った磯部駅から信越本線で高崎駅へ向かい高崎線に乗り換えて最寄りの鴻巣駅までやって来た。

新店情報によると、まさに本日オープンのようで昼の部終了まで残り 30分を切っていた。慌てて改札を出てナビを片手に店を探すが、スクランブル交差点を過ぎてもラーメン店らしき建物がない。その先にある郵便局を脇を入ってみると、やっと開店祝いの花を見つけた。昼の部が終わってない事を願って近寄ってみると、営業しておらず店内には荷物が散乱していた。よくよく聞いてみると本日オープンは間違いないのだが、夜の部 17時からのオープンだったのだ。それまで3時間近くもあったが、せっかくなので夜の部を待とうと駅前に戻った。

コーヒーで時間をつぶすには余りにも時間があるので困っていたら、駅前の商業施設には運良く映画館が入っていた。特に観たいタイトルはなかったが、すぐに上演が始まる映画を見つけて館内に飛び込んだ。お世辞にも面白い映画ではなかったが、ちょうど良い時間が過ぎていた。17時過ぎに再び店先へと向かうと店内には数人の客が入り、目出度く初日のオープンを迎えていた。

特に暖簾や立て看板がある訳ではないが、営業しているのは間違いなさそうなので自動ドア風の手動ドアを開けて店内に入った。広く殺風景な店内には券売機は設置されておらず、ひとまずはカウンターに座って卓上メニューに見入る。数種類あるメニューの筆頭を飾っていたのがマイスタンダードの醤油系に思え、当店一番人気となっていたので、心に決めてスタッフさんの動向を待っていた。すると後客が隣に座りオーダーを先に告げて、遠慮をしているうちに順番を越されてしまった。しかし慌てた用もないので、忙しそうなスタッフさんが落ち着くのを待つ事にした。本日は洗い物を中心としたスタッフを含めて三人体制で回しているが、洗い物担当のアルバイトスタッフさんは注文を受ける事はないようだ。様子を見ながら注文を無事に終えると、セルフでカウンター奥に置かれたサーバーからお冷を汲んできた。何かのトラブルだろうか、水が冷えておらず応急処置としてアイスペールに氷が入っていた。ステンレス製の断熱グラスに氷を入れ直すと、ようやく喉も心も落ち着いて店内観察を始める。

カウンターとテーブル席も設けられた店内は、ゆったりとしたレイアウトで広々としている。装飾品は壁に掛けられた一枚の海辺の写真だけなので、何か寂しさを感じてしまう。そんな静かな客席とは違って、厨房内ではオープン初日のオペレーション不足で大騒ぎとなっていた。レードルなどの置き場が定まってなかったり、チャッカマンに火が着かなかったりとドタバタ劇が続いている。一番客と思われる男性にもオープンしてから15分過ぎても配膳されておらず、かなりの準備不足を思わせる。私にとっては店内を物色する時間が増えるので、ありがたく様子を見守る。

お店情報では同県内の吹上駅からの移転リニューアルのようたが、実は先日に新店めぐりで訪れた「中華そば つけめん まるこう」の場所にあったようなのだ。移転オープンと言っても厨房機器は新品が揃えてあり、レードルや雪平鍋などの調理道具もピカピカである。厨房の奥にあるスープ炊き用の大型寸胴鍋と入口のレジスターだけが年季が入って見えるくらいだ。バタバタしながらも、ようやく調理が波に乗ってきたところで我が杯が到着した。着席してから 30分ほど経ち、あたりは薄暗くなっていたが無事に目の前に登場して安心した。

その姿はオシャレな白磁の切立丼の中で、その洒落た装いに反して丁寧さを欠いた姿を見せていた。具材や薬味のすべての配置のバランスが悪く、美しさを表現しない第一印象は残念だった。しかし見た目は評価の対象とせずに美味しい事だけが基準としているので、ビジュアルは意識せずにレンゲを手にした。

まずはスープをひとくち。不揃いに盛り付けられた具材の隙間から見えるスープには、しっかりと乳化した濁りが見られる。よって表層には多くの油膜が張っておらず、所々に粒子が点在しているだけだ。少し重たそうなスープにレンゲを沈めると、乳化による抵抗がレンゲの侵入を拒んでくる。さらに押し込み注がれてきた液体は、淀みながら黒いレンゲの中に湛えられた。かなりの濃厚さを覚悟してスープを口に含んでみると、濃度の中に豚骨由来の動物性コラーゲンが唇から喉元までをコーティングする。そこには油っぽさや臭みがないので、濃厚スープのアプローチとしては穏やかに感じる。豚骨スープの香りを上回っているのが焦がしネギの風味で、この香りには食欲をそそる安定感がある。豚骨を潰して炊いたスープに合わせるカエシは強めにアジャストしてあるので、薄味志向の私には少し塩分高めだったが麺とのバランスだろうとエコ箸に持ち替えた。

麺上げまでジャスト75秒の中細ストレート麺を持ち上げると、20センチ程に切り出しされた短めの麺が現れた。都内では見かける事の少ない「水屋製麺」の麺箱があったので、移転前からの取り引きなのだろう。とても滑らかそうに見える麺を一気にすすり込むと、ザラつきではないが多少の粉っぽさが舌の上に残る。二口目からは感じなかったが、最初の印象がインプットされてしまった。開店直後なので茹で湯の濁りではないだろうが、不思議な舌触りが後を引いた。とてもスープと絡みやすい麺質なので、小麦の香りを楽しむよりはスープとの相性を味わうタイプのようだ。麺を口に含んでスープを追わなくても、十分に完結する組み合わせとなっている。

具材のチャーシューには意表を突かれたと言うか、目と舌を疑ってしまうような驚きの食材を使われていた。それは何と〝牛タン〟で、チャーシューとしては初めて味わう部位だった。外国産とはいえ、豚バラや肩ロースよりも原価の高い牛タンで仕込まれたチャーシュー (チャーシューと呼んで良いのか疑問) が二枚も入っていた。しっかりと香辛料を利かせた下味の良さと、薄切りながらも牛タンならではの歯応えが面白い。保守派の私でも興味を惹かれる具材だった。もう一枚の豚バラの煮豚は牛タンに打って変わり柔らかさが持ち味となっている。とろけるような舌触りで、両者の違いを明確に表現している。

ハイエンドモデルの特製にしたので、もちろん味玉入りとなっている。表面のマダラ模様が気になったが、熟成感も適度にあり即席味玉ではないが漬けダレの醤油が主張しすぎている。白身の上っ面だけが塩っぱく、黄身の甘みを打ち消してしまっている。

メンマには短めの極太タイプで仕込まれていて、薄味の中の甘みが特徴的な味わいをみせる。極太ながらも繊維質のさばけが良く、後を残さずに消えていく食感も見事だった。

三枚も添えられた焼き海苔はスープと合わせると塩気が強いが、品質と鮮度の高さから香りもあり口溶けも良い海苔を使われていた。保存状態が悪いと劣化しやすい海苔だけに、いつまでもこのクオリティを保って欲しいと願う。

それに反して薬味の白ネギは残念な仕事ぶりで、乾いた切り口や盛り付けの量の少なさが、見た目だけでなく薬味としての存在感を台無しにしてしまう。もし切り口の潤った白ネギが多めに添えてあったなら、先程の牛タンで巻いて楽しみたかったと欲が出てしまった。

中盤からも高めギリギリの塩気を感じながらも、麺と具材は平らげていた。スープは半分近く残してしまったが、麺を楽しむためには必要な塩分と思えた。

店舗が移転して導線が変わると、こんなにも作業が違うものなのかを目の当たりにした。しかし盛り付け以外はラーメンの仕上がりに問題はなかったようで、評価を下げる要素は見られなかった。あまり得意でないジャンルの豚骨醤油だったが、不快な気持ちにならずに食べ終えた。これからオペレーションが落ち着けば、もっと効率が上がってくる事を期待しながら席をたった。

着席から店を出るまで40分以上もかかったが、オープン初日の大変さを感じられた貴重な一杯となりました。

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「ラーメン 並 ¥650+半熟味玉 ¥100」@家系 麺場寺井の写真平日 晴天 17:30 先客3名

〝ニューオープン 探検記〟

本日は夜の会食予定もなかったので、三食目の新店めぐりを行う事にした。前食を終えた江古田駅から池袋で東急東横線に乗り換えると、各停で江古田を出てから1時間かけて最寄りの綱島駅にやって来た。

今回の目的地であるコチラはRDBの新店情報で見つけた店なのだが、先程の江古田でオープンした「鶏そば きらり」と同日デビューのようだ。まだオープン間もない新店を目指して、綱島駅前で夕方まで時間をつぶしてから店を探しに歩いて向かった。

綱島には人気店が相次いで誕生しているが、いずれも駅から離れた場所にある。しかしコチラの新店は綱島駅北口から徒歩1分の好立地にあるので、すぐに店先を見つけられた。店頭の歩道には開店祝いの花がズラリと並び、数々の家系人気店の名前が連なっている。中には「酒井製麺」からの花もあるので「吉村家」の流れをくむ家系なのだろうか。しかし屋号には〝家系〟とはあるが「◯◯家」の店名ではない。しかも修行先は日吉の「武蔵家」となっているので、複雑な系譜の〝お家騒動〟には理解しがたい難しさがある。きっと優秀なインタビュアーさんが詳細は明らかにしてくれると思うので、とりあえずは様子を伺うために店外に置かれた券売機の前に立ってみた。

券売機の中から最も量の少ない並盛りのラーメンと追加の半熟玉子のボタンを押して店内に入ったが、特にスタッフからの席への誘導もないので勝手に白木風のカウンターに座り店内観察を始める。

