なんとかデータベースラーメンカレーチャーハンぎょうざうどんそば
 

のらのら

男性 - 東京都

はじめまして。レビュー開始から一年が経ち、二年目の目標を全国制覇にしました。一杯のラーメンに出会うまでの経緯も書き記しているので、前置き等が長くなりがちですがお許しください。しかし採点に関しては立地 接客 衛生面 価格設定などは考慮せずに、ラーメン一杯に対しての評価にしています。自分の好みだけで評価しているので不快な文面もあると思いますが、何卒宜しくお願いします。

平均点 73.102点
最終レビュー日 2019年10月22日
666 557 14 2,133
レビュー 店舗 スキ いいね

「らーめん (醤油) ¥700 +あじ付き玉子 ¥100」@麺処 あさ川の写真平日 曇天 先客2名 後客1名

〝ニューオープン 探検記〟

新店めぐりをしていて思う事がある。なぜに誤情報があふれているのだろうかと。先日に訪れた二軒はどちらも内装工事の途中で、オープンしていなかった。

また本日もRDBで新たに見つけた新店に挑もうとしているが、現時点では定休日も営業時間すらも掲載されてない新店だ。本日もフラれる覚悟で、新橋のサウナを午前10時前に出発した。

京急線直通の浅草線快速特別に乗り込んで、最近ラーメンめぐりで頻繁に降りている上大岡駅に着いた。「煮干しらーめん 紫乱」「川の先の上」と立て続けの新店ラッシュに湧く上大岡駅からは神奈中バスに乗り、一路こちらを目指す。バスターミナルを出発すると15分ほどで最寄りの永作バス停に着いたが、ひとつ前のバス停の名前に驚いた。「下車ヶ谷」と書いて「かしゃけど」と読むらしい。小学二年生でも習う漢字の組み合わせなのに、全くもって読めなかった。

新橋のサウナを出発してからトータル1時間ほどでやって来たが、店の開店時間すらも分からずで不安が募る。ナビを片手にバス停から歩いて向かうが、環2沿いで大型店舗はチラホラあるだけでラーメン屋らしき店が見えない。それでも信じて大通りの急坂を下っていくと、突然にド派手な黄色い看板が目に入った。そこには大きく店名が書かれ、店先には開店祝いの花が届いている。ガラスの扉越しにはスタッフさんの影も見えるので、本日開店は間違いなさそうだ。

少しホッとして店先へと歩み寄ると、店頭には11時半オープンと書かれてあった。11時開店と予測して来たので30分以上も早かったようだ。それまでの時間を途中にあったコンビニで水分補給をしたり、何もない環2沿いを歩いてみたりと時間をつぶした。

定刻ちょうどに店先に戻ると店頭には営業中の幟旗が置かれ、店内には先客が入店していた。私も続いて深緑色の暖簾をくぐり店内に入ると、好きなカウンターへと案内された。券売機はなく卓上メニューを見て、初めてラインナップを確認する。苦手なガッツリ系への不安もあったがメニューを見る限りでは、そうではないようだ。メニューはシンプルに醤油ラーメンだけで、トッピングとサイドメニューが少しあるだけだ。この絞り込んだメニューに安心して味玉追加で注文した。お会計はデポジット方式なので、先に支払ってから店内観察を始める。

レゲエ風の黄色い壁が明るい印象を受ける店内にはL字カウンターと、奥には 100円で食べ放題のごはんコーナーが設けてある。店主さんのワンオペなので人手のかからないセルフスタイルをとっているが、お一人で仕切るには導線が大変そうである。年季の入った店構えは居抜き店舗に思えるが、右奥のカウンターを拭く為には大きく遠回りをしなければいけない造りとなっている。そんな余計な心配をしながら前の通りを走るトラックの音をBGMにして待っていると、着席して8分で我が杯が到着した。

その姿は黒釉薬の高台丼の中で、醤油系ながらもギラギラした色気を見せつける表情をしている。サッパリしてながらも野生味にあふれた魂を持っているように映るが、それはまるで福山雅治のようである。爽やかな笑顔の中にも男の本能を隠すことなく表現する様は、まさにそのものだ。液面を覆い隠した鶏油がそう思わせるのだろうが、かなりの油量に戸惑いながらレンゲを手にした。

まずは光沢の下の栗皮茶色のスープをひとくち。表層の油膜は避けられそうにないので迷わずにレンゲを沈めてみると、レンゲの中には多くの鶏油を含んだスープが注がれてきた。そこに強く息を吹きかけて出来るだけ油分を飛ばしてから口に含んでみると、香ばしい焦がしネギの風味が広かった。それでも油っぽさを強く感じるので口の中には、まったりとした油膜が張りめぐった。そんなオイリーなスープには、鶏ガラ主体の動物系出汁と魚介出汁のバランスがとれたオーソドックスな組み合わせとなっている。そこに焦がしネギの香りが加わる事で、昔懐かしい雰囲気のあるスープに仕立てられている。カエシも強めに利かせてありそうだが、油分の甘みが先行するので感じづらくなっている。

タイマーを使ってないように見えたが、およそ90秒ほどで麺上げされたのはストレート細麺だった。36センチ程度に切り出しされた長めの麺は、箸で持ち上げても液面から離れようとはしない。箸先からは個性的な要素を感じない優等生タイプの麺質に見える。そんな麺を一気にすすり上げると、滑らかな麺肌に加えて香味油が後押しするように滑り込んでくる。麺の長さから大胆に音を立ててすする食べ方になるのだが、先客陣も同じようにすすっていた。無音の店内にはオジサン三人が麺をすする音が輪唱のように鳴り響いている。東京五輪を前にヌーハラなどと言われる昨今だが、これを機に麺をすすった時に唇が震える心地良さを全世界に発信したいものである。そんな勢いよく飛び込んできた麺を噛みつぶすと、平均的な歯応えと喉越しを残して胃袋へと落ちていった。この特筆すべき点がない事が、店主さんの麺選びの基準なのかもしれない。

具材のチャーシューには、部位も調理法も異なる二種類が盛り付けてある。それを見ただけで、手間隙を惜しまない作り手の思いが伝わってきた。先に淡白そうな鶏ムネ肉の方から食べてみると、低温調理のしっとり仕上げとなっている。かなり肉厚にカットされているので食べ応えもあり、炭火で炙られたような香ばしさがあるので焼鳥を食べているかのようだ。一方の豚肩ロースは煮豚で仕込まれていて、こちらも肉厚で炙られた香りが食欲をそそる。鶏ムネ肉に比べると、若干パサついた印象も受けるが不快なほどではない。柔らかく煮込まれた赤身に焦げた部分の食感が変化をもたらしている。

メンマは長さのある極太メンマで仕込まれている。縦の繊維は柔らかく口当たりは良いが、横には歯が立たないくらいに硬い。なので欲張って口の中に放り込むと、噛み切るのに一苦労するので注意が必要だ。味付け自体は素晴らしく、派手な主張をする事なく添え物に徹している。

追加した味玉は、今まで食べた事のない不思議な味わいだった。それは微かに感じるカレーのような風味で、ゆで卵とカレーの相性は悪くないがラーメンの中に入ると違和感があった。エサのパプリカ色素と思われるオレンジ色の黄身が特徴的な卵を使われており、下茹での半熟具合は申し分ない。しかし漬けダレの浸透はなく、熟成感にも乏しい味玉だ。また冷蔵保存の冷たさが残っていて、熱々のスープの中では違和感があった。

