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のらのら

男性 - 東京都

はじめまして。レビュー開始から一年が経ち、二年目の目標を全国制覇にしました。一杯のラーメンに出会うまでの経緯も書き記しているので、前置き等が長くなりがちですがお許しください。しかし採点に関しては立地 接客 衛生面 価格設定などは考慮せずに、ラーメン一杯に対しての評価にしています。自分の好みだけで評価しているので不快な文面もあると思いますが、何卒宜しくお願いします。

平均点 73.136点
最終レビュー日 2019年10月17日
661 552 14 2,114
レビュー 店舗 スキ いいね

「昭和のラーメン ¥850」@拉麺 時代遅れの写真土曜日 晴天 11:10 待ちなし 後客10名

〝第36回 RDBの超高性能スーパーコンピューターが算出したオススメ店は本当に私に合うのか!〟を久しぶりに開催する。

このイベントは、RDB PC版のオススメに挙がる六店舗から、その店のイチオシではなく自分の好きそうなメニューを食べて採点し超高性能スパコンとの勝敗を決めるものである。決してお店との勝負ではないのは理解していただきたい。

採点基準は90点以上付いたなら私のKO負け、80点以上ならば判定負け、70点台なら引き分けとし60点台なら判定勝ち、59点以下の点数ならば私のKO勝ちとする。

過去34戦の対戦相手は「風雲児 」「麵屋一燈 」「煮干しつけ麺宮元 」「竹末東京プレミアム 」「さんじ 」「麺処 晴」「燦燦斗」「神田 勝本」「中華そば屋 伊藤」「麺処 ほん田」「煮干中華ソバ イチカワ」「麺屋 和利道 warito」「らーめん 芝浜」「らーめん かねかつ」「狼煙〜NOROSHI〜」「ラーメン大至」「中華ソバ 伊吹」「麺処 朧月」「Bonito Noodle RAIK」「中華蕎麦 とみ田」「陽はまたのぼる」「神田とりそば なな蓮」「ソバダイニング クアトロ」「旬麺しろ八」「MENSHO」「麺小屋 てち」「らーめん 鉢ノ葦葉本店」「らぁ麺 飛鶏」「中華そば 勝本」「◯心厨房」「家系総本山 吉村家」「自家製麺 くろ松」「麺処 いち林」「miso style となみ」「AFURI 恵比寿」と名だたる有名店や人気店が並ぶが、通算対戦成績は35戦16勝10敗8分8KO勝ち1KO負け1没収試合と、スパコンのオススメに対しては勝利が先行している状況だ。

度重なる北関東遠征が事の発端となって、スパコンが無闇やたらにオススメ店を遠くのエリアに乱発してくるのだ。地方に行っては対戦し消えたかと思えば、また同じエリアのオススメ店が挙がってくる。こんなイタチごっこを繰り返している最中に、初挑戦を望んで向かったにもかかわらず、前回は花火大会で臨休の屈辱を味わったコチラへとリベンジに向かう覚悟を決めた。

そこで昨夜は久しぶりに上野のアジトである「サウナ&カプセルホテル 北欧」に前泊してから目指すとした。すでにこの施設は過去のレビューの中で幾度となく登場しているので省略するが、とても感慨深いシーンがあった事だけを書き記しておきたい。

週末の昨晩は大浴場の全ての棚が埋まってしまう程の大盛況ぶりだが、そのサウナブームの立役者とも言えるテレビドラマ「サ道」が最終回を迎えた。ドラマ内に登場する愛すべきサウナーである〝偶然さん〟ではないが、偶然にも食事処で生ビールを楽しんでいるとスタッフさんによってチャンネルが強制的に切り替えられた。そう最終回を放送するために全テレビから「サ道」が流れた。今回のサウナは西の聖地と呼ばれる九州 熊本の「湯らっくす」が取り上げられていた。実は私の知人がドラマ制作のスタッフの一人で、ロケ終了時から湯らっくすの素晴らしさを聞いていたので楽しみにしたのだ。そんな一度は訪れてみたいサウナを観ていると、ドラマの中でもホームサウナである上野のサウナが今回も登場した。しかも主人公たちが座っている食事処のテーブルと同じ席に私が座ってビールを呑んでいるのだ。こんな奇跡を味わえる事は非常に珍しくラーメン界で例えるならば、佐野氏が打った麺を山岸さんが炊いたスープに合わせて、安藤百福さんがカップ麺にするくらいに奇跡的な光景だった。

そんなレアケースを満喫した翌朝なので爽快に目覚めると、夏の臨休のリベンジの為に身支度を整えた。上野駅前のサウナを出発すると日比谷線で北千住に向かい、つくばエキスプレスにて守谷駅に着いた。さらには関東鉄道 常総線で長閑な車窓を眺めながら、上野を出発してから1時間と少しで最寄りの水海道駅に二ヶ月ぶりに戻ってきた。前回は花火大会で盛り上がっていた駅前だが、今回は茨城ゆめ国体のハンドボール開催で賑わっている。前回が印象深かったせいか不思議と道順を覚えていて、ナビなしでも歩き始めていた。

駅前からはラルフローレンのロゴを思わせる衣料品店「ロコレディ」の前を通り、今や見る事のなくなった半鐘櫓がランドマークとなっている駅通り商店街を進んで行くと、大きな橋の袂に出てきた。そこから見た前回の景色は、店のオープンを知らせる信号機は見事に赤だった。今回も同じく赤信号だったが、まだ11時半の開店時間前だったので店先まで行ってみた。前回よりも手前の空き地が広がったように思いながら、木の壁に囲まれた要塞のような入口に着いた。

前回同様に入口は閉ざされていたが、今回は壁の向こうから昭和演歌の音が聴こえてくる。という事は、準備中のサインだろうと勝手に決め込んで壁の前で待機してみる。しかしながら本日は残暑どころか、真夏が戻ってきたような暑さで、軒先のない店先で待つのは老いた身体を蝕むようだ。真夏ならば、美意識高い系おじさんの本領を発揮するはずの日傘を、本日は持参していなかった。なので仕方なく直射日光を全身に浴びながらオープンを待っていると、予想外に定刻よりも3分早く店主さんが出てきた。「やってるよ」と書かれた立て札を掛けられたのを見て、ようやく営業日なのだと確信した。

一番手で店内に入った瞬間に、あまりにも壮大なロケーションに目を奪われてしまった。そこには納涼花火会場そのままの桟敷席が設けてあり、開放感だけで言えばラーメン店 No. 1 ロケーションなのは間違いない絶景に驚いた。券売機の有無すらも分からないままにカウンターに座ると、店主さんからは何一つ案内がないので危機管理能力をフル稼働させた。

店名や店構えからも店主さんの思いが込もってのは承知していたので、なるだけ迷惑がないように慎重に相手の出方を見る。卓上にはメニューがなく、しばし緊張感のある時間が過ぎるが店主さんは注文を聞いてこない。そこに常連客と思しき方が現れて、さっそうとカウンター上部の壁を見て注文をされた。実はメニューが頭上にあったのだ。それに気づいても慌てたそぶりも見せず淡々と注文を告げた。すると店主さんの返答はなく耳に届いたのかすらも分からなかったが、これが店主さんのスタイルなのだと飲み込んで店内を眺めてみる。

店名の「時代遅れ」が意味するように、店内には懐かしい電電公社時代の黒電話や鉄製の扇風機が活躍している。それに習って調理場内の厨房機器も最新鋭の機材が置かれているわけではないが、全ての厨房機器に店主さんのこだわりが見えた。複数の麺上げをする際に便利なテボの茹で麺機ではなく、大鍋を茹で釜として使われている。その横には常に差し湯が出来るよう専用の角鍋には、お湯がプールされている。麺の保管にも店主さんのこだわりが見られ、専用の引出し式保冷庫内でしっかりと温度管理されている。店の裏手にはチャンバー式冷蔵庫まで設置されていたりと、まるで大人のラーメン基地のような機能的な設備となっている。

カウンターの他にも小上がりや納涼席まである広い店内を、ご主人お一人で切り盛りしているので、お冷はセルフとなっている。さらには割り箸までも一ヶ所に置かれているので、お冷と共に箸を一膳用意しておく。そんな食べ手の準備が整ったと同時に、着席して5分で我が杯が到着した。

その姿は胴が朱赤で口縁にはカラフルな雷紋柄の描かれた切立丼の中で、昭和らしい哀愁のある景色を見せている。この器は八王子の人気店「ほっこり中華そば もつけ」でも使われているが、ノスタルジーを思わせるラーメンとの相性はピッタリだ。作り手の丁寧な思いが詰まった盛り付けが、食べ手の食欲をかき立ててくれる。もはやスパコンとの対決など忘れてしまいレンゲを手にしていた。

まずはスープをひとくち。調理工程の仕上げで注がれた大量の鶏油が、液面を分厚く覆い隠して神々しく輝いている。そこには油膜の粒子すら見えないくらいに厚手な鶏油に、ともすれば油っぽさを感じてしまいそうな表層にレンゲを沈めてみる。一見すると食品サンプルの蝋細工のように見える無表情な姿が、レンゲが触れた事によって動きが生まれ、豊かな表情を見せ始めた。油膜の隙間からは、鶏油とは異なる鶏由来の香りが立ち昇ってきた。下層部の鶏出汁と思われるコクのある香りと、カエシのキレがある醤油香が相まって鼻先をくすぐった。スープが注がれたレンゲの中には、否応がなしに多めの油分も含まれている。多少のオイル感を覚悟しながらレンゲを唇に当ててみると、思いのほか重たさを感じない。むしろサラリとして感じるのは鶏油を注入前に専用の小鍋で熱していたからだろうか。それを証拠に薬味の青ネギに鶏油を掛けた時に、ジュッと音を立てて煙が上がっていたのだ。そんな細かな仕事ぶりが生み出した、コクは与えるが油っぽさは加えないスープをじっくりと味わった。先頭に立つのは甘みを打ち出した旨みで、昔ながらではあるが不要な旨味も含まれている。そんな旨味に負けないようにカエシも強めに利かせてあるので、見た目以上に派手な印象を受ける。刺激的な味わいを口に残したまま、レンゲを箸に持ち替えた。

タイマーなどはセットされていなかったが、ジャスト120秒と神業でも見ているかのように麺上げされたのは中細ストレート麺だった。見事な平ザルさばきで整えられた美しい麺線から持ち上げると、黄色みのある麺肌にも鶏油がコーティングされ眩しいくらいに光り輝いている。割り箸の角でも捕らえづらい程の油膜が光沢を放つ麺を何とか捕らえた。なだらかながらも切刃のエッジが鋭く残るシャープな形状の麺を一気にすすり上げると、滑らかさと強いハリを持ち合わせた相反する口当たりで滑り込んできた。〝静と動〟〝柔と剛〟が同居した麺を噛みしめれば、適度な反発力を生んだ歯切れの良さも加わってくる。キレの良い歯応えから、にじみ出てくるような小麦の香りと甘みが好印象だ。スープには懐かさしさを感じたが、麺は今風とも思える麺を目利きされていた。口先から喉元まで潤いを感じさせながら胃袋へと落ちて行く快楽は、自然と箸のスピードを加速させた。

具材のチャーシューには豚バラの煮豚が、厚切りで三枚も盛り付けてある。盛り付け直前の切りたての拘りや、正確な同心円に巻かれた丁寧な仕事ぶりが見てとれる。また高温に熱された鶏油をかけられてあるので、適度な香ばしさが生まれている。今回は苦手な脂身が大半を占める部位だったが、少ない赤身ながらも肉厚にカットされていたので歯応えは十分だ。しっかりと食べ応えのある赤身のパサつきを、サポートするように脂身が潤いを与えてくれる。今回ばかりは、苦手な脂身の献身的な補助役を認めざるを得ないバランスの良さだった。

細メンマには唐辛子の辛味を利かせた味わいが、特別なアクセントとなって主張してくる。今回は終盤にメンマを食べたので被害は少なかったが、前半だと味覚を支配するくらいの強い辛味を感じた。ビールのつまみとしては最適そうだが、ラーメンの中では刺激が強いすぎた。