新店舗らしい明るい店内は最高気温がまだ 30°Cを超えている本日でも、入口の扉を開けっ放しなのに十分にエアコンが効いている。なぜなら、客席上には三連の空調設備が備えてあり、厨房内にもスポットクーラーが完備してある。家系ラーメン店の多くは営業時間内でも常にスープを炊いていなくてはならないので、ガス台の熱量に空調が追いついていない店が多い。しかしこの店は、店主さんの経験から考案されたと思われる十分すぎる空調システムを導入されている。それによって客席で暑い思いをせずに済むだけでなく、家系スープ独特の豚骨臭も排気されて店内の空気はとても清らかだ。

厨房内に目をやると、高熱を発しているスープ炊きの大型寸胴鍋が3台も連なって並んでいる。この三連鍋の設備を見ると〝家系〟のルーツが、博多ラーメンなのを認めざるを得ない。そんな仕事効率の良さそうな店内を本日は三人体制で回しているが、大きな掛け声が響く元気の良さも家系らしさをアピールしている。家系の特徴のひとつでもある、店内の随所に味の濃さや油の量の調整が可能と明記してあるが初訪問なので全て基本でお願いした。またライスの無料サービスも辞退してラーメンだけに集中しようと待っていると、着席してから6分で我が杯が到着した。

その姿を見て、さらに謎が深まってしまったのだ。それは修行先の「武蔵家」で使われる青磁の器ではなく「吉村家」と同じ黒釉薬の高台丼が使われていた。もはや家系初心者の私には理解不能となってしまい〝家道〟のプロのレビューを待つ事にしてレンゲを手に取った。

まずは伽羅色のスープをひとくち。表層には厚めの油膜が張り巡らされているので、灼熱のスープを覚悟してレンゲを液面に押し込んでみた。どろりとした大量の油分と共にレンゲの中に流れ込んできたスープに、ヤケドをしないように慎重に口に含んでみた。すると意外にも率直な第一印象としては生温いスープという事で、自分の唇の感覚を疑ってしまう程だった。常に継ぎ足されて炊かれているはずのスープなので、ぬるい訳がないはずだが二口目も同じだった。雪平鍋と濾しザルを使って寸胴鍋からダイレクトに器にスープを張るスタイルなので、器の冷たさが原因にも考えられるが、それだけとは思えない温度だ。店のルーツやスープの温度で頭の中が混乱してしまったので、麺に取り掛かった瞬間にスープの温度の謎が解けた。

麺上げまで実質 215秒の麺を持ち上げると、薄黄色に輝く麺肌からは湯気が沸き上がっている。それは唇を当てるのを躊躇ってしまう程の熱気を放っているので、スープ自体は熱いのだが表層を覆っていた香味油が冷たかったようだ。ひとくち目のレンゲの中には多くの油分が占領していたので、スープの熱さを緩和してしまったらしい。スープが生温く感じたのは、それが原因だったようで実際には、かなり高温のスープが下層部には潜んでいた。

ようやく合点がいった所で、麺に息を吹きかけてから一気にすすり上げてみる。麺幅と麺厚のバランスから平打ち麺にも見える麺は、滑らかながら切刃のエッジがスクエアな口当たりを生んでいる。そして計算された麺の短さが、ひとすすりで口の中に収まりきるが、すすり込む醍醐味を忘れずに与えてくれる。短い麺でも、すすり心地の良さも楽しめる絶妙のバランスで飛び込んでくる。酒井製麺の家系タイプの麺としては少し細めにも感じるが、モッチリとした歯応えは健在だ。おざなりに奥歯を合わせただけでは噛み切れないくらいに反発力の強い麺なので、しっかりと弾力を確かめるように噛みつぶすと、跳ね返すような歯切れで応えてくれる。その繰り返しが〝食す〟という、人間の持つ本能にも応えてくれるようで悦びすら湧いてくるようだ。ただ残念なのはスープの塩気が異常に高い事で、家系ラーメンを前にしてヘタレな事を言うようだが、これを飲み干せる味覚と胃袋が恐ろしく思える。老いを感じてきている私の胃袋には、カエシが半分でも足りるのではないかと思ってしまった。もし再挑戦する事があったなら、店の方針に従って「味うすめ 脂少なめ」でお願いしようと後悔してしまった。

具材のチャーシューは、やや厚みを持たせた豚バラの煮豚型で仕込まれていた。あまり得意でない脂身が多い部位が切り分けられたが、薄めの味付けが強気なスープの中では箸休め的な存在になってくれた。薄味と言っても豚肉本来の品質が良いので、臭みや脂っぽさを全く感じさせない安心感のあるチャーシューだ。

追加した味玉は、黄身の中心部にまで漬けダレによる浸透圧の効果が発揮されていて、ネットリとした舌触りを生み出している。温め直されてはいなかったと思うが、灼熱のスープで常温以上には温まっていたので冷たさによる違和感なく食べられた。

もはや、ライスのお供にしか思えない大判な海苔も十字4切で三枚も添えてある。無料ライスを注文してので一枚目の海苔をそのまま食べてみるが、香りもなく硬さを残す舌触りで印象は良くない。二枚目はスープに十分に浸してから口にすると、口溶けは良くなったが過剰な塩分に犯されてしまった。最後の三枚目は軽くスープに泳がせてから食べると、塩気は強いが適度な口溶けを残して消えていった。きっとこの状態の海苔でライスを包んで食べるのが〝本家流〟の作法なのだろうと理解できた。

青み役の具材のホウレン草だが、店で茹でられているとは思えない仕上がりだった。青菜独特の香りは皆無で、植物の繊維質を一切残してない歯応えのなさは業務用カットホウレン草ではと勘ぐってしまう。もし店仕込みならば、ここまでクタクタに食感がなくなるほど下茹でしなくても良いのではないだろうか。

序盤で白旗を上げたスープの強烈な洗礼を受けた味覚は、崩壊寸前で中盤までは耐え忍んできたが、スープ以外も完食する事が出来ずに箸とレンゲを置いてしまった。麺ディションは良好だっただけに、スープを初期設定で挑んだ事を最後まで悔やんだ。あくまでも自己責任ではあるが、目の前のラーメンに対する個人的な評価としては低くなってしまった。

本日は三杯のうち二杯も不得手な家系タイプで、自身の〝家耐性〟の向上に努めてみたが、胃袋だけでなく肉体全身にも疲れを感じてしまった。そこで今夜は、明日以降の〝ラ道〟を計画するのと、疲弊した身体を癒す目的を兼ねて、横浜みなとみらいの温泉施設へと向かう事にした一杯でした。

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「味玉らーめん ¥790」@麺屋KoKoRoの写真平日 晴天 10:55 待ちなし 後客1名

〝ニューオープン 探検記〟

ラグビーW杯の開催で渋谷 六本木界隈の夜は、もはや日本ではなく外国である。しかも何故かラグビー選手並みに屈強な肉体を持った観戦目的の外国人観光客が多く、道を歩いているだけで弾き飛ばされそうになる。それはアジトにしているサウナのある上野界隈でも、街が同じような状態になっているのだ。高崎線沿線の熊谷ラグビー場でも試合が行われるので、上野に宿泊する外国人が多く普段の様子とは随分と違っている。

そこで昨夜も繁華街の喧騒を避けて、二夜連続で笹塚のサウナへとやって来た。前回は食事処の〝笹塚チャーシュー〟に特化してサウナレビューを省いてしまったので、今回は少しばかり大浴場の事を紹介しておく。

大浴場と言っても今まで紹介してきた施設と比べると、半分以下の敷地のコンパクト設計となっている。サウナには8人も入れば満席で、水風呂は4人目になると入るのを躊躇してしまう。ましてや普通の浴槽に関しては、3人も入れば窮屈で居心地が悪くなる。それでもサウナーが集まって来る理由の一つに、夜景が見える眺めの良さがある。

私の知る限りのナイトビューの美しさ No.1 サウナは、六本木にある〝ザ リッツ カールトン スパ 東京〟で、地上46階からの夜景は息を飲む美しさだ。宿泊費プラス 3000円で誰でも利用できる割にはいつも空いていて開放感がある。続いて No.2 は横浜駅直結の〝スカイスパ YOKOHAMA〟で 14階フロアからのベイサイドビューが楽しめる。( 9/23 現在は水漏れ修理で休業中 ) そして 堂々の No.3 に輝くのが笹塚の〝天空のアジト マルシンスパ〟である。( 他にも虎ノ門にあるアンダーズ東京内の〝AOスパ アンド クラブ〟などもあるが、それらの景色と比べると笹塚のサウナからの眺めは地面と変わらなくなってしまうので候補から除外した )

マルシンスパの受付は10階にあるが大浴場は、さらに高い11階に位置している。夜にはそこから眺める新宿副都心や、湾岸エリアの夜景までも一望できるのだ。その上、個人的には自宅を眺めながら入浴できるといった、日常では体験できない楽しみもあるのだ。

もちろん景色ばかりでなくサウナも特別で、狭い室内には大量のサウナストーンが熱されている。常にセルフロウリュが行えるように、水入りの桶とヒシャクが置かれてあるのも嬉しい。私もセルフロウリュを楽しんでいると2セット目のサウナから出ようと思っていたら突然に、祭りと書かれた大きなうちわを持ったスタッフが入ってきた。すでに10分は入っていたのだが、せっかくのロウリュなので少し無理をしてサウナ内に留まった。やはり他人の手で行われるロウリュの威力は抜群で、瞬く間に体感温度が 10°C は上昇した。