黒い器と同化するように海苔も添えてあったが、黒々しさのない緑色の海苔からは良質さは伝わってこない。実際にも香りも食感も良くはないが、新店だけに鮮度の良さは感じられた。

薬味の白ネギは笹切りで添えてあり適度な辛味と歯触りがアクセントになったが、青みのカイワレからは〝薬味愛〟を感じない。このタイプの昔ながらの組み合わせならば、やはり青みは茹でた青菜を望んでしまった。

序盤で感じた油っぽさも、麺に引き寄せられてスープには残っていないかと思ったが、麺を食べ終えた後のスープの液面には大量に残っていた。結果としてスープは飲み干せずにレンゲを置いてしまった。出汁がしっかりしていたので、香味油のコクに頼らなくても足りるような気がして残念だった。私には三分の一の香味油でも十分だったかもしれない。

先客の話によると以前にもラーメン店があった場所らしく、半年ほどで閉店してしまったようだ。今回は地元客の胃袋をつかんで、長く根付いて欲しいと思って一杯でした。

投稿 | コメント (0) | このお店へのレビュー: 1件

「醤油 マイルド ¥800+味玉 ¥100」@十人十色の写真平日 晴天 12:30 先客1名 後客3名

〝ニューオープン 探検記〟

本日の新店訪問は先週だけで、二日連続で定休日に当たってしまった店だ。神奈川県でのオープン情報を得たのだが、相性が悪いのかフラれ続けたコチラである。新店舗ゆえの情報量の少なさに翻弄されたが、昨夜は横浜駅直結のサウナに前泊して長津田駅に乗り込んできた。

夜景が見えるサウナとして人気の、男女共有スペースがある「スカイスパ YOKOHAMA 」に午後9時すぎに入館した。昨今のサウナブームもあってか横浜という土地柄なのか、入泉客の大半を若者が占めている。この施設は前回「一陽来福・びんびん亭」訪問時のレビュー内で紹介しているので省略するが、新たな注意点を一つだけ書き残しておきたい。

こちらの大浴場には塩サウナが常設されてある。私が全身に粗塩を塗って汗が出るのを椅子に座り待っていると、恐れ知らずの若者二人組が入ってきた。粗塩を身にまとって静かに休んでいる私を見て、見よう見まねで粗塩を手に取っていた。心配しながら様子を見ていると、いきなり全身に粗塩を力一杯に擦り込み始めた。しかも顔面にもだ。あくまで塩サウナとは粗塩で擦るのではなく、塗った塩の粒子が汗で溶けたところで擦るのがセオリーなのだ。しかし若者たちは粒子の残る粗塩で強く肌を傷つけているので、次第に痛みに変わりつらそうである。しかも顔面にまで塩を塗ったので汗で流れた塩分が目に入り、激痛となって襲ってきたようだ。すぐにでもサウナ室を出たいようだが、二人とも痛みで目が開けられず地団駄を踏んでいる。顔の塩を流したくてもシャワーのノズルさえ見えないので、パニック状態になっていた。若い頃に私も経験した恐怖だったので、水を出したシャワーヘッドを手渡してやった。まさに命のバトンである。若者たちは恵みの雨でも浴びるように、全身の粗塩を洗い流していた。しかし今度は傷付いた肌に水が沁みるようで、私に「死ぬかと思いました、助かりました」と礼を告げ、一目散にサウナ室から出ていった。サウナ初心者の若者諸君よ、大人の社交場でもあるサウナ内にはルールやマナーの他に危険も潜んでいる事を覚えておいてほしい。

そんな若者たちを食事処でも見かけたが、館内着すら肌に擦れて痛いらしく苦い思い出となったようだ。サウナーとしての彼らの成長を望みながら、生ビールを数杯と深夜のツマミの定番である冷奴を楽しんで寝床に入った。

10月から 24時間営業となりシステムが変わって、チェックアウトが午前9時から午前12時に延長されていた。以前は忙しなく朝風呂を浴びていたが、これからは正午までの有意義なサウナライフを満喫できるようになっていた。その変更のおかげで朝サウナを最大限に楽しんでからも、ゆったりと休憩できる余裕がある。ゆとりある時間を過ごすのに持ってこいな場所が、畳敷きのコンフォートルール ベイビューである。その名の通り港を見下ろす大きな窓が太陽の光を取り込み、好きなスペースに寝転がりながらチェックアウトまでの時間を過ごした。

この3時間の違いの大きさを噛み締めながらチェックアウトを済ませて、眼下の横浜駅へ降りて向かった。前泊の甲斐あって横浜線の快速に乗車すれば、たったの 22分で最寄りの長津田駅に着いた。南口からは三度目となる道のりを3分も進めば店先が見えてきた。前回までは骨の絵が描かれた不気味な黒いシャッターに閉ざされていたが、本日は晴れてシャッターが上がっている。店先に置かれたカラフルな外待ちイスには並びがないので、じっくりと外観を眺めてから入口の前に立った。ガラスの扉にはシートが貼られて中の様子は見えないが、とりあえず扉を開けてみると昼過ぎなのに空席が目立つので、そのまま店内に入った。

入口右手の券売機の中の左最上段を飾っている表題と、100円券の追加ボタンを押してカウンターに腰を下ろした。お世辞にも広いとは言えない店内には、カウンター席だけが設けてある。先客は一人だったが、昼時の時間帯を考えて奥から詰めて座り店内を見渡してみる。

RDBによると新店といっても店名と体制を変えたリニューアル店のようで、新店らしくない落ち着いた雰囲気が店内には満ちている。こじんまりとした調理場内も清潔感あり掃除が行き届いている。流派の総本家とは違って威圧感のない店内を、本日は店主さんと女性スタッフの二人体制で回している。具材の準備をする助手役と麺上げを担う店主さんとの、声を掛け合っての連携プレーが安心感を生んでいる。そんな二人のコンビネーションの良さを眺めていると、着席して4分で我が杯が到着した。

その姿は白磁の切立丼の中で、いかにも女性が盛り付けた丁寧で繊細な景色を見せてくれる。一点の乱れもなく整然と並べられた具材の配置バランスも良く、器の余白にもカエシなどの飛散が見られず盛り付けに魂を感じ取った。スープの色調からも黄金卿のように光り輝く世界観を持った、気品高くノーブルな印象を植え付ける光景だ。こんなラーメンを前に自称、美意識高い系おじさんとしては逸る気持ちを抑えきれずにレンゲを手にした。

まずは黄金色のスープをひとくち。表層には粒子の細やかな香味油と、大きな粒子の鶏油がランダムに散りばめられたような複雑な液面となっている。そんな不規則な油膜が客席のダウンライトを乱反射しているので、光眩しく映ったようだ。どこまでも透明感のあるスープにレンゲを音を立てずに沈めると、静寂の世界を壊さぬように穏やかな香りが上がってきた。味としてバランスが良いと思う事は多々あるが、香りにバランスの良さを感じる事は多くない。この香りにインパクトなど派手な要素はないが、均衡のとれた地味ながらも食欲を揺さぶる何かを感じた。それを確かめるべく、レンゲを介してスープを口に含んでみた。すると書き手泣かせの特筆すべき点のない、あくまでも平和主義な旨みが口の中に沁み渡った。その中には丸鶏や豚ガラ由来と思われる動物系出汁と乾物系魚介出汁が、互いの持ち味を壊す事なく寄り添っている。これを「バランスが良い」の一言で片付けて良いものかと、悩んでしまうようなバランスの良さだ。複雑な旨みを重ねながらも、何一つ特別な主張をしてこないスープに、自然と引き込まれてしまった。

口の中に旨みの膜が張り巡らされて、準備万端となった所で麺を引き上げてみる。麺上げまでジャスト50秒の中細麺は、切り出し 22センチ程度で黄色い麺肌が特徴的だ。四谷の総本家でも同じタイプの麺だったが、店名が変わっても昔懐かしい麺には変わらないようだ。小さなちぢれが見られる滑らかそうに光り輝く麺を、本能のままに一気にすすり上げてみた。すると黄金の泉から、金の龍が昇ってきたような神々しい景色となって口の中に飛び込んできた。麺肌の微波が唇をくすぐって入って来ると、始めは強めのハリを感じさせる麺質だ。ややゴワついたようにも思える舌触りが気になるが、このタイプの麺では良くある口当たりだ。そんな麺を噛みつぶすと適度な噛み応えが歯茎に伝わり、程よいテンションで噛み切れる。カンスイ作用と思われる独特のモッチリした歯応えが、懐かしさを思わせる麺である。

具材のチャーシューは豚バラの煮豚型で、その真円状の形を見ても分かるように丁寧に仕込まれている。さらには、盛り付け直前の電動スライサーによる切りたてにもこだわっている。潤いのある美しい断面には、同心円を描くように赤身と脂身が交互に層を成している。非常にバランスの良い部位が切り分けられていたが、毎回この仕上がりならば素晴らしい。特に厚くスライスされた訳ではないが、赤身の肉質の良さを残してあるので食べ応えが十分に得られる。そこに脂身の甘みが重なる事で、舌触りに艶やかさを与えている。そんな味わい深いチャーシューが三枚も入っているので、色々な食べ方を楽しめるのも良かった。

穂先メンマは薄味なので旨みをプラスするよりは、箸休め的な存在に控えている。適度なザクッとした食感がアクセントを生む名脇役に徹していた。

追加した味玉は残念ながら個人的な好みからは外れた仕上がりで、全くの熟成感のない即席漬けの味玉だった。漬けダレが白身の表面にしか浸透してないので、全体的に柔らかく仕上がっている。その為、半熟の黄身の水分が抜けてないので、ゲル化せずにスープに流れ出してしまった。妖精が宿っていそうに清らかなスープを汚した味玉は、自称〝アジタマスキー〟の私でも邪悪な存在にすら思い、流れ出した黄身を憎んでしまった。

薬味には白ネギと青ネギが両方添えられている。互いに小口切りだが、白ネギは細かく切られ丁寧に水にさらして辛みを抜いてある。彩り役も兼ねた青ネギも切り口のみずみずしさから切り置き時間の短さを思わせる。どちらにも店主さんの〝薬味愛〟を感じるサポート役だ。

初動からスープの温さが気になってはいたのだが、繊細な旨みを感じる為の温度なのだろう。しかし中盤よりも早い段階で、熱いスープが恋しくなった。これも勝手な嗜好の問題だが、やはりラーメンには熱々のスープを求めてしまう本性が出てしまい、飲み干す事なくレンゲを置いた。

とても感じの良いラーメンだったが、私の偏向のせいで高得点には至らなかった。しかし二日連続でフラれてまで初訪問した甲斐があったと思えた。となり客が食べていた〝がんこ〟も淡麗なスープだったので、また長津田に来た際は試してみたいと思いながら店を後にした一杯でした。

投稿 | コメント (0) | このお店へのレビュー: 1件

「みそラーメン ¥700」@山道家の写真平日 晴天 11:00 先客なし 後客4名

〝ニューオープン 探検記〟

店の前に立った時に何よりも驚いたのが、店名が「山家道」ではなく「山道家」だった事である。

ここまでの経緯を時系列で記していくので、前半が長くなる事をご了承いただきたい。

先日から神奈川県内での新店めぐりを行ない、江ノ島で新たな一杯との出会いを果たして (実際には二杯) 大満足で江ノ島駅を後にした。まだ午後2時すぎだったが、神奈川遠征での目的の一つでもあった平塚のサウナへと向かった。

レトロな風情あふれる江ノ島駅からは、引退間際の旧型車両が新型車両に牽引されて走っていた。これが私の生活と重なって見えてしまった。さえない中年男がピチピチの若いキ◯バ嬢に、アフターで連れ回されてるような光景に映った。そんな人生の縮図を見るような江ノ電に乗って藤沢駅までやって来た。さらに東海道線に乗り継ぐと、あっと言う間に平塚駅に着いた。そこからは西改札口を抜けると、徒歩2分で目的地の「太古の湯 グリーンサウナ」の看板が見えてきた。サウナーの間では他にはない変わったサウナがあるので有名なのだが、初めて訪れる私はベテランの地元勢の迷惑にならないように気を引き締めて門をくぐった。

特にカプセルホテルや予約が必要な個室がある訳ではないので、日帰り入浴で入っておいて泊まるならば大部屋の好きな所で寝て、翌朝に宿泊料を支払えば良いシステムのようだ。私は早めに風呂を浴びたら神奈川県内ではエグいと評判を聞いていた、平塚の夜のネオン街へと繰り出す作戦だったのだが、途中外出は不可なので仕方なく平塚ナイトを諦めた。そうなれば時間は持て余す程あるので、余計な欲を忘れてサウナライフに集中するとした。

まずは全身を洗って身を清めてからドライサウナに入った。広いサウナ室内には様々な温度帯が楽しめるように、ひな壇が複雑な形で造られている。その中でも最も高温になるサウナストーブの近くの最上段が空いていたので、新参者ながら座らせてもらった。サウナ内のテレビでは秋の G I 開幕を告げる、スプリンターズステークスが放映されている。私も〝ラ活〟を始める前は〝馬活〟に心血を注いでいた時期もあったが、最近は熱も冷めて、クラシック三冠と年末の有馬記念を買う程度の競馬ファンになってしまった。今でも酔っ払うと、第110回 天皇賞での帯札を何束も手にした時の事を、若い競馬ファンに自慢する悪いクセが出てしまう。圧倒的1番人気だった春の天皇賞と宝塚記念を制した名馬ビワハヤヒデを外して、ネーハイシーザーとセキテイリューオーを軸にして買った馬連馬券が見事的中。当時は三連単の発売がなかったので、このレースでの最高配当額を手に入れた。そんな懐かしいレース回顧をしながら、10分ばかりサウナにいたのだが汗が出てこない。確かに熱源近くの最上段なのに全く熱くなく、一向に発汗作用が表れない。休日の午後なので入浴客が多く、扉の開閉回数も必然的に多くなっているのが原因だろうか。

15分経っても薄っすらと汗ばんできた程度なので、一度リセットするために水風呂に入った。ここの水風呂は井戸水を汲み上げているらしいが、飲用ではないので薄茶色に濁っている。ここらでラーメンに関する記述も入れておこう。この水風呂は、ちょうど白醤油を使った淡い清湯醤油系のスープと同じ色合いだ。

水風呂で冷え切った身体を、このサウナの名物のひとつでもある外気浴で平常を取り戻す。屋上の露天風呂の広場には多くのビーチチェアが置かれてあり、一糸まとわぬ中年男性が寝転がって青空を遠くに見ている。ドライサウナには満たされなかったが、この外気浴だけで〝ととのい〟そうになった。まだ本日のメインイベントを楽しんでもないうちに、ととのってしまっては勿体ないと思い直して正気を取り戻した。

いよいよ待望の〝テントサウナ〟を初体験するために順番を待った。こちらのテントサウナは、三人ほどが入れるスペースがある小型のキャンプ用テントよりも小さいくらいの大きさだ。テントの中には薪で灼かれたサウナストーブが置いてあり、一酸化中毒を防ぐ煙突も備えてある。中にはセルフロウリュ用の水と、ヒシャクが置いてあり自身で温度や蒸気の調節が可能なのだ。前の客たちが熱さに耐えきれなくなって出てくるのを待って、ようやく私の順番が回ってきた。どうやら誰も入らないようで、贅沢にも私ひとり貸切状態での初体験が始まった。

入口の前に置かれた〝ヴィヒタ〟と呼ばれる白樺の若葉の小枝を束ねたものに、たっぷりと水分を含ませてからテント内に入った。室内は二段式のベンチが置かれてあるが、迷わずに上段に腰を下ろすと入口のシートが、見張りのスタッフさんによって閉ざされた。この見張りのスタッフさんが重要で、先客も限界になった時点でテントの透明な部分を叩いて入口を開けてもらっていた。まさに門番と言うべき見知らぬ、オジサンに命を預けた。

入ったばかりのテント内は薪釜の直接的な熱さはあるが、さほど高温といった感じではない。ここでいよいよ楽しみのセルフロウリュを試してみたが、とんでもない熱さに襲われた。外の注意書きには「すごく熱くなるので、少しずつ水をかけて下さい」とあったので、とりあえずはヒシャク一杯分の水を慎重に灼けたサウナストーブに掛けてみた。すると一気に蒸気が発生し、テント内が灼熱地獄に豹変した。上段に座っていた私の顔あたりは尋常じゃないくらいの熱波が渦巻いており息すらできない。思わず門番に助けを求めそうになったが、テントに入って1分も経っていない。あまりの情けなさが恥ずかしいが、命の危険に及ぶ状況だ。思わず頭を下げると、わずかに呼吸ができる温度帯の層を見つけた。その空気の層を崩さないように、じっと身構えていると何とか熱さが落ち着いてきて命拾いした。しかし身体を叩いて血行増進するために持ち込んだヴィヒタを振り回すと、せっかく落ち着いた熱の層が乱れるのが恐ろしくて使う事は出来なかった。

滞在時間は5分くらいだったかもしれないが、命からがら貴重な体験ができた。そのまま水風呂に向かうのではなく、汗を流すために通常ならばシャワーを浴びるのがマナーだが、ここならではの汗の流し方があるのだ。その名も〝ガッシングシャワー〟と呼ばれる水浴び装置だ。簡単に言えば昔のクイズ番組で不正解だった時に、頭上から大量の水が落ちてくる古典的な罰ゲームと同じだ。ただ違うのは頭上の水が入った桶を、自らの覚悟でロープを引くという点だ。もはや地元のベテラン勢は誰一人ロープを引く者はおらず、私のようなビジターだけが楽しんでいる装置だ。私も初めは恥ずかしく思ったが、テントサウナの熱さで思考が鈍っていたせいで、ためらう事なく頭から水をかぶっていた。

まだまだ〝太古の湯〟の由来や食事処の楽しみなど書き足りない気持ちではあるが、ラーメンレビューよりも長くなるといけないので、話を本日の出発地点まで戻すとする。

今朝は横浜市西区にオープンしたばかりの、こちらを目指して平塚のサウナを午前9時半に出発した。昨晩はサウナ上がりに生ビールを飲みながらRDBをツマミにして新店情報を見ていると、不思議な店名の新店を見つけた。お店情報では「山家道」と書かれていたが、読み方は「やまえみち」と意味不明な点が多かった。しかし私の後世のライフワークである〝ラ道〟〝サ道〟〝キャ道〟にも通じる何かを〝山家道〟にも感じたので初訪問を決めたのだった。

平塚駅から東海道線で横浜駅を経由して横浜市営バス 68系統 滝頭行きに乗車すると、15分ほどで最寄りの浜松町バス停に着いた。ナビの指示通りを道路を渡ると、順調に店先の看板が目に入ってきた。ここまでは予定通りだったのだが、その大きな看板の文字を見て、足が止まり、自分の目を疑い、全身の毛穴から冷や汗が噴き出した。

これが冒頭のシーンで、あまりの驚きに前置きが長くなってしまった事をお詫びしたい。

つい先日も相模原の新店「びんびん亭」を訪ねてみると実際には「一陽来福・びんびん亭」だったりと、店舗名が違うのは新店舗では珍しくないのかもしれない。しかし「山道家」が正式名称ならば、苦手ジャンルの〝家系〟を避けて訪問を見送ったはずだった。意気消沈して店頭まで近寄って、看板をよく見直してみると、そこには〝味噌ラーメン〟と冠が書かれてあった。店名に〝家〟の文字が入っているが〝横浜家系〟ではないようだ。この1分間で感情の紆余曲折を経た結果、味噌ラーメンならばと再び初訪問への意欲が湧いてきた。

定刻の11時ちょうどの現着と同時にオープンとなった。店先には開店記念のチラシが置かれてあり、生ビール一杯無料との大サービスが行われていたが、ビールにつられてレビューに忖度があってはならないと思いチラシを手に取らずに店内に入った。

店頭にはチラシの他にも開店祝いの花や幟旗が揺れて新店オープンをアピールしている。店内に入ると入口左手に設置された券売機から筆頭を飾っている味噌ラーメンのボタンを押して、黒い板張りのカウンター席に座り店内を物色してみる。

トータル的にも黒を基調とした落ち着いた内装で、カウンターの他にもテーブル席も多く設けてある。厨房内には味噌ラーメンを象徴する中華レンジと中華鍋が、堂々とセンターに陣取っている。味噌ラーメンの命でもある〝味噌玉〟を寝かせるための、ポリ容器も数多く準備されている。そんな〝味噌愛〟を感じさせる店内を、本日は三人体制で回している。調理場の要である鍋振りと麺上げを担うのが、店主さんだと思うが随分とお若く見える。若いながらも落ち着いた調理工程を眺めていると、着席して5分の第1ロットにて我が杯が到着した。

その姿は黒釉薬の高台丼の中で、味噌系としてはサッパリとした顔立ちに見えた。ひと昔前ならば醤油顔と呼ばれるくらいに端正な男前だ。それは全体的に油っぽさを感じない点や、盛り付けにも丁寧さや慎重さが表れているからだろう。今年の夏に札幌の「彩未」で感銘を受けた味噌ラーメンだけにハードルは上がっている中、期待を込めて黒いレンゲを手にした。

まずは柑子色のスープをひとくち。 味噌系としては油膜は薄いが、それでも液面には密度の濃いラード油が浮かんでいる。調理手順を見ていると札幌系味噌ラーメンとは作り方が違ったので、炒めた野菜や挽き肉などの香りは立っていない。そんな初対面では穏やかな印象のスープにレンゲを沈めると、油膜の隙間を縫って上がってきたのは慣れ親しんだ味噌の香りだった。そこには鍋肌で味噌を焦がしたり、ナッツを煎ったような個性的な味噌玉の香りではなく、あくまでも日常的に口にしている味噌汁のような優しい香りだ。見た目と香りの穏やかさが一致すると、不思議と安心感が生まれてきたままにスープを口に含んだ。すると豚骨由来の動物系出汁が土台となって、芳醇でありながら清らかさのある味噌の旨みが上積みされている。唇に張り付く濃厚な動物性コラーゲンを感じながらも、澄み渡った清流のような透明感もある。舌触りの中に味噌粒や、おろし生姜のザラつきを全く感じさせないスムーズなイントロだ。そんな中に、わずかながらカプサイシン系の刺激を舌先に感じた。表立った辛味ではないが、唐辛子による高揚感は間違いなく潜んでいる。そんな影に隠れたスパイスの存在に、知らず知らずのうちに食欲をあおられてレンゲを箸に持ち替えた。

タイマー音は110秒で鳴っていたが、実際には130秒で麺上げされた麺を引き上げてみる。その箸先には、黄色みと透明感を持ち合わせた中細ちぢれ麺が現れた。厨房内には関東に拠点を置く、味噌ラーメン御用達の製麺所の麺箱が積まれていた。味噌ラーメンを熟知した製麺所の麺だけに熱いスープの中でも、すすりやすいように20センチ程度に切り出しされている。そんな短めの麺を、熱さやスープの飛散を気にせずに一気にすすり上げると、唇には強靭な口当たりを感じさせながら力強く滑り込んできた。さすがに計算し尽くされた麺の短さで、ひとすすりで納まる機敏な心地良さを生み出している。そんな強気ながらも軽快さのある麺を噛みつぶしてみると、若干のゴワついた舌触りを感じてしまう。しかし、その後でグルテンが生み出した粘り気のあるモッチリとした独特の歯応えが待ち構えているので、変化に富んだ食べ甲斐がある。口の中には小麦と味噌の〝香り〟が広がり、舌の上には小麦と味噌の〝甘み〟が残る。自家製スープと外注麺の相性も良く、店主さんの麺の目利きが活かされている。

具材のチャーシューは直前まで、オープン内の角皿に乗せられて焼き目を付けられていた。一番客だったので、幸運にも焼きたてのチャーシューが盛り付けられた。豚バラの巻き型だったが、焼きすぎにも見える焦げ目が付けてあり香ばしさを演出する。実際にも赤身の水分が飛んで硬い食感とはなっているが、結果として旨みは凝縮されているので良し悪しを問えない仕上がりとなっいる。

基本で入っていた S玉程度の小さな卵は、半熟ゆで卵としては満点の出来で、味玉ならば及第点にも届かない仕上がりだった。券売機やメニューの表記を確認しておらず、どちらか分からないので今回は、中間点に位置づけして評価した。

味噌ラーメンには欠かせないモヤシも麺上げのタイミングに合わせてテボの中で茹でられ、茹で置きしないポリシーが好印象だ。中華鍋で〝あおり〟をしない手法に見えたので、ラードがコーティングされておらず、香ばしさやオイリーな食感はない。茹でモヤシなので、強いシャキシャキ感よりも柔らかめでクセのない口当たりを表現している。もちろんモヤシ特有の不快なアンモニア臭が無いのも、鮮度の良さと茹でたての証と思われる。

薬味の白ネギにも丁寧な仕事ぶりが表れていた。剛毛タイプの白髪ねぎだが、食材の無駄がないように葉先の緑の部分も使われている。見た目の良さも考えて色のコントラストが出るように、敢えて混ぜずに天高く盛り付けてある。しっかりと水にさらしてあるので切り口の潤いは保たれ、それでいて辛みは抜けていない。そんな白ネギ特有の刺激のある辛みが、味噌の甘みと競り合いながら主張をしてくる。いかにも大人の薬味と言った感じの白髪ねぎだ。

十字4切の大判な海苔が二枚も添えてあったが、ここには〝横浜家系〟の特徴と重なるものがある。新店オープン直後でも海苔の香りが乏しいのは、海苔本来の質の低さが原因だろうか。年齢のせいか、量より質を求めてしまうようになったので、半分の一枚に減らしても良質の海苔を欲してしまう。

中盤からも麺の食べ心地に誘導されて食べ進んできたが、スープ単体で飲み干せるほど優しい終盤とはならなかった。スープの中に不要な旨味を感じ始め、唐辛子系の辛みが舌に蓄積され疲れを感じてしまい箸とレンゲを置いた。

店名の由来は、誰かのインタビュー記事を待つ事にして謎を残したまま席を立った。その頃には近所の方たちがチラシ片手にやって来て、うわやましくも無料の生ビールを昼間から楽しんでいた。グラス一杯あたり 200円近い原価の生ビールサービスの集客効果が、キャンペーン期間が終わった後も続いて、いち早く地元に根付いてくれる事を願う一杯でした。

投稿 | コメント (2) | このお店へのレビュー: 1件

「地魚塩らぁめん ¥680」@江ノ島らぁ麺 片瀬商店の写真日曜日 晴天 14:00 店内満席 外待ち1名 後客4名

〝ニューオープン 探検記〟

居ても立っても居られないとは、まさにこの事である。先程も神奈川 江ノ島にオープンした同新店に、遅ればせながら初訪問を果たしてきたとこなのだが、2時間もしないうちに店の前に戻って来てしまった。

さっきは大満足で店を出たあと、今夜の楽しみにしていた平塚のサウナへと向かう前に江ノ島散策を楽しんでいた。日曜日の中年おじさん一人には、とても似つかわしくないオシャレなカフェに飛び込んでコーヒーを飲んでいた。江ノ島から平塚までの移動手段などを調べながら、通りを歩く人や街並みを眺めていると、どうしても先程のラーメンが忘れられずに浮かんでくる。そう思うと不思議と前食から2時間も経っていないのに、老いたはずの胃袋が鳴るくらいに腹が減ってきた。ならば店に戻って食べれば良いのではないかと、単純明快な答えを出した。

こちらが通し営業との情報は先ほどリサーチしておいたので、午後2時を迎えようとしていたが慌てる事なく店に引き返した。さっきも通った道を進み店先に着くと、店頭に飾られた一枚板の看板が魚の形に見えてきた。もはや鮮魚中毒にでも冒されてしまったのだろうかと、昨日までの鮮魚系への苦手意識は消えて無くなっていた。昼時のピークは過ぎていたが、まだ店内は満席で外待ち二番手としてイスに座って待機する。

今回の客層は5歳の男の子を連れた家族づれがカウンターに座っており、取り分けのラーメンを美味しそうに食べている。小さな子供が席を一つ使う事にも嫌な顔ひとつ見せず、ゆっくりと食事が出来る環境を店側が作っている。この事が地元の家族客にも愛される理由のようで、前食時に感じたアットホームな雰囲気は見せかけではなく本物だった。決して誰も急かす事なく子供たちが食べ終えるのを待ってから私の順番となり、恥ずかしながら本日2度目の入店となった。

店内に入ると常に来客が続いている上に、印象の薄い私の再訪には、お二人とも気付いてないようで助かった。今回は窓側のカウンターに案内されたので、先程とは違う店内風景が楽しめた。白木調のカウンターの高台には様々な器が置かれてある中に、大相撲の優勝力士が祝い酒を飲む大きな盃のような器も用意されている。つけ麺用の器だと思われるが不思議な事に前回も今回も、つけ麺を食べている客が一人もいないので正確な情報ではない。そんな器をはじめ、店の至る所に遊び心があふれているのも特徴的だ。カウンター上の壁には魚の骨の絵が描かれてあったり、卓上メニューや店内ポップにも愛くるしい書体が使われてあったりする。さらには鮮魚をイメージさせるように、昔ながらの寿司屋で使われている魚字の湯呑み茶碗を箸立てとして代用している。まだまだ二度の来店では、全てのオモシロ要素を発見しきれないくらいに潜んでいそうだ。

そんな事を考えている間に、あらかじめ決めておいた前食の醤油系とは違う、塩系を追加なしでシンプルに口頭注文を済ませた。一心不乱にラーメン作りに集中している店主さんの背中に大きな信頼を感じながら待っていると、着席して5分で我が杯が到着した。

その姿は本日二度目の登場となる個性的な切立丼の中で、相変わらずの素朴な景色を見せている。追加トッピングをしてないせいもあるが、派手さや飾り気のない表情が落ち着きを与えてくれる。シンプルではあるが決して貧相なのではなく、あくまで少数精鋭といった感じの具材陣を盛り付けてある。いずれは再訪するだろうと思ってはいたが、こんなにも早く再会できた喜びを、抑えきれずにレンゲを手にしていた。

まずは陰りのある伽羅色のスープをひとくち。レンゲを沈めるまでは清湯スープに乳化した油膜が張っているのか、スープ自体が乳化しているのか判断しづらい初見には謎が多かった。先程の醤油系も半濁こそしていたが、それほどの乳化を感じなかったので見た目の印象が随分と違っていた。その真相を確かめるべく、スープに音を立てぬようにレンゲを忍ばせた。すると濃度の高さを知らしめるように、まったりとしながらレンゲの中に注がれてきた。その瞬間に思い出がフィードバックするように鮮魚由来の香りが漂ってきた。その香りは乾物系魚介には表現できない艶かしさを持っており、それでいて生臭さを感じさせない特殊な仕上がりを見せる。かつて嫌いだった鮮魚系のイメージを払拭してくれたのは、この生臭さがない事が大きく関係していると思った。すでに嫌いではなく好きなジャンルになっているスープを口に含むと、醤油系では感じなかった新たな香味が少し遅れて口の中に広がった。それはイナダ主体と思った出汁の中に、ハモ特有の香りが速攻で押し寄せてくるといった、バレーボールならば時間差 Aクイックのようだ。今回も熱々のスープなのは変わりなく、味覚が機能しづらいはずなのだが、それを超えた旨みの強さが攻め上がってくる。それには数年前に韓国のキョンドで食べた、ハモしゃぶのスープの旨みを思い出した。塩ダレにした事で、より鮮魚系の風味が濃く感じられるのかもしれないが、また違ったスープの味わいを楽しめた。醤油系を食べた時は薄味の〝ブリの煮付け〟を思い出したが、塩系の今回は濃厚な〝アラ汁〟を思い起こした。それはフュメドポワソンを濃縮させて濁らせたような強い旨みで、カエシが違うと味わいが明確かつ鮮烈に変わるものかと驚いた。さらに驚いたのは先ほど醤油系のレビューを書き終えたばかりなのに、塩系でも書きたい事が止まらない事だ。それくらいに簡単には表現しきれないような、とてつもない奥深さを持ったスープなのだ。

まるで初対面のように新たなスープの驚きに魅了されながら麺を引き上げてみると、今回もジャスト130秒で麺上げされた中細ストレート麺は、醤油系と同じ地元の外注麺を使用されている。固茹でとは違うが、強めに歯応えを残してある絶妙な茹で加減に、箸のスピードは衰えを知らない。今回も食べ応えのある麺質の中に感じられたのは、嚙みつぶした時に浮き出てくる小麦の甘さの違いだった。今回の塩系の方がカエシに熟成感がない分、塩気をダイレクトに感じるせいで麺の甘みが際立っていた。またスープの濃度が鶏白湯のような粘性を持っているので、麺との絡みが良く、スープの塩気と麺の甘さのコントラストが、すする思いを加速させる。もはや、歯止めが効かなくなってしまった食べ心地の良さの虜になっていた。

具材のチャーシューは豚ロースの低温調理で同じだが、かなり前回よりも厚手にカットされていた。スープが高温なので今回は初めからチャーシューを非難させておいたので加熱されずに、しっとりとした舌触りを楽しめた。やはり早めに食べて正解だったと思えるような、半ナマとは違うレアチャーシューの持ち味を引き出されていた。

メンマは醤油系の時と写真を見比べても分かるが、極太ではなく中太タイプが添えてあった。単なる偶然なので味わい自体には差がなく、今回も手仕事感のする甘みを利かせたメンマの味と食感を満喫できた。

薬味のネギに今回は、店主さんのラーメンに対する思いを感じられたような気がした。それはあくまで薬味は脇役として存在してしているだけで、派手な主張やアピールをせずにいる。その事が、ラーメンとはスープと麺を楽しむ事が大切で、薬味は出過ぎる事なくサポート役に徹していると思った。これは他の具材たちにも言える事で、あくまで主役はスープと麺と思わせる控え目のポジションをとっている。

今回も熱々のスープを最後の一滴まで飲み干す頃には、調理場内の熱気と闘う店主さんに負けないくらいに汗だくになっていた。私と同年代くらいの中年男性客がスタッフさん方に「本当に美味しかった、この辺りの飲食店は夜は早く閉める店が多いから助かるよ、また来るね」と言って出ていったが、確かに通し営業での22時半までは大変だろう。そんな 地元の声援を受けて、これからもお身体には気を付けながら地元客に愛され続けて欲しいと願う。

後会計を忘れずに済ませて店を後にしたが、これまた遠い場所に名店ができてしまったものだ。今までは限定メニューを避けて安定を求めてきたのだが、こちらは豊富な海の幸を有する相模湾で獲れた魚の種類で、その日のスープが変わるらしい。季節によって獲れる魚が違うばかりでなく、個体の大きさや脂のノリによって日々違ったスープになるはずだ。これは〝味ブレ〟ではなく〝味攻め〟と表現した方が正しいだろう。ラーメンに安定感を求める私も、こんな楽しみのある変化ならば大歓迎だ。

これからの季節は伊勢海老やノドグロなどの高級食材も水揚げされるが、本日も使われていたイナダも成長してブリとなって脂が増してくる。そんな中でも楽しみなのは、春先のわずかな時期にだけ獲れる佐島産の天然の生わかめだ。もしこの生わかめを店主さんがラーメンに活かすとしたらと想像しただけで喉が鳴った。そう思うと、江ノ島に住んでる方がうらやましすぎる。

もともと本物の魚の旨みを知っている方しか住んでいないと思われる場所で、正々堂々と魚介出汁で勝負されて、すでに人気となっているのが素晴らしい。前回の醤油系の方が個人的には好みだったので今回の採点は少し低めだが、苦手だった鮮魚系では異例の高スコアとなった。

これからようやく平塚の名物サウナに向かう事にしたが、久しぶりに誰かを誘って訪れたいと思える一杯でした。

投稿 | コメント (0) | このお店へのレビュー: 2件

「地魚醤油らぁめん ¥680+味玉半玉 ¥50」@江ノ島らぁ麺 片瀬商店の写真日曜日 晴天 12:00 店内満席 外待ち2名 後客4名

〝ニューオープン 探検記〟

少し前からRDBの新店情報で見つけていたのだが、ある計画と並行しての初訪問を狙っていたので遅れをとってしまった。オープンしてから3週間近くになろうする本日、ようやくチャンスが巡ってきた。

そこで本日は神奈川県内での連食計画を立てて自宅を午前10時前に出発したのたが、一軒目に向かった長津田の新店が定休日で、独特な骨の書かれた黒いシャッターを確認だけはしてきたのだか、やはり新店あるあるの情報量不足を露呈してしまった。しかし本日は連食目的だったので、慌てる事なく粛粛と計画を遂行する。

再び長津田駅に戻ると東急田園都市線で中央林間まで向かい小田急江ノ島線に乗り換えると、自宅を出てから2時間近くかかったが終点の片瀬江ノ島駅までやって来た。夏もそろそろ終わりを告げようとしているが、観光客の姿が多くあり繁忙期のような賑わいを見せている。そんな人混みの中を右手に江ノ島を眺めながら、海の香りに包まれて店を目指して歩いて行く。通り沿いは右も左も秋の生しらすをウリにした飲食店ばかりで心を奪われそうになりながらも、何とか堪えて10分ほど進むと味わいのある江ノ島駅が見えてきた。改札横の踏切を越えると、ちょうど正午のサイレンが鳴り響いた時だった。江ノ島駅の裏側にあたる路地を行くと、こちらの手書き看板が飛び込んできた。店の前まで近づくと、湘南っぽく愛らしい外観が出迎えてくれた。

実は初訪問が遅れた理由の一つに、鮮魚系が得意でない事が挙げられる。いや得意でないのではなく、錦糸町の超人気鮮魚系ラーメンがトラウマとなって今でも悪い印象を引きずっているのが本音だ。そんな思いを知ってか知らずか、店頭には本日のスープに使われた鮮魚の種類が書かれてある。〝宗田カツオ〟〝イナダ〟〝ハモ〟他となっているが、どれも相模湾で引き揚げられた地魚ばかりである。なので不漁が続くと店を閉める事もあるらしく、店主さんの強いこだわりが感じられる。

ちょうど正午過ぎの来店となったが行列は2名だけだったので、外待ちイスに腰を掛けて店先の様子を眺めてみる。白のれんが掛けられた入口前には、トタン屋根が軒先となった待合スペースが設けてある。海の家風のウッドデッキには4席の外待ちイスが置かれてあり、夏場でも暑さをしのげるようになっている。そんなウッドデッキには鳥の足跡が書かれてあったりと遊び心も見え、和やかな雰囲気の中で待機する事が出来る。

先客が店を出て行くのを見ると、ピーチサンダル姿から地元の熟年夫婦と思われるが、外待ちしている私にも「お待たせしたね」と一声かけて店を出て行くのだ。なんて素敵な街の方々なんだろうと、改めて江ノ島の魅力を感じられた。外待ちも5分程で入店の案内があり、快い気持ちで店内に入った。

駅近くの三角地を利用した建物で、お世辞にも広いとは言えないので券売機は設置されておらず、ひとまずはカウンターに腰を下ろして卓上メニューを一読する。やはり筆頭にあるのは鮮魚系を思わせる〝地魚〟と書かれたメニューがオススメのようなので、その中でも最前列にある醤油系に味玉を追加しようと思いホールスタッフさんの案内を待った。お冷のグラスが配られたタイミングで注文を終えると、明るい店内を見渡してみる。

狭い敷地を最大限に活かすように背中合わせのカウンターが、調理場側と窓側の二枚分けて設けてある。今回は調理場サイドに座ったが、店内には家庭用エアコンが一基しか設置されていないので室温が高くなっている。入口の扉にはエアーカーテンもあるが本日は稼働してないようだ。何よりも暑そうなのは調理場のご主人で、額に汗して実直にラーメンに向き合っている姿に信頼が置ける。そんな店内をお二人で切り盛りされているが、強面のご主人さんの真面目な仕事ぶりと女性スタッフさんの明るく親切な接客のコンビネーションには新店ならぬ落ち着きがある。そんな安定感のあるアットホームな雰囲気の中で待っていると、着席して6分で我が杯が到着した。

その姿は昔ながらの雷紋柄をデフォルメした図柄が胴に朱赤で描かれたオシャレ切立丼の中で、今風な器とは異なるシンプルで素朴な表情を見せている。派手な要素を一切見せないシックな色合いで、苦手意識のある鮮魚系への不安を取り除いてくれる。今まで出会った同タイプからは得られなかった安心感に包まれながら、急須に入れられた赤いレンゲを手にした。

まずはスープをひとくち。表層にはラード油や鶏油などの動物性オイルにはない、魚介系特有の鈍い光を蓄えている。それは魚の銀皮を潰して炊いたように、いぶし銀の如く液面で光を放つでもなく揺れている。細かいながらも液面を覆い尽くす独特の油膜にレンゲを沈めると、圧倒的な香りが押し寄せてきた。それは本日の食材の要と思われるイナダの香りで、乾物にはない鮮魚のアラならではの艶かしさを持っている。しかしこの手のスープに付き物の生臭さは香りからは感じないので、ためらいなくスープを口に含んでみた。そこには想像を超える熱さが唇に伝わってきたが、そんな灼熱スープの中でも旨みの存在をハッキリと感じ取れた。通常ならば皮膚感覚が優先して味わいどころの話じゃないはずが、しっかりと鮮魚の旨みに満ちていると感じた。スープを飲み込み鼻から息を吐き出すと、そこには色情を感じさせる艶やかな残り香が後を引く。合わせてある醤油ダレも穏やかだが、鮮魚出汁の力強さに負けていない。きちんとスープに輪郭を付ける役割を果たしながらも、過度な演出はしていない抜群のバランスで支えている。たったひとくちのスープを飲んだだけで、出汁の旨みの由来が出世魚のイナダという事もあってか、薄味仕立ての〝ブリの煮付け〟を食べているかのような世界に引き込まれていた。これは鮮魚系への苦手意識が覆るようなスープとの出会いになってしまった。

興奮冷めやらぬままに麺を引き上げてみると、麺上げまでジャスト130秒の中細ストレート麺が現れた。黄色い麺肌と麺の折り返し跡が波を打ったように見える個性的な麺は、地元片瀬の製麺所から卸されている麺らしい。つけ麺用の太麺とは仕入れ先を変えているようだが、どちらの製麺所も都内では聞きなれない湘南ブランドだ。地産地消にこだわりながらも、ご主人の目利きに合った麺を楽しみに一気にすすり上げると、ひと息では吸い込めない程の麺の長さに驚いた。およそ30センチに切り出しされた麺を勢いよくすすり込む回数が増える度に、スープの出汁の旨みと香りが寄り添ってくる。それが非常に心地良く、初めから思わず何度も何度も麺を手繰ってしまった。ご主人の丁寧で細かい湯切りがテボさばきからも伝わってきたが、余分な水分を取り除いた麺上げ工程が、滑らかな麺質に反映されているようだ。スープとの絡みが良いのも、湯切りの精度の高さが表れている。

具材の豚ロースが半分にカットされて盛り付けてある。初見では低温調理による淡いロゼ色を見せていたが、麺に夢中になっていた間に熱々のスープで加熱されて完全に火が入ってしまった。なので若干パサついた舌触りになってしまったが、薄味でも豚肉自体の品質が良いので過剰なスパイスなどに頼らなくても旨みを発揮していた。

追加した味玉は一個入りでなく半玉のトッピングとなっているが、価格も50円なので追加しやすい設定となっている。半カットされた味玉は提供前に温め直す事が難しいので冷たいものが多いが、スープが熱いおかげで私が口にした時には熱々の味玉となっていた。素晴らしいのは温度だけでなく、黄身の熟成に関しても眼を見張るものがあった。温められた黄身がネットリと舌を覆ったところへスープを流し込むと、また新たに魚卵でも食べているような風味が生み出される。

かなり太めのメンマからも手作り感が伝わってくるような発酵臭を残した下処理と味付けが絶妙で、噛みしめるたびに発酵食品ならではの香りが、にじみ出てくるオリジナリティあるメンマに仕上がっている。硬さのある歯応えを残してはあるが、繊維はちゃんと解けて消えていくように仕込まれているのが素晴らしい。

薬味のネギは、あくまで脇役として香りも穏やかに控えてある。丁寧に水にさらされてクセを取り除いた薬味なので、スープに大きな変化をもたらす事なく風味づけだけに徹しているようだ。

中盤からは麺の滑らかさよりも歯応えを強調してくるような麺質に変化していたが、決して退化ではなく進化していると感じた。終始、様々な驚きを与えられながら気が付けば丼の底が見えていた。

大満足で後会計を済ませる際に、心よりの感謝の気持ちを込めてお礼を告げて後客に席を譲った。店を後にする時に思ったのは、会話の内容からは江ノ島が地元ではないような店主さんだが、すでに江ノ島の皆さんに愛されていると伝わってきた。このラーメンならば地元にだけでなく、身体やお財布にも優しいので人気店になるのは間違いないと思った。と言うより絶えず来客が続いているので、もう人気店となっているようだ。

連食計画の一軒目にはフラれたが、このラーメンが一杯目で良かったと心から思いながら、もう一つの目的である平塚のサウナに向けて出発する事になった一杯でした。

投稿(更新) | コメント (0) | このお店へのレビュー: 2件

「特製醤油らぁめん ¥1150」@つけ麺 山崎の写真平日 晴天 10:05 先客5名 後客1名

〝ニューオープン 探検記〟

横浜での新店情報を見つけて昨晩は、綱島にオープンした「家系 麺場寺井 」を初訪問した後に東急東横線にて、みなとみらい駅までやって来た。

というのも、昨日は三店舗の新店めぐりを終えたが、その内の二食が不得手な家系タイプだったので胃袋が悲鳴をあげていたのだ。その疲れを少しでも癒そうと思い、みなとみらいの大型温泉施設を訪れた。実は小田原の系列店には何度かお世話になっているのだが、こちらへは初めての訪問となる。平日の夕方6時の受付段階で、すでに混み合っていて人気の高さを物語っている。客層は男女共用施設だけあって若者カップルや、女子会らしい団体も多く見られる。あとは余生を楽しむ老夫婦が半数を占め、私クラスの中年層は数人しか確認できなかった。

ひとまずは大浴場へと向かってみたが、小田原の施設の倍以上はある大きな規模に驚いた。横浜湾岸を眺められる露天風呂も壮観だが、なんと言っても圧巻だったのはサウナ室の広さである。広さというよりは高さと表現した方が正しいような、五段飾りのひな壇が目の前に高くそびえ立っている。都内では三段もあれば十分に大きいサウナ室であるが、それを遥かに上回る五段目の最上段に座ってみる。分子レベルの話になるが空気の重さの軽い熱気は、重さのある冷気よりも上昇しようとするので、物理上サウナの最上段が最も高温になるのだ。

そんな雛飾りでいうならば、お内裏さまのポジションである最上段に座ってはみたが、現実のサウナ内は最下部の五人囃子はおろか三人官女も初老の男性が陣取っている。極め付けは麗しき、お雛さまが座っているはずの最上段の隣り席にもオジサンが座っていた。混浴ではないので当然ではあるが、頑張って最上段に上がった甲斐のない光景を眺めるしかなかった。

そんな現実を突きつけられながらも大浴場を満喫した後は、お決まりの食事処へと足を運んでみた。こちらの系列店のオススメすべき点は、各地で思考を凝らした食事メニューがある事だ。例えば小田原なら地魚の刺身や蒲鉾だったり、この日の横浜では本マグロの刺身が特別メニューとして登場していた。スタッフさんの話を聞けば、週末にマグロの解体ショーが行われたらしい。翌日に私が注文したマグロの赤身は悪く言えば残りものだが、値段に見合わない質の良さに驚いてしまった。もしかしたら程よく味の乗った本日のマグロの方が、赤身の旨さが詰まっていたのかもと思えるような味わいだった。

このままではマグロレビューになりそうなので、興奮を押し殺してラーメンの話に戻してみる。

RDBの新店情報で見つけたコチラは早朝6時からの営業とは知ってはいたが、食事処での深酒が響いてしまい、午前10時半過ぎにチェックアウトして店を目指した。そこからは新たなビルの建設が続き変わりゆく、みなとみらいを抜けて歴史のある建造物が残る馬車道エリアまで 20分程で歩いて行くと、ビル風に揺れる「営業中」と書かれた赤い幟旗が遠くに見えてきた。近寄ってみると、重厚な一枚板の看板には屋号が筆文字で書かれている。そんな高級感のある店先には、いくつもの疑問点が浮かんできた。

それは「焼鳥 だるま」と書かれた看板を隠していたり、備長炭使用の立て札があったりと焼き鳥店の間借り営業を思わせる。しかしながら店頭には賞品サンプルの蝋細工が陳列されていたりと、間借りにしては本格的な部分が見られる。そんな店頭に置かれた商品サンプルの中から見当を付けて店内に入ると、これまた間借り営業としては珍しく小型の券売機が設置されていた。券売機の筆頭には流行りの昆布水つけ麺が鎮座していたが、あくまでマイスタンダードの醤油系を望んでハイエンドモデルの特製ボタンを発券してカウンターに腰を下ろした。

そこから店内観察を始めると薄暗い照明の店内には、炭の香りが漂っているので焼き鳥屋なのは間違いないが、間借りなのか二毛作なのかは定かではない。どちらにしても驚いたのは、調理場内には専門店仕様のスープ炊き用の大型ガス台や、茹で麺機が置かれてあったので、本格的な厨房設備が準備されていた事だ。炭火焼用の焼き台は木の板で囲われていて、本来の役割とは違った形の作業台として機能している。客席のL字カウンターの背後には個室仕様の扉を外されたテーブル席もあり、明らかにラーメン店ではない店構えとなっている。そんなシックで落ち着きのある店内を、本日は作務衣姿のお二人で回している。まだオープンして間もないせいか、間借り営業での導線の悪さからだろうか分からないが、オペレーションの流れが悪い。チャーシューは切りたて、ワンタンは包みたてと要所に強いこだわりは持っているが作業が間に合っていない。随時ぎこちない補助役の作業を心配しながら眺めていると着席して15分以上もかかって、ようやく我が杯が到達した。

その姿は高級感のある木製のお盆の上に置かれた白磁の切立丼の中で、とても特製とは思えない貧相な表情をしていた。それには訳があって心配されたオペレーション不足のせいで、基本で入っているはずのワンタンが間に合わず、後から別皿で提供するとの知らせがあった。更に味玉に関しては盛り付けを忘れられていて、私の方から催促したくらいだ。今回の写真は全ての具材の到着を待ってからオリジナルの盛り付けを独自でしたもので、特製の初期設定とは異なるものとなっている。ワンタンと味玉が到着するまでの、1分ほどのロスタイムを残念に思いながら木製お玉を手にした。

まずは深みのある鳶色のスープをひとくち。こちらは和食の世界観を意識してだろうか陶器のレンゲではなく、味噌ラーメン店ではよく見かける木製のお玉を採用されている。熱々の味噌ラーメンだと、スープの熱が唇に触れる温度を緩和する作用があるが飲みづらさは否めない。今回もスープを飲むには適さない、お玉を薄っすらと香味油が浮かんだ液面に沈めてみた。すると破れた油膜の隙間を縫って、キリッとした醤油の香りが先陣を切って上がってきた。超有名な醤油蔵の醤油でカエシを仕込まれているようで、第一印象としては出汁よりもカエシが利いた香りである。いざスープを口に含んでみると、贅沢な食材を使用して仕込まれたスープの割には出汁の旨みも控えめだ。個性的な「軍鶏ロック」がウンチクには書かれてあったので濃厚な旨みを想像していたが、さっぱりