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のらのら

男性 - 東京都

はじめまして。レビュー開始から一年が経ち、二年目の目標を全国制覇にしました。一杯のラーメンに出会うまでの経緯も書き記しているので、前置き等が長くなりがちですがお許しください。しかし採点に関しては立地 接客 衛生面 価格設定などは考慮せずに、ラーメン一杯に対しての評価にしています。自分の好みだけで評価しているので不快な文面もあると思いますが、何卒宜しくお願いします。

平均点 73.112点
最終レビュー日 2019年10月19日
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レビュー 店舗 スキ いいね

「味噌らーめん ¥780」@麺屋 彩未の写真日曜日 晴天 14:45 外待ち10名 中待ち12名 後待ち15名

〝諸国麺遊記 北海道編〟

と本来ならばいきたい所だったのだがラーメン以外の目的で訪れた北海道で、課せられたスケジュールの中には朝昼晩みっちりと食事の予定が組み込まれていたのだ。

北海道一泊目は定山渓温泉という札幌駅から送迎バスで一時間ほどの距離だが、周囲を山に囲まれた温泉地なので夜中に抜け出して札幌でラーメンという訳にはいかない状況下に置かれていたのだ。その夜は温泉旅館お決まりである女性受け間違いなしの、ちょこちょこと出てくる和懐石をいただいた後に渓谷がライトアップされている人気スポットへと出向いてみた。

宿泊している旅館はいわゆる温泉街からは少し離れた隠れ家的な宿だったので温泉街らしい雰囲気を味わえずにいたのだが旅館の専用車で向かった先には、いかにも温泉街と言った感じの昔ながらの土産屋さんや古びたスナックのネオンの灯る街並みで哀愁が漂っていた。おじさん好みの素晴らしいロケーションの中に数軒のラーメン屋の看板を見つけたが、デザートや水菓子までも食べてしまった胃袋にはラーメンを食べる余裕など残ってなかった。それよりも同行者にラーメンを強要する威厳などないのが本音だった。

せっかくの北海道に来てラーメンを一度も食べられないかと思い、非常に残念な気持ちになっていた私に起死回生のチャンスが訪れたのだ。それは一泊目の定山渓温泉を後にして札幌大通まで午後1時に送迎バスで戻り、二泊目の札幌駅近くホテルに荷物だけでも預かってもらおうとチェックインの手続きだけをしに行くと、すでに部屋の清掃が済んでおり早めのチェックインとなった。

北海道二日目の晩メシだけは私のワガママを聞いてもらいプロ野球選手がチーム全員で押し寄せるという老舗ジンギスカン屋を予約しておいたのだが、さすがに日曜日でも20時までは席が無かったので20時過ぎの予約となっていた。しかしホテルのチェックインを済ませた時間は午後2時過ぎと夜のジンギスカンまでは随分と時間があるので、どうにか同行者を丸め込んでラーメンへと誘い出してみた。すると近くなら行っても良いと承諾は得たのだが、最有力候補としていたコチラは札幌駅から近くはなかった。しかも昼営業の終了時間まで一時間を切っており、焦る気持ちの中で地下鉄で向かう事を諦めてタクシーでの訪問ならばと快諾を得た。

そうと決まれば多少のタクシー代など問題ではなく、もはや拉致犯とも思われる状態で同行者をタクシーに押し込んだ。ホテル前からは15分程で、タクシーの運転手さんも知っていた超有名店の目の前まで無事に届けられた。

昼の部終了の30分前にもかかわらず店頭には長蛇の列が並んでいる。慌てて最後尾に付けると、梅雨時期とは無縁の北海道の初夏の日差しを持参した日傘で避けながらの待機となった。大きな駐車場には警備員を雇っているほどの盛況ぶりで、札幌だけではなくもはや全国区の人気店である事がうかがい知れる。直射日光を避ける軒下などがないので、日傘がなければかなりの体力消耗を強いられそうだ。あまり列の進みが良くないので回転率の悪さを思っていると、店内からは2名ほどしか出てきていないのに一気に6名も店内へと案内された。