昇華した肉体を水風呂でクールダウンするのだが、ここの水風呂は 20°C と高いのが非常に残念だ。そんな水風呂のぬるさを挽回するのが、非常口の向こう側にある秘密の〝ととのいイス〟なのだ。知らなければ触れる事すらないドアを開けると、禁断の外気浴スペースが設けてある。周囲の高層マンションから全裸を見られる覚悟があれば、東京の渋谷区内で信じられないような開放感を味わえるのだ。※ わいせつ物陳列罪に問われる危険性が含まれるので注意が必要

そんな一風変わった〝ととのい〟を手に入れると、大半のサウナ上がりの客は〝オロポ〟という〝オロナミンC〟と〝ポカリスエット〟を絶妙な黄金比で割った謎のドリンクを、特大ジョッキに大量の氷と一緒にぶち込んで飲んでいる。そこには大塚製薬の策略めいた何かを感じてしまうのは私だけではないはずだ。しかしラーメンの嗜好ばかりでなく人間性も偏っている私は、流行りや策略に乗せられないように己の〝ビ道〟を貫く為に生ビールを注文する。ここでの〝ビ道〟と言っても〝イサオ〟ではない事だけは明言しておきたい。

食事処のラストオーダーが午前1時と早いので仕方なく寝床に入るのだが、この施設にはカプセルホテルのようなプライベートなスペースがないのだ。飛行機のファーストクラスのようにリクライニングシートをフルフラットにして、京王電鉄の音を子守唄に眠りに就いた。翌朝も同じように京王電鉄の音を目覚ましに朝を迎えた。

午前11時前にチェックアウトして初訪問に向かったら、わずか3分で店に着いてしまった。店先には行列もなく、赤と黒のラーメン屋をアピールする幟旗が立っているが、ローマ字で書かれたキュートな看板にはラーメン屋らしさがないのが面白い。店頭に置かれた小さなメニューを眺めながら、本日のお題を悩んでいたら定刻よりも4分早くオープンとなった。

店主さんと思われる男性スタッフが掛けた赤のれんをくぐって店内に入ると、券売機が見当たらないので、ひとまずはカウンターに腰を下ろした。卓上にはメニューが置かれてあり、イチオシと思われるラーメンの味玉入りの表題を口頭でお願いした。

お冷が運ばれ喉を潤してから店内観察を始めると、焼鳥の串焼きをデフォルメしたようなロゴマークが随所に見られた。内装にも新店舗らしさがないので、焼鳥屋を母体とした系列店でもあるのだろうか。カウンターよりもテーブル席を多く構えた店内を本日は二人体制で回していて、調理担当とホールを仕切るスタッフの分業制をとっている。厨房内には中型ではあるがスープ炊き用の寸胴鍋が置かれたガス台は、高カロリーを生みだす〝スーパージャンボバーナー〟を採用されていた。そんな高火力でないと作り出す事が出来ないと思われるスープに期待して待っていると、着席して6分で我が杯が到着した。

その姿は黒釉薬の高台丼の中で、これぞ家系を思わせる分厚い油膜をまとった二層構造で中年の弱った胃袋を威嚇してくる。しかしながら家系ラーメンには、この漆黒の器が良く映えるのは間違いない。もし、タコ唐草紋様の器に家系ラーメンが盛り付けてあったならと想像するとむず痒くなってくる。ラーショ系の青磁の器に関しても同じだが、修行先へのリスペクトの他に暗黙の掟でもあるのだろうか。そんなラーメンと器の関係を考えながら、器と同じ黒で統一されたレンゲを手にした。

まずは黄朽葉色のスープをひとくち。家系風と言っても笹塚という場所柄だろうか、粗雑には見えない盛り付けが不思議な安心感を与えてくれる。表層を覆い隠した油膜を破るようにレンゲを落とし込むと、瞬時に高熱な湯気と豚骨由来の甘い香りが鼻先に届いた。ゆったりと粘着性を見せながらレンゲの中に注がれてきたスープからは、苦手な獣臭は感じられず平和な幕開けとなりそうだ。いざスープを口に含むと、水分よりも油分の方が強く感じる口当たりと灼熱スープが唇を襲ってくる。味覚よりも先に唇の皮膚感覚が反応して、初見では味わいを把握できなかった。改めてレンゲの中のスープに息を吹きかけて冷ましてから味わってみると、とろみのある口当たりの中に動物系油脂の生みだす甘みが先行してきた。その油分が舌にまとわり付くので感じづらいが、カエシの塩分濃度も高めの設定となっている。やはりここでも持論の〝ライス無料サービスの店のラーメンは味が濃い〟が当てはまった。ラーメンだけで完結したい私には、かなり強すぎるスープの塩気に参ってしまった。単体スープを飲む事は断念して、麺を楽しもうとレンゲを箸に持ち替えた。

麺上げまで実質 225秒の麺を持ち上げると、麺幅と麺厚のバランスが平打ち麺にも見える中太ストレート麺が現れた。箸先に角のないエコ箸では持ち上げづらいくらいにツルツルとした麺肌には、さらに香味油が張り付いているので眩しいくらいに輝いている。キラキラと光を放っている麺を一気にすすり上げようとすると箸先から滑り落ちるので、地球には優しくないがエコ箸ではなく割り箸が恋しくなってしまった。それでも必死で麺を捕らえて口まで運ぶと、想像以上の滑らかさで侵入してきた。噛み潰してみると、歯茎にまで伝わってくるモッチリ感が食べ応えとなって麺の力強さを見せつける。そこからは地味ながらも確実な小麦の香りと甘みが湧いてきて、スープの塩気を和らげてくれる。最初から「味薄め」「油少なめ」でお願いしておけば、もっとダイレクトに麺の美味さを味わえただろうと思った。しかし今回が初訪問だったので、店側の狙いに則って初期設定を味わってみたかった結果なので後悔はない。

具材のチャーシューは豚肩ロースの煮豚が大判で盛り付けてあったが、煮汁に旨みや肉汁を奪われてしまったようにパサついた舌触りが食べ心地を悪くしている。脂身の柔らかさと赤身の筋肉繊維の解け方は申し分ないので、もう少し煮汁の味を利かせたチャーシューならば物足りなさを補えたような気がする。

追加した味玉は半カットされた切断面からも分かるように白身の表面だけは漬けダレの効力が見られるが、中心部の黄身はおろか白身の大部分にも影響を及ぼしていない。しかしながら卵本来の質が良いのか、卵自体の旨みが味わえる。そこに少量のスープが加わる事で旨みの頂点に達するが、味玉単体としては不納得な仕上がりだった。

これも家系っぽさを思わせる大判の海苔は、十字4切で3枚も添えてある。見た目には色素も密度も濃い黒々とした海苔は、そのまま口にすると硬いばかりで舌触りの印象は良くない。しかしスープに浸すと口溶けが良くなる上に、磯の香りまで再生されるように思えた。ここでもスープの塩気が重なる事で、必要以上の塩分が疲れてきた味覚に追い討ちをかける。

薬味にはネギ類は入っておらず、青み役の茹でホウレン草が彩りを兼ねて添えてある。これも家系ゆずりの青みだが、青菜の持つ香りや食感の全くない具材なので業務用の茹でホウレン草を思い浮かべてしまう。こちらは〝家系〟を謳っている訳ではないが、あらゆる点でオマージュは感じてしまう。数ある家系ラーメン店の中で、生のホウレン草を茹でている店は限りなく少ないと思うので、こちらも仕込み要らずの便利で簡易的な青みを採用されたのだろうか。この青みでは当然ながら手仕込みの青菜には敵うわけがなく、そこに〝青み愛〟は感じられない。

序盤から強く感じたスープの塩気ばかりでなく不要な旨味の底上げも感じてきたので、平らげる事は出来ずに箸とレンゲを置いてしまった。意識高い系 清湯野郎おじさんには、どうしてもこのタイプのスープで満足を得ることが出来ず残念だ。

店を出て江古田にオープンした新店へと向かう事にしたのだが、本日の連食計画の二店舗の店名に実は、浅からぬ縁を感じている一杯でした。

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「並ラーメン ¥750+あじたま ¥120」@ザ・ラーメン 柏西口店の写真平日 晴天 12:45 先客3名 後客1名

〝ニューオープン 探検記〟

本日も駒込のサウナ上がりに見つけた新店めぐりを決めた。

テレビドラマの影響で上野のサウナがマナー知らずの若者に侵略されてしまっているので、安らぎを求めて昨晩は駒込のサウナにやって来た。駅改札から近くカプセルホテルもある便利なサウナだが、流行りに乗った若僧たちに汚されてない地元客に愛されているサウナだ。そんな楽園を、よそ者である私も最近は良く利用させてもらっている。あくまでも大人しくサウナを含めた大浴場で肉体をととのえ、お決まりの食事処の冷えたジョッキの生ビールで精神もととのえるだけなのだ。これを言うと、まるでア◯中患者みたいで申し訳ない。

こちらの施設は地下水を地中深くから汲み上げているので、水には強いこだわりを持っている。全ての基本である水が美味いとなれば料理の味にも違いが出てくるのは当然で、それは朝定食の味噌汁を飲めば明らかな違いが分かる美味さだ。今朝も、ゆっくりと朝風呂と朝食を楽しんでから正午のチェックアウトまで新店情報を漁ってみた。すると千葉県柏市で産声を上げたコチラを見つけ、さらに詳しくお店情報を見てみる。今月初旬にオープンしたばかりで、本日で開店四日目のようだ。※ レビューを挙げるのを忘れていたのでタイムラグがあります