今回もナルトは初めから除外しておいたので口にする事はなかった。

中盤からも順調に食べ進んできたが、スープは飲み干さずにレンゲを置いてしまった。後会計方式なので店主さんの調理のタイミングを見計らって支払いを済ませて席を立った。その頃にはテラス席を含め、多くの客で席が埋まっていた。お一人で切り盛りする店主さんのマイペースぶりは変わらずで、独特の空気感が支配している。ラーメンだけでなく、そんな特異なオーラを感じたくて通いたくなるのが分かる気がした。

今回のスパコンとの対戦は 70点台だったので引き分けで幕を閉じた。これで通算対戦成績は36戦16勝10敗9分8KO勝ち1KO負け1没収試合となり、わずかだが勝ち星がリードしている。まだまだ北関東エリアにオススメ店が挙がっているので、もうひと勝負を今回の遠征でしてみると決意を固めた一杯でした。

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「中華そば (醤油) ¥780」@中華そばのあい川の写真平日 曇天 11:30 先客なし 後客なし

〝ニューオープン 探検記〟

都内での新店めぐりも落ち着いてきたので、少し足を伸ばしてみようとRDBの新店情報を漁ってみた。すると茨城県内でも訪れた事のない笠間市で産声を上げたコチラのオープン情報が挙がっていた。

お店情報を見るとIT系 (意識高い系) 中年オジさんには大変に有難い〝無化調〟の文字が目を惹いた。オープンして一週間ほどしか経っておらずレビュー等の情報は乏しいが、営業時間や定休日が記載されている内容だけを信じて初訪問を決めた。

そうと決まれば北関東遠征の拠点である、上野のサウナにて心身ともに「ととのう」為に前乗り作戦を遂行する。テレビドラマの影響も落ち着いてきたのか、昨夜はとても静かな大浴場だった。入浴客の少ないので必然的にサウナの扉の開閉数も減り、サウナ内の高温が守られている。守られているのは温度だけでなく、流行りに乗った若者たちもいないのでサウナ内の秩序も守られているのだ。ひとり無言で悦に入る熟年ベテランサウナーたちに囲まれて、私も平穏を保つように独自の世界に包まれながら完璧な肉体の「ととのい」を果たした。

その後は精神的な「ととのい」を成すために、通称〝天国へのレッドカーペット〟の敷かれた階段を使って食事処へと降りて行く。地獄に堕ちるとは聞いた事があるが〝天国に堕ちる〟と言うのは、このサウナだけではないだろうか。サウナは3セットが私のルーティンたが、生ビールばかりは無限のルーティンが広がっているのだ。などと、自分に言い訳をしながら深夜を過ぎるまで生ビールを楽しんでから寝床に入った。翌朝もすこぶる快調に目覚めると、さっさと朝風呂を浴びて身支度を済ませた。やはりサウナの前泊の利点は目の前が上野駅という事で、前乗りの意味を受け止めながら駅へと向かった。

上野 9:22発 東北新幹線 なすの 255号 郡山行きに乗車すれば最終目的地であるラーメン店の開店前の現着に間に合うルートを見つけておいたので、そのルート通りに新幹線で小山駅までは35分ほどで着くとラーメンめぐりでは初めてとなる水戸線に乗り継いだ。そこからは小山駅までの新幹線の乗車時間よりも長い50分もかけて笠間駅まではやって来られた。しかし目的地のラーメン店までは歩くと20分もかかるらしいので、のどかな駅前で茨城交通バスを少し待つ事にした。10分ほど待って芸術の森公園行きのバスに乗り、貸切状態の車内で5分も揺られると最寄りの荒町角バス停に無事たどり着いた。

バス停に降りるとバス道中の和やか景色とは異なる、歴史を感じる趣のある重厚な街並みが目の前に広がっていた。そこは笠間稲荷神社の門前通りとなっており、狭い通りながらも道の両脇には参拝客相手の商店が軒を連ねている。バス停には定刻の20分前の現着となったが、先に店の所在地だけは確認しておこうと店を探して向かってみた。

しかしバス停から1分も歩けば通り沿いの土産売り場や商店の中に、店のロゴマークをあしらった茶色の看板が目に止まった。まだ半シャッター状態だが店先には手書きのメニューが貼られてあり、予習の意味も込めて一通りメニューを拝見しておいた。門前と言っても平日なので観光客は少なく、と言うよりは歩いている人は私以外に誰もいない。街の雰囲気的には行列が出来そうな感じではないので、とりあえずは笠間稲荷をお詣りしておこうと参道へ行ってみた。とても立派な朱赤の大鳥居が出迎えてくれ、一礼をしてから境内へと向かう仲見世通りを越えると空気が一瞬にして変わるのに気が付いた。凛と張り詰めた空気が気持ちを引き締め、大昔の建立時から変わらぬ空気が流れている事を体感する。ラーメンの新店めぐりで訪れた場所に、歴史を感じる思わぬ出会いがあった事に感謝しながら店へと戻った。

店先に戻るとちょうど定刻を迎える11:30となっていて、ご主人さん自らが仕込中の立て札を営業中に裏返すしてオープンとなった。真新しい白い暖簾をくぐって店内に入ると、券売機が見当たらないのでカウンターに座ってみる。卓上にもメニューがないが、店内の壁には数ヶ所メニューが貼ってあった。先ほど店頭で当たりを付けておいた表題を口頭注文するが好物の味玉はラインナップにはなく残念に思いながら、卓上に置かれたレモン水をグラスに注いで店内を見渡してみる。

古い建物を活かした古民家カフェ風の内装が印象的な客席には、カウンター席の他に四名分にしては随分と広めの小上がり席も設けてある。田舎の茶の間を思わせる懐かしい雰囲気が街の景色に同化するようだ。そんな穏やかな店内を本日は二人で切り盛りされていて、調理工程の全てを店主さんが担われているようだ。客席からは完全に独立したガラス張りの調理場内からは中華鍋の金属音が響いてくる。よだれ鶏などのサイドメニューのラインナップを見ても分かるように、店主さんは中華料理店の出身と思われる調理場の造りとなっている。細かな調理作業は見えないが五感を研ぎ澄ませて音などから調理工程を想像しながら待っていると、着席して6分で我が杯が到着した。

その姿は昔ながらの双喜と雷紋に龍のフルセットが描かれた高台丼の中で、器に似合った懐かしい表情と流行りのスタイルを融合させた景色を見せている。しかしそのフュージョンした姿には最初の疑問が浮かんできた。なぜに〝無化調〟を謳っておきながら、ナルトがセンターを飾っているのだろうか。自家製のナルトか、もしくは発酵調味液すら使用していない無添加のナルトならば問題ないが、そうではない一般に流通しているナルトと思われる。せっかくの無化調スープにナルトの添加物が溶け出さないうちに、卓上の紙おしぼりに包んで危機を回避した。

そこからまずは葡萄茶色のスープをひとくち。寿司屋の隠語で醤油が〝むらさき〟と言われる理由が分かるような、紫色を含んだ醤油ダレがビシッと全体の色合いを引き締めている。そこには酸化する前の鮮度の良い醤油は、赤みを帯びた紫色をしている事を思い出させてくれる。器の底になる程に漆黒の闇へと向かっているようなスープの液面には、ドットの乱れた香味油が薄膜を張っている。見た目にも深みのありそうなスープにレンゲを落とし込むと、強めの醤油の香りが先陣を切って鼻先に届いた。勢いよく吸い込むと、むせ返りそうなくらいにハッキリとしたカエシの香りが印象に残る。香り同様の強い刺激を思いながらスープを口に含んでみると、かなり高めの設定の塩気を感じるが甘みの存在も見え隠れしている。そこに加えて鉄分のような軽快な苦味も感じるのは、中華鍋でスープを沸かし直しているからなのだろうか。まさか中華鍋の鉄分が味となるとは思えないが不思議とそんな気がした。そんな強気なカエシを支えている土台には丸鶏や豚ゲンコツの動物系と魚介出汁が合わさり、干し椎茸などの乾物系も重なりをみせる。鮮度の良いフレッシュな動物系スープと魚介や乾物由来の枯れた味わいのスープが見事に調和して、昔ながらの基本の材料を使いながらも非天然由来の旨味成分に頼らない無化調スープとなっている。

かなり塩気の強いスープに押され気味な口の中を中和させようと思い麺を引き上げてみると、すでにスープの色素を吸い込んだような色付きをした中細ストレート麺が現れた。箸先に係る重量はズッシリとして、加水率の高さを思わせる。麺肌にはくっきりと切刃のエッジが残りシャープな印象を与えているが、残念な事にスープの中では麺が癒着している部分がいくつも見られた。さらには蛇のように〝とぐろ〟を巻いているので麺を持ち上げるのも一苦労で、麺をすする楽しみを半減させてしまっている。茹で麺機の様子が見えないのでテボか平ザルかは分からないが、全く整えられてない麺線のおかげで麺をほぐす一手間が無駄に思えた。麺線の流れに気を使いながらすすってみると、切刃の角の鋭い形状なので四角い口当たりで滑り込んできた。まさにエッジの効いた初動が唇を刺激するが、舌触りとしてはシルキーな繊細さをアピールしてくる。歯応えとしては奥歯の噛み合わせから逃げようとする抵抗も見せるが、しっかりと咀嚼には応じてくれる。喉越しも良く滑らかな麺質だけに、麺線の癒着が残念で仕方ない。

具材のチャーシューは、初期値でも鶏肉と豚肉の部位違いで二種類盛り付けてある。先に見た目にも淡白そうな鶏ムネ肉から食べてみると、しっとりとした低温調理による舌触りが印象に残る。それでいて噛み応えも持ち合わせているが冷蔵庫の冷たさが残っている。開店直後の一番客なので常温に戻す時間もなかったのだろうが、冷たさに旨みが隠れていると感じた。一方の豚肉には脂身のないモモ肉で仕込まれていて赤身の肉質の食べ応えはあったが、味付けの薄さと豚肉本来の獣臭さが目立ってしまっている。こちらも冷たさが残っているので衛生面では安心だが、味わいの部分では不服が残る仕上がりだった。

これに反して板メンマには濃い味付けがされていて、見た目の強い醤油色素と同じく煮汁の醤油がハッキリと利いている。噛むたびに浸み出してくる塩気には手こずってしまった。

器の口縁に張り付いた十字6切の海苔は口溶けが悪く口の中に残り続け、磯の香りも乏しかった。旬を越えて収穫された春先の海苔のように硬いので、巻き寿司などには適した海苔に思えた。

薬味は青ネギと白ネギが切り方を変えて添えてあり、いい意味で田舎ねぎのような粗々しい香りや食感は嫌いではない。最近は品種改良によって野菜本来の香りがしないものが溢れているが、葱には葱らしい香りを欲してしまう。繊細なスープには高級ブランド葱も良いが、こちらの荒っぽいスープにはマッチした薬味ねぎだと思った。

全体的に〝無化調〟を謳っているラーメンとしては都会的ではなく素朴な粗さが持ち味のラーメンだったので、初動で感じた塩気の強さを引きずりながら麺だけは完食できた。しかしスープを飲み干す余力は残っておらず、残念ながらレンゲを置いた。後客もなく食べ終えて店を出ると、ここまでの道のりが大変だった以上に帰り道も苦難を強いられた

Googleマップでは先程の笠間駅まで戻るバスがあるはずなのに、最寄りのバス停に行ってみると休校日は運休となっていた。まだ当日は夏休み中だったので、大手グーグル社でも把握できてない事案があったようだ。

うつむき加減で仕方なく歩いて笠間駅まで20分かけて歩いて帰る途中に、ちょうど昼の12時を知らせるチャイムが町内放送で鳴り響いた。その曲が〝上を向いて歩こう〟だったのには、顔を上げて歩くしかないと思わせてくれた一杯となりました。

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「鶏と水 (醤油) 味玉付き ¥890」@つくばらーめん 鬼者語 -オニモノガタリ-の写真平日 晴天 10:50 先待ち10名 後待ち15名以上

〝麺遊空間いばらき 四泊五日ラーメンめぐり〟

とうとう今回の茨城遠征も五日目を迎えてしまった。もし読んでくださっている方がいるならばラー旅なのかキャ旅なのか分からないような内容になってしまっている事を申し訳なく思いながら最後の夜巡業の報告をさせていただきますが、不快な描写がありますので閲覧されない事をお勧めいたします。

昨晩は風光明媚なつくば市内とは思えぬような昔ながらのネオン街で、今回のラー旅の通算14杯目のラーメンを食べ終えて店を後にした。それから不思議な背徳感の漂う天久保地区を味わう為に、呼び込みのお兄さん方に身を任せようと小さなエリア内を徘徊してみた。しかし私のオーラに上客感が無いのだろうか、誰一人として声を掛けてこない状況が続いた。思い起こせば群馬の高崎ナイトでも同じような経験をしたのを思い出した。そんなに声をかけづらい人相なのだろうかと思ってしまうほど誰も近寄ってこない。

仕方なく案内所を探してみても、それらしき施設が見つからない。この夜のために延泊してまで、つくば市に戻って来たのが無駄になってしまう。そう思うと自然と不思議な力が湧いてきたのだ。

「こうなったら自分から声をかけるしかない」

そう思うと、勝手に身体が動いていた。目の前のいた屈強な二の腕を持つキャッチのお兄さんに「初めてなんでだけど飲めるとこない?」と尋ねると「舐◯るとこならありますよ」と、トンチンカンではあるがオーソドックスなボケが返ってきた。

さすがに自分から声をかけておいてスルーもできず、愛想笑いで濁してから本題に切り込んでみると地方感あふれる店を紹介された。店名は十数年前に日本中を席巻したギャル雑誌をインスパイアしたような店だったが、一期一会の精神で身も心も預けて行ってみる事にした。

結果を先に言えば、動物系白湯の魚粉たっぷりスープに極太麺を合わせたような店だった。簡単に説明すれば〝豚骨魚介系〟ならぬ〝ポンコツ奇怪系〟と言った太めの女性陣三人に取り囲まれた6セットだった。

なぜ6セットも延長したかというと、さすがにポッチャリ女子三人組だけに持っているラーメンの情報量が膨大で知りたい事がありすぎたのが理由だ。あまりのデータ量の多さに、思わず心の中で三人組の呼び名を決めた。

〝ラーメンデータブス〟

通釈〝RDB〟である。このRDB三人娘から聞き出した有力情報を元に茨城遠征を締めくくる候補店を飲みながら決めていたのだが、翌朝は無残にも最終日の計画が砕け散った。

というのも、見た目は別にして三人娘とラーメントークで盛り上がりすぎた昨夜は気が付けば午前3時の閉店時間を迎えていたのだ。そんな三人娘から仕入れた情報によると、偶然にも今回の茨城遠征のスタート店となった製麺所直営店の麺を仕入れた朝ラーを食べられる午前7時開店のラーメン店が近くにあると聞いた。しかし現在時刻は午前3時過ぎで朝ラーの開店までは4時間近くもあったので、三人娘のアフターの誘いを断り (ラーメン情報を聞き出したのでもう十分だ) ホテルに戻ったのだが、目が覚めると午前10時前だったのだ。すでに朝ラーは諦める時間帯なので、昨晩の〝罪と罰〟を思いながら次に仕入れた情報を頼りに訪問先を決めたのがコチラだったのだ。

すぐに移動ルートを検索したが11時開店に間に合う公共交通機関がなく、最終的にはタクシーを利用する手段を選択した。あとで考えれば、つくば駅からタクシーに乗っても距離的には変わらなかったかもしれないが、みどりの駅までTXで行ってからタクシーに乗車した。そこから 2000円程かかったが10分で店の前に辿り着いたが、そこには恐ろしげな屋号に似合わない洒落た外観の店が立っていた。

定刻の10分前と遅い現着となってしまったので、店先のウッドデッキの外待ち席には行列が出来ていた。テラスを丸く囲むように置かれたイスに座り待機を始めるが、暑さ対策のうちわや冷たい水まで設置されてあり店側の〝愛と誠〟を感じた。目の前には〝農研機構とラブホテル〟がフュージョンしている。行列の客層も夏休みなので〝若者とオジサン〟が融合状態となっている。定刻を迎える頃には行列は増え続けて20名以上になっていたが、半数近くは女性客なのには驚いた。そんな中で待っていると、店内から店主さんが丸太製のオブジェのような営業中の立て看板を持って出てきてオープンとなった。

店内に入ると入口左手の券売機から本日のお題を決めるのだが、これが今回の茨城遠征最後のラーメンになるかと思うと緊張してきた。かなり豊富なラインナップの中から最上段を飾っている〝鶏と水〟の味玉付きを発券したが、カウンター9席の一巡目は逃してしまいL字の中待ちベンチにて二次待機となった。

そこから店内観察を開始すると流行りのカフェ風の内装なのだが、他所にはない高級感と清潔感が漂っている。安っぽく見えがちなサイン色紙が飾られているが、しっかりと額装されているのでインテリアのようにも見える。また厨房内も手入れが行き届いていて、汚れがちな電動スライサーも新品のようにピカピカに輝いている。この清潔感こそが女性客を引きつける要素の一つなのだろう。そんな心地良い店内を本日は三人体制で仕切っているが、意外な事に調理を担当するのは店主さんではなく二人の女性スタッフさんだった。そこには全幅の信頼関係を感じ、女性ならではの視線が店内の雰囲気に直結しているように思えた。その間も行列をさばきながら常連客に声をかける店主さんの心づかいの現場を見ていると30分程で、ようやくカウンターへと昇格となった。先客陣は食欲旺盛な若者男子が多かったので、全員が替玉を追加注文していたので回転率が悪くなっているようだ。

二巡目でカウンターに座ると先客の退店を見計らって次なるロットの調理が始まったが、一度に五つもの丼が盛り場に並べられた時には昨日のワンロット10杯での苦い経験が頭をよぎった。あまりに多くの杯数をこなそうとすると、盛り付けの時間がかかり過ぎて麺ディションがベストの状態から離れていってしまう気がしてならないのだ。昨日はそれに当たってしまい残念な思いをしたばかりなので、今回も不安になってしまった。そうなると丁寧な盛り付け作業さえも時間がかかっているように思っていると、カウンターに着席して5分で我が杯が到着した。

その姿は口縁の反った白磁の切立丼の中で、それは何とも美しい景色を見せてくれた。ラーメンにオシャレ要素を必要としない保守派の偏屈オヤジでも、息を呑むような絶景にはセンスの高さを思い知った。失礼ながら、こんな場所でハイセンスなラーメンに出会えるとは思ってなかったので正直驚いてしまった。しかし肝心なのは見た目ではないと、自身を諭してレンゲを手にとった。

まずは弁柄色のスープをひとくち。どこまでも透明感のあるスープの表層には多めの鶏油が覆いかぶさり、店内のダウンライトをキラキラと跳ね返している。そんな輝きの細部までも計算されたかのような液面にレンゲを沈めると、熱々の湯気と共に醤油の香りが立ち昇ってきた。それは出汁感よりも明確なカエシの香りで、瞬時に芳醇な空気感に包まれた。レンゲに注がれる際にもサラリと抵抗なく湛えられたスープを口に含むと、香りは醤油が主導しているが旨みは鶏出汁が主体となっている。トレンドの一つになった〝鶏と水〟を謳ったスープを飲んできた中でも、トップランクに挙げられる旨みの深さを感じる。一切の鶏臭さやクセを感じさせないクリアな味わいは、丁寧な丸鶏の下処理と徹底された温度管理が生み出したスープだろう。厨房内の奥まった場所にスープ場をレイアウトされているので、熱効率も良く空調にも影響しない考え込まれた設計をされている。そこでじっくりと炊かれたスープは、初見では多く見えた鶏油も油っぽさはなく適度なコクを加えるに留まっている。素晴らしいスープなので、どうか麺が伸びてない事を祈りながらレンゲを箸に持ち替えた。

急いで麺を持ち上げようとしたのだが、麺がスープの中で毛糸玉のように丸まっている。勝手に麺はスープにくぐらせて麺線を整えるものとばかり思っていたので、予想外の形に驚いてしまった。この美しい盛り付けをする為には必要不可欠な方法だとは思うが、自身で麺をほぐす作業が余分な作業だと思いながら麺をスープに泳がせた。しかしこの麺の盛り付け方が功を奏したのか、麺が伸びずに強いハリを残していたのだ。食べずとも箸先から伝わってきた麺の力強さには、余計な心配をして損をしたと思ってしまった。麺を混ぜた時点で盛り付けの美しさは失われてしまったが、この状態こそ麺を楽しむにはベストの状態だと確信して一気にすすり込んだ。麺上げまで50秒の中細ストレート麺からは思った通りのハードな口当たりで滑り込んできて、調理場内に積まれた黄色い麺箱の製麺所らしい力強いアタックで押し寄せてきた。伸びているどころか硬さすら感じさせる麺だが、しっかりとグルテンが加熱されているので弾力ある歯応えが楽しめる。序盤から麺を噛んでは小麦の香りを楽しんで、スープの旨みと重ねわせる繰り返しの虜になってしまった程だ。

ここまではスープと麺の組み合わせの素晴らしさに大満足していたのだが、具材のチャーシューが思いのほか好みと違っていた。部位違いで盛り付けられた二種類のチャーシューの中から鶏ムネ肉の低温調理の方を食べてみたが、低温調理の衛生基準を守ってあるのは安心できるがパサついた舌触りが意外だった。もう少しレアっぽさをアピールしてくるのかと思ったが、完全に火入れされた蒸し鶏だった。もちろん基準に満たない半ナマチャーシューよりは有難いが、少しやり過ぎではと感じた。せっかくのソミュール液の香辛料の香りも感じられない程に乾いた食感となっていた。一方の豚ロースの釜焼きチャーシューも盛り付け直前にスライスされていたが、ポソポソとした食べ応えの無さが残念だった。

そんな物足りないチャーシュー陣に対して、追加した味玉は感動レベルの仕上がりだった。常温以上での提供で、下茹での半熟加減も申し分ない。その上に漬けダレの浸透圧による黄身の熟成が引き出した旨みの濃さと、舌にまとわりつくような食感に魅了されてしまった。

薬味ではなく具材として盛り付けてある芽キャベツには保守的な反応を起こしてしまい不要に思ったのだが、食べてみると丁寧に下処理された芽キャベツの持つ苦味が軽いアクセントになってくれた。

初見では芽キャベツの上に盛り付けられていたトンブリや糸唐辛子を目視できたが、麺を混ぜた後には行方不明となってしまった。よって、いつ口に入ったのかも定かではない。

薬味の玉ねぎアッシェや青ネギはスープを飲み干す際に変化をつけてくれたが、純粋にスープの旨みを味わうには不要だったかもと思った。

それほどスープが味わい深かっただけにチャーシューの仕上がりが残念で仕方ない〝天国と地獄〟と言わないまでも〝天使と悪魔〟が共存したラーメンだったが、それを踏まえたとしても高評価は必然と思った。

今夜は都内での所用がある為に茨城遠征最後のラーメンとなってしまったが、フィナーレを飾るに相応しいラーメンに出会えた。その事には大満足ではあったが、帰りのバスがなく地方遠征の厳しさを身をもって実感した一杯でした。

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「鶏SOBAバター抜き ¥700+味玉 ¥100」@七福軒の写真平日 晴天 21:15 先客10名 後客6名

〝麺遊空間いばらき 三泊四日ラーメンめぐり〟

本日の三食目を食べ終えて戻ってきたホテルで茨城遠征四日目の夜は人生初のつくばナイトをエンジョイしようと思い、夜の情報収集に総力を挙げて取り組んだ。

すると天久保地区という一帯に飲み屋が集中している情報を得ると、夜の帳が下りるのを待って出掛ける事にした。今回の長旅の疲れも溜まっていたのだろうか、気が付けばソファでウトウトしてしまっていて21時前に目が覚めた。

慌てて支度をして天久保地区への移動手段を検索するとバスルートがあるようだが、時間帯のせいか運行しておらず仕方なくホテルのフロントにタクシーを呼んでもらった。すぐに乗り込んだタクシーで5分も走ると、つくば最大というよりも唯一の夜のネオン街に送り届けられた。タクシーを降りた瞬間から、明らかに駅前とは違う空気が流れているのを肌で感じた。

ひとまずはネオン街の全貌を知る為に見知らぬ街を徘徊してみたのだが、このワンブロックだけは時代に取り残されたような虚無感が漂っている。しかしそんな寂れた空気感の中にも、きらびやかに輝くキャ◯クラのネオンが点在しているのだ。一種異様な雰囲気に恐ろしさもあったが、特異な高揚感も抑えきれず今夜の止まり木を探してみた。すると小さなネオン街の中心部と思われるあたりに、地上4階くらいのビアガーデンが賑わっている場所を見つけた。駐車場を取り囲むように並んだ飲食店の中に、ひときわ賑わっている店があったのがラーメン店だった。

すぐにRDBで調べてみると、つくば市総合ランキング第7位の人気店と知った。飲みに行く前に小腹も空いてきた事だし、これだけ大勢の客が入っているならば間違いないと思い予定外の突撃訪問する事にした。

店内に入ると入口左手の券売機からお題を決めるが、全くの下調べなしなので上から下までじっくりと眺めた。多種多様なラインナップに気後れしながらも筆頭を飾っているラーメンに注目した。これが店のイチオシだと思ったが〝エスカルゴバター〟というラーメンの中には異質と思われる要素が含まれていた。しかしその下のボタンには保守派の私にはピッタリの〝バター抜き〟なるメニューを見つけると、詳細は分からないままに発券してみた。もちろん追加の味玉も忘れずに発券して二重扉の店内へと進んだ。

右手のテーブル席には団体客が二組いて賑わっていたが、左手のカウンター席には空席が多くあった。セルフで水を汲んでカウンターに座り食券を台上に置いた。電気式のウォーターサーバーなのにぬるい水を飲みながらカウンター越しに店内を見渡すと、かなり広い客席ながらも本日は二人体制で回している。調理を担当しているのが店主さんだろうか黙々と注文をこなしている。こちらの客層も大学生が中心で若さがみなぎっているが、過去の経験からだとガッツリ系への不安がよぎらなくもない。調理場内はステンレス張りが主流になっている最近では珍しい青いタイル張りが印象的だが、新しさこそないが磨き上げられたタイルや寸胴鍋が輝いておりラーメンへの期待も自然と高まる。そんな中で待っていると、着席して7分で我が杯が到着した。

その姿は白磁の鳴門丼の中で美しい盛り付けで提供されると、濃厚には見えるが丁寧な仕事ぶりから穏やかな印象すら浮かんでくる。前食がコッテリ味噌系だった事もあり、心のどこかでアッサリ清湯系を望んでいたのたが気持ちを入れ替えて目の前のラーメンに向き合った。

まずはスープをひとくち。完全に乳化を果たした液面にレンゲを沈めてみると、かなりの手応えがレンゲを押し返してくる。トロッと粘度を感じさせながらレンゲに注がれたスープを口元に近づけると、鶏白湯にありがちな獣臭さのない香りが穏やかに漂ってきた。鶏の臭みがない事を喜んでスープを口に含んでみるとイメージに反して、かなりの塩気の強さが襲ってきた。口当たりはポタージュのように柔らかなのだが、カエシの塩分が刺々しく舌先や喉を刺激してくる。初動でこの強さだと後半にはどうなってしまうのか心配しながら麺へと進んでみた。

店頭に山積みにされたお馴染みの黄色い麺箱から想像する外注麺を箸で持ち上げてみると、麺上げまで120秒の少し太めのストレート麺が現れた。艶やかな麺肌は切刃の角を感じさせない丸く膨れた形状で、黄色みの強いのが特徴的だ。ずっしりと重みが伝わってくる箸先からも加水率の高さが想像でき、食べ応えの良さを自ずと感じとった。そんな麺を一気にすすり上げると、丸い麺形が伸びやかに唇を通過する。その際にスープの粘着質が手伝って、ひとすすり毎にスープをふんだんに吸い上げてくる。しかし私には塩気の強すぎるスープなので、麺自体の風味を味わえずスープの刺激が追いかけてくる。楽しめたのはグルテンの持つ弾力ある歯応えで、出来るだけスープを絡めないようにして麺の醍醐味を味わった。中盤以降も強いコシは変わらず、食べ飽きしない良麺だった。

具材のチャーシューは豚バラ煮豚が大判厚切りで、これ見よがしに鎮座している。バラ肉の中でも赤身中心の部分が切り分けられていたので、ほどけるような柔らかさの中にも赤身の繊維質の歯応えも残す好みの部位だった。味付けは少し強めにしてあるので、スープと重なると強気な味がさらに重なってくる。そんな塩気を中和しようと思い薬味の白ネギと一緒に食べてみたが、白ネギも野生的な辛味を残したタイプだったので刺激がますます強くなってしまった。ここで口内をお冷でリセットしたくても、ぬるい水では不快感が募るばかりだった。

追加した味玉は偏った趣向の私でも納得の熟成感を生んでいたが、やはりこれも二割ほど味が濃くなっている。しっかりとゲル化した濃厚な黄身の甘さを引き出す以上の塩分浸透が残念だった。白いご飯でもあればチャーシューや味玉の塩気も緩和されるだろうとは思ったが、具材単体では随分と塩っぱく感じた。

メンマも同じく噛めば内側から染み出てくるような味の濃さが味覚を疲れさせてくる。全ての具材が見た目の醤油色素と同様に濃い味付けになっているのは、若者が多いの場所柄のせいなのだろうか。それとも醤油消費量が関東一という噂が本当なのだろうかと信じてしまう程に濃い味だった。

薬味の玉ねぎは手仕事感のないランダムな荒れた切り口が、強い辛味を演出している。この玉ねぎの辛さは嫌いではないのだが、このスープの中では不要に思えた。できれば甘みのある切り口で口内をリセットして欲しかった。青み役も兼ねた青ネギは鮮度の悪さからか、大事な風味が飛んでしまって存在感のない薬味となっていた。

中盤からも塩気の強さに追い立てられるようにして麺を食べ進んでいったが、完食するまではいかなかった。スープも最初のひとくち以降は口にせずに箸とレンゲを置いた。

つくばナイトを楽しむために立ち寄ったエリアだったが、後で聞くとこの辺りはバブル景気の頃は今よりも倍以上の飲食店で賑わっていたらしい。全くの偶然で出会ったラーメン店だったが、大人の社交場と言うよりは学生たちの食堂といった感じの店で中年組にはしっくりこなかった。

店を出ると周囲のカラオケ店からも、学生らしい若い歌声が音漏れしてきている。今回の茨城遠征で訪れた土浦や水戸とは違った学生街の〝ノリ〟に少し気持ちが萎えてしまった。その落ち込んだ気持ちを奮い立たせるために、うら寂しい街の雰囲気に不似合いな派手に輝く看板のある方へと歩み寄った一杯でした。

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「ラーメン ¥800+味玉 ¥110」@麺や 蒼 AOIの写真平日 晴天 17:15 待ちなし 後待ち15名以上

〝麺遊空間いばらき 三泊四日ラーメンめぐり〟

今回の茨城遠征を終わりにしようと訪れてきた下妻でのラーメンを食べ終えると、土浦駅へと帰るバスに乗るためにショッピングモール前にある最寄りの比毛バス停にやって来た。

運行本数の少ない時刻表を見ると土浦駅行きのバスまでは1時間ほどあったので、ショッピングモールのカフェにでも行って時間を過ごそうと思っていたのだ。もう一度バスの時刻を確認すると、つくば駅へと向かう便が同じバス停から出ている事に気付いた。しかも10分後に通過すると知っては、良からぬ虫が騒ぎ出した。

思い返せば、茨城遠征の初日にバスを乗り間違えなければ当日はつくばに泊まっていたはずなのだ。そうなれば必然的に人生初のつくばナイトを楽しんでいたに違いないと思うと、どうしてもやり残してしまった気持ちが込み上げてきた。しかも背後には筑波山が後押しするようにそびえ立っているので、もう一日だけ連泊しようと思い立ったのだ。

そうと決まれば直ぐに到着したバスに乗り込んで、つくば駅へと三日ぶりに向かった。何度もお世話になっている茨城交通バスに揺られること50分ほどで、つくばセンターバス停に戻ってきた。車中で今夜のホテルをネット予約をしておいてので、ひとまずは駅から少し離れた公園脇のホテルにチェックインを済ませた。

残念ながら大浴場もサウナもないホテルだったので、手狭なシャワーで汗を流すとソファに腰をかけてRDBを開いてみる。初日に4軒ばかり回ったくらいでは、つくばラーメンのひと握りしか楽しめていない事を実感する。それ程に人気店がそろうエリアだけに今夜の候補を絞るのにも難航したが、思わぬ近場にあったのがコチラなのだ。

お店情報では夜の部開始が17時半との事なので、それまでの時間をホテルのベッドに横たわりながら旅の疲れを取る事にした。1時間ほど休んでからホテルを出発すると、公園の向こう側にあるコチラへは3分もかからずに着いてしまった。定刻の15分前の現着となったが並びは発生しておらず、外待ちベンチの一番手をキープしてオープンの時を待った。

目の前には、みどり豊かな公園が見える絶景のロケーションの中にある。定刻の5分前になる頃には次々と後列が増え始めて、あった言う間に長蛇の列となっていた。夏休み中ではあるはずなのだが、近隣の大学生が行列の中心である。つくばの大学生は夏休みを返上して勉学に勤しんでいるのだろうと、日本の将来が明るく見えてきた。行列の最高年齢者が先頭に並んでいるという、不思議な構図の中で待っていると定刻通りにオープンとなった。

店内を覆い隠していたロールスクリーンが上げられ、真っ白な暖簾が掛けられると店内に入った。入口正面の券売機から本日のお題を決めるのだが、予備知識では味噌ラーメン店との情報は得ていた。しかし券売機の筆頭に掲げられているボタンには「ラーメン」とだけ書かれてあり、それが基本の味噌ラーメンなのかは確信が持てないままにボタンを押していた。下部にあった味玉だけを追加発券して、ホールの女性スタッフさんの誘導でカウンターの一番奥の席に腰を下ろした。

そこから店内を見渡すと、完全に厨房が独立したレイアウトになっているので調理工程は見られないのが残念だ。しかし厨房内からは味噌ラーメンの真骨頂とも言える中華鍋を振る音や匂いが届いてきて、美味い味噌ラーメンへの期待感を向上させる。多分ではあるが本日は四人体制で回していると思われ、テーブル席もある広い客席の割には少数精鋭で営まれている。基本的に黒でまとめられた店内の私が座っているカウンターの目の前には多くのムエタイ王者のサイン色紙が飾られている。その横の本棚には、今は飾られてない〝ラー◯ン官僚〟のサイン色紙が悲しく置いてあった。初訪問なので店のルールが分からずにセルフのお冷を汲み忘れてしまったので、入口の券売機の横まで戻って水を調達してきた。

厨房では調理が進んでいるのは分かるのだが、着席して10分経ってもまだ配膳されてこない。15分を過ぎても依然として変わらぬまま待っていると、20分の少し手前になってようやく我が杯が到着したのだ。するとそこからは、長いカウンターに座る10名分のラーメンや、つけ麺が一気に配膳されたのだ。つまりはワンロット10杯という事で、提供までに時間がかかったのも納得できた。しかしこのパターンの多くは麺ディションが心配される事があり、今まで何度も苦渋を舐めてきたので、今回はそうでない事を願いながらレンゲを手にとった。

黒釉薬の片口の器の中には、淡い茶系のグラデーションが目を引く景色が印象に残る。表層にはラー油がマープル模様を描くように浮遊しており、苦手な魚粉の山も見られる。なるだけ魚粉を崩さないようにスープにレンゲを沈めてみると、粘着質が指先から伝わってきた。ある程度の濃厚スープを覚悟して口に含んでみると、ピリッとしたラー油の唐辛子の辛味が先行してくる。その奥には動物系スープが乳化したクリーミーな舌触りを感じ、とても滑らかな口当たりがラー油の辛さを打ち消した。初見では味噌を押し出した感じはせず、ふくよかな甘みが中心となったスープと思えた。豚骨魚介によくあるザラつきもなく、塩気の強さも抑えてあるので親しみやすい仕上がりを見せる。

続いてワンロット10杯の大量生産から懸念された麺を箸で持ち上げてみると、平打ちタイプの太麺が現れた。勝手なイメージで味噌系スープの中から現れるのは黄色い中太ちぢれ麺だと思い込んでいたので、あまり見かけない組み合わせに正直言って驚いてしまった。そんな平打ち麺なのだが箸先の段階から心配事が的中してしまっていた。それは麺が癒着してしまっている点で、すする前から箸先でもたついている。そんな粘りを見せる麺肌から溶け出したグルテンをスープで洗い流すようにしてからすすり上げると、柔らかな口当たりで飛び込んでくる。これが基本の茹で加減なのだろうが、私にはとても柔らかすぎる食感だった。唇には粘りを残して、口の中ではもたついている。ハリやコシのない大人しすぎる食感には、物足りなさと寂しさを感じた。噛んでも奥歯を押し返すようなグルテンの弾力は全くなく、伸びきったきしめんを食べているようで残念だった。これ以上の麺の劣化が心配だったので具材に移行せずに麺から先に食べて進めたが、中盤以降はさらに食べ応えのない麺となってしまっていた。

具材のチャーシューは豚バラの煮豚型が厚切りで盛り付けてあるが、箸ではつかめないくらいに柔らかく煮込まれている。とろけるような脂身の甘みが持ち味だが、油っぽさやクドさがないのは豚肉本来の質の良さもあり尚且つ下処理の丁寧な仕事が活きているからだろう。味付けも特別な個性を表現する訳ではなく薄味仕立てなのも素晴らしい。アンチとろけるチャーシュー派の私でも美味いと思える絶品チャーシューだった。

追加した味玉の熟成感は一朝一夕では成し得ない仕上がりとなっている。完全にゲル化した黄身がネットリと舌にまとわりつくような食感は、じっくりと浸透圧で水分が抜けた味玉だけに許される特権である。しかしそんな味わい深い味玉なのに冷蔵庫の冷たさが残ってしまっていた。ハッキリと冷たさを感じるので、十分に熟成の持ち味を楽しめなかった気がしてならない。せめて常温であればと好みを望んでしまった。

板メンマは細身のタイプが添えてあり、軽やかな歯切れの良さが心地よくアクセントになっていた。

中盤になると魚粉の山も崩れてしまいスープに溶け込んでしまったが、塩気よりも旨みや甘みを強く感じる魚粉による味変だった。ややザラついた口当たりのスープになってしまったのは否めないが、毛嫌いしていたほどの悪い印象は残さなかった。

炒め野菜の玉ねぎやモヤシの甘みと食感がラーメン全体を引き締めていて、物足りない麺の食感をいくらかはサポートしてくれた。ニラが数本だけ入っていたが印象は薄い。

最終的には麺を食べ切る事が出来ずに箸を置いてしまったが、きっと今回の麺はベストではないと信じたい。やはりワンロット10杯が影響している気がしてならずに席を立った。

店を出る時にも中待ちだけでなく外待ちベンチも行列で埋まっていたので、つくばエリアはおろか茨城県内での人気の高さも実感した。公園を挟んだホテルに戻ると早速つくばの夜情報を調べてみたが、やはり学園都市だけに絶対数の少ない中にもお目当ての店を見つける事が出来た一杯でした。

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「和風だし正油ラーメン ¥750」@Dragon Noodle's ドラゴンラーメンの写真平日 晴天 13:40 先客8名 後客2名

〝麺遊空間いばらき 三泊四日ラーメンめぐり〟

本日をもって四日間に渡った茨城遠征も最後の締めくくりにしようと思い、長い間RDBのスパコンのオススメに挙がっている水海道の人気店を訪れるために前食の取手から移動して来た。しかし名物とも言われる赤信号が目印の臨時休業に見舞われてしまった。お店情報でも不定休なのは知っていたが、駅から遠い道のりを歩いて来たのでショックは大きかった。リカバリーしようと川の向こうのラーメン店に橋を渡って行ってみたが、まさかのコチラも赤信号が点っていた。

仕方なく20分かけて水海道駅まで戻り今回の旅もこのまま終わりを迎えるかと思っていたのだが、土浦嬢から仕入れた情報が役に立つ時が来たのだ。水戸の前に泊まっていた土浦で出会った女の子が下妻の出身で、コチラのラーメンが美味しいから行ってみてと教えてくれたのを思い出した。勿論ハタチそこそこの若者の言う事なので鵜呑みにはしなかったが、同じ常総線沿線で起死回生のラーメンに出会えるかもしれないと移動ルートを調べてみた。すると営業時間の短い昼の部にも何とか間に合いそうだったので、一足伸ばして茨城遠征13杯目を求めて移動を開始した。

水海道駅を13時ちょうどに常総線にて出発すると、30分ほどで最寄りの下妻駅までは来られた。しかし14時閉店のコチラに間に合うバスがなかったので、やむを得ず駅前に停まっていたタクシーに乗車して店へと急いだ。走ること5分ほどで、超巨大なショッピングモールの外れにあるコチラの店先で降りた。早じまいを心配していたが店頭には大きく営業中と看板が立っており、三連続でフラれる事はなくなった。

大きな店構えの入口には外待ちベンチが完備してあり玄関の内側も待合室となっているので、繁忙期やピークタイムの客入りのスゴさは想像がつく。そんな入口を抜けると左手に券売機が置かれてあり、急遽の訪問となったので予習不足だったが本日のお題を品定めする。左上部の筆頭を飾っているのがマイスタンダードの醤油系だったが右側に〝和風だし〟という言葉を見つけたので、暴飲暴食で酷使した胃袋を気づかいボタンを押した。メニュー写真には味玉も写っていたので基本のみを発券した。

時間帯のせいか広い客席には空席も目立ち、カウンターの中央に腰を下ろし店内観察を始める。L字カウンターの他にも多くのテーブル席が設けてあり大人数にも対応可能な客席となっている。コンクリート壁の打ちっ放しと木目調のカウンターの組み合わせが、バブル期に放映されたトレンディドラマの主人公が暮らすデザイナーズマンションを思い出させる。そんな歴史のある店内を本日は五人体制で回していて、厨房内では夜の仕込みに余念がない。そんな下準備の大変さを眺めながら待っていると、着席して5分で我が杯が到着した。

その姿は口縁が鋭角に狭まった白磁の切立丼の中で、素朴ながらも盛りだくさんな風景を見せている。メニュー写真の嘘偽りのない姿に安堵しながらレンゲを手にした。

まずは榛色のスープをひとくち。わずかに豚背脂の脂片が見え隠れする液面の下には、少しだけ霞みがかったスープが見える。そんなスープにレンゲを落とし込むと、軽やかだが粘着質も感じる手応えが伝わってきた。破れた油膜の隙間からはタイトルの文字通りに魚介の和風だしの香りが立ち昇ってきて、親しみやすい香りが鼻腔の中に広がった。いざスープを口に含むと、香りの魚介出汁とは異なる動物系出汁の力強い旨みが口の中を占拠した。鼻の中の香りは魚介で、口の中の旨みは鶏豚主体となって担っている。また動物性コラーゲンの粘りが唇や口内をコーティングするので、スープの濁りは動物系由来の半濁なのだろう。まろやかなスープに対して合わせるカエシは強めに設定してあるが、決して塩分過多にはならずスープに輪郭だけを付けている。

続いて麺をピックアップしてみると、密度の濃そうな中細ストレート麺が現れた。箸を持つ指先にはどっしりと重たい荷重がかかり、加水率の高さを思わせる外注麺だ。麺上げまでは100秒程度に思われるが、凛としたハリを感じさせる。そんな中細麺を一気にすすると、あまりの熱さに唇が驚いた。スープの高温が麺に移ってすすり上げた口の中をヤケドしそうだった。言い換えれば、それだけスープを持ち上げているという事で麺との一体感がある。すするたびにスープの和風だしの香味が寄り添ってぬるので、ひとくちごとに一つの料理が完成するかなようだ。やや固めの口当たりで滑り込んでくるが、噛めばもっちりとした強い弾力を奥歯に残す。さらには喉越しも心地よく、唇から胃袋までを喜ばせてくれる。

具材のチャーシューは豚肩ロースの煮豚型が盛り付けてあるが、小ぶりながらも肉々しさを感じさせてくれる。しっとりと仕上がっているが、やや豚肉の赤身が持つ旨みは抜けてしまって残念だった。しかし煮汁に移った旨みはカエシなどに再利用されて、別の効果を果たしているのだろう。

初期値でも半個分入っている味玉はスープの熱で温められていて、熟成した旨みを感じやすい温度になっていた。下茹での半熟加減や漬けダレの浸透も良く、半個では足りないくらいに素晴らしい味玉だった。

メンマは極太タイプのものを一本ずつ手で割いているようだ。一般的な極太メンマは機械で裁断してあるので表面がきれいに平らであるが、こちらのメンマは断面が不揃いで裂け目に凹凸が見られる。その一手間によってメンマの食感は格段に柔らかくなり、麻竹の繊維質を楽しむ事が出来る。この〝メンマ愛〟には感動してしまった。

薬味は粗く刻まれた白ネギが適度に加熱されて、白ネギ特有の甘みと軽やかな食感を与えてくれていた。海苔も回転が早く保存状態も良いので鮮度の良さを保っていて、磯の香りと口溶けの良さの両面でアピールしていた。しかし青み役の水菜にはどうしても〝薬味愛〟を感じられない。個人的には青みにはひと仕事された茹で青菜の方を望んでしまう。

序盤では優しい和風だしの味わいに感じていたスープだったが、中盤からは魚介の香りに慣れてくると動物系の獣臭さを感じるようになってきたのでスープは飲み干せずにレンゲを置いた。

店名すら知らなかったラーメンに偶然にも出会えて、今回の茨城めぐりも終わりを迎えようとしている。店を出てショッピングモールの向こうには、雄大な筑波山の景色が広がっていた。今回のラー旅も筑波山のふもとから始まり色んな場所から山頂の形の違う筑波山を見られた事を振り返っていると、何故だか初日にやり残した事があったのを思い出した。それが何かは分からないままに帰りのバスの時刻を調べる事になった一杯でした。

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「特製中華そば (醤油) 平打ち麺 ¥980」@中華蕎麦 はざまの写真平日 晴天 10:45 待ちなし 後待ち5名 後客4名

〝麺遊空間いばらき 三泊四日ラーメンめぐり〟

昨日は昼のうちに三店舗を無事に回り水戸行脚を楽しんだ後は、今回の茨城遠征でのメインイベントと言うべき水戸嬢との同伴出勤に挑んだ。

そのために水戸市内で一番人気を誇る寿司屋を予約したのだが、まさかの生魚が食べられない事を告げられると慌てて寿司屋の予約をキャンセルした。そこで何が食べたいかと電話で尋ねてみると、思いもよらぬ色気も欲もない言葉が返ってきた。

「納豆があればどこでもいいです」

なんとも水戸市民らしい健気な返事に、オジサンながらも心がキュンとしてしまった。かと言って寿司屋で納豆巻きだけを食べさせる訳にもいかず、相手に知ってる店を教えてもらうと大工町にある居酒屋がいいと言われ直ぐに予約をした。そこならば店への出勤も近く便利だそうで、気取らずに食事ができるとの事だった。

その店は若者が好むには渋く落ち着きすぎていて驚いたが、料理の質も高く中年オジサンにも大満足の居酒屋だった。八角形のカウンターで囲まれた焼き台の上には銅製のダクトが高級な設えを見せる。焼き物の他にも、さすがは水戸と思わせる納豆料理も満喫した後は、夜が更けるのを忘れて水戸の夜を楽しんだ。

つまり昨夜は〝水戸ナイトを水戸納豆〟で幕を開けたのだ。

翌朝は少々身体が重たかったが、ホテル内の大浴場で汗とともに昨夜の出来事を洗い流して茨城遠征最終日の計画を立てる。今朝も朝食付きのプランだったが、午前中のラーメンのために食事は摂らずコーヒーを飲みながらRDBに向き合ってみる。まだまだ水戸市内には行きたい店もあるのだが、どうしてもこのラー旅で行っておきたい店が水海道にあるのだ。そこを目指すためには早朝に水戸を離れなければならず、とりあえずは県南地域に向かう事にした。

思い出深い水戸駅を後にして常磐線にて南下する状況の中、道中にある未開の地である取手市内に以前からブックマークしている店を見つけた。こちらは水海道へと向かう予定の関東鉄道 常総線の途中駅にある事を知り、本日の一軒目として決定した。

常磐線を取手駅で下車すると、一両編成のワンマンカー水海道行きに乗り継いだ。たぶん生まれてきたから初めて乗ったであろう常総線は、ボルドーカラーの座席が印象的だ。そんな車内は冷蔵庫のように冷やされていて若者たちには快適だろうが、老いを実感する私には少々寒すぎた。ゆめみ野駅までの四駅ではあったが冷房に震えながらも、予定通りに何とか来られた。


常総線に乗ったのが初めてならば、ゆめみ野駅に降り立ったのも人生初だった。ここからの経路はグーグルマップに頼るしかなく、午前中にもかかわらず超炎天下の強い日差しの中を出入り口か一ヶ所しかない無人駅を大きく迂回して駅の反対方向へと進んで行く。

農作地兼住宅地のような人の温もりを感じる場所を歩いて行くと、突如として人の気配のない雑木林に迷い込んだ。本当に行く先に飲食店があるのだろかと不安になるような景色に驚きながらも、ナビを信じて進んで行った。突然に現れた真夏の陽射しを遮ってくれる竹林は有り難いが、セミの羽ばたく音さえも恐怖に変わるようなシチュエーションは勘弁してもらいたい。その先には更に恐怖心をあおるような四つ角があり、石段を上がると墓地のようだがグーグルマップが誤作動して自分の位置情報が分からなくなってしまった。これも全ては水戸ナイトを楽しみ過ぎた罰だと反省しながら出来るだけ光の射している明るい方へと進んでみた。

すると偶然にも、大きく下る坂の向こうに立派な校舎のような建物が見えてきた。それを見た瞬間に、ようやく雑木林を抜けられたと喜んだ。その頃にはグーグルマップも私同様に正常を取り戻し、再びナビで導いてくれた。下り坂の突き当たりには交通量の多い道路が見え、その脇には飲食店らしき駐車場も見える。どうやらそこが目的地のようで、店の裏側からのアプローチとなった。裏から見る店内は薄暗く人の気配は無いが、空調の室外機は稼働しているので定休日ではないと悟った。急いで店先に回り込むと定刻の15分前の現着となったが、行列はなく先頭にて待機をはじめる。

周囲から店内の様子を探っても準備中の気配を感じないが、店頭の駐車場と裏側に車が停まっていたのでスタッフさんの車だと信じて待っていると後列が少しずつ増え始めた。白壁の一軒家の軒下での待機は暑さをしのげるが、後列の方は並びなど関係なく道路沿いの大木の木陰の下で涼みながら待っている。並んでいる皆んなが来店順を分かっていれば割り込みなどのトラブルにはならなさそうである。そんな和やかな並びの中で待っていると、定刻通りに暖簾が掛けられオープンとなった。

トップバッターにて店内に入ると、入口右手の小型券売機にて本日のお題を品定めする。基本の醤油系に味玉追加と思ったが、特製が千円を切っていたので迷わずに特製のボタンを押した。女性スタッフさんの案内でカウンターの一番奥に座り食券を卓台に置いて待っていると、麺の種類を聞かれた。細麺と平打ち麺の二択だったが、マイブーム絶賛上陸中の平打ち麺でお願いした。卓上に置かれたグラスではなく陶器の湯呑み茶碗にお冷を入れて店内観察をはじめる。

シックな焼き杉板や漆喰壁風の内装が落ち着きを与えてくれ、空調の効いた室内が汗ばんだ身体に涼を与えてくれる。カウンターとテーブル席、いくつかの中待ちイスのレイアウトの店内を本日は二人体制で回している。お二人で切り盛りするには広めの客席に思えるが、それだけ連携がうまくとれているのだろう。少ない人員でも掃除は行き届いており、設備は新しくはないが厨房内のステンレスはピカピカに磨き上げられて清潔感がある。カウンター上にはランチョンマットが敷かれていて、アットホームな雰囲気も漂っている。調理場では店主さんが8分近く入念に準備を整えてから 1st ロットの調理が始められた。そんな丁寧な調理工程に目を奪われていると、着席して12分程かけて我が杯が到着した。

その姿は口縁の小さい白磁の高台丼の中で、期待していた景色とは異なる意外な姿で現れた。カウンター上に書かれた情報では高級卵である奥久慈卵を使用した味玉となっているが、今回はウズラの味玉が入っていた。これは事後情報で知ったのだが、奥久慈卵の生育不振の影響でウズラの卵に変更しているとの事だった。これは twitter上で告知してあったのだが、店内には券売機にも口頭でも説明がなくtwitterを見ない者にとっては不親切に思ってしまった。しかしこのウズラの味玉が美味しければ問題はないので、気をとり直してレンゲを手にした。

不思議な事にランチョンマットの上に木製盆という二段構えで現れたラーメンの、まずは栗梅色のスープをひとくち。表層には多めの油膜が層となって見られ、提供時には鶏油の香りが漂っている。そんな液面にレンゲを沈めると、油膜を破って立ち昇ってきた湯気には魚介の香りが含まれている。魚介の中でも鰹節の厚削りのような野太い鰹の香りを感じた。いざ口に含んでみると、キリッとしたカエシを利かせた醤油のキレが先行する。その切れ味の鋭い醤油感を鶏油のまろやかな甘みが包み込んで相殺する、口当たりは穏やかに思えるが味自体はしっかりとしたスープだ。この甘辛の共存が私にとって最終的に吉と出るか凶と出るのか楽しみながら麺へと進んだ。

二択から選んだ平打ち麺は外注麺で麺上げまでは150秒のタイマーで設定されているようだが、実際には160秒ほど茹でられていた。持ち上げた箸先には透明感のある麺肌が光り輝き、平打ち麺の中ではスリムな形状をしている。特に手揉みの工程は見られなかったが、緩やかで適度なくびれが印象的ですすり心地の良さを想像させる。そんな美味そうな麺を一気にすすり上げると、滑らかながらも麺肌のひねりが唇と舌の上を転がるように飛び込んできた。力強さはあるが、太すぎない形状と軽いウェーブが女性的な口当たりを表現している。また多めの油膜が平打ち麺にまとわりついて、すすり込むたびに鶏主体の香りが伴ってくる。このスープとの相性が良く麺の歯応えも十分にあり、醤油ダレの塩気と鶏油のコクと麺の発する小麦の甘みが一体となって口内を幸せで満たしてくれる。

具材のチャーシューは常に専用ウォーマーの中でジプロックで密閉されて湯煎で温められていて、パン切り包丁で盛り付け直前にカットするなど切り立てにこだわっている。特製ならではの部位や調理法の異なる三種類が盛り付けてあり、セオリー通りに色みの淡い鶏ムネ肉から食べてみる。低温調理で仕込まれたレアチャーシューは分厚くカットされていたが、一番客だった事が不運を招いた。ひとかたまりの鶏ムネ肉の手羽元と繋がる部分から切り出しされているので、肉厚はあるがスジも入り組んだ部分に当たってしまった。また写真からも分かるように血液が浮き出てしまっていた。かなりのレア感を出したチャーシューは半ナマに近く、鶏肉のタンパク質が熱変性する前に加熱を終えているので不快な歯応えを生んでいた。きっと切り分けられた部分のせいだとは思うが、苦手なグニュっとしたテクスチャーが残念だった。次に豚肩ロースの巻き型煮豚を食べてみると、こちらは逆にパサついてしまっていた。赤身の繊維質は残っているが、煮汁に肉汁を奪われてしまったようなチャーシューには旨みは残っていなかった。本来ならば一番不得意な豚バラチャーシューは見た目の脂身の多さに苦手意識が出てしまったが、食べてみると脂身の美味さに驚いた。さすがはイベリコ豚の脂身とあってとろけるような食感ではなく、シャキッとした歯応えすら感じさせる脂身の甘みが素晴らしい。また盛り付け直前に炙ってあるので香ばしさも加わっていて、三種類の中では断トツに美味い一枚だった。

肉の具材がもう一つあり、鶏団子が特製らしさを表現している。薬研ナンコツを砕いて練り込んであり、肉々しい鶏団子の中に強い食感を加えている。香味野菜や香辛料よりも甘みを利かせた味付けなので食べやすくなっているが、下茹でからの時間が経っているのかボソボソとした舌触りが気になった。

イレギュラーで今回は入っていたウズラの味玉は、可もなく不可もなしと言った出来栄えだった。もはや奥久慈卵の味玉とは比べようもないが、ベスト状態の味玉を食べてみたかったと思ってしまう。やはり食券購入の前にアナウンスして欲しかった。

二本が添えられた穂先メンマの食感は滑らかな柔らかさが特徴的で、食感よりも舌触りを楽しむタイプに思われる。

薬味の白ネギは笹切りで添えてあるが粗々しい切り口から分かるように、野性味のある香りや辛味と歯触りをアピールしている。青みの小松菜は特有の青い香りと軽やかな食感でアクセントを付けている。さらには天に盛られた刻み黄柚子の皮も過度な清涼感を与えるのではなく、時折スープに爽やかな香りを重ねてくれた。

中盤以降も懸念されたスープの甘辛には、キリッと醤油ダレが立っていながらも喉を灼くような塩気は感じられなかった。スープと麺の組み合わせが良かっただけに、具材が好みとは違っていたのが残念だった。

最後の最後まで奥久慈卵の味玉を食べてみたかったと悔やみながら席を立つ時にも、周囲の客人は和え玉を追加注文して楽しんでいたので、それもまた人気なのだろうと思いながら店を出た。

次なる目的地である水海道に向かうために再び雑木林を抜けて最寄りの、ゆめみ野駅まで歩いて戻る事になった一杯でした。

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「味玉地鶏そば (醤油) ¥800」@麺屋 むじゃきの写真平日 晴天 14:00 先待ち2名 後待ち2名

〝麺遊空間いばらき 二泊三日ラーメンめぐり〟

ラッキーなのかアンラッキーなのかは自己判断できないが、今夜は水戸嬢との同伴の約束があり本日のラー旅をタイトな日程にせざるを得なくなった。初日から大した計画を立てていた訳でもなくバスの乗り間違えなどで行き先も二転三転しているので平気なのだが、本日で茨城遠征を最終日にしようと思っていたので今夜の水戸連泊はかなりの想定外となった。

そこで夜6時の水戸嬢との待ち合わせまでに出来るだけ水戸を廻っておきたく、早急な連食計画を立てたのだ。幸いにも前食の「中華そば 先崎」の開店時間が情報よりも大幅に早かったのと、スープが飲み干せず麺も低加水の軽い麺だったので満腹にならずに済んだ。この状態ならば昼の部での三連食も可能と判断して三軒目を探してみた。

茨城遠征三日目の三食目に選んだのは水戸駅から近い事もあったが、なんと言ってもRDB水戸市総合ランキング第1位という輝かしい人気と評判の高さが理由である。とは言っても立て続けの三杯目とはいかず、水戸駅直結の連泊しているホテルに戻りシャワーで汗を流して食欲の回復を待った。

前食の「中華そば 先崎」から二時間も経つと、昼の部での三食目へ意欲が湧いてきたので向かってみようと北口から出ているバスに乗車した。茨城交通バス 浜田営業所行きにて10分足らずで最寄りの本町三丁目バス停に着くと、そこからは歩いて2分ほどで一軒家に大きな白い看板が見えてきた。

昼の部終了まで30分前の現着となったが行列があり、今回の茨城遠征でよく見かけた真っ赤なコカコーラのベンチにて外待ちとなった。少し待つと食券の先買いをする為に店内には入り、入口右手に設置された最新式のタッチパネル券売機にて本日のお題を品定めする。不慣れな券売機に戸惑いながらもマイスタンダードの醤油系を見つけると、迷う事なく味玉入りをタッチした。再び外待ちベンチで待機となったが、程なく入店となりカウンターへと昇格した。

左端のカウンターから店内を見渡すとテーブル席も設けられた、こじんまりとした店内を本日は四人体制で回している。左手の調理場内に目をやると、自家製麺らしくタッパーウェアを麺箱として使われている。タッパーを小さめにする事で麺の劣化を防いでいるのだろうか。カウンター正面の棚の上にはラーメン店ではあまり見かけない大きさの小型寸胴鍋が多数並べられている。これもスープを小分けで沸かす事で、品質の状態を維持しているのだろう。すでに食券は渡してあるので、着席して3分ほどで我が杯が到着した。

その姿は白磁の切立丼の中で、とても美しい景色を見せている。これまた見ただけで鶏清湯と分かるビジュアルだが、見飽きる事がないのが不思議である。今回の茨城遠征でも何杯も見てきた姿なのに、毎回食欲をくすぐられてしまうは清湯野郎の証かもしれない。しかしながら、それと同時に鶏清湯特有のオイリーな表層には油っぽさをイメージしてしまうのもお決まりのパターンなのだ。頭の中ではある程度の味の予想を立てながら、赤いレンゲを手に取った。

まずは渋紙色のスープをひとくち。清湯と言うよりは、少し霞んだスープには厚手の鶏油が覆っていて店内の照明を反射する。丁寧に盛り付けられた具材の隙間にレンゲを沈めてみると、かなりの割合の油分と共にスープが注がれた。いざスープを口に含むと、オイリーな口当たりではあるが重たさは皆無でサラリと軽やかにすら感じる。初動から思っていた組立図とは違ったスープに、戸惑いながらも油っぽさがない事を喜んだ。ひとくち目で口の中には薄い油膜がコーティングされると、ようやく全てを受け入れる準備が整った。スープには鶏主体の旨みがあるが、野趣やクセを撤退的に排除してあり鶏特有の臭みがしない。しかし深みがない訳ではなく旨みが十分に引き出されてあり、コラーゲン性の潤いも豊富に感じる。そんな鶏出汁に合わせるカエシは醤油の角を見せないまろやかさが中心だが、スープがボヤけない程度の塩気が輪郭を作っている。個性やインパクトよりも、真っ向勝負で挑んでくるスープに思えた。

続いて自家製麺を箸で持ち上げてみると、麺上げまで40秒ほどの早上げ麺が現れた。箸先からは硬い感覚が伝わってくるストレート細麺を一気にすすり上げると、低加水らしい乾いた口当たりで滑り込んできた。麺肌はポソッとしているが、すすり心地が良いのは鶏油が潤滑油としての役割を果たしているからだろう。煮干し系によくある低加水麺とは違った軽やかさがあるが、歯切れの良さも持ち合わせている。スープの加熱による変化が早そうではあるが、好み的にはもう少しスープを吸った方が楽しみなので時間をかけて食べる事にした。

その間に具材のチャーシューをいただいてみる。鶏と豚の部位違いで二種類のチャーシューが盛り付けてあるが、先に淡白そうな鶏ムネ肉の方から箸をつけた。表皮にはソミュール液に使われた香辛料の粒がハッキリと見られ、下味の仕事ぶりが感じられる。小ぶりながらも厚みを持たせてカットされているので食べ応えがあり、しっかりと低温調理を施してあるので生っぽさもなく安心できる仕上がりとなっている。またマリネが利いているので、肉の中心部まで下味が浸透していて味わい深い。味気なくなりがちな鶏ムネ肉のレアチャーシューを、ここまで旨みと食感を両立されているのには感動した。それに反して豚肩ロースの方はハムのようではあるがスモークの薫香ばかりが目立ってしまい、豚赤身本来の旨みが感じられず味付けも弱めなので少し物足りなく感じてしまった。

追加した味玉は噛んだ瞬間に、唇に温かさを感じられる手間がかかった逸品だった。提供直前に温め直してあるので旨みを感じやすくなっている味玉は、黄身の中心まで均一に熟成した仕上がりでネットリとゲル化した黄身の舌触りが素晴らしい。そこまでの熟成感がありながらも漬けダレの塩分は抑えられていて、卵本来の旨みを引き出す程度の塩梅に収まっている。この味玉は追加した甲斐のある代物だった。

太メンマは一見よくある汎用品に思えたが、薄味に仕込まれているので無駄な味の強さを感じない。歯切れは固くも繊維の解けが良いのが特徴で、アクセントと言うよりは具材の一品としての存在感があった。

薬味には白ネギの笹切りが大量に添えてあり、辛味を残した粗々しさがスープや麺に変化を与えてくれる。また先ほどの豚肩ロース焼豚との共演では薫香を抑えるサポート役も演じてくれた。青みの三つ葉の葉先を噛んだ時の清涼感は、鶏出汁との相性の面では欠かせない存在なのかもしれない。

中盤からは麺の素性も変化していて、スープを吸って柔らかな食感へと変わっていた。そうなると麺にハリやコシは感じられなくなってしまい、私にとっての麺のピークを逃してしまったようだ。ここで低加水麺の吸収力の高さを思い知る事になったのは、丼の中に残ったスープの量の少なさからも感じられた。途中ではスープを飲んでいないにもかかわらず残っていないのは、それだけ麺がスープを吸収したという事だろう。自己責任で頼りない麺を食べる事になってしまったが、スープ以外は平らげて箸とレンゲを置いて店を後にした。

とりあえずは昼の部で三連食を終える事ができて、心置きなく夜の同伴へと気持ちを切り替えられそうだ。ひとまずはホテルへと戻り、今夜の寿司屋を探す事になる一杯でした。

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「牡蠣煮干蕎麦 ¥840+味玉 ¥100」@中華そば 先崎の写真平日 晴天 10:50 店内満席 先待ち5名 後待ち10名

〝麺遊空間いばらき 二泊三日ラーメンめぐり〟

急遽、舞い込んできた水戸嬢との食事同伴のために本日は矢継ぎ早に水戸めぐりをしている。先程は早い時間から営業している「ふる川」にて一食目を終わらせると、すぐにこちらに向かうバス停へと急いだ。

少し離れた県庁バスターミナルバス停まで10分以上かけて歩いて向かうと、東部工業団地行きに乗車して10分ほどで最寄りの緑岡中学校入口バス停に着いた。そこからは歩いてもすぐに店先が見えてきたが、定刻10分前の現着になったので並びが発生していた。慌てて最後尾に続いたのだが、すでに白のれんが掛かっており店頭に貼られた案内には10時オープンとなっていた。お店情報よりも1時間も早い開店時間だったようで結果的には外待ち待機という事で外待ち専用の4つの丸椅子は逃したが、大型扇風機の風を受けながら順番が来るのを待った。

それでも来店のタイミングが良かったのか続々と食事を終えた先客が退店していくと、スタッフさんに食券の事前購入の案内を受けて店内の券売機の前に立った。昨日の「麺や 虎徹」でのシジミを使ったラーメンの好印象が後を引いていたので、普段はあまり選ぶ事のない牡蠣を使ったラーメンと味玉を発券して再び行列に戻った。そこからも順調に行列が進んでいくと10分足らずで入店となり、一人客なのに優雅にも二名席のテーブルへと案内された。

テーブル席からでは調理工程が眺められないのが残念だったが、何気なく店内を見渡してみる。和装な外観とは異なり洋テイストのある店内を、本日は三人体制で回している。清潔感のある調理場内では手際の良さそうなオペレーションから次々とラーメンが仕上がっている。直接その様子を見たかったが手元が全く見えないので想像力を働かせながらメニュー名から推測して、ある程度のハード系を覚悟して待っていると着席して4分で我が杯が到着した。

その姿は背の高い白磁の高台丼の中で想像を遥かに超えた景色を見せつけてきた。それはいわゆるカプチーノ系のスタイルなのだが、以前に九州遠征で出会った豚骨カプチーノ系では二度と豚骨ラーメンが食べられなくなりそうな苦い思い出が残っている悪いイメージしかない。そんな記憶を思い出させる表情に気後れしながらレンゲを手にした。

まずは灰梅色のスープをひとくち。とても極細やかに泡立てられた水泡が液面を覆い隠しているスープにレンゲをそっと沈めると、破れた水泡の隙間には鶯色の液体が初めて姿を見せてくれた。その色調は煮干し由来の銀皮がキラキラとか輝いているが、濁ったといった感じのスープではない。それはレンゲを介した指先の感覚からも伝わってきて、濃度といった点では軽やかな印象だ。いざスープを口に含むと温度を低めに設定しているのだろうか、かなりぬるく感じる。その温度のおかげで旨みを感じるセンサーは機能しやすくなってはいるが、好みとしては熱々とは言わないまでも少し高めの方が良かった。その感じやすい旨みの主導権を握っているのは牡蠣由来のコハク酸の香味で、煮干しよりも旨みは強く引き出されている。フレッシュというよりは奥深い旨みなので牡蠣干しを使われているのだろうか。煮干しと牡蠣を使ったキレのある魚介系だけでなく動物系のコクも出ているので、スープに奥行きと幅が立体的に表現されている。初動での塩分濃度は最適に思われるのでカエシは控えめだとは思うが、牡蠣からの塩気が後半になってどう影響してくるか少し心配に思われる。個性的なスープは派手な見た目のインパクト重視かと思われたが、味わってみるとバランスの良い計算された仕上がりに思えた。

そんなオリジナリティのあるスープに合わせる麺は、煮干系には定番と思われる低加水のストレート細麺を採用されている。持ち上げた箸先からは硬めでゴワつきすら感じ、ハリの強さを主張している。スープを寄せつけそうにない乾いた麺肌だが、カプチーノ状のスープの水泡が麺に寄り添っているので一体感は生まれている。そんな麺を一気すすり込むと、エッジの効いた鋭い口当たりが唇を刺激しながら飛び込んできた。低加水ならではの軽やかな舌触りを感じながら麺に歯を立てると、ザクッとした歯切れで応えてくれる。ただ好みとは違った特異な麺質なので残念ではあるが、やはりこのタイプのスープとはベストの組み合わせなのだろうか。

具材のチャーシューには鶏と豚の二種類が盛り付けてあった。先に鶏ムネ肉のレアチャーシューの方から食べてみると、しっとりと柔らかい食感ながら半ナマではない低温調理のお手本と言うべき温度管理と加熱時間が守られている。そこに薫香を加える事で特徴のあるスープに負けないスモーク仕立てとなっている。その香りが強烈ではないので、全体のバランスを壊す事なく適度な個性を主張しているチャーシューだ。一方の豚肩ロースも低温調理となっていて、美しいロゼ発色を見せている。厚切りとは言えないまでも食べ応えも意識して、厚みを持たせてスライスされてある。味わいとしては豚肉本来の質の高さもさることながら、下味のソミュール液がしっかりと赤身にまで浸透しているので抜群の美味さを引き出している。これぞレアチャーシューといった素晴らしい仕上がりとなっていた。

興味本位で追加した味玉だったが、提供温度の低さ以外は納得の出来栄えだった。下茹で加減も良く、半熟の黄身の適度な熟成が生み出したネットリとした舌触りもある。また漬けダレには独特の風味があり、今まで味わった事のない香りか潜んでいる。それが何なのかを確かめたかったのだが、確証が持てないままに食べ切ってしまった。

薬味は水泡に隠れているが赤玉ねぎがアッシェ状にて添えられてあり、かなり大胆に刻まれているので一片が持つ食感と辛味を強く感じられる。繊細とは真逆ではあるが、これくらいの刺激がないと個性的なスープの中では薬味としての存在感が薄れてしまうのかもしれないと思った。

麺を食べ進めていくごとにスープに浮かんだ水泡が姿を消していき、中盤からは純粋なスープと麺の組み合わせを楽しめるようになった。その頃になるとハリやコシが多少弱まってきた麺になっていたので、スープの旨みを取り込み始めていた。その旨みには塩気も多く含まれているので終盤になると、若干の舌の疲れも感じ始めた。

最終的にはスープは飲み干せなかったが、食事中にホールスタッフさんが和え玉の追加の有無を尋ねに来た。店内には現金にて追加可能となっているバラエティに富んだ和え玉メニューが書かれてあるので、和え玉で完結するようなスープの塩気にされているのだろうか。残念ながら和え玉を必要としない私には、初動で懸念された若干の塩分過多な印象で幕を下ろした。

本来ならば苦手なタイプのラーメンのはずが、不思議な爽快感も感じながら席を立った。今回の出会いで、貝類を謳ったラーメンへのイメージが少し変わったかもしれない一杯となった。

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「醤油らーめん (並盛り) ¥780+味玉 ¥100」@ふる川の写真平日 晴天 9:58 先客6名 後客なし

〝麺遊空間いばらき 二泊三日ラーメンめぐり〟

昨日の最後は歩兵民には難攻不落と思われた霞ヶ浦は玉造で今回の茨城遠征通算7杯目を食べ終えると、運行本数の少ないバスの時間の都合上で土浦を迂回して水戸に何とかたどり着いた。バス道中で予約しておいた水戸駅直結のホテルに午後8時半にチェックインすると、サウナは無かったがホテル内の大浴場で汗を流して缶ビールを開けると知らぬ間に眠りに堕ちてしまっていた。

目が覚めると時計は深夜の手前を指しており、慌てて飛び起きて出掛ける準備をした。こんな深夜にと思われるかもしれないが、今回の茨城遠征最大の楽しみでもある欲望うずまく街と名高い水戸ナイトを満喫する為にやって来たと言っても事実として過言ではないのだ。そこで素早く支度を整えるとホテルのフロントが男性なのを確認してから夜の水戸情報を入手した。ホテルのスタッフによると夜の繁華街は水戸駅前ではなく、北口を出て左手に進んだ辺りの泉町や大工町が賑わっているとの話だった。はやる気持ちが抑えられず、あまりに急ぎすぎて大まかな位置情報を聞いただけで出発したのが最大の失敗だった。

ホテルのある南口から駅のコンコースを抜けて北口へ出ると、一目散に左へと舵を切り進んで行った。5分歩けどネオンが灯った街並みは現れず10分、20分と歩いてもそれらしき場所が見えてこない。タクシーが来れば飛び乗ろうと思ったのたが、空車はおろか実車タクシーすら一台も走っていない。道を間違えたのかと思っていると、突然に大きなデパートが現れた。その先には僅かではあるが明るい街並みも見え、そこが水戸の歓楽街である大工町だと確信した。

大通りを離れて怪しげな路地の方へと足を向けたのだが、ここが水戸最大のネオン街とは思えない程にひっそりと静まりかえっている。知らない街で唯一の頼りである呼び込みのお兄さんも立っておらず不思議に思っていたのたが、本日が日曜日という事を思い出した。数多くの雑居ビルにはそれらしき店の看板があるが、今夜はどこも消えていて休みのようだ。途方に暮れながら狭い範囲ではあるが飲み屋街を一周していると、私よりもかなり老齢な客引きに声を掛けられた。なに食わぬ顔をしながらも藁にもすがる思いで如何わしい業態でない事だけ確認すると、そのオッサンに連れられて夜の闇へと消えて行った。

かなり怪しげなオッサンだったが、店の方は至って健全で、深夜3時の閉店時間を過ぎても盛り上がってしまい思わぬ出費をしてしまった。さらには言葉巧みなキャ◯嬢の分かりやすいおだてで調子に乗ってしまい、翌日の同伴出勤の約束までしてしまった。さすがは御多分に漏れず積極的な水戸嬢の誘いを断り切れない弱い自分がいたが、ホテルを連泊に変更する冷静な自分も存在していた。

これで本日の予定が大幅に変更される事になってしまったが、夜までの時間で本題のラーメンめぐりの為に作戦を練り直した。そこで第一候補に挙がってきたのが開店時間の早いコチラだったので、RDBのお店情報では10時開店となっている時間前の現着を目指してホテルを出発した。

水戸駅北口から茨城交通バス 運転免許センター行きのバスにて20分ほど揺られると、最寄りの車検場入口バス停で下車した。そこからは大通りを外れて田んぼの中の脇道を進んで行く。ナビの指示通りとは言え不安でしかない道のりを、首を垂れる成熟した稲穂の香りを嗅ぎながら歩いて行くと再び大通りに出てきた。小さな川沿いに佇むマンションの一階のテナントの中に、こちらの店名の大きな看板を見つけた。バス停から歩いて10分ほどでようやく店先に着いたのだが、10時開店よりも早かったがすでに暖簾がかかって営業中の看板が出ていた。

どうやら早開けだったらしく、店内に入るとラーメンを食べている先客もいたので随分と早くオープンしていたようだ。先客に続いて入口右手の券売機の前へと進んで、本日のお題を品定めする。券売機のボタンを埋め尽くすメニューの豊富さに圧倒されながらもマイスタンダードの醤油系のボタンを見つけ、味玉を追加発券してカウンターに腰を下ろした。明るいホールスタッフさんに食券を手渡して、卓上に置かれたお冷を飲みながら店内を見渡してみる。

白壁と木目を基調としたL字カウンターとテーブル席の清潔感にあふれる店内を、本日は五人体制で回している。世間のラーメン店はまだオープンしていない午前10時にもかかわらず盤石の布陣を敷いているのは、それだけ人気と需要がある証と思われる。厨房内に目を向けると、ピカピカに磨き上げられたステンレスが新店舗のように光り輝いている。茹で麺機の真上のダクトには8つものタイマーが並んでいるが、それだけ麺の種類が豊富と言う事だろう。すでに店内には美味しそうなスープの香りが満ちており、手入れの行き届いた調理器具を見ているとラーメンへの期待は大いに高まってしまう。そんな興奮を抑えるように待っていると、着席して5分で我が杯が到着した。

その姿は白磁の切立丼の中で、昨晩のアルコールが残る午前中の一杯目には相応しい清らかそうな景色で迎えてくれた。清らか〝そうな〟と思ったのは不得手なナルトが添えてあったからで、何が入っているか分からないナルトの添加物がスープに溶け出しやしないかと心配になってしまう。すぐに紙ナプキンに取り出すと安心感が出て、絶景にますます磨きがかかった。

まずは向日葵色のスープをひとくち。とても澄み切った透明感のあるスープの表層には、まばらなドットの香味油が浮かんでいる。しかしその油膜はとても薄く、軽やかにも見える。それを確かめるべくしてレンゲを介してスープを口に含んでみると、特攻隊長として先陣を切ってきたのは魚介を主とした香りだった。その魚介の香味の中でも特に鰹節由来の香りが親しみのある和風出汁を思わせるが、旨みの土台は動物系出汁が築いているようだ。初動では確かにそう思ったスープなのだが、しばらくして煮干しの旨みも湧き上がってきたので奥行きのたっぷりある仕上がりとなっている。カエシの塩梅も午前中の胃袋には程よく飲みやすい。多種類のスープを炊かれているのに基本の清湯スープに力が注がれているので、他のスープも気になってしまった。

麺上げまで30秒ほどと思われる自家製麺を持ち上げてみると、ハリと言うよりも固さすら感じる中細ストレート麺が現れた。黄色みを帯びた麺肌には切刃のエッジが鋭く見られ、ハードボイルドな印象を受ける。箸先の軽やかさからは加水率の低さが思われ、好みと違った口当たりを想像しながらすすり込んだ。見た目同様にシャープなキレが唇を刺激しながら滑り込んでくるが、麺一本の形状が長いので大量の麺をすするのに苦労した。一度だけではすすり切れず二度三度と繰り返しすすらなければならないので途中で麺を噛み切ってしまい、すすり心地の点では悪くなってしまった。やはり多少麺が短くても一気にすすれる程度の長さの麺が好みだと思った。しかし初動では固すぎるとも感じた麺も、次第にスープとなじんでいくのが分かり、中盤以降の麺ディションに期待がふくらんだ。その間に具材陣を味わっておこうと目線を変えて具材へと移行した。

具材のチャーシューは鶏と豚の部位違いの二種類で、見た目の色合いを活かすためか発色の良い豚肉の方が上に重ねて盛り付けてあった。しかし淡白そうな鶏肉の方から味見しようと、下から掘り出して口にしてみた。部位は鶏ムネ肉で仕込まれていて、低温調理が施されている。私の食べるタイミングが遅かったのかもしれないが、序盤でもすでにスープに加熱されていた。中途半端な半ナマよりはありがたいが、鶏肉のタンパク質が固まってしまいパサついてしまっていた。下味の薄さも手伝って、やや物足りない食感と味付けが残念だった。一方の豚肉には肩ロースが使われていて、低温でローストされたロゼ色が美しく出ている。こちらは下味が肉の内部にまで浸透しているので、素材プラス調理の技も楽しめる出来栄えに感じた。かなり薄くスライスされているので食べ応えとしては不十分だが、それを上回る味わいが良かった。

追加した味玉は今まで味わった事のないタイプだった。好みの熟成感はないのだが、黄身の中心にまで程よい塩気が浸透しており、その浸透圧のおかげで黄身の水分が抜けて濃厚な旨みを放つ。その旨みが濃い甘みとなって口の中にまとわりつくと、不思議と柑橘由来の香りがサポートしてくる。濃密と清涼感という相反する味わいが同時に感じられるという、新たな味玉の世界観を見せてくれた。好みの完熟味玉とは違った、未熟成タイプの味玉は追加して良かったと心から思える逸品だった。

中細メンマは表面が少し滑りを持った柔らか仕立てだが、軽やかながらも明確な歯応えを残している。過度な味付けをしてないので味覚でアクセントを付けるタイプではなく、食感でサポートするメンマに思えた。

薬味の白ネギは繊細な顔立ちのラーメンの中で、唯一と言っていいほど粗々しく刻まれている。しかしその切り口から香る白ネギの風味が、素朴で全体を和やかにまとめている。丁寧に仕事をされた白髪ねぎも良いが、私は歯触りや香りの面でもこれくらい野趣あふれる薬味の方が好きである。

器の口縁に添えてある海苔は表面のザラつきから粗悪な海苔かと思ったが、口にしてみると香りも程よく口溶けも繊細だった。ナルトは最初から丼外に避けておいたので食べる事はなかったが、色どり要員としても添加物まみれのナルトはこのラーメンに似合わないと感じた。

中盤から麺に戻ってみると、先程までの麺の強情さが嘘のように変わっていた。強すぎたハリがなくなり、もっちりとした食感へと変化していた。確かに初見でこの麺の歯応えだと、後半にはダレてきそうでもある。それを踏まえての固茹でなのだろうと、勝手に解釈して麺を楽しんだ。結果として箸が止まることなく全てを平らげて、満足のままに箸とレンゲを置いた。

10時開店直後は私までの客足は良かったが、私以降の後客は一人も訪れてこなかった。本当なら他の種類のラーメンも見てみたかったのだが、残念ながら拝む事ができずに席を立った。

本日は昼のうちに出来るだけ水戸ラーメンを攻略しておきたいと思い、すでに連食先に決めておいた二軒目へと向かうバス停へと急ぐ事にした一杯でした。

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