修行先とお聞きしている札幌を代表する老舗味噌ラーメン店「すみれ」の暖簾分けを象徴する、すみれから贈られたと思われる白い暖簾をくぐって入店した。しかし店内にも12名分の中待ちベンチが設けてあったので、不思議な行列の流れも納得できた。

中待ちと同時にホールスタッフさんからメニューを見せられお題を決めるのだが、勿論ここでは味噌ラーメンをお願いした。すでに追加チャーシューは売り切れで味玉もメニューにないのでシンプルに追加なしで注文した。コの字の中待ちベンチから店内を見渡してみると、テーブル席とカウンターがあり壁には多くの著名人のサイン色紙が飾られている。全国各地にサイン色紙が飾られたラーメン店があるが、正直どれが誰のサインなのか分からない中でも何故かいつも目に入るサインがあるのだ。それは北海道が生んだ人気演劇ユニットである〝TEAM NACS〟のサインなのだ。それは先日訪れた埼玉の「中華そば 四つ葉」でも見かけたので、さすがは地元の人気冠番組でラーメン特集をするほどのラーメン好きだと信じられる。そんな風格のある店内を本日は七人体制で回している。厨房が半個室となっているので調理工程や作業の手元が全く見えないが上半身の動きから推測すると向かって右手から〝麺上げ担当〟〝あおり担当〟〝盛り付け担当〟と三人の連携プレーによって手際よく続々と調理されている。よって実際には回転率はかなり早く、外待ちを含めても20分足らずにカウンターに昇格した。

カウンターに着席後は店内観察をする暇がない程の早さで我が杯が到着した。この計算された提供速度が回転率の早さを上げている仕組みなのだと思った。目の前に現れたその姿は、うぐいす色の多用丼の中で上品にも思える優雅さを見せている。味噌ラーメンと言えば粗々しいワイルドさを思ってしまいがちだが、特徴的な器の色と相まって品のある表情が印象に残った。今回の北海道での最初で最期となるラーメンだけに期待が最高潮に達した瞬間には、すでに右手に持ったレンゲは始動していた。

まずはスープをひとくち。〝ならでは〟のラード油膜が張り巡らされた液面にレンゲを落とし込むと、大量の油膜ではあるが波の打ち方が軽やかにすら感じた。ラード油の粒子もキメが細かく見た目には油っぽさは感じられない。破れた油膜から立ち昇った熱々の湯気の中のラードで炒められた具材の香ばしさが、とにかく美味そうな匂いの首謀者である事は間違いなかった。その匂いだけで完全に脳内のスイッチがオンになったところで、いざスープを口に含んでみる。最初に伝わってきたのは円やかな甘味で、動物系スープや味噌玉と炒め野菜など全ての素材の持つ甘味が全体を包み込んでいる。飲んだ瞬間に、ため息が出るほどに優しく穏やかなスープには全身の力が抜けるのを感じた。主体となっているのは豚由来のスープと思われるが、煮干しのような魚介の旨みのサポート感もある。見た目にはタマネギがないが、甘味の中にはタマネギと思われる野菜類の甘味が十分に感じられる。そんなスープに合わせる味噌玉も角がなく塩気は輪郭を付ける程度にアジャストしてある。味噌ラーメンの要とも言える味噌玉からは、塩分よりも味噌の香りが主張している。このスープの風味と炒め野菜の香ばしさが織りなすハーモニーは醤油派の私でも唸ってしまう仕上がりだった。

本場札幌の味噌ラーメンに興奮を抑えきれないままに麺を箸で持ち上げてみると、ここでも〝ならでは〟の麺の姿が現れた。それは透明感と黄色みを併せ持った味噌ラーメン特有の中太ちぢれ麺で、黄金色にまぶしく輝く麺からも熱々のスープの力で湯気が立ち昇っているのが見える。茹で麺機が見えないので推測ではあるが、麺上げまで100秒程と思われる麺を一気にすすってみる。するとスープに浮かんだ厚手のラードの役割を、いくつも感じられたのだ。第一にはスープの温度を下げない為のバリアとしての役割と、続いては麺をすすり上げる際の潤滑油としての役目だ。さらにはスープにコクを与える使命も担っていた。北の大地札幌に味噌ラーメンが根付いた理由も分かる気がしながら、個性的な麺を味わってみる。とにかく滑らかに滑り込んできた麺は独自の周波が舌触りに変化をつけて口の中を跳ねまわり、弾けんばかりのグルテンの弾力が本領を発揮すると口内ばかりでなく脳内にも悦びが訪れる。飛び跳ねる麺を奥歯で押さえ込むと、しっかりと咀嚼に応えてくれる歯応えと歯切れの良さが素晴らしく麺を噛みつぶす楽しみが止まらない。その咀嚼回数に比例するように小麦の香りが満ちてきて、スープの味噌の甘みと小麦の甘みが折り重なったハーモニーは他の味噌ラーメンでは味わった事のない最高傑作の組み合わせに思えた。そんな食べ応えの後に訪れる喉越しの良さも忘れられない感覚だった。

具材のチャーシューは豚肩ロースの煮豚型が盛り付けられていて、程良い厚みにスライスされている。チャーシューに箸を付けた瞬間に上に乗せられたおろし生姜がスープに拡散するので後半まで我慢して残しておいたチャーシューだったが、いざ口に含むと煮豚によくありがちな豚肉本来の旨みが煮汁に奪われている事が多いのだが、この煮豚には赤身本来の旨みがしっかりと残っているにもかかわらず煮汁の旨みも取り込んでいる絶品チャーシューだった。また歯応えも柔らかすぎず食べ応えもあり、麺の食感にも負けない個性を生んでいる。このチャーシューならば追加したいと思える仕上がりで、次回は早い時間帯に来るべきだと実感した。そんなチャーシューの切り落としが角切りで丼の底に沈んでいるのを見つけた時には小躍りするほどの喜びだった。食感の面だけで言えば主役のチャーシューを凌駕する食べ応えがあった。

メンマは不揃いな大きさで添えてあり、表面に滑りがあるのが特徴的なメンマだ。少し柔らかめの食感だが、麺やチャーシューの歯応えが強いのでメンマは軽やかなアクセントとして存在している。味付けも穏やかながらボヤけるような事はなく全体に溶け込んだ味わいとなっていた。

具材の中で最も感激したのが炒めモヤシで、豚ひき肉と共に鉄製の中華鍋で独特の〝あおり〟の工程から生み出された味噌ラーメンならではの具材としての真骨頂を表現していた。まずは下処理の丁寧さが短いモヤシに表れていて最初
細かく切りすぎかと思うほどに短い部分もあったが、それはモヤシのヒゲの根を一本一本丁寧に取られた結果そうなっているのだ。よほどの高級中華料理店でもない限りモヤシの根を取っている店などないのだが、こちらはその一仕事をしっかりとされていたのには相当驚いてしまった。そんな繊細な手仕事が施されたモヤシを高温のラードで焦げ目が付くほどに炒めてあるので、しっかりとした食感と香ばしさの両面でアピールしている。

薬味は青ネギの小口切りが多めに添えてあり、有名ブランド葱とは違った粗々しさのある食感が絶妙にマッチしていた。モチモチの麺とシャキッとした青ネギのアクセントはモヤシの食感を巻き込むと、三つ巴の食感となって食べ心地を増幅させる。

この段階になるとチャーシューの上に添えてあった生姜はスープに溶け込んでいたが、業務用のおろし生姜ではなく本物の土生姜をおろしてあるので強い香りと辛味がスープに加わっていた。もちろん自然な辛味なので過度な刺激とかではないが、間違いなく味噌の甘みを際立たせてくれた。

味噌ラーメン特有のスープの熱さにもかかわらず、気が付けば丼の底が見えていた。まだまだ経験値の少ないジャンルではあったが、過去の味噌ラーメン史上最高得点を叩き出したラーメンに本場札幌で出会ってしまった。

しかしその事が北海道のラーメン文化を、もっと知りたいと思ってしまったキッカケになった一杯でした。

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