そこで正午過ぎにホテルを出発すると山手線にて日暮里まで行き、常磐線に乗り換えると最寄りの柏駅まで40分ほどで着いた。南口を出て〝あさひふれあい通り〟とある商店街を歩いて行くと3分で、開店祝いの花と同時に「こってり」と書かれた看板の文字が目に入った。店頭には新装開店を知らせる赤い幟旗が置かれ、道行く人にオープンをアピールしている。お昼すぎの来店となったが行列もなく店内には空席が見えたので、白い暖簾をくぐって店内に入った。

入口右手に設置された券売機から筆頭を飾っている表題に「あじたま」と平仮名で書かれたボタンを押した。空調の効いてない暑苦しい店内のL字カウンターに腰を下ろし、店内を見渡してみる。

古材や漆喰壁風の内装の店内を、本日は二人体制で回している。新しい板張りのカウンターなどは新店らしさを感じるが、調理場内の厨房機器や備品には相当な年季が入って見える。店内のBGMには店主さんのスマホが使われているので、時々ラインの着信音も聴こえてくる。お冷を汲み忘れたので客席奥のウォーターサーパーで。水を入れて席に戻ってくるタイミングで我が杯が到着した。着席して5分もかからなかっただろう。

その姿は青磁の高台丼の中で、先ほど見た表看板の「こってり」を具現化したような脂ぎった表情で威嚇してくる。器の口縁に飛散した背脂が、その事実の全てをアピールしているようだ。漢らしいと言えばそうかもしれないが、斬罪とも思える盛り付けに美意識高い系おじさんのテンションは下がる。そんな気分を、ぶちアゲる為に別皿で供された味玉を器の中にインサートして記念撮影をしてみたが、黄身が流れ出してしまい、さらにテンションは急降下した。墜ちた気持ちを奮い立たせるように、朱赤色のレンゲを手に取った。

まずは表層を覆った豚背脂をかき分けてスープの色調を確認すると、霞のある丁子茶色スープが現れた。出来るだけ背脂の影響が及んでなさそうな液面に、レンゲを素早く沈めてすくってみる。瞬時に立ち昇った湯気には、かなりの高温を示唆する真っ白な蒸気が目に見える。それは丼に入れたカエシも温めてあるのでスープの温度が下がらないように、熱さを保つ工夫が功を奏している。その湯気の中には、豚背脂特有の甘みを思わす香りも含んでいる。最小限に抑えたつもりでもレンゲの中には厚めの油膜が見え、ある程度の油っぽさを覚悟して口に含んだ。液体の濃度としてはサラリとして高くはないが、動物性コラーゲンの粘着質が唇を通り口中に膜を張った。油脂の甘みに隠れてはいるが、かなりの塩気の強さが舌を襲い味覚の判断が鈍る。店内には「味が濃いと感じたら調整致します」との貼り紙がちゃんとあったが、今回は基本の味を知るために敢えて薄めずに食べ進んだ。

続いて麺上げまでジャスト180秒の麺を引き上げると、黄色みを帯びた中太麺が箸先に重圧をかけてくる。シャープな切刃の角を残した麺肌からも、強靭なグルテンに満ちているのが分かる。食べなくとも加水率の高さを感じる男っぽい麺を一気にすすり上げると、スクエアな口当たりが唇を通過していく。麺肌にハリがあり凹凸が少ないので強気なスープを引き寄せて来ないのが幸いして、麺自体の小麦の香りを楽しめた。噛めばゴワッとした硬さの中にも、モッチリとした歯切れがあり咀嚼に応えてくれる。つまりは力強さの中にも優しさのある、気は優しくて力持ちタイプの〝ドカベン 山田太郎〟のような麺だ。

具材のチャーシューには、豚ロースと豚バラの部位違いの煮豚が盛り付けてある。感心したのは提供直前に電動スライサーで切り立てチャーシューを盛り付けていた点だ。肉汁は抜け気味でパサついた歯触りではあるが、どちらの部位も赤身を中心にしたチャーシューなので食べ応えはある。もう少し肉汁の旨みを内に秘めた仕上がりならば、スープに負けずに存在感があったと思う。

追加した味玉は白身の上辺だけが色の付いた残念な仕上がり具合で、染みているのは色だけの半熟たまご。漬けダレの浸透は皆無なので、好みの熟成感も全くない。さらには味玉の冷たすぎる温度が、先ほどカエシを温めていた一仕事の意味を台無しにしているようだ。

具材としても彩り要員の役割も兼ねているワカメは戻しワカメなので食感も乏しく、ワカメ自身が塩気をもっているのでスープと重なると手に負えない。薬味の白ネギは強気なスープの中でも、自然な香りと辛味で抵抗してくれた。

中盤からも麺はコシの強さを残し続けてダレる事なく食べ進められたが、スープとワカメは残してしまい箸とレンゲを置いた。獣臭さのない豚骨醤油系スープだったので、カエシの調整をしてもらえば良かったのだろう。今回は初訪問だったので敢えてチャレンジしたが、次回の訪問があればカスタマイズして自分好みの味にしてみたいと思った一杯でした。

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「定番ネギラーメン ¥880+味付け玉子 ¥120」@和歌山ラーメン まる岡の写真平日 晴天 12:05 先客1名 後客6名

さえないフラれ男の小言をお伝えします。

昨日失敗した連食計画のリベンジの為だけに、昨晩は荻窪の常宿に前乗りして今朝を迎えた。

それは昨日訪れた入間市の新店で一食目を終えてから、乗り込んできた練馬の新店で臨休や早じまいではなく、マイスタンダードであるラーメン系だけが品切れというアクシデントに見舞われて断念せざるを得ない事情があった。つけそば類はあったのだが独自の〝ラ道〟を貫くために昨日は撤退して本日のオープンを待ち構えていたのだ。練馬と荻窪はアクセスが悪いと思われるかもしれないが、実は直通の路線バスが運行しているので移動は簡単だった。

そこで今朝は早朝から大浴場で、お祓いをするような気持ちで身を清めてから関東バス 荻07系統にて練馬駅までやって来たのだが、リベンジの為にオープン前に訪れた店先のメニューのラーメン系のには既に品切れの文字が書かれていた。という事は、最初からラーメンの提供は無かったのだったと初めて知った。二日連続で店ではなくメニューにフラれて、うなだれながらヤケクソでRDBの新店情報を見てみた。するとつい先日までは挙がってなかった亀有での新店が望みをつなげてくれて、微かな希望を胸に練馬からの大移動を開始した。

池袋と西日暮里を経由して、たどり着いた亀有駅の北口方面に降り立ったのは人生で初めてだった。そこから歩いてすぐとなっている店へと向かう為に一番街という通りを進むと、突然の大行列が目の前に現れた。その行列こそがスパコンのオススメ店として根強く君臨している、つけ麺専門店だったのだ。しかし本日はリカバリー目的の新店めぐりなので、脇目も振らずに先を急いだ。すると通りの先の交差点に真っ赤なテント看板の店先を見つけたが、またもやまさかの貼り紙が死刑宣告のように貼られていた。

「店内補修の為 本日お休みします」

これを読んだ時に、リベンジ失敗のリカバリーの道すらも絶たれてしまったのだ。わずかオープン5日目の設備トラブルは店側にしても大きな痛手とは分かっていても、私の心の痛手も計り知れない程に大きかった。

その瞬間、全てが上手くいかず自暴自棄になりそうな私の目に飛び込んできたのが、少し先で揺れている赤い幟旗だった。きっと悔しさで涙ぐんでいたので、ボンヤリと霞んで文字が読み取れなかったが、目を凝らして見直してみると〝和歌山ラーメン〟と書かれていたのだ。和歌山遠征時に食べた超有名老舗店の和歌山ラーメンの印象は決して良いものでは無かったが、気が付くと引き寄せられるように店先に立っていた。そこで初めて店名を見ると、約半年前に行った〝ニューオープン狙いうち〟の際に候補店に挙がっていた当時の新店だったのだ。その時は和歌山ラーメンという事だけで初訪問を避けてしまったが、今回は不思議な運命めいた何かを感じてしまった。

藁にもすがる思いで店頭の写真付きメニューを食い入るように見るが、私の偏った嗜好を満たしてくれそうなラーメンではなかった。しかし次の店を探して出向くような気力もなく、和歌山ラーメンへの苦手意識が覆されるかもしれないと思い真っ白な暖簾をくぐってみた。

店内に入ると入口左手に設置された券売機の中から、今回ばかりはセオリーに従って左最上段のボタンを押した。それがビジュアル重視のラーメンと分かっていても、フラれっぱなしのチャレンジャーとしては止むを得ない選択だった。せめてもの抵抗で大好物の味付け玉子だけは追加発券して、スタッフさんの誘導にてカウンターに腰を下ろした。食券を手渡す際にライス無料サービスを案内されたが、ラーメンに集中する為に今回も辞退した。ここで持論の〝ライス無料サービス店のラーメンの味は濃い〟が脳裏をよぎったが、全ての悪いイメージをかき消して店内観察を開始した。

最初に感じたのはオープンしてまだ半年足らずではあるが、厨房内がピカピカに磨き上げられている点だ。これには女性スタッフさんの存在が大きく関わっていると思った。昼ピークのランチタイムの来店だったが先客は一人しかおらず若干さびしく思われたが、明るい女性スタッフさんは接客をしながらも常に掃除の手を動かしている。夏場を越えてそろそろ不要になる扇風機を、カバーやファンまでも分解して隅々までキレイに掃除をしていた。客席は長いカウンターに導線を確保する為に、真ん中あたりで二分割にされた造りとなっている。壁や卓上には各々の食材の産地やウンチクが細かく書かれていて、店主さんのこだわりが表現されている。葛飾区という土地柄だろうか、元高見盛関こと振分親方や東関部屋の若手力士のサインが壁に書かれていたりと、見所が多い店内を本日は三人体制で回している。私の来店後は少しずつ来客もあり賑わいを見せてきた所で、着席してから5分で我が杯が到着した。

