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のらのら

男性 - 東京都

はじめまして。レビュー開始から一年が経ち、二年目の目標を全国制覇にしました。一杯のラーメンに出会うまでの経緯も書き記しているので、前置き等が長くなりがちですがお許しください。しかし採点に関しては立地 接客 衛生面 価格設定などは考慮せずに、ラーメン一杯に対しての評価にしています。自分の好みだけで評価しているので不快な文面もあると思いますが、何卒宜しくお願いします。

平均点 73.136点
最終レビュー日 2019年10月17日
661 552 14 2,114
レビュー 店舗 スキ いいね

「魚介とんこつラーメン ¥800」@麺屋わおんの写真平日 小雨 10:40 待ちなし 後客9名

〝ニューオープン 探検記〟

本日は荻窪の常宿を拠点とした新店めぐりを実施するために、昨晩から荻窪へと乗り込んできた。昨晩は夜の会食の予定もなかったので、夕方には早々とチェックインする事が出来た。

ここの大浴場にはドライサウナがないのが残念なのだが、ミストサウナで高温高湿状態を作り出す方法を思いついた。こちらのミストサウナは常にミストが発生しているタイプではなく、定期的に高温の蒸気が発生する仕組みのスチーム式なのだ。四人しか入れない程の狭い室内にはテレビが設置されているので多くの入浴客は熱さを求めるのではなく、のんびりとテレビ鑑賞を目的として利用している。そんな中で突然に蒸気が噴出されると、狭い室内は湯気で真っ白になりテレビの画面など観られなくなってしまうのだ。そうなるとテレビを観るためにミストサウナ室に入っている客は、そそくさと退室してしまうのである。そこで誰もいなくなったのを確認してから室内の頭上に溜まっている熱気の塊をタオルを振り回して攪拌すると、瞬く間に室内の温度は急上昇して体感温度では 90℃を超える熱気に包まれるのだ。このセルフロウリュで、ドライサウナにも負けないくらいに身体が温まる技を生み出してしまった。しかし蒸気が噴出される時間が予測できない事と、誰もいない事が前提条件なのでタイミングを見計らうのが難しい点が問題だ。しかもクールダウンする水風呂もないのでシャワーの冷水を浴びてみるが、ととのい方が全く違った。

大浴場での風呂のあとの楽しみにしていた、館内のバーでの飲み放題プランが無くなってしまったのは非常に残念だ。きっと私が制限時間のうちに信じられない杯数の生ビールを毎回飲んだのが廃止となった大きな理由ではないかと深く反省している。もはや館内で飲む理由が無くなってしまったので、ホテルを外出して駅前の焼鳥屋にて生ビールを楽しんだ。帰り道はネオン街のキャッチのお兄さんの呼び込みに気持ちが揺れながらも、心を鬼にしてホテルに戻った。

この施設は中央線沿線を訪れる際のアジトだけでなく、縦のラインを結ぶバス路線の豊富さから利用頻度が多くなっているのが現状だ。本日の連食計画に選んだ新店はどちらも中央線が最寄り駅ではないが、バスを利用すれば乗換え要らずの上にニアピンで目的地まで運んでくれる利点がある。そこで翌朝も快調に目覚めると食べ放題のカレーには目もくれず、身支度を整えてRDBの新店情報で得た一軒目を目指して出発した。本日は連食計画なので再びホテルに戻って来る予定でチェックアウトはせずに外出扱いにすると、チェックアウトが15時の利点を最大限に活かした連食計画に我ながら感心した。

ホテルを出ると荻窪駅北口から、西武バス 荻14系統 石神井公園南口行きに乗車すると20分で最寄りの井草通りバス停に着いた。そこからは歩いて1分ほどで、味のあるコチラの手書きの看板が目に入ってきた。11時開店の20分前の現着となったが並びの列はなく小雨も降り始めたので、向かいの大きな駐車場の屋根のある所で張り込みを開始した。

老舗寿司屋や昔からの酒屋が並ぶ地元の方しか訪れそうにない場所の角地に、グレーを基調とした今っぽい外観で装われた店が突然と現れた感が漂っている。そんなオシャレな店構えの店頭には、つけ麺の大きな写真付き看板が置かれている。それを見た時に、独自の見解である「つけ麺推しの店のラーメンは美味しくない」が久しぶりに頭をよぎった。勝手なイメージでは、つけ麺が人気の店のラーメンは魚粉だらけと思っているので苦手意識が先行してしまうのだ。そんな良からぬ想像をしていると店先に一台の軽ワゴンが停車して店内へと運ばれる箱が見えたが、それは大成食品の麺箱のように思われた。

そんな事前情報を入手しながら待っていると定刻の3分前には看板の照明がついたが、立て看板は準備中のまま定刻を過ぎてしまった。仕方なく小雨の中で待っていると、定刻より1分遅れで営業中の看板に裏返されると無事にオープンとなった。

店内に入ると入口右手には大型券売機が設置されているが、現時点ではメンテナンス中となっていて使用されていない。その代わりに券売機の前に受付カウンターが設けてあり、そこでメニューを見ながら注文をするデポジット方式をとってあった。写真付きメニューからも〝つけ麺推し〟が伝わってくるが、ここは敢えて持論を検証する為に基本のラーメンを注文した。

注文を終えるとカウンターに座り店内観察を始めるが、堰を切ったように続々と客が来店してくる。その客層は夏休みなので地元の家族連れや近所の郵便局の方などと、すでに地元での人気を物語っている。よそ向きな外観とは裏腹に、客層は土地に根付いているのが伝わってきた。そんな地域に密着した客人であふれる店内を、本日は二人体制で回している。客席はテーブル席もある白と木目の色合いを活かしたカフェ風のデザインとなっているが、スタッフさん方の雰囲気から和やかで落ち着いた親しみやすい空気が流れている。そんな店内に流れているBGMがレッドツェッペリンの ♪ 移民の歌だったのがミスマッチで面白く、ブルーザーブロディの登場シーンを思い出した。そこからシンプルな構成の調理場内に目を向けると、シンクの中では小型の寸胴でスープが冷やされている。酸化しやすい動物性油脂を劣化から守る処理だと思われるが、酸化臭のするスープではなさそうなので一安心だ。店主さんの実直な仕事ぶりと奥さまだろうか女性スタッフさんの明るく親切な接客に、とても穏やかな気持ちで待っていると着席して8分ほどしてからようやく調理がスタートした。どうやら茹で麺機の沸騰待ちだったらしく、少し待たされたが中途半端な温度で麺を投入されるよりは賢明な判断である。調理が始まると順調に工程が進んでいき 1st ロットは私のラーメンのみのオペレーションで、着席してから12分かけて我が杯が到着した。

その姿は美濃焼の古代波模様の高台丼の中で、私の知る範囲の豚骨魚介系としては優しそうな表情をしている。見るからに濃度は低そうで、奇をてらった派手な姿ではなく落ち着いている。ただ私にとっては不要なナルトから、得体の知れない成分が溶け出す前にティッシュの包んで隔離した。これで絶景がさらに磨きがかかると、心を鎮めてレンゲを手にした。

まずはスープをひとくち。魚介由来の水泡と大まかな粒子や香味油が浮かんだ液面にレンゲを沈めると、熱い湯気に伴って立ち上ってきた香りは鰹節が主役となっている。店内にもあまり動物系スープの匂いがしてないように、豚骨をメインにしたスープではなさそうだ。それもまた私にはありがたく思いながらスープを口に含んでみると、香りよりも強い鰹の風味が口の中に広がった。どちらかと言えば〝鰹節〟よりも〝節粉〟が主体となっているが、苦手なザラつきが少なく助かった。その背後には動物系のコラーゲンの粘着質を唇に感じるが、臭みがないので豚骨だけでなく鶏ガラも使われているのかもしれない。ここで何となくメニュー名が〝豚骨魚介〟ではなく〝魚介とんこつ〟なのが納得できるスープに思え、とんこつの文字が漢字ではなく平仮名なのもピッタリで店主さんのネーミングセンスの良さに感心した。合わせるカエシは鰹節粉特有の酸味に隠れて高めの塩気が潜んでいるが、麺や具材との相性を考慮しての設定だと思いレンゲを箸に持ち替えた。

麺上げまでジャスト100秒の黄色みを帯びた中細ストレート麺には、少しだけ切刃の角と麺の折り目が残って見える。箸先に伝わってくる重みから加水率は高いと思われ、麺肌の半透明なグルテンを見ても食べずとも食べ応えの良さを想像してしまった。そんな期待をもとに麺を一気にすすり上げると、強いハリを唇に感じながらも極めて滑らかな口当たりで滑り込んできた。他では味わえないような麺質は、大成食品の麺ならば見事に持ち味を引き出した茹で加減に思える。麺の作り手である製麺所と店主さんの思いが完璧に合致しているように思え、この麺に出会えただけでも初訪問した甲斐があった。これでは製麺所ばかりを褒めているようだが、この麺を目利きされて特徴を十分に活かしている店主さんのセンスの良さが素晴らしい。この麺の醍醐味は口当たりだけではなく歯応えの良さも楽しめ、噛めば奥歯を押し返しながらモッチリと潰れる食感の虜になってしまう。そこからは小麦の豊かな風味が生まれてきて、小麦の甘みとスープが重なると新たな世界が広がってくる。すすり心地から喉越しの良さを兼ね備えた麺には心から感動した。

具材のチャーシューは豚肩ロースの煮豚型が大判で一枚入っていて丼の中で見た目の存在感は十分だが、味の方は好みとは違って残念な仕上がりだった。薄味なのは良かったが赤身中心の部位なのでパサついてしまい、豚肉本来の旨みも煮汁の方に持っていかれているように感じた。それでも豚肉の品質が良いので臭みなどは全くないが、少し味気ないチャーシューに思えた。

この時点になって気が付いたのだが、受付で味玉を追加注文したつもりだったが入っていなかった。まさかの注文するのを忘れてしまったようで、自称〝アジタマスキー〟としては大失態を犯してしまった。

極太メンマは適度な食感と無難な味付けで安定感があるが、それがかえって手作り感のない業務用メンマに思えてしまう。

薬味は青ネギの小口切りと白髪ねぎが添えてあり見た目の彩り役も兼任しているが、白髪ねぎの食感は良いとは言えず繊細な仕事には見えなかった。

十字4切の大判の海苔は黒々とした色素が詰まった高品質だと一目で分かる海苔で、スープの中では溶け出さないが口の中に含むと口溶けの良さが印象に残る。また磯の香りも高く、質の良さの上に保存状態にも気を配られているのが伝わってきた。

中盤からは麺がスープを吸って見た目の形状も丸みを帯びてきたが、一切ダレるような事はなく歯応えの良さは増すばかりだ。無我夢中とはまさにこの事で、気が付けば食べ切って丼の中から無くなった麺を探し求めてしまう程だった。しかしスープには若干の旨味の底上げを感じてきたので、舌が疲れる前にレンゲを置いた。

食べ終えて席を立つ時にも、丁寧な挨拶で見送られながら気持ちよく店を後にした。最後まで注文し忘れた味玉が心残りに思いながら、再び荻窪のアジトに戻るためにバス停へと向かった一杯でした。

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「贅沢らーめん ¥1000」@麺Dining Number Nine 09の写真平日 曇天 13:10 先待ち12名 後待ち4名

今にも雨が落ちてきそうな曇り空を見上げながらこう思った。

「今のわたしの心境そのものだ」

本日は恒例の新店めぐりの為に、地震や雨天をかいくぐってまで草加駅までやって来た。それなのに目的としていたラーメン店は、まさかの10日後オープンと予習不足を露呈してしまったのだ。

そこで地の利のない草加駅周辺でのリカバリー先を探してみると二軒の候補店が挙がってきた中で、藁にもすがる思いで駅の反対側へと歩き出した。まずは東口近くの候補店の前まで行ってみると昼時を過ぎているが20名以上の行列があり断念した。

そこから少し離れた場所にあるコチラへと向かってみる。普通の通り沿いに何故か古びた特殊浴場があったりとカオス感満載の道を進んで行くと、先程よりは少ないが行列のある店先を見つけた。直前に降りはじめた雨の中で最後尾に付けて外待ち待機となった。

突然の初訪問となったので下調べをしてない現状で、店頭に貼られたメニューをありがたく熟読するも不得手な〝濃厚〟の二文字が踊るラインナップには少しばかり意気消沈してしまった。覚悟を決めて並んでいるが回転が悪いのか30分ほどで前列の若者を見習って食券を先購入してから並びに戻った。訳もわからず勢い任せで特製らしきラーメンのボタンを押してしまった。そこからも10分以上すると先客が出てきたので空席を確認してから再び店内に入った。

並びはじめてから40分以上でようやくカウンターに腰を下ろして食券を手渡すと店内観察を開始する。瞬間最高年齢を余裕で更新できた若い客層に紛れて店内を見渡すと、多くの女性客が目につく。もしかしたら女性客にも受け入れられるヘルシー志向なラーメンなのかもと一縷の望みを託してみる。店内にはサーフィンのショートボードやサーフムービーのDVDが置かれてあり、店主さんの趣味が垣間見られる。そんな店内を本日はツーオペで切り盛りされているが、寡黙な中でも息の合ったコンビネーションに釘付けになってしまった。

そんな安定感のあるオペレーションを眺めていると、着席して8分で我が杯が到着した。その姿はオリジナルの屋号入りの多用丼の中で、荒々しい景色を見せている。特製仕様と思われる〝贅沢らーめん〟をオーダーしたので別皿で提供されたトッピングたちも記念撮影用にオリジナルで盛り付けてみた。丁寧に別皿の味玉と切り落とし焼豚を盛り付けたつもりだがワイルドに見えるのは、口縁に飛び散ったスープが思わせるのだろう。ここまでくれば自称〝IT系清湯おじさん〟などとは言ってはいられず覚悟を決めてレンゲを手に取った。

まずは丁子茶色のスープをひとくち。初見はやはり均一な乳化を果たした濃厚スープの印象ではあるが、もっとも苦手とする魚粉の浮遊物が液面に見られない。「濃厚魚介=魚粉」の悪いイメージとは違った表情に少し安心してレンゲをスープに落とし込んでみると、レンゲを持つ指先に係る抵抗は非常に重たい。そんなマットなスープからは高温な湯気と共に煮干しを主とした香りが立ち昇っている。レンゲを落とし込んだだけでは微動だにしない液面は、やはり濃厚の二文字がお似合いのスープであった。いざ粘度の高いスープを口に含むと、予想を上回る狂気的な熱さが唇を襲われ危険を感じる程だった。その熱が落ち着くと、思いもしなかった滑らかな舌触りが残っている。しかも味わいとしても穏やかな塩気で、粘度としては濃厚ではあるが味覚の面では強烈すぎるインパクトを感じさせない。もちろん淡麗ではないが対応できそうなスープに感じて、味わってみる事にした。きっちりと乳化されたスープは動物性コラーゲンを思わせるが、不必要な臭みやクセを表に出してこない。この粘度を生むためにはコラーゲンだけでなく、野菜のポタージュ的な要素も多く含まれているのだろう。よって舌触りも軽やかで塩気よりも甘みを感じるスープに仕上がっている。

そんな熱々のスープの中から、まだ見ぬ麺を拾い上げてみる。オーダー時に麺の太さを聞かれ基本の太麺にしたので、かなりコワモテな中太平打ち麺が現れた。たしかに平打ち麺ではあるが、手揉みのような不規則な形状ではなく均一的な波状を見せる。麺上げまで180秒中太麺は、見るからに麺肌に溶け出したグルテンが滑らかな印象を受ける。そのグルテンと作用して持ち上げられたスープの高温に怯むことなくすすり上げると、ヤケドしそうな灼熱地獄が再び襲いかかってきた。実際にも上アゴの薄皮がめくれてしまう程に熱かったが、熱さ耐性だけは持っている私には有難い事である。しかしこの麺とスープの熱さでは女性客も多いので回転率は悪くなるのも納得できた。あまりの熱さに具材を先に味わってみる。

なんと言っても具材のセンターは豚バラチャーシューであろう。最初は小ぶりに見えた煮豚型のチャーシューは、その厚みがファミコンのカセットくらいあるのには驚いた。そんな分厚いチャーシューにもスープの熱さが伝わっているのではないかと思い、無意味とは思いつつもファミコンのカセットのバグ改善のためと同様に息を吹きかけてみた。それが効果があったのかは別にして、提供直前にバーナーで軽く炙られたチャーシューは適度に崩れる常温まで戻されていた。そんな豚の角煮とも思えるチャーシューに箸が触れただけで、赤身と脂身が分裂した。本来ならば得意ではない豚バラの煮豚を食べてみると、とろけるような脂身が主体となってアピールしてくる。柔らかさだけでは申し分ない食感ではあるが、脂っぽさも感じてしまうようなチャーシューだ。バランス良く整った赤身の部分は赤身の繊維質ばかりが口に残ってしまい、全てを柔らかく仕上げた結果として肉を喰らう楽しみは残ってなかった。卓上のウンチクにはハーブを使用していると書かれていたが、ほのかに香るのはローリエだろう。肉の臭みを見事に消して香草としての役割を果たしていた。

それに加えて切り落としの煮豚も煮汁と共に別皿で供されたが、撮影用に器に投入する際にかなりの煮汁も入ってしまった。それがスープの味をより濃くしてしまったのかもしれない。また肉片の方はライスの上だと本領を発揮しそうな柔らかさであったがラーメンの中ではいつのまにか姿を消してしまい、スープの底へと沈んでしまっていた。時々レンゲにすくわれて口の中に入ってくるが、肉の繊維質ばかりが残ってしまい大きな必要性を感じなかった。

味玉はストレスを感じない程度に温め直されてる上に、高温スープで更に加熱されていた。そんな熱々の味玉を唇で割ると中からは適度にゲル化した黄身が現れ、濃密な舌触りが口内に張りめぐった。この感覚だけは良く分かったが、味付けの方はスープに負けてしまって実際には感じられなかった。

薬味は青ネギとタマネギ彩りの面でもアクセントをつけていた。タマネギアッシェの方はみずみずしい切り口でタマネギ本来の甘みと辛みがスープに味の変化をもたらしてくれたが、青ネギの方は乾いた切り口からも想像できたが切り置きの時間が長く香りも食感も失われていた。そんな青ネギには業務用カットねぎを使用しているのではとも思ってしまった。

それに対して黒々として密度も濃く、表面の照りがまぶしい海苔は肉厚がしっかりとしている。繊細な口溶けを楽しむタイプではなく、強いスープにも負けない噛み応えと味わいを楽しめる。香りも高く高品質の海苔を目利きされていると感じた。

序盤はスープの熱さで先送りにした麺に戻ると、多少の変化はあるが力強さは失せていない。先程よりもスープの温度は若干落ち着いてはいるが、それでもまだまだ高温をキープしており麺を一気にすすり上げるには勇気が必要だった。口の中に飛び込んできた麺を噛むと、みっちりと詰まったグルテンが高弾力を生んで奥歯を跳ね返そうと押し返す。そんな攻防が楽しく反発力に負けじと噛み切った麺からは小麦の甘みが弾け飛ぶ。小麦の香りは少ないが甘みを引き出すスープの塩気にようやく感謝した。その後も咀嚼の楽しみのおかげで8割程度の麺は食べられたが、終盤にかけては中年おじさんには味の強さに舌が疲れてしまい箸とレンゲを置いた。

スープはほとんど残してしまったので丼の底には他の具材があったのかもしれないが、確認できずに席を立った。この時にも私よりも15分以上も前に入店した二組のカップルたちの女性どうしがゆっくりと食べていた。となりに座っている彼氏たちはもちろん食事を終えていたが、女性陣たちが食べ終えるのを談笑しながら待っている。それを見た時に「最近の若いもんは」と年寄りくさい事を思ってしまった自分が悲しくもあり、誇らしくも感じた一杯でした。

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「味玉中華そば ¥900」@俺の麺 春道の写真平日 晴天 13:20 外待ち6名 後待ち8名

〝ニューオープン パトロール〟

本日は連食での新店めぐりを計画している。前食の大塚から山手線にてやって来たのは、新店ではなかったが移転して間もないこちらなのだ。つい先日に知った移転情報なのだが移転前には未訪問のままだったので、これを機に初訪問を決意した。

RDBのお店情報によると、つけ麺が主軸のようでラーメン派の私には一抹の不安はあるが経験値を上げるためにチャレンジを決めた。午前中の前食から二時間ほど空けて新宿駅に着くと、西口改札を出て5分ほど歩くと大きな西新宿一丁目交差点に架かる横断歩道橋のたもとに看板を見つけた。歩道橋を駆け下りるとビルのエントランスと階段には多くの行列が並んでいる。先に食券を購入して地下へと降りる階段の最後尾に並んだ。

その後も続々と後列が増えていくが、行列を見て諦めていくサラリーマンの数の方が並びよりも多かったように思う。それだけランチタイムの争奪戦は一刻の早さが大切なのだろう。その昼時の厳しさを分かってか、客の回転は早く10分もせずに入店の案内があった。カウンターの右隅の席に座り店内を物色する。

つけ麺が主力商品のようなので客層は若い男性サラリーマンが9割を占める。残りは女性客が一人と、私おじさんが一人である。本日も瞬間最高年齢を余裕でゲットした。卓上のウンチクには注文した中華そばにも苦手な〝超濃厚〟の文字が踊っている。下調べ不足が露呈してしまったが〝こってり耐性〟の強化に繋がればと言い聞かせる。そんな店内を本日は三人体制で回している。広くはない店内に目一杯に客席を設けてあるので、厨房内はかなり狭い。スープを炊いたりチャーシューを仕込むスペースがあるのだろうかと不思議に思ってしまうほどにタイトな調理場だ。そんな調理場で客の回転を読みながら提供時間を計算して仕上げているので、回転が早く効率が良いのだろう。そんなスムーズな作業を眺めていると、着席して6分で我が杯が到着した。

その姿は高台丼の中で、如何にもな表情を見せている。つけ麺推しの店のラーメンによくある雄々しい勇姿に圧倒されつつも、見た目だけで負けないように気持ちを強くしてレンゲを手にした。

まずはスープをひとくち。マットな質感の液面にレンゲを沈めると、押し込む指先に強い抵抗を感じる。その感覚だけで超濃厚が嘘ではない事を悟った。恐る恐るレンゲを口元へと運ぶと、後付けの鰹節の香りが鼻先をくすぐった。それを魚粉と感じながら口の中に入ってきたスープには、思ったほどの苦手なザラつきがなく滑らかな口当たりだ。また豚骨魚介にありがちな味の濃さも感じないので、見た目とは少し違って印象は悪くない。豚骨魚介だけでなく鶏ガラも加えてある事が、超濃厚ながらもしつこさを感じさせない理由だろうか。スープだけを飲むには難があるが、麺との相性は良さそうなので麺に取り掛かってみる。

麺上げまで210秒の中太ストレート麺は、持ち上げた箸先からも一本あたりの重量が伝わってくる。切刃のエッジが見られない丸みを帯びた麺肌には軽やかな透明感がある。食べずとも豊富なグルテンを蓄えているのが分かる多加水麺だ。さすがにこのスープの濃度と麺質なので珍しく紙エプロンを装着して一気にすすり上げると、麺尻が大きく揺れて案の定スープを飛び散らせた。ワイルドなラーメンにはワイルドな食べ方でと挑んでみたが、二口目からは大人しくすする事にした。丸みのある麺肌ならではのすすり心地の良さに加えてスープと良く絡む麺質なので、ひとくち毎にスープと麺のコンビネーションを味わえる。これも予想外に穏やかなスープのおかげで楽しむ事ができた。また歯応え、歯切れともに良好で食べ応えも十分だった。

具材のチャーシューは豚肩ロースの低温調理が美しいロゼ色で盛り付けられている。一見すると生っぽいレアチャーシューかと思ってしまったが、加熱温度と加熱時間を守られた安心できるレアチャーシューだ。しかも豚肩ロース本来の旨みも残しつつ、香辛料の効いたソミュール液の下味が浸み込んでいるのでより旨みの強いチャーシューに仕上がっている。この色合いのレア感のあるチャーシューの中では群を抜いて味わい深いものだった。

追加した味玉は王道たる熟成感もありながら、卵本来の旨みも引き出されている。少しだけ半熟具合が硬いのと、提供温度の冷たさがなければ私の勝手な〝味玉論〟に近かっただけに残念だ。

極太メンマには作り手の大きな愛情を感じられなかった。それは業務用メンマのような個性のない味付けと、面白みのない食感から思ってしまった事だ。いつでもどこでも食べられるような安定感も大切だが、出来不出来はあっても手仕込みのメンマを食べてみたいのが本音だ。

薬味は白ネギが細かく刻まれて添えてある。粗々しい切り口だが、スープには良く合っていると思う。辛味も食感も強めだが、全体的にはバランスが保たれている。海苔はスープに負けて香りは感じられなかった。今回も諸事情でナルトは口にしなかった。

なんとか苦手なジャンルのラーメンと戦ってきたが、徐々にスープの塩気と旨味が重なってくると許容範囲を越えてしまって箸とレンゲを置いた。スープは全量、麺は二割ほど残してしまったが、少しは〝こってり耐性〟が上がったのではと思った。

失礼ながら随分と残してしまったラーメンに別れを告げて店を出ると、まだまだ知らないラーメンがある事に気が付いた。そこで見上げた新宿の超高層ビル群に埋もれる自分自身の経験不足を痛感する事になった一杯でした。

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「あごだし白湯らぁめん ¥780+半熟玉子 ¥120」@ひばりの写真平日 晴天 11:15 待ちなし 後待ち10名

令和改元記念 特別企画

〝諸国麺遊記 中国編〟

先月に開催したラーメン旅の東北遠征に続いて、本日は山陰地方を巡る旅に出発する。

ゴールデンウィークもようやく終わり、交通機関が平常を取り戻したのを見計らって島根行きの航空チケットを手に入れた。羽田発 出雲縁結び空港着 7:25 JAL277便に乗るために午前5時半に自宅を出て、品川駅から京急線を乗り継いで羽田空港第1ターミナルに着いた。フライト予定時刻の50分前に着いたので、搭乗口にある荻窪の老舗ラーメン店監修の中華そばに気を引かれたが、味の察しがついたので食べずにラウンジで軽めの朝食をとった。

搭乗案内が始まり座席番号2Gに着席すると定刻通りに羽田空港を離陸した。飛行時間は1時間と少しで午前9時ちょうどに出雲縁結び空港に着いた。座席が2列目だったので先頭でゲートを出ると、急いでリムジンバス乗り場に向かった。ギリギリで 9:05発の松江駅行きのバスに間に合うと、宍道ICから山陰自動車道に入った。せっかく島根県に来たのに出雲大社方面へは行かずに松江方面に向かったのは、もちろん今回の旅の目的であるRDB総合ランキング島根県第1位に君臨するこちらに向かうためである。

海のように大きな宍道湖を眺めながらリムジンバスに揺られること35分ほどで松江駅に着いた。今月の初旬に二日連続で食べた「宍道湖しじみ中華そば 琥珀」のシジミがここで採られたものだと思うと大変に感慨深い。開店時間まで余裕があったので、松江駅周辺の観光を少し楽しんでから11時半開店前の現着を目指した。市営バスにて松江城を眺めながら歴史を感じる城下町を進むと最寄りの塩見縄手バス停に12分ほどで着いた。そこからは歩いてもすぐだったが、開店時間の45分前では並びはないが準備をしている様子が外からでも分かり臨休は免れて一安心した。初夏の日差しを避けるために少し離れた大きな松の木の下で待つ事にした。目の前の松江城のお堀には、船頭さんにガイドされる小さな遊覧船が往来している。ほんの少しだけ観光気分を味わうと店先に戻った。

定刻の15分前だったが行列は発生しておらず先頭にて待機すると、すぐに後続が増えた。味わいのある店先の幟旗にはオススメらしい「あごだし白湯らぁめん」の文字が揺れている。メニューの中でも一番大きく写真が載っているのも同メニューなので、本日のお題はこれに決めた。

定刻になる頃には行列も二桁を超えていて、少し早くオープンとなった。店内に入ると券売機はなくカウンターの卓上メニューで確認してから、決めておいたお題を告げた。興味のある半熟玉子だけは追加してみた。左手の壁沿いに設けられたカウンター席なので店内を見渡すのが難しいが、さりげなく物色してみる。

ほとんどがテーブル席で中待ち席も多くある広めの店内だ。田舎の食堂のような調理場が奥にあるので全く見えず、何人体制かすらも分からない。ただホールは女性一人で仕切っているので多くても三人体制ではなかろうか。店内の壁には毎年のように受賞されているポスターが誇らしげに貼られている。本日の客層は地元の方が多いが並んで待っていた人の中には関東弁の方もいたように思う。私のような時期外れの休日を満喫している観光客だろう。

オーダーを告げてから2分もせずに我が杯が到着したのには驚いた。その姿は、いびつな形状の器の中で色んな要素を含んだ景色を見せている。メニュー名は白湯だが、味噌ラーメンのような具材があったりもする。そんな島根県を代表するフュージョン的な容姿を見ながらレンゲを手にした。

まずは不得手な魚粉を崩さぬように白濁したスープにレンゲを沈める。すくい上げたスープからは白湯系の重みを全く感じない。指先の感覚だけだと清湯系かと思ってしまいそうだ。そのレンゲを口元に近づけてみると、軽やかな魚介系出汁の香りが鼻先をくすぐった。いざ口に含むと、サラリとした口当たりで予想以上の軽やかさだ。旨みとしては鰹節や昆布由来の魚介出汁と、とてもサッパリした豚骨ベースが基礎となっている。スープの分類を悩んでしまうが、白湯系ではあるが鶏ベースではないので私は豚骨魚介とした。またカエシも出汁の香りを活かすためか、非常に穏やかに仕立ててある。初動では薄味志向の私でも物足りなさを感じるくらいの塩気だった。

次に麺を持ち上げてみると、透明感のある黄色みを帯びた麺肌が懐かしさを醸し出す中細ちぢれ麺だ。お洒落な器や盛り付けに対して、あまりにも王道な中華麺だったのは意外だった。調理場が見えないので定かではないが、麺上げまで60秒未満に感じる麺質だ。そんな麺を啜ってみると、ハリの強いちぢれ具合が口の中を跳ねまわりながら刺激する。カンスイ臭はないが、カンスイならではの独特の歯応えも特徴的だ。スープの淡白な濃度や麺肌のグルテン質の少なさなどからスープと麺の相性が良いとは思えなかったが、食べ進めていくうちに色んな要素を取り込んで好相性へと変化していった。

具材のチャーシューはシンプルな豚バラの煮豚で周囲を軽く炙ってある。脂身は甘く柔らかで、赤身は肉質を残した仕上がりなのでバランスがとても良い。さらに適度な味付けが豚バラ本来の旨みに加わる事で一つ上のステージへと昇華している。

追加した半熟玉子は味玉でなく残念だったが、メニュー名にも「半熟玉子」と書かれてあるので味付けに関しては望んではいけない。逆に半熟玉子としては卵の質も良く、下茹での半熟加減も申し分ない。味玉だったら減点すべきだが、半熟玉子としては満点を与えなくてはならないほどの仕上がりだった。ただ〝味玉論者〟としては寂しい具材ではあった。

薬味は、茹でモヤシが香りと食感の両面でサポートしていた。鮮度の良さが食べた瞬間に分かる新鮮なモヤシを、茹で置きしてないところに店主さんの拘りを感じる。

また味噌ラーメンの要素を取り入れた味噌玉も徐々に持ち味を発揮して、最終的にはスープの塩分や濃度をアジャストする重要な役割を果たしてくれた。静かな幕開けだったスープに次第に旨みと塩気と辛味を重ねてくる味噌玉の存在感はとても大きく感じた。不得手なはずの魚粉がスープに溶け出した時に〝あごだし〟を感じる事が出来た。粗雑な節粉のようなザラつきや苦味がなく、あご節粉ならではの気品のある香りと舌ざわりが重なる事でスープの旨みが完結する設計図には感動すら覚えた。

最終的には全てを美味しくいただいたが全体のバランスとしては、もっと一体感を感じられたら良かったと思った。しかし今回の中国遠征のスタートとしては良い出足となった。誰よりも早く食べ終えて店を後にしたが、今後のプランは何も決まっていない。とりあえず松江駅に戻って次の計画を立てようと帰りのバス停へと向かう一杯となりました。

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「味玉濃厚豚骨魚介らーめん ¥950」@麺処 はら田の写真祝日 晴天 10:30 先待ち1名 後待ち7名

〝ニューオープン狙いうち〟

今週も引き続き新店参りを楽しんでいるゴールデンウィークも後半に差し掛かった本日も、早朝からRDBの新店情報を頼りに候補店を探している。すると偶然なのか狙ったのかは分からないが令和元年の初日にオープンした店が次々と挙がってきた。たしかに一日オープンとなれば賃料の効率も良いし、オープン日のイメージも印象に残る。ましてや〝大安〟と縁起も良いとなれば申し分ない日だ。そんなおめでたい日にオープンされたコチラがヒットした。

お店情報によると所在地は南浦和と馴染みのない場所のながら、自宅からは一度の乗り換えでたどり着けるようだ。また店主さんは有名店での修行経歴の持ち主のようでラーメンへの期待も高まり、本日の初訪問を決意した。

11時半の開店前の現着を狙って午前9時半には自宅を出た。埼京線で赤羽駅まで行き、京浜東北線へと乗り継げば35分ほどで最寄りの南浦和駅に着いた。記憶では初上陸となる駅に興奮しながら東口を出て高架下沿いを真っ直ぐに歩いて向かうと、黒い看板が見えてきた。と思ったら二軒先の寿司屋の看板だったが、似たような屋号だったので見間違えてしまった。

実際には手前の白い看板がこちらの店先で、開店一時間も前なのにすでに並びが発生していた。それでも何とか二番手をキープして、わずか二席の外待ちベンチをゲットできた。するとすぐさま道路を挟んだ向かい側に7脚の丸イスが置かれて行列を待つ受け入れ態勢が整った。

待ち時間の間に本日の品定めを店頭のメニューを見ながらしていると「醤油そば」と「塩そば」のメニューは近日販売となっている。という事は必然的に「つけめん」だけの販売となる。これまでの一年間をラーメン愛だけに捧げてきたのに、まさかのつけめんを食べる事になろうとは思ってもみなかった。しかし twitterではラーメンも販売しているとなっているのを信じて一縷の望みに託して行列を外れる事はしなかっが、定刻30分前でも並びは4名と少し拍子抜けしてしまった。せっかくのシャッター待ち二番手だったが、軒先きが短いので正午前では完全な日陰にならない外待ちベンチは暑さとの戦いでもある。対面の三番手以降の待ち席の方が高架の影になっているので随分と涼しそうに見えて羨ましく思えた。

店先にはお祝いの花が飾られているが修行先の系譜を物語るように、平仮名と漢字まじりの店からの花が多い。私が祝い花を贈るなら「麺処 のら野良」となるのだろうが、どう見ても不味そうだ。そんなくだらない事を考えているうちに、定刻15分前になると並びも増えて外待ち席は全て埋まった。定刻寸前にも行列は増えずに総勢9名だけの外待ち待機でオープンとなった。

真新しい白い暖簾をくぐり右手の券売機の前に進むと、お目当てだった醤油そばのボタンには× 印になっていた。仕方なくつけ麺のボタンを押したが、後客がラーメンありますかとスタッフに尋ねていた。すると醤油そばではないが豚骨魚介らーめんがある事を知り、慌ててスタッフに変更を告げた。これで今まで貫いてきたラーメン愛を裏切らずに済んだと胸をなでおろした。

安堵の思いに包まれながらカウンターに座り店内観察をはじめる。縦長のカウンター席だけの客席の奥には独立した厨房が見える。手元の調理工程は見えないが明るく清潔感のある店内だ。本日はオープン直後とあってか、ご家族らしき四人体制で回している。しかし調理の全てを店主さんが担っているので現段階では回転率の悪さは仕方なく思えた。さらには慎重で丁寧な調理作業からも提供時間がかかっているようだが、早くから並んだ食べ手としてはありがたい。

随分と早くから準備されていたのだろうか、卓上のウォーターピッチャーの中の氷は溶けてしまい冷たくない水を汲んで飲みながら待っていると、着席して13分の 1st ロットにて我が杯が到着した。先客はつけめんをオーダーしていたので茹で時間などからトップバッターでラーメンが提供された。過去にはつけ麺推しの店でラーメンを注文して先頭客なのに後回しにされた経験が何度もあるが、こちらはつけ麺を茹で置きなどせずにツーオーダーされている点が好印象だ。

その姿は白磁に藍色の紋様が入った反高台丼の中で、馴染み深くはないが知っているような表情で出迎えてくれた。得意ジャンルではないので第一印象は良いとは言えないが、先入観を払拭してくれるかもと期待を込めてレンゲを手に取った。

まずはスープをひとくち。最も苦手な魚粉を崩さないようにスープにレンゲを沈めてみると、思ったほどの粘度の抵抗が少なくスープをすくい上げられた。そのレンゲからは豚由来の動物系の香りが鼻先に届いた。いざ口に含むと動物性油脂が見事に乳化した少しマットな口当たりたが、不得手な舌触りの悪さを感じない。メニューに掲げられた〝濃厚〟の二文字の印象は和らいだ。また極度な動物性コラーゲンのベタつきが無いのも穏やかに思える要因かと。また潰して炊かれた魚介出汁のザラつきも少ないのも私にはありがたい。カエシは高めに設定してあるが麺との相性を考えての濃さだろうと、スープ単体で飲まなければ攻略できそうだと思った。

続いて麺を食べてみる。麺上げまで240秒は越えていると思われるストレート太麺を箸で持ち上げてみると、しっかりとした重みが箸先から伝わってくる。重厚感のある麺質がスープをまとうと、いかにも豚骨魚介系らしい表情となった。周囲にスープが拡散しないようにゆっくりと啜ってみると、麺一本あたりの体積が大きいので数本だけで口の中がいっぱいになる。麺肌のグルテンが溶け出し始めているが、芯部には強いコシが残っている。高加水のみっちりとした麺を噛みつぶすと、奥歯を跳ね返しながらも歯切れは良い。やはりこのタイプの麺じゃないとスープの強さに負けてしまうのだろう。麺のチョイスや茹で時間も素晴らしく、店主さんの経験の豊かさが見えた。

具材は部位と調理法の異なるチャーシューが一枚ずつ。先に美しくロゼ色が発色した豚肩ロースの低温調理から食べてみる。食べる前から心配だったのは、切り分けられた部位が大判な肩ロースを半分にカットした赤身よりも脂身の多い部分が入っていた事だ。この部位はスジ切りの下処理が疎かだとスジが残ってしまう事が多くある。しかもかなりの肉厚にスライスされているので心配は増すばかりだ。恐る恐る口に運ぶと嫌な予想が的中してしまった。とても柔らかく味付けも適度なのだが、全く噛み切れない。何度も噛んでみたがいつまでも口の中に残り続ける。あまりの硬さに口から出してしまった。一方の豚バラの巻き型煮豚も厚切りだが、程よい食感を残して崩れていく。直前に脂身を炙ってあるので香ばしさも加味して美味い。今回は豚バラ焼豚だけで良かったと思ってしまうほどに肩ロースの方は残念な仕上がりだった。

追加した味玉は持論の〝味玉論〟からは外れた熟成感の乏しいタイプではあったが、強気なスープの中では程よい味玉なのかも。きちんと温め直されてあり、白身の旨みや黄身のコクは感じられる卵本来の持ち味を楽しめる味玉ではあった。

極太メンマは正直どこでも味わう事ができる具材で、手作り感が伝わってこない残念な一品だった。しかしメンマも常温以上に戻してありスープの温度を下げるような事はなく良かった。ただ硬めの食感が特徴のメンマの縦の繊維を噛んでいる時に店内に流れていたのが、中島みゆきの「糸」のカバー曲だったのには笑ってしまった。

薬味は厚めに小口切りされた白ネギが力強いスープに負けず、辛味や食感でアクセントを与えてくれた。また苦手な魚粉もいつのまにかスープに溶け込んでしまったが、細やかな微粒子の節粉だったせいか舌触りを悪くする事はなかった。香りづけのすりおろした黄柚子ソルベも麺を食べているうちに姿を消していたが、柑橘系特有の清涼感を微かに感じた。海苔の風味は記憶にないくらいに薄かったようだ。

中盤からもスープの強気な旨味と戦いながらも麺は食べきった。スープはひとくちも飲めなかったが、麺との相性はとても良かった。本来なら噛み切れなかったチャーシューは紙ナプキンに包んで捨てるべきだったかもしれないが、何か気付いてもらえればとスープの中に残して席を立った。

今回のレアチャーシューは下処理不足とかではなく加熱温度が低すぎたのか、設定時間が短すぎたのだと思う。たまたま今回だけの結果だと思うが、私には残念な部位が当たってしまったようだ。店を出ると第二陣の外待ちも10名程と噂のような行列ではなかった。

オープン特需が更に落ち着いて、オペレーションが慣れてきた頃には新たな基本メニューも解禁となるだろう。その時にはまた来てみたいと「醤油そば」に大きな期待をしてしまう一杯でした。

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「ラーメン ¥750+味玉 ¥100」@頑者の写真平日 晴天 14:05 先待ち20名 後待ち8名

〝小江戸川越 二泊三日ラーメンめぐり〟

いよいよ川越行脚の最終日を飾るのは、やはりコチラではないだろうか。苦手ジャンルの豚骨魚介系ではあるが以前から訪問したかったのにもかかわらず、なかなか叶わずに今日まできた。しかし今回は川越に宿をとってまで来ているので行かなくては後悔が残ると思い、前食の「麺屋 彩〜iro〜」から間髪入れずに歩いて向かったきた。

それと言うのも本川越駅のバス停を利用した時に、コチラの行列のすごさを何度も目にしていたので並び時間を考えての早めの現着を目指したのだ。クレアモールの中を脇目も振らずに突き進むと15分程度で店先が見えてきた。

昼のピークは過ぎたと言っても行列が止むことはなく、並びは通りの角を越えて延びている。この並びに続いている間に胃袋の消化が進むことを期待して最後尾に続いた。平日なのに学生が多く見られると思ったら春休みシーズンの真っ只中だ。そう思えば若者の観光客も多く目にした。なかなか渋い遊び方を知っているようだ。

着実に前へと進んでいき40分並ぶと、わずか五脚の外待ち椅子に昇格。案内の前に食券を先買いするシステムなので一度入店。内装に合わせて木目のカッティングシートが貼られた券売機でセオリーを無視し、ラーメンと味玉を発券してホールスタッフに渡した。そこからは10分せずに入店の案内があった。カウンターに腰を下ろして薄暗い店内を見渡すと、高級感のある白木のカウンター上だけは明るいダウンライトが照らされている。清潔感のある厨房に二人とホール一人の三人体制で仕切っている。店内には凛とした緊張感のある空気が張りつめているが、それもまた心地よく感じる。先客陣は全員が、つけ麺を食べているのが不安になりながら待っていると着席後7分で我が杯が到着した。

その姿は白磁に鳳凰の描かれた反高台丼の中で思いのほか威圧感のない表情をしている。見るからにつけ麺人気店のラーメンのような表情ではあるが、ドロドロとした濃度のスープではなさそうだ。丁寧に整えられた盛り付けも好印象だ。

まずは煮干し由来の水泡が浮かんだ焦茶色のスープをひとくち。スープの中にレンゲは抵抗なく入っていくが、かなりの油膜が液面を覆っている事に気付いた。完全乳化したスープではなく二層になっているタイプだ。出来るだけ油膜を避けてスープを口に含むと、豚骨などの動物系と鰹節や煮干しの魚介系のバランスがよくスープの粘度も少ない。力強さはあるが重たさの少ないスープだったのは予想外だが私にはありがたい。少し時間が経っただけでスープの茶色の色調が薄らいでいくのが分かったので、つぶされて粉砕された魚介の粉がスープの底に沈んでいるのが予想できた。心配していた塩分の高さも私の中の限界値ギリギリではあったが、飲み干さなければ問題はなさそうだ。それよりも非天然由来の旨味成分の量の方が気になった。

オリジナル麺箱に積み上げられた自家製麺は麺上げまで240秒の少しだけ波打った太麺だ。色白の麺肌はぽっちゃりと膨らんでいて加水率は高そうに見える。そんな麺をひと啜りすると麺の美味さがダイレクトに伝わってきた。加水率の高さからスープを全く寄せ付けない麺のハリが、幸いにも強気なスープと絡まずに口の中へと入ってきてくれた。これをスープと麺の相性が悪いと言って良いのか分からないが、私にとっては返ってその方が助かった。これにはスープの粘度の低さも関係していると思うが私には嬉しい組み合わせだった。それなので麺のハリやコシのある弾力を口の中全体で楽しんでから胃袋に落とし込む。中盤になってもスープとの絡みは変わらずに麺の旨みを楽しめた。周囲のつけ麺の麺とは形状も違っているが、ここの麺ならばつけ麺も美味いはずだと思えた。

具材のチャーシューは豚バラの巻き式煮豚型で脂身の白さが印象に残る。箸でつかむとホロっと崩れるような柔らかさも特徴的。それに負けず味付けもオリジナリティに溢れていて、他所では食べた事のない風味が脂身にしっかりと移っている。燻製のように派手ではないが、何とも言えない食欲をそそる香りが素晴らしい。周囲のつけ麺を食べている客人たちのほとんどがチャーシューを追加しているのも納得のいくクオリティだ。

追加した味玉は絶品のチャーシューにも引けを取らない仕上がりを見せる。優しいながらも黄身までしっかりと熟成されたネットリ感が舌にまとわりついて堪らなく美味い。これまた独特の風味が浸み込んでいるのが個性的な味玉だった。しかし表面は温め直してはあるのだが芯温が冷たかったのが残念ではある。

細板メンマには強めの醤油の色素を感じるが、噛みしめても強い味は浮かんでこない。コリコリとしたリズミカルな歯応えで麺の食感をサポートしてくれた。目立たないが名脇役のメンマだった。

薬味の白ネギはスープに浮かんでいる時には荒々しい食感と辛味を打ち出していたが、熱々のスープに浸すことで加熱された白ネギの甘みに変化する。また粗く感じた食感も幾分か穏やかになるとザクッとした感じから、シャキッとした食感に変わり麺やチャーシューに甘みとアクセントを加えていた。

十字15切の海苔も香りは立ってこないが、しっかりとした厚手の歯ざわりを楽しむタイプの海苔だった。ナルトも今回は出生地不明によりパスした。

謎の強い旨味を感じてきたのでスープには手をつけられなかったが麺の美味さに引っ張られ、本日の三食目ではあったが完食して席を立った。

よくよく考えてみると、今回の川越行脚では同グループの系列店には三店舗もお世話になった。スープの仕様や麺の太さや形状は違っても、いずれの麺も力強く個性的であった。これから本日は久しぶりに都内に戻ることになるが、その前に無事に今回の川越巡業を終えられた事を感謝したい。それを記念して独り打ち上げでもしようかなと、平日の夕方前から呑める居酒屋探しに奔走する事になった一杯でした。

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「ラーメン(太麺)¥770+味玉 ¥100」@ラーメン ひかりの写真平日 晴天 20:20 先客10名 後客2名

〝小江戸川越 二泊三日ラーメンめぐり〟

夕方に食べ終えた「麺屋 旬」の後に昨日と同様にホテルに戻り大浴場のサウナに直行した。格別のうまさを放つビールを吞むと、胃袋が刺激されたのとサウナ効果で小腹が空いてきた。現在時刻は午後7時半と平日とはいえ深い時間帯に入ってきた。ダメ元でこれから行ける候補の店を探しているとコチラがヒットした。

しかし、また移動手段が車しかないような立地が訪問意欲を失わせる。ここで諦めるべきであったが、酒の勢いも手伝って遊び心に火がついてしまうと、車でしか行けない場所なら車で行けばいいじゃん的な、安直な発想がひらめいた。自家用車は無くともタクシーがあるではないかと、この時点では帰り道の事など全く考えもせずにタクシーに飛び乗った。こうして本日の四食目(2日で8食目)への挑戦が始まった。

これから向かっても午後9時までの営業時間内には十分に間に合うはずだと駅前で拾ったタクシーで田んぼの中を走ること約20分で大きな工場が立ち並んだ脇に佇む店先に着いた。運良く暖簾も上がっておらず、外待ちベンチに並びもない。しかし勢いで来てしまった店先の軒下の券売機の前で立ちすくんでしまった。そう言えば何の予習もしてこなかった事を思い出した。券売機のボタン一杯に並んだ豊富なメニューだが、昼の部と夜の部で別れているようだ。散々と悩んだ挙句、そんな中で夜限定のラーメン(太麺)とだけ書かれたボタンを押した。興味があるので本日だけで四個目となる禁断の味玉を追加した。(本当に禁断なのはラーメンなのだが)

店内に入ると、この時間帯でも半分くらいは席が埋まっていた。食券を手渡し正面のカウンターに座り店内を物色する。カウンター席と両サイドには小上がり席が設けてある。片方では家族づれが食事とビールを楽しんでいる。その他の客層は圧倒的に男性陣が多い。しかも皆んな屈強な肉体を持った作業服姿の働く男たちだ。店内に置かれている漫画週刊誌を読んでいたり食後も談笑しているような、のどかな雰囲気だ。内装にもガタがきている所もあるが、それもまた味である。初めてなのに落ち着けるのは店を切り盛りする三人のスタッフの優しさもあるのかも知れない。

そんな中でくつろぎながら待っていると着席して8分程で我が杯が到着した。その器は黒い多用丼の胴の部分に茶色の刷毛目が描かれている。その中の姿は大胆不敵な表情を見せているが、野暮ったさや泥臭さなどは全く感じない。むしろ丁寧な盛付けが品良く映る。

まずは柴染色のスープをひとくち。レンゲをスープに差し込んだ瞬間の抵抗は随分と軽やかで粘度は高くなさそうだ。下調べもせずに来てしまったが周囲はつけ麺を食べてる客が多いので、巷によくあるつけ麺屋の豚骨魚介系なのは察しがついていた。しかし見た目とレンゲを持つ指先からは想像した荒々しさがなく好印象だ。この良いイメージのままでスープを口元に運ぶと私の中の割合の感覚は、豚骨 5.2 対 魚介 4.8といった所だろうか。魚介系の節よりも豚由来のコラーゲンを若干と唇と舌に感じる。そのやや強めの豚骨スープだが独特の臭みがないのが驚いた。豚骨に臭みが無いので煮干しなどで打ち消す必要がなく、つぶした魚介系のザラつきもかなり少なく抑えてある。スープに旨みがある分、カエシも主張し過ぎずに控えられるので結果として全てが丸く収まっている。

麺はタイトルに太麺とあっただけに、麺上げまで250秒にも耐えうる強さを持ったストレート太麺。加水率の高さとグルテンの高密度が重なって、今にも弾けそうに麺肌が張りつめている。最初は二本ほど持ち上げて一気に啜ってみる。ストレートながら一本の麺に重みがあるので啜り上げた麺尻が大きく左右に揺さぶられると、所かまわずスープを撒き散らす。それに気が付くと、ふたくち目以降は顔を器に近づけて至近距離で啜る事にした。その持ち上げたスープが誇張しすぎないので麺の本質的な旨さを存分に味わえる。初期段階でもベストな麺質だと思うが、少々の事ではヘタれるような麺ではなさそうなのでじっくりと味わいたい麺だ。

具材のチャーシューを箸でつまんで驚いた。感覚的には百万円の束よりも厚みがある。実際に百万円の束を目にする機会がないので信憑性が乏しいのは否めない。そんな極厚切りの豚バラの煮豚型が、スープに隠れて目立たぬように乗っているのも思慮深くて好感が持てる。大きさと厚みだけが全てではないので食べてみようと箸で持つと、赤身の筋肉と筋肉をつないだスジの部分からブロックのように崩れていく。逆に筋肉のかたまりは形をとどめて崩れない。その赤身質のブロックを口に入れると筋肉の太い繊維質を感じさせながら解けていく。そんなブロックがいくつも存在しているが、それぞれに歯応えや口溶けに違いがあって、一枚の豚バラチャーシューなのに何通りもの食感が味わえた。それに加えて味付けの良さは語る必要がない無敵のチャーシュー。

追加の味玉はスープに配慮してだろうが、かなり薄味で仕上げられている。バランスは悪くなるかもしれないが、個人的な好みでは熟成でネットリとした黄身を内に秘めた味玉を求めてしまう。しかし温め直してある辺りの仕事の細かさは伝わってきた。

板メンマには手仕事感はなかったが、不揃いな形状が食感の違いを生んでアクセントにはなってくれた。また大量に添えてあるので何度もアクセント役を演じてくれた。

薬味の白ネギの小口切りはお世辞にも高品質とは呼べないが、粗雑な荒々しい香りと食感が、かえって個性となってスープや麺に絡んでいたのかも。これが辛味や香りを抜いた繊細な白髪ネギだったら存在感は出し切れなかっただろうと思った。なので高級品ならずとも価値は十分にある事を教えてもらった。

その存在価値を、どうしても青みのカイワレには見出せず残念だった。

本来は得意ジャンルではない豚骨魚介の中でも暴力的でないタイプがある事を学んだ。だがそんなタイプのスープでも謎の旨味が全体のバランスをとっているのも分かった。きっとわずかなので投げ出すような事はなかったが、少々残念でスープは残してしまった。

しかし大変おいしくいただいて気分良く店を出たが帰りのタクシーを用意してなかった。慌ててタクシー会社を調べて呼ぼうとしたら、目の前の化粧品メーカーの工場前でタクシーから人が降りて空車になった。満腹で重たい胃袋を抑えながら慌てて駆け寄り、奇跡的にタクシーを捕まえる事ができた。そのタクシー会社の名前には、今回の川越行脚で何度も口にした川越醤油と同じ、はつかりと入った「初雁タクシー」だったのに運命的なものを感じてしまった一杯でした。

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「ラーメン 並 ¥800+味付玉子 ¥100」@中華そば べんてんの写真平日 晴天 10:10 先待ち3名 後待ち20名

〝さすらいの未訪問店めぐり〟

本日は超有名店でありながら復活後は一度も行ってないコチラへの初訪問を決めた。

馬場時代には一度だけ伺った記憶がある。正直、味の記憶は曖昧だが神田川沿いのロケーションだけは覚えている。しかし今回は成増という日常では利用することのない駅なので綿密な計画を立てようと思う。過去に一度だけ降り立った事があるのだが、それも15年ほど前になるだろうか。その時も実はラーメンを食べに行ったのだ。当時は成増のラーメンと言えばそちらだったように思う。現在ではどちらが上位に挙がるのだろうか楽しみにルートを検索してみる。

以前の馬場時代の人気を考えて開店1時間前の現着を目指そうとすると運良く乗り換えなしのルートがあった。早速それに従い午前9時半前には家を出た。副都心線 通勤急行 森林公園行きにて最寄りの地下鉄成増駅まで28分とアクセスの良さに驚きながら、あっという間に着いた。改札を上がると店の場所の反対側に出てしまい10分ほどのタイムロスを犯してしまった。慌てて店を目指したが、開店50分前の現着でもすでに行列が発生していた。なんとか四番手をキープして待機する。

行列開始直後から換気扇を通じてスープの香りのシャワーを浴びる。本来は得意ジャンルではないが、豚骨魚介に強めな醤油感の香りを身にまといながらの待機となった。復活後も人気は相変わらずで開店40分前には並びも7名を超えると20mほど離れた別場所での行列となった。本日の行列の客層は以前の馬場時代の学生街とは異なり、私のような中年層が中心となっている。皆んなも時間にはかなりの余裕があるのだろう。開店直前には20名近い並びに増えていた。

定刻を3分過ぎての入店開始となった。店内に入ると突き当りの券売機の前に向かう。先客方は皆さん塩のボタンを押されていたが初訪問なので基本らしきお題に味付玉子を追加発券してカウンターに座った。特に座席指定はなく、皆さん好きな場所に座っている。そこから店内を物色すると、いびつな形のカウンターの内側の調理場はシンプルな造りとなっている。基本的なスープ炊きの大型寸胴鍋と麺茹で釜が並んでいるだけの簡素化された調理場内だ。そんな店内を二人体制で切り盛りしている。店内には店先でも感じたスープの香りが満ちている。食べずとも想像できるくらいに分かりやすい香りだ。

カウンターの着席が揃い、食券を回収すると調理が始まった。盛り場には一気に6つの丼が並んだ。11席の内のおよそ半分である6杯分をワンロットで仕上げるようだ。大量の麺を茹で釜に投入すると湯温が下がり静寂のひと時が流れる。店内のBGMがない事もあり緊張感に包まれる瞬間だ。オーダーの麺かためや、つけ麺に対応するために時間差で麺上げをしていく。そんな平ザルさばきを見ていると第1ロットの後半で我が杯が到着した。ここまで着席して10分くらいだ。

その姿は口縁に文様の入った高台丼の中で力強さを見せつけている。それは麺の太さや具材の大きさによる所が大きいだろう。並盛りでも圧巻のボリュームには尻込みしてしまった。

まずはスープをひとくち。香りから想像していたよりも粘度の少ないサラリとした第一印象だ。レンゲを沈めても抵抗のなさに苦手意識が少しだけ消えた。いざ口に含むと香りは節系が先頭に立っている。唇がやや粘着するのは豚由来のコラーゲンだろうか。その豚ガラや鶏ガラなどの動物系スープに、味の強いサバ節が重なりをつけているようだ。口当たりも良いがカエシも出過ぎているので、ひとくちで喉が渇き始めた。その上に残念な旨味成分も潜んでいた。量的にはほんのひと振りかもしれないが欠かせない調味料なのだろうか。

こちらの最大の特徴でもある自家製麺は切刃の角を思わせない丸々と肥えたストレート中太麺。色白で透明感もある麺質にはグルテンがはち切れんばかりに詰まっている。初訪問なので麺の硬さは基本でお願いしたので麺上げまでは280秒くらいだったろうか。持ち上げた箸先からも柔らかさが伝わってくる。ズシリと重たい麺を口に運ぶと滑らかな麺肌が唇に触れた。口当たり良く滑り込んできた麺を噛みつぶすと、ハリやコシは感じる事なく噛み切れる。独特の食感と言えばそうなのだが、物足りなさを感じてしまう。噛んだ麺からはフレッシュ感がないので打ち立てではなく熟成麺のようだ。その熟成によるものなのか、外国産小麦を使用しているかは分からないが内麦のような香りは全くしない。その風味の無さは外麦で打ったパスタのようで味気ない。なので最初のひとくち目の麺は無味無臭のように感じてしまった。その麺を食べ進めていくうちにスープと絡んで徐々に一体感を増してきた。この事からもソースやオイルが不可欠なパスタと似ていると思えた。

具材チャーシューは大判厚手の豚肩ロース焼豚で歯応えを残した赤身の繊維を噛み切る醍醐味がある。強気なスープの中で薄味に感じられる味付けが私にはちょうど良く箸が進んでしまう。この焼豚の力を借りてコシのない麺にアクセントを付けられた。これは追加トッピングしても良い焼豚だった。

追加した味付玉子は表層にだけ漬けダレが浸みた色付玉子。温度も冷たく半熟の黄身はゆで卵と変わりない仕上がり。しかしスープの塩気を借りてると程よい味にはなっていた。だが好みの熟成感はなくて残念。焼豚と違って追加しなくても良かった具材だった。

メンマは大量に細メンマが添えてある。この食感も麺に変化を与えてくれたので随分と弱い麺の助けになってくれた。

薬味の白ネギは数片だけが浮かんでいた。それも芯の部分ばかりで香りも食感もなく、薬味としての存在感はなかった。調理工程を見ていると白ネギの外側の部分は塩ラーメンには大量に盛られているようだ。これが下ブレでなく基本ならば仕方ないと受け入れた。

べんてんならではの十字15切を更に半カットした海苔は同じ分量の海苔でも二度楽しむ事ができる配慮なのだろう。それに従い今回も麺を挟んで食べたりと二回の味変を楽しんだ。

中盤からは麺がスープを吸ってより肥大化したのと、塩気が強くなりすぎたので麺を三割程度とスープは全量を残して箸とレンゲを置いた。店内のどこにも小盛りのアナウンスはなかったが、もしあれば同料金でもお願いしたかった。

第1ロットの後半での提供だったが、食べ終えたのは一番最初だった。周囲の中年男性陣は中盛りか大盛りを食べているので滞在時間も自然と長くなっているのだろう。その食べっぷりをうらやましく思いながら先に店をあとにした。

店頭にはまだまだ行列が続いていた。中には女性客もいたのを見て弱くなった自身の胃袋の不甲斐なさを感じた一杯でした。

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「半熟味玉中華そば 並 ¥1020」@松戸富田麺絆の写真平日 雨天 9:40 先待ち2名 後待ち40名以上

いつもならば雨の降る日は眠りが深く早起きする事などない体質なのだが、なぜか今朝は午前6時に心地良く目が覚めた。窓の外はかなりの雨で外出意欲を失せさせる。春の雨とはいえ、まだ肌寒く雨の中の行列と考えただけで心が折れそうだ。

こんな時にも雨の影響を受けないのが飲食ビルの中にひっそりと佇むラーメン店だ。目黒駅前のビルの地下にある香味油を選べる店や、三鷹の雑居ビルの地下にある鶏白湯の店などは雨の日にはもってこいのロケーションだ。そんな店を新たに見つけようと早朝からRDBに向き合ってみる。

まず思い浮かぶのは東京駅のラーメンストリートや品川駅の品達ではあるが、どちらも旅行帰りの時のためにキープしておきたいのが本音だ。ならばと大型商業施設に目を向けてみる。すると新店情報の中にコチラを見つけた。お店情報を見てみると過去に残念な思いをした松戸の超有名人気店の東京初出店となっていた。若干の不安はあるが本家のリベンジを兼ねて初訪問を決めた。

まだグランドオープン直後の三日目なので、特需行列を予想して早々午9時に自宅を出た。狙い通りに東京駅の地下街を雨の影響を受ける事なく KITTE 方面へと進む。連絡通路から明るく煌びやかな商業施設に入ると、横並びにラーメン店が軒を揃える一帯が現れた。それが新設されたラーメン激戦区 東京 丸の内のようだ。その並びの中の一角にだけ、早くから行列の誘導ロープが張り巡らされた店がある。それがコチラだったが、すでに別格の扱いである。

開店80分前の現着だったが、すでに二名の先客が待っていた。それでもなんとか三番手を死守できたので、ただひたすらに開店の時を待つ。ここは商業施設と言えども、JPタワーなるオフィスビルだ。しかも丸の内という事で、超一流企業ばかりがオフィスを構えている。そんなビルに出社するエリート方に不思議そうに見られながらラーメンを待つのは、もはや苦行でもある。

開店1時間前には10名待ちに。45分前には25名待ちに増えた。30分前には40名に膨れ上がっていたが、列が通路をまたいで死角になったので、この後の人数は定かではない。この時点で先待ちのお二人が10時オープンだと勘違いしていたらしく脱落したのでトップバッターに繰り上がった。

開店の20分前になり、店内を隠していたロールスクリーンが上がると店内の全貌が明らかになった。まぶしいくらいに光り輝くステンレスを基調にした店内は、まるで近未来のラーメン屋をイメージさせる。するとすぐにスタッフから食券の先買いを促される。一人づつ店内に入り購入すると列に戻るシステムだ。先頭にて券売機の前へ進む。

最新鋭のTERAOKA製のタッチパネル式券売機で、お目当てのお題に味玉を追加発券して列に戻った。この券売機が電子マネー対応で未来の幕開けを予感させる。すぐに食券が回収されると厨房内が一気に慌ただしくなった。少しでも提供を早くして、待ち時間を減らそうという心づかいがうれしい。

定刻の11時前には他のラーメン店にも行列ができていたが、コチラの比ではない。今のところは一人勝ちの様相だ。どうやら施設内のポリシーなのだろうか、1分でも早開けする店がないので定刻ちょうどの開店となった。

案内とともに左側のカウンターに座る。すでにお冷もステンレスのグラスで置かれてある。この設えの方が威圧感がなく、松戸の店より緊張感もなくて落ち着く。店内を見渡すと本日は選ばれた精鋭であろう七人体制で回している。もしかしたら奥にもう一人いたかもしれないが目視できなかった。調理場のシンクからは麺のヌメリを取る小気味好い流水の音が聞こえてくる。ホールには松戸のスタッフもいらしたり、奥さまも様子を見に来ていた。厨房内はほとんど見る事は出来ないが、つけ麺用スープがバケツに入れられ床にダイレクトに置かれた様子を見た時に、一日に何人の客をさばくのだろうかと、大変な昼夜の通し営業を心配した。

そんな事を考えているうちに第1ロットの配膳が始まったのだが、今回も松戸と同じ悲劇が待っていた。最初のロットで提供されたのは、またしても濃厚つけ麺からだった。次のロットも、その次のロットも太麺ばかりの提供で最初のオーダーである私の中華そばなど後回しにされている。食券回収後に調理場が慌ただしくなったのは、太麺を茹でて水で締める作業を最優先にしたからで、先頭でに並んでいた私のオーダーなど関係なかったようだ。松戸でも同じ仕打ちをされた事があるのだが、大きな、つけ麺愛は感じるがラーメンに対する愛は全く感じられなかった。結局、10番目以降の配膳で残念な気持ちになったが、目の前のラーメンには罪はないので採点に考慮しないと決めて向き合う事にした。

その姿は白磁に呉須の絵柄の入った反高台丼の中で想像と違う表情で出迎えてくれた。松戸の中華そばよりも穏やかそうだが、券売機の写真よりは勇ましく見えた。メニューの写真では、あっさりの表記がある通りに清湯醤油系にも見えたからだ。しかし実際の姿は茶濁したスープが力強い印象を与えている。

まずはスープをひとくち。液面を覆う具材をかき分けレンゲを押し込むと、まとわりつく粘着性をさほど感じない。思いのほか、すんなりとレンゲが沈んでいった。すくい上げたスープからは魚介の香りがするが魚粉のような後付けの香りではなく、出汁からほのかに香る魚介の風味だ。口に含むとベースの動物系スープの旨みが広がるがサッパリとしている。その優しいスープにアクセントを付けているのが、スパイスの辛味だ。デフォルトで胡椒を振ってないのに刺激の強い辛味をスープに感じる。サッパリを期待して注文したお年寄りだと驚くほどのスパイスだ。丸の内という年齢層の高い土地柄を計算して中華そばのスープを穏やかに設定しているはずなのに、なぜか香辛料だけが飛び抜けているのが不思議だった。

麺は中細ストレート麺で加水率は平均的に思われる。切刃のエッジを少し残す茹で加減だが、ハリやコシも標準的。あえて個性を打ち出していないのが、丸の内での必勝法にも思える。今後の客層は館内のサラリーマン方には待ち時間がネックとなるので、中心客は観光客が担うであろう。となれば若者層を濃厚つけ麺で取り込み、中年層には馴染み深い中華そばで取り入れるには相応しい無難な麺質に思う。子供からお年寄りまで、誰にでも受け入れられる麺を選ばれているだけに、スープの香辛料の強さが引っかかっる。

具材の豚ロース焼豚も、ここでしか食べられない逸品という訳ではない標準的なローストタイプ。赤身本来の旨みは焼き汁に出てしまったのか、それほど感じず食感もパサつきがちだ。その他にも全部で四種類のチャーシューが用意されているようだが、その個性豊かなチャーシューを味わうにはプラス700円の全部のせにする課金が必要なようだ。

追加の味玉も提供温度が冷たく、つけ麺には良いだろうが温かいラーメンの中では寂しい温度だ。味玉の醍醐味の熟成した黄身であっただけに冷たさが残念だった。これも、つけ麺主流店の悪影響なのだろうか。

デフォルトでの半カットのゆでたまごはオールドファンには親しみのある具材のではないだろうか。実際に私も久しぶりに固ゆで卵をラーメンの中で見かけたが、スープとなじんだポソポソの黄身が懐かしく昔を思い出してしまった。

メンマは色づきは濃いめだが、味付けに派手さはなく食感も程よい。硬めの仕上がりだが繊維を残すような事はなく、良いアクセント役を果たしている。

薬味は白ねぎを細かく刻んで水にさらしてあり仕事を感じるが、手の温もりはあまりない。さらしネギならではの落ち着いた香りが食欲を刺激するので、香りとしてのアクセントは見事。規格にない程に小さく切られた海苔は風味も良く口溶けも良かった。ナルトは今回も出身地不明を理由に回避した。

中盤からもスープの辛味が口の中を支配を続ける。麺と具材は完食できたがスープはほとんど残してしまった。それはすぐに席を立ちたかったからでもある。

私よりも後に並んでいたのに、先に提供されたつけ麺を食べ終えた後客が次々と店を出て行く中で、先に入店したのにまだ食べているのを後列に並んでいる人たちはどう思って見ていただろうか。きっと「いつまで食べたんだよ」と思う人もいたはずだ。重苦しい気持ちで私も早く店を出たかった。またしても残念な思いで店を後にしたが、接客や環境、衛生面は評価の対象にしないので純粋にラーメンだけの採点にした。もし全てを考慮していたら過去最低レベルの採点しか付かなかった事だろう。

店を出ると行列は場所を変えてさらに延びていた。周囲の店も中々の盛況ぶりだったので、伸び悩んでいた KITTE の集客力の起爆剤になる事を願った一杯でした。

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「かつお醤油ラーメン ゆず入り ¥770+味玉 ¥120」@麵屋 しるしの写真土曜日 晴天 11:00 待ちなし 後待ち4名

「ちゃるめ」「ちゅるり」「つるる」「ゆるり」「しるし」

謎の語呂合わせウィークも佳境を迎えた。それは正直言うと、もうネタが尽きてきたからだ。昨日の栃木県足利市「ゆるり」からの帰り道の電車内でRDBを漁ってみるも五段活用できそうな店が挙がってこない。

北海道の旭川には「くるる」石狩には「がるる」と名乗るラーメン店があるが、そこまで行ってしまうと道楽も度を超えてしまう。泣く泣く諦めて四段活用で終了かと思われたときに、コチラの店名がヒットしてしまった。

〝してしまった〟と言うのも、かなり遠方ではあるが行けない事はないと思ってしまったのだ。こうなると火がついた遊び心を抑えることが出来ず、早速お店情報を調べてみる。不運にも明日は営業日のようだ。アクセスが困難ならば諦めようと思ったが、新宿駅からハイウェイバスだと一本で最寄バス停に着くようだ。語呂合わせの為にハイウェイバスと言うのも如何なものかと考えもしたが、気が付けば乗車券の予約ボタンをクリックしていた。

早朝6時半に自宅を出て人生初の新宿バスタに着いた。7:25発 京王バス 上諏訪経由 岡谷行きに乗車すると、もう旅は始まっている。天気の良い休日なので、首都高に入った途端から渋滞気味の中央道を一時間ほど走ってもまだ八王子あたりだ。この流れだと定刻通りには着かないと思いながら先へ進む。しかし相模湖を越えると一気に渋滞は解消し流れに乗った。それと同時に、早起きだったせいかウトウトと眠ってしまった。

目が覚めると休憩の双葉SAで、ここまで35分遅れのアナウンスがあった。バスを降りると都心よりも随分と冷たい空気が張りつめているが、とても澄んでいて気持ちいい。一瞬でリフレッシュされるとバスに戻った。そこからは順調にバスが走り目的地の諏訪インター前バス停で下車した。

ここまで定刻を45分遅れだが、時間に余裕をもって出発していたので慌てることなく店へと向かった。高速道路を降りたところにあるバス停からは歩いて5分もかからないという奇跡の近さに驚いた。開店30分前の現着だったので行列もなく近隣を散策してみる。

コチラのラーメン店も大きいが、目の前の焼肉屋はさらに大きく7階建てのビルとなっている。先ほど立ち寄った双葉SAよりも体感温度が低く感じたので、斜向かいのコンビニで携帯カイロを購入し店に戻った。大きな駐車場完備の店先にて先頭にて待機する。

定刻より10分も早く早開けとなった。後列の家族づれにも優しい対応だ。中待ち部屋を抜けて店内に入ると券売機はなくカウンターに案内された。卓上メニューにはバラエティに富んだラインナップで悩んでしまうが、一番サッパリしてそうな魚介系にして味玉追加を口頭で伝えた。すると「ゆず入りがオススメですよ」と説明があったので、薦められたままにお願いした。

店内を見渡すと小上がりやテーブル席も多く設けられた広々とした空間が広がる。地方の郊外店感が満載の店内を六人体制で回している。本日の客層は休日なので家族づれや高校生くらいの子供たちが多い。調理場を見ると、各々の持ち場が確立してありオペレーションは安定している。中でも圧巻なのは麺上げを担当する店主さんであろう男性のテボさばきだ。12連のテボにはスープによって使い分けられる四種類の麺を同時にさばいている。細麺から極太麺まで茹で時間の異なる麺を茹でる姿に見とれてしまった。

すると一番早い麺上げのロットで我が杯が到着した。胴に朱色の刷毛目が入った反高台丼の中の姿は家系ラーメンのような表情をしていた。諏訪で横浜を感じられるとは不思議なものである。

まずはスープをひとくち。茶濁した液面からは苦手な魚粉が浮いているように見えるが、レンゲを差し込んでみると思いのほか抵抗が少なくサラリとしている。いざ口に含むと節粉の香りが先導するが、ザラつきはさほど感じない。豚骨ベースに魚介出汁を合わせたオーソドックスな豚骨魚介スープは、やはり家系をイメージさせる。まろやかに乳化したスープは舌触りも悪くはない。カエシの醤油ダレは長野地方ならではの少し強めの塩分が気になった。

四種類あるうちの麺から豚骨魚介スープに合わせられたのは中細ストレート麺だった。麺上げまでは120秒弱くらいで、箸先からは柔らかめな麺質を感じる。やや強気なスープを落とすように麺を揺すってから啜ってみる。一気に吸い込んだ空気に伴って魚介の香りも飛び込んでくる。グルテンが溶け出して甘みのある麺との相性が良い。本日初めて口にするのが豚骨魚介だったが、すんなりと受け入れられた。出来るだけスープを絡めないように食べれば塩分よりも麺の旨さが勝るので、食べ進められた。

具材は豚バラの煮豚型が一枚で厚切りとは言えないが中々の大判。片面にはバーナーで炙りが施されていて香ばしい香りが立っている。ホロホロと箸が触れただけでも崩れるような柔らかさなのでレンゲですくって食べてみる。豚バラ本来の旨みは抜けているが、煮汁の味で食すタイプのチャーシュー。薬味の白ネギとの共演で物足りなさは回避できた。

やや私には残念なチャーシューの後で食べた味玉は衝撃のうまさだった。グラデーションの浸み込みではなく、均一な浸透が黄身の中心部まで浸みている。ひと晩では成し得ない熟成感が生み出すネットリとした口当たりが口内を覆い尽くす。それでいて白身に塩気は感じず、黄身の甘みが引き出されている。過去の味玉ランキングトップ5には間違いなく入る代物だった。この味玉に出会えただけでも高速バスに乗ってまで来た甲斐があると思った。

この味玉の印象が強烈すぎて他の具材たちは霞んでしまった。メンマは細めの板メンマだったが、手仕事感はなくどこでも食べられそうな業務用品に思えた。青みのほうれん草も残念だが袋入りのカットほうれん草と変わりない。

薬味の白ネギは粗めに刻まれており、熱々のスープで甘みが増して麺やチャーシューとのマッチングは良かった。十字9切の正方形の海苔は口溶けは良いが香りは全くせず、保存状態の良し悪しが出てしまったのか。オススメの柚子は入れ忘れかと思うくらいに見た目、味覚ともに確認できなかった。

スープの塩気と戦いながらも麺と具材は平らげていた。スープにもチャレンジしたが丼の底に沈んでいるであろう節粉の舌触りが気になるので、ここでレンゲを置いた。

店を出る頃には店内は満席近く埋まっていて、地元人気の高さを知る事ができた。ここからの帰り道だが高速バスのバス停は近かったが、電車の最寄り駅は無い。ましてや路線バスすら走っておらず、流しのタクシーなどある訳もないので最寄りの上諏訪駅まで一時間近く歩いて向かった。その道すがらには、さすがに霧ヶ峰からの伏流水がきれいなので日本酒の有名酒蔵が軒を連ねている。全国広しといえども、ここほど酒蔵が集まっている場所はないのではなかろうか。上諏訪の酒で地元のツマミで一杯やって帰京しようかとも考えたが、良からぬ事を思いついてしまった。

せっかく都内を離れたのだから未訪問県を訪ねてみるのはどうだろうかと、上諏訪駅でRDBと向き合ってみる。すると三重県以西は未だ手付かずの未知なる領域がある事に気付いてしまった。

これが〝ラーメン紀行〟ならぬ〝ラーメン奇行〟の始まりを予感させる事となる一杯でした。

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