その姿は朱赤の刷毛目の描かれた厚手の高台丼の中で、メニュー写真を見て知ってはいたが圧倒的な緑色の景色を見せている。ここで数十年前の学生時代に教わった、日本古来の色の表現に関する記述を思い出した。

現代では緑色として認識されているのに〝青〟という色で表現されている物が多いという事だ。それは今回キッカケになった〝青ネギ〟に始まり〝青ノリ〟〝青リンゴ〟〝青ムシ〟のどれも青ではなく緑色だという事だ。そんな遥か遠い記憶を思い出すと、別皿で提供された追加の味玉を記念撮影用にインサートした。まるで、バングラデシュの国旗のようになったラーメンを眺めながらレンゲを手にした。

まずはスープをひとくち、と思っても青ネギで覆われた液面からはスープの様子が見られないので、レンゲの底を青ネギの上から押し込んだ。そこには粘度の少しある紅檜皮色のスープが現れて、ゆったり優雅にレンゲの中を満たしていった。やや醤油色素は強めに見えるが、和歌山の有名店よりは穏やかそうに映った。店内には豚骨醤油独特の香りがしないのと同様に、レンゲを介しても動物系の匂いは強く攻めてこない。そんなスープを口に含んでみると、唇にコラーゲンを感じる滑らかな口当たりだ。豚骨を潰して長時間炊いたスープなのに、粉骨されたザラつきのない絹のような舌触りだ。そんなシルキーさの中には、ハッキリとしたカエシの塩気が舌を刺激してくる。やはり持論の〝ライス無料サービス店のラーメンの味は濃い〟は論外ではなかった。スープ単体で飲むのは諦めてレンゲを箸に持ち替えた。

麺上げまでジャスト180秒の中細ストレート麺を持ち上げると、半乳化したスープをまとって潤い豊かに現れた。箸先には適度な荷重がかかってくるので、平均的な加水率に思われる。そんな麺を一気にすすり上げると、スープのコラーゲンの粘りにも負けないくらいスムーズに滑り込んできた。唇には切刃のエッジを感じさせない、とても丸みのある特徴的な口当たりだ。麺肌には薄っすらとグルテンが溶け出した半透明状の層が見られ、その部分の粘質がスープを吸い上げてくる。スープだけでは強く感じた塩分も、麺と絡めば程よい調味料的な役割を果たしている。味の乗った麺を噛みつぶすと小麦の甘みと香りが、ほのかに顔を出してくる。そこにはモッチリとしたグルテンの弾力が、心地良い歯応えとなって跳ね返ってくる。滑らかな口当たりと適度な食感、さらには喉越しも良いときている。自家製麺ではないようだが、オリジナル配合ならではの個性を持った麺には、正直美味いと思ってしまった。この麺質ならば後半までダレる事は無さそうなので、緑のジャングルを探検してみる。

鬱蒼とした青ネギを箸でかき分けると、一片の小ぶりなチャーシューが現れた。それは豚バラで仕込まれていて、霧島山麓豚を使った煮豚となっている。今回は赤身が多い部位が切り分けられていたので、肉々しい食べ応えを楽しめた。煮汁の旨みを取り込みながら、豚肉本来の味わいも残している素晴らしい仕上がりだ。しかし、あまりにも小さすぎたので追加すれば良かったと悔やんだ。

逆に追加しなければ良かったと思ったのが味付け玉子で、白身の上っ面だけが漬けダレに染まった急速仕上げの味玉だった。口にするまでは照り返すようなテラコッタカラーが熟成感を醸し出していたが、見掛け倒しの色付き玉子でしかなかった。噛んだ瞬間に冷たさを感じると、割れた中身は半熟ゆで卵そのものだった。人は見かけによらぬものと言うが、味玉にも同じ事が言えるようだ。

たっぷりの青ネギに隠れて、申し訳なさそうな分量の茹でモヤシも入っていた。しかし味を確認する前に、胃袋の中へと消えていたほどの少なさだった。

最後になったが最大の特徴である薬味の青ネギは、初見の時点で切り置き時間の長さを感じてしまった。大きめの小口切りにされた青ネギの切り口は、乾燥してしまい潤いを全く見せない。最初に少し口にしたがパサついていたので、すぐにスープに浸して加湿する事にした。しばらく経つとスープを吸って舌触りの悪さは改善されたが、九条ねぎ系らしい香りや甘みは飛んでしまっていた。本来は食感を楽しむ為に大きめに切られてあるのだろうが、ゴワつきすら感じるので裏目に出てしまったようだ。

中盤からも麺の力に牽引されて食べ切る事ができたが、塩気の強い大量のスープと青ネギを残して箸とレンゲを置いてしまった。

最後の拠り所として助けを求めに訪れた店だったが、偏屈者の嗜好のせいで起死回生のリカバリーショットとはいかなかった。それでも私の中の和歌山ラーメンのイメージ向上には、かなり貢献してくれたと思う一杯でした。

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「醤油ラーメン ¥750+味付玉子 ¥100」@らーめん つけ麺 たか虎の写真平日 晴天 10:50 待ちなし 後客4名

〝ニューオープン 探検記〟

まさに〝灯台下暗し〟とはこの事で、私が北関東遠征のアジトとしている上野駅前にある常宿のサウナの近くに新店情報を入手したのだ。RDBに挙がってきた情報によるとオープンして10日程のようで、さらには浅草橋での新店情報も付け加えて入手した。これならば両店へのアクセスが良さそうなので、昼の部での連食計画を立てて新店めぐりをする事にした。

お決まりのパターンで上野駅前のサウナに前泊して準備を整えたのだが、こちらのラーメン店は11時開店なのにサウナは10時チェックアウトと思わぬ時間が空いてしまった。目的地はサウナから徒歩1分という好条件にもかかわらず時間を持て余すという残念なスタートとなってしまい、この時ばかりは自宅から来ても良かったのではと思ってしまった。

目的のラーメン店周辺にはカフェや喫茶店がないので、近くのコンビニのイートインスペースでコーヒーを飲みながら店の予習をしようとRDBを開いてみる。しかしレビューもなく情報が乏しい中で、メニューだけは豊富な事だけは把握できた。勝手な固定観念でメニューが多い店のラーメンは味にブレがあると思っているので、心配材料ではあるが時間を見て店先へと向かってみた。

定刻の10分前の現着となったが、並びもないので先頭にて待機を開始する。ガラス張りの店先には開店祝いの花が残っているが、すっかりと枯れてしまっていて新店なのに虚無感が漂っている。枯れた植物は悪い気を引き寄せるので、早く撤去した方が商いの繁盛には良い気がする。店頭には布製でなくビニール製の白のれんが常に掛けられていて、屋号の下には〝HOKKAIDO TONKOTSU〟と書かれている。先日は西葛西で〝TOKYO TONKOTSU〟の文字を見たばかりなので、ファイターズ vs ジャイアンの日本シリーズを想像してしまった。ふと北海道豚骨とは何ぞやと疑問符も浮かんできたが、言葉自体に重みが無くなってきた時代なのであれこれ詮索するのはやめておいた。

開店待ちの私に気付いてくれたようで定刻よりも2分早くオープンしてもらったようで、ありがたく思いながら店内に入った。入口左手に設置された券売機の前に立つと、先ほど決めておいたメニューと店内の写真メニューを照らし合わせて表題のボタンを押した。北海道豚骨に合わせる味玉はどんなものかと興味が湧いて追加発券すると、カウンターに陣取り店内観察を始める。

カウンターとテーブル席がユニットタイプでレイアウトされた大手チェーン店を思わせる客席が特徴的だが、規模的にはコンパクトに小さくまとまっている。店内の壁には大手ビールメーカーのレトロ調ポスターが貼られてあったり、個人店らしからぬ立派な写真入りメニューが目を惹く。そんな違和感のある店内を本日は、おそろいの黄色いタオルを鉢巻にした四人体制で回している。客席と厨房が完全に独立しているので調理工程が見えず残念だが、奥の厨房からは聞き取れない外国語が聞こえてくる。どことなく異国ムードがあるのはそのせいだろうか、少し落ち着かない雰囲気の中で待っていると、どうやら調理が始まっているようだ。

調理スタッフの上半身の動きやタイマーの音に聞き耳を立てていると30秒で麺上げされたように見えた。その茹で時間からかなりの細麺と読んだが、そこからの盛り付け作業が90秒近くかかっているのが気になって仕方ない。どうやらチャーシューをオープンで温め直す準備が出来てなかったらしく、それを待つのに時間を要したみたいだ。〝チャーシューの冷たさ〟と〝麺の伸び〟のどちらも本意ではないが、明らかに麺の劣化だけは避けたいと思いながら待っていると着席して7分で我が杯が到着した。

その姿は白磁の切立丼の中で、ある事を悔やんでしまう景色を見せていた。せっかくメニューの写真があったのに、基本のラーメンに味玉半個が入っているのを見逃していたのだ。いくらアジタマスキーの私でも1個半は多すぎるし、見た目のバランスも美しくない。美意識高い系おじさんにとっては、決して犯してはならぬ失態を演じてしまった。しかし店側には全く落ち度がないので仕方なく諦めると、お冷を飲んで心を落ち着かせてから今回ばかりはレンゲよりも先に箸を手にした。

勿論それは麺の状態が気になったからで、普段のように麺を診断している暇などないと思い先に麺をすすり上げた。すると何が基本の茹で加減かは分からないが、明らかに伸びているとしか思えない弱々しい口当たりだけを残して口の中に入ってきた。この茹で加減が真実なのかもしれないが、私にとっては失敗作としか思えない状態の麺だった。麺が伸びているだけではなく数本の麺が結着しているのには、どう考えても先程のチャーシューのロスタイムが原因としか思えなかった。あとで思い返すと黄色い麺肌が特徴的なストレート細麺だったが、麺のポテンシャルの数分の一しか発揮されていないように思えた。そんな本意ではない麺を諦めると、北海道豚骨スープを楽しむためにレンゲを手にした。

表層には豚背脂の浮かんだ超濃厚そうな見た目のスープだが、不思議な事に店内には全く豚骨臭が漂っていない。かなりの豚骨を潰しながら炊いたようなスープと思われるが店内は清らかな空気に包まれていているが、目の前のラーメンからは臭いとまではいかないまでも明らかな豚骨の香りがしてくる。厨房が独立しているので換気機能が良いのかもしれないが、別場所で炊かれているのではとすら勘ぐってしまった。完全に乳化を果たした液面にレンゲを沈めると介入を防ごうとする抵抗がレンゲにかかり、中濃度の手応えを指先に感じる。ゆっくりと粘性を見せながらレンゲに注がれてきたスープを口元に運んでくると、その距離に比例して豚骨特有の香りも近づいてくる。いざ口に含むと、最初に伝わってきたのは四つ足系ならではの動物性コラーゲンが唇に張り付いてきた。鼻に抜ける香りとしては過剰なクセがなく穏やかな印象で、九州豚骨とは確かに違う仕上がりとなっている。そんな臭みのないまろやかな口当たりの中には、私にとっては必要以上の塩分が潜んでいた。つけ麺のスープとしても成立しそうな塩気の強さにスープ割りを望んでしまうくらいに強烈なカエシは、マニュアルを間違えてのではと思う程に塩っぱい。これでは麺もスープも手に負えなくなってしまい、仕方なく具材へと目先を変えてみた。

具材のチャーシューは豚バラの巻き煮豚型が堂々と鎮座しているが、盛り付けの際にロスタイムの原因となったオープンでの炙り効果が焼き目となって表れている。しっかりと焦げ目が付いているのは片面だけなので反り返っているようにも見え、かなり硬そうな印象を受ける。それは箸先からも伝わってきて、いざ食べてみても焼き過ぎて硬い。元々の煮豚もパサついているので、さらに焼かれた事で肉汁は抜けてしまい豚肉本来の旨みは残っていない。残っているのは焼いてあるのに冷蔵庫の冷たさと、パサパサとした味気ない肉の繊維ばかりの残念なチャーシューだった。

間違って追加してしまった味玉は半カット切りで3個も入っているが、見た目から追加した事を悔やむような出来栄えだった。それは只のゆで卵の白身だけに色を付けたような深みのない容姿をしているので、好みの熟成度とは程遠い味玉だと察した。実際に食べてみても羊頭狗肉な仕上がりで〝味付玉子〟を名乗るならば名は体を表して欲しいと思ってしまった。

不揃いな大きさの板メンマからは全く手仕事を感じられない業務用品にしか思えず、万人向けな味付けは良かったが噛み切れない麻竹の繊維が不快に残る。

大きく海苔も添えてあったが品質のせいか保存状態の悪さか分からないが、磯の香りはせず他の食材の臭いが移ってしまっていた。舌触りの悪さも残るので劣化しているのだろう。

薬味の白ネギは入っているのか分からないくらいに少なすぎて、薬味としての役割を果たしているとは思えない。

序盤から麺の仕上がりが不本意だったり、スープの塩辛さが好みと違っていたので八割以上を残してしまった。提供時からオペレーションのミスで始まったので今回のラーメンがベストな状態ではなかったのが悔やまれるが、一期一麺の精神で評価は低くせざるを得ない一杯となってしまった。

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「豚骨醤油ラーメン ¥820+味玉子 ¥100」@ラーメン猪太の写真平日 曇天 13:20 先客9名 後客1名

〝ニューオープン 探検記〟

本日の常磐線沿線での連食計画も無事に一食目を食べ終えた。午前中は成田線の布佐駅から我孫子経由で柏まで戻ってくると、連食のハーフタイムを取るために駅前の足ツボマッサージで疲れを癒した。するとマッサージ師さんに「暴飲暴食には注意してください」と意味ありげな忠告を受け、疲れを癒すどころか気持ちが滅入ってしまった。しかし〝暴飲暴食暴性〟とは言われなかったので良しと受け止め気を取り直して本日の二食目へと向かう事にした。

ラグビーW杯のオーストラリア代表 オールブラックスのキャンプに湧く柏駅東口から10分ほど歩くと、こちらの紺色の看板が見えてきた。店先には大きな藍染の日除け暖簾が掛けられてあり、全体的に茄子紺で統一された外観となっている。昼のピークタイムを過ぎていたので行列はなく、ガラス越しに店内の空席を確認してから扉を開けた。

店内に入ると入口右手のSHIBAURA製の券売機から本日のお題を品定めするが、多ジャンルなラインナップの中からセオリーに則って左端最上段のボタンと味玉を追加発券した。券売機の横にはラーメン一杯につきライス二杯無料サービスの保温ジャーが置かれてあったが、ラーメンだけに集中する為に遠慮してカウンターに腰を下ろした。

カウンター越しに広めの店内を物色すると、他のラーメン店の厨房設備とは異なる点が随所に見られた。その一番の違いはビビンバコンロを設置されている点で、ガス台の上には複数の土鍋が熱せられている。そのため店主さんは両手にミトンを着用しているので、手先だけを見ればパン屋さんのようでもある。客席は逆L字カウンターとテーブル席も設けられてある店内を本日は三人体制で回している。

三人の持ち場の仕事を淡々とこなす様子を見ている時に、疑問に思う光景を見てしまった。それは後客の中年男性が入口の扉を間違えて反対側を開けてしまい、店内に置かれた傘立てにぶつかってしまったのだ。それに気づいた店主さんは心配するでもなく、笑いながら他のスタッフに目で合図を送っている始末だ。調理中なので客のところに駆け寄るわけにはいかないとしても、入口を間違えた客を笑う事はないのではなかろうか。その光景を見た時に、店側の客に対する思いが伝わってきた。しかし接客面は評価の対象にしない方針なので、店内のテレビに映る夏の高校球児たちの真っ直ぐなプレーに心を置き換えて冷静を取り戻そうとした。ここは甲子園と違ってエアコンの効いている室内でスープ炊きの豚骨臭に包まれながら待っていると、着席して8分で我が杯が到着した。

その姿は先程まで熱々に焼かれていた萬古焼の黒鍋に白い蓋というインパクトのある独自のスタイルで現れ、すかさず店主さんが鍋蓋を取ってくれると土鍋からは真っ白で熱い湯気が立ち昇ってきた。その瞬間に店内にたちこめた豚骨の匂いよりも何倍も濃縮されたスープの匂いが嗅覚だけでなく、顔面全体を襲ってきた。この時ばかりは室内のエアコンも効かないくらいの熱気を感じながら、鍋焼きラーメンならではの景色を眺めながらレンゲを手にした。

まずはスープをひとくち。厨房内では大型の寸胴鍋で豚骨やゲンコツを潰しながらスープが炊かれていて、いかにも濃厚そうに思えるスープだ。土鍋の中では煮えたぎるように泡立っている液面にレンゲを沈めると、思ったほどの粘着質を感じずにスープが注がれてきた。苦手な超濃厚スープではない事に安堵しながらスープを口に含んでみると、味覚よりもスープの熱さがダイレクトに伝わってきた。その熱さが落ち着くと最初に現れたのは醤油ダレの塩気の強さで、高温の中でも感じる味の濃さには一口目だけで放棄したくなるような塩っぱさだった。豚由来のコラーゲンたっぷりなスープ自体には豚骨特有のクセが残っているので、私にとっては塩気と臭みのダブルパンチの苦手な印象ばかりが際立ってしまった。この時点でスープは諦めてレンゲを箸に持ち替えた。

無かん水自家製麺と謳ってあるので実際にはラーメンとカテゴリーからは外れる麺を持ち上げてみると、箸先には色白美人の中細ストレート麺が現れた。美白な麺肌には切刃のエッジがくっきりと残り、長めの形状が特徴的に見える。調理場内に設置された製麺機と茹で麺機の距離が異常に近いので、茹で湯の蒸気が麺の湿度に影響しないのか心配に思いながら麺を口に運んでみる。スープの熱さや麺の長さから一気にすすり上げる事を躊躇していまうので、ゆっくりと口の中へと送り込んだ。するとラーメンでは感じた事のない滑らかな口当たりが唇を通過して、口の中を優雅に舞いながら収まってくる。中華麺では珍しく、布海苔を練りこんであるとウンチクにあるので布海苔効果による独特の口当たりなのだろう。それは新潟の〝へぎそば〟の舌触りに類似するような、オリジナリティあふれる自家製麺には思える。しかし土鍋の加熱効果や、かん水を含まない麺は常に状態が変化し続けているので予断を許さない状況だ。初動でも麺肌には小麦グルテンの粘着質が浮かんできており今後の麺ディションの劣化が心配になってきて食べ急ぎたいものの凄まじいスープの熱さゆえにそれすらも、ままならず麺の状態は変わり続けていく。

具材のチャーシューは豚肩ロースの煮豚型が盛り付けてあるが、やや脂身の多い部位が切り分けられた。と言う事はスジが多くある部分なのでチャーシューの切断面が平面ではなく、筋に引っ張られて波を打っているように見える。見るからに硬そうには見えるが、赤身を好む趣向なのでありがたく思いながら頬張ってみた。豚肩ロースならではの肉々しい歯応えが力強く、赤身の持ち味を十分に感じられる。味付けもスープのようにカエシの塩分が利いてないので豚肉本来の旨みを味わえ、強気なスープの中でも素材の良さを楽しめるチャーシューだ。今の流行りのレアチャーシューにはない、噛みしめるたびに旨みの湧いてくる逸品だと思った。

肉の具材として豚挽肉のそぼろも入っていたが、とにかく味が濃すぎるので更に塩気が強くなってしまった。このミンチならばライスとの相性は抜群のはずで、客人の誰しもが無料ライスを片手にラーメンを食べているのが納得できた。全てがライスありきの味の濃さならば仕方ないが、ライスを必要としない私には手に負えない程の凄まじい塩気にやられた。

追加した味玉だが、店内にメニュー写真がないので基本でも味玉半個が入っていると知らずに追加トッピングしてしまった。結果として一個半も盛り付けてあるという、わんぱくな表情となってしまった。もし店側にゲストファーストの思いがあれば何らかのアナウンスがあって然りだと思うが、どうやら売上至上主義のようで「最初から味玉半個が入ってます」のような案内もなく当たり前のように提供された。しかしながら大好物の味玉なので美味ければ問題ないと食べてみたのだが、残念ながら味玉と呼ぶには程遠い色付きゆで卵だった。さすがに土鍋の中で熱せられているので提供温度の温かさは申し分ないが、そのせいで黄身は硬くなってしまっていた。そんな卵を一個半は食べられずに初めて味玉を残してしまった。

メンマも下処理の段階で戻しすぎたのか煮込み過ぎたのか分からないが、食感のなさと味気のなさで存在感を全くアピール出来ていない。

ウンチクにはコチラのラーメンの真髄でもある、季節によって変わる鮮度にこだわった地元産の野菜類が使われていると書いてあった。その柏産の野菜には本日は小松菜と空芯菜が用いられていたが、小松菜の苦味と食感は強気なスープの中で自然な味わいを与えてくれた。一方の空芯菜は鮮度以前の問題で、噛んだ途端に空芯菜ならではの茎の中から不快な水分があふれてきた。それは茹で麺機の中の茹で湯のような不純物を含んだ水分で、噛むたびに不味い味が口の中に広がった。野菜を茹でるのに茹で麺機を利用するのはいいが、空芯菜には向いていないと思った。

序盤から色んな要素に苦しめられながら食べ進めようと努力したが、八割近くを残してレンゲと箸を置いて席を立った。

偏食傾向の私には弱点ばかりを責められたようなラーメンだったが、周囲を見ると満足そうに楽しんでいる様子も見られた。すでに新天地でも愛されているのが伝わってきながら店を出ると、外の空気が美味しかったのが印象に残った。その空気が一番のご馳走と思えるくらいに店内が臭かったのだろうかと思ってしまった一杯でした。

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「えいちつー麺 ¥880」@麺や えいちつーの写真平日 晴天 13:30 先客3名 後客1名

〝ニューオープン 探検記〟

こちらへは昨晩から船橋に前乗りして立てておいた連食計画だったので、予習は昨晩のうちにしっかりしておいたのだ。お店情報では〝TOKYO TONKOTSU〟という新たな豚骨醤油ジャンルを打ち出したコンセプトで勝負しているようだ。私は夏前の九州遠征でトンコツ系に打ちのめされて以来しばらく距離を置いていたジャンルだったが、今回は新しいコンセプトに挑んでみようと初訪問を決めたのだ。

午前中の浦安での前食を食べ終えると東西線沿線上で今月に入ってオープンされたばかりのコチラを目指して西葛西駅までやって来た。しかし前食から30分も経っていない胃袋に空き容量がなく、駅前のカフェで時が過ぎるのを待った。一時間ほどすると前食のラーメンが油分を控えた和風出汁だったので、思いのほか早く胃袋が復活してきた。そこで新たなトンコツ系との出会いを信じて店へと向かって歩き出した。

西葛西駅北口からは歩いても数分もかからない場所に、新店らしい開店祝いの花が並んだ店を見つけた。そこには有名ブランド〝トリーバーチ〟を思わせる大きな看板が存在感をアピールしていた。派手な外観をひと眺めして、壁に飾られた写真付きメニューから本日のお題の目星を付けて赤い扉を開けて店の中へ。

店内に入ると券売機はなくカウンターに案内させた。ずぶ濡れのダスターでカウンターを拭きっぱなしなので、卓上が濡れているのが不快だった。ラーメン店には珍しい冷たいおしぼりのサービスがあったので、通称〝つめしぼ〟を受け取り影ながカウンターを自分で拭いて心を落ちつかせた。焼酎用のロックグラスにキューブアイスといった、これまたラーメン店では見かけないスタイルのお冷で冷静を取り戻した。正面の壁には大きなメニューがあり、写真を見ると基本でも十分に感じたので追加はせずにスタッフさんに注文を告げた。後会計式なので無銭飲食未遂にならぬように千円札を用意してから店内観察を始めた。

新店舗らしい真新しい内装には、白木をベースに赤と黒を使った個性的なセンスが見られる。カウンターだけの客席だが、なぜか椅子に格差がある。右側には立派な背もたれのある椅子が並んでいるが、左側には普通の丸椅子が置かれていた。本来ならそこに置かれるはずだったと思われる椅子は、中待ち用の椅子として使用されていた。導線上の理由だと思われるが、本日私は右側の立派な席だったのでラッキーだった。厨房はカウンター右手奥に独立しているので作業工程は見えないが、偶然カウンターの端席だったので調理の空気感だけは伝わってきた。そんなカウンターと調理場が独立した店内を、接客と調理の完全分業制のツーオペで回している。どちらが店主さんか分からないが、店名の「えいちつー」はお二人のイニシャルの頭文字を合わせたものなのではと推理した。

先客は地元の常連客なのだろうか、カウンターのスタッフさんと親しい会話が続いている。すでに地元客に愛されているような雰囲気に包まれながら待っていると、着席して6分で我が杯が到着した。その姿は受け皿に乗った白磁の切立丼の中で、たしかによくあるトンコツ系とは違った表情を浮かべている。豚骨ラーメンにはあまり使われない切立丼を採用されているあたりも〝TOKYO TONKOTSU〟を意識されているのだろう。有りそうで無さそうたが実はよくある見た目だったが、新ジャンルとの出会いを期待してレンゲを手にした。

まずは煎茶色のスープをひとくち。初見では乳化されたスープに見える液面にレンゲを沈めてみると、超濃厚な粘着質は伝わってこない。もちろん清湯系のような軽やかさではないが、適度な粘度を含んだコラーゲンを感じるスープである。過去の豚骨スープのイメージを払拭して口に含んでみると、唇にまとわりつくようなコラーゲンが膜を張った。味わい的には豚骨を潰して炊いたような独特の臭みは抑えてあり、その分を鶏ガラ由来の旨みで補っているようだ。これならば豚骨スープでも豚骨醤油とも違ったカテゴリーに属する、動物由来の醤油系スープである。また野菜類の甘みや旨みも潜んでいるので、昔ながらの動物系清湯スープを強く濁らせたような味わいとなっている。よって新しさよりも不思議と昔から知っているような懐かしさも持っている。その懐かしさの中には不要な強い旨味成分も感じられるが、その旨味に負けないようにカエシの醤油ダレも強めに利かせてあるので塩っぱく感じる。旨味と甘みと塩気の全てが強いので最初から手強いスープに思え、飲む事は諦めて麺へと進んだ。

麺上げまでの時間を計るのはタイマーではなく、砂時計を三つ並べて茹で時間を管理している。サウナですら見かけなくなった砂時計を駆使していたが、私のロットの時に砂時計が茹で麺機の中に落ちてしまうアクシデントがあった。お湯で濡れた砂はガラス管を滑り落ちる事なく詰まってしまったので、本来のタイミングで麺上げされたかどうかは不明だが120秒程度だったと思われる。麺を箸で持ち上げると、ゆるやかに波を打った平打ち麺が現れた。箸先には黄色みを帯びた半透明な麺肌が見られ、適度に溶け出したグルテンがクリアな層となって輝いている。見るからにすすり心地の良さそうな麺質だが、このタイプのスープとの組み合わせは珍しく思った。さっそく麺をすすってみると平打ち麺ならではのシャープな口当たりに、ウェーブが織りなす不規則な舌触りが複雑さを生んでいる。ランダムな食感が作り出す咀嚼の楽しみと、密度の濃いグルテンが生む歯応えの良さと相まって箸のスピードが加速する。麺に面白みがあるだけにスープの塩分過多が私には残念だった。

具材のチャーシューは豚肩ロース煮豚型で仕込まれているが、採算度外視とも思える厚切りの大盤振る舞いで盛り付けてある。赤身中心の煮豚にありがちなパサついた食感になる直前で留まっていて、柔らかくも赤身の繊維質を楽しめる食感が良い。味付けも肉本来の旨みも残しながら煮汁の旨みも取り込んでいて、優しくも深い味わいのチャーシューとなっている。

板メンマは不揃いな形が食感の違いを生んで、表面に少し滑りがあるタイプなので独特の噛み応えがアクセントになる。

初期値で入っていた味玉は残念ながら少し色の付いただけの半熟ゆで卵だった。追加した訳ではないので文句を言ってはいけないが、トッピングメニューにも〝半熟ゆで卵〟とは書かれておらず〝味玉子〟となっていたので文句も言いたくなるのだ。

薬味には青ネギを粗めに刻んで添えてあるが、野性味のある青ネギの香りが強気なスープの塩気を少し軽減してくれる。〝TOKYOスタイル〟と思っていたので白ネギかと思っていたら、九州などの西日本を代表する青ネギを使われていた。しかし動物系スープの中では見た目も鮮やかで風味もマッチしていた。そこに九州豚骨を思わせる、すりゴマも振ってあり香ばしさをプラスしていた。

序盤では感じなかった獣臭さが次第に強くなってきたので、ますますスープは飲む事が出来ずにレンゲを置いてしまった。私には味の強いラーメンだったが、若い人には受け入れられやすいスープだと思った。現に店内にいる客の中では明らかに私が最高齢は間違いなく、スタッフさん方もお若いようだ。こちらは若い者に任せらとして、改めて中年向きのラーメンを求め彷徨う事になった一杯でした。

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「ラーメン (豚1枚 200g) ¥770」@麺屋 もりのの写真平日 曇天 10:15 待ちなし 後待ちなし 後客13名

〝ニューオープン パトロール〟

昨晩はRDBの新店情報を元に新たなラーメンとの出会いを求めると、居ても立っても居られずに家を飛び出して船橋駅前の老舗サウナに宿をとった。

こちらのサウナは決しては新しくはないのだが、なんと言っても広々としたサウナ室が魅力なのだ。肝心のサウナ温度や水風呂は完璧とは言わないが、昔ながらの食事処のメニューの充実ぶりは関東屈指だ。そんな食事処でもっぱら最近のお気に入りは「牛ハラミのあぶり焼き」で、固形燃料の鉄板ではあるが自分で焼きながら楽しむスタイルなのだ。値段も手頃で量もツマミにするには丁度良いのだ。このサウナはネット予約すると生ビールを含むドリンク一杯無料券が付いてくるのも大きな魅力だ。無料生ビールを含めて3杯ほど燃料補給をしてから、夜のネオン街へと繰り出した。

本日の予定を頭に入れて2セットだけに控えたのだが、ついてくれる女の子が全員東京生まれの子ではせっかくの船橋ナイトの楽しみが半減してしまった。次回の参考のために千葉のラーメン事情を入手したかったのだが、あえなく失敗に終わった。しかしおかげで飲みすぎる事もなく記憶の定かなうちにベッドに入れた。

翌朝も天気こそは怪しいが体調万全で目が覚めると、閉館間近まで朝風呂を楽しんだ。閉館時間が近づくと清掃のおばさま達が着替えの最中でもお構いなしに入ってくる。どう見ても先輩と思われるおばさま達に全裸を見られた時に、まだ恥ずかしく思う少年心が私の中にある事を知った。

そんなこんなで午前10時にチェックアウトすると、すぐに船橋駅に向かい東武アーバンパークラインにて最寄りの塚田駅を目指した。最近ラーメンのおかげで乗車機会の増えた路線なのだが新型車両ばかりで、ドアの開閉音がやたらとうるさい旧型車両に出会わなくなった。また本日も新型車両で寂しさを感じながら二駅で人生初の塚田駅に着いた。ホテルを出てからたったの15分で到着と船橋に前泊した価値を噛みしめた。

駅の西口へと階段を下りて右を見れば真っ赤な看板があり、駅からも歩いてすぐの利便性の良い立地だ。1分もかからず着いた店先は半シャッター状態なので定休日ではなさそうだ。向かいにあるコンビニで水分補給の水を購入して、店先から少し離れて張り込みを開始する。

駅前と言えど、人通りや交通量も少なく穏やかな時間が流れている。張り込み最中に店主さんが玄関先の掃除に一度出てきたくらいで状況は変わらないままに時間が過ぎていった。定刻5分前になっても並びもなく、それらしき客も見られずに定刻2分前に早開けとなった。

手書き風の赤のれんが掛けられたのを確認してから先頭にて店内に入ったが、入口右手の券売機の前に立った瞬間に思いもよらない展開が待っていた。それはメニューの内容よりも券売機の上に貼られた、俗に言う〝コール〟の説明書きの存在だった。すなわちJ系と言う事なのだ。人生の中で数回は食べた事があるジャンルではあるが、あの中毒性が恐怖となって極力避けてきたタイプなのだ。券売機の前で躊躇していると後続が次々の入店してきたので、慌てて上部左端のボタンを押してしまった。すぐさま店主さんにアリナシを問われ、訳も分からずにフツウと答えた。

RDBには新店ゆえにレビューもなく写真すらも挙がっていなかったが、まさかJ系とは思いもしなかっただけに困惑しながらカウンターに腰を下ろした。ウォーターサーバーのお冷の飲んで冷静になろうと覚悟を決めて店内観察をはじめる。

カウンター四席と三卓のテーブル席の店内をご主人おひとりで切り盛りしている。ワンオペにしては広い客席なので、調理からカスタマイズの応答や配膳までの全てを担うのは大変そうである。狭い調理場に入りきらなかった冷蔵庫や冷凍ストッカーなどの厨房機器は客席の端に設置されている。本日の客層は圧倒的に地元の方が多く会話の内容からは近所にラーメン屋がないようで、こちらのオープンを楽しみにしていたと言う高齢者の方々も見られる。たしかにオープンして5分もしないうちに店内は満席となり、中待ちまでも発生していた。そんな地元の期待を一身に受けて調理に励むご主人の姿を眺めながら待っていると、ワンロット4杯仕上げにて我が杯が到着した。

その姿は真紅の高台丼の中で数回しか見た事のない景色を見せてくれる。実際にも余程の緊張だったのか写真が手ブレしてしまっていた。しかしながら〝フツウ〟が功を奏したのか強烈なインパクトは感じられず、恐怖心も和らいできたところでレンゲを手にした。

まずはスープをひとくち。J系と言えば標高が高いイメージがあったのだが、盛られた野菜も大量ではなくスープの液面も顔を出している。そんな隙間を見つけてレンゲをグッと押し込んでみると、サラリとした非乳化タイプのスープがレンゲの中に流れ込んできた。その印象は味噌ラーメンよりも軽やかに感じ、J系の中でも穏やかなタイプなのだと自分に言い聞かせた。いざスープを口に含むと、口当たりからも濃度の濃さは全く感じられずに清湯スープとも変わらない印象だ。鼻の奥では豚由来の動物系出汁の香りがするが獣臭さはなく清らかにすら思えた。カエシも強いと想像していたが、高めの設定ではあるが喉が灼きつく程ではない。連日のサウナ浴の影響で塩分を欲しているのかもしれないが、許容範囲内の塩気で助かった。しかし一番の心配材料であった旨味の底上げもされていて、自身の脆弱な味覚は支配されてしまった。大した分量ではないと思われる旨味補填なのだが、果たして本当に必要なのだろうかと思える土台の動物系スープがしっかりしているので不思議に思った。〝アブラ〟や〝ニンニク〟が抜けるのであれば〝コナ〟も抜きでお願いできれば、本来のスープの旨みだけでも十分に美味いスープに思えて残念だった。

調理工程の中で生麺の状態を目の前で見たが、打ち粉にまみれた極太麺を茹で釜に投入すると麺上げまで300秒を数える長い茹で時間だった。そんな麺を箸で持ち上げるが、モヤシが邪魔をするので必然的に〝天地返し〟を行なっていた。丼の中から現れたストレート極太麺は切刃のエッジが生み出す長方形とも見える特殊な形状をしている。麺一本の重みからも加水の高さと豊富なグルテンが伝わってくるパワフルな麺質を想像する。箸先からはハリの強さが鋭く感じられ、麺を掴んでいる感覚ではない違和感もある。ここまでくれば怖いものはなく、一気に数本をすくい上げる。麺のエッジがシャープに唇をえぐって飛び込んできた麺は、300秒の茹で時間でも強いコシを残している。グルテンの弾力性よりもパサつきすら感じるような麺質なので、独特な歯切れを生んでいる。あまり馴れ親しみのないタイプの麺に戸惑いはしたが、嫌いな麺ではなかったのが本音だ。食べ物を食べ物で例えるのはナンセンスだが、酸味の効いたトマトソースをからめて食べても美味いだろうなと考えてしまった。

具材は豚バラの煮豚型が大判の厚切りでセンターを陣取っていた。まず感心したのが、ワンオペなのに盛り付け直前に切り分けていた点だ。手間を考えれば切り置きすれば負担も減るだろうが、切り立てにこだわるご主人の思いが伝わってきた。そんな思いを胸に思い切り頬張ってみると、強めの味付けだが脂身の甘みと相まって新たな旨みを生み出している。あまり得意ではない豚バラの脂身だが、今回は赤身の占める範囲が多い部位が当たったので幸運にも脂っぽさを感じずに食べられた。

モヤシも直前に茹でられていたのと、鮮度の良いモヤシを使われていたので不快なアンモニア臭もなく軽めの茹で加減がシャキシャキとした食感のアクセントを与えてくれた。

薬味の白ネギは小口切りよりも細かく刻まれていたが全体の中では目立つ存在ではなく、あくまでも脇役となってサポートしていた。麺を食べていると、たまにシャキッとした軽い食感と辛味のある刺激を与えてくれた。

今回は下調べ不足で私の好みとは違ったタイプのラーメンに出会ってしまったが、頭でっかちになっていたJ系への苦手意識を少し減らしてくれたような気もする。周囲の客人の満足そうな笑顔を見れば、すでに地元に愛される要素を持った店だと察しがつく。採点は厳しくなっているが、あくまでも好みの問題だけで評価した一杯でした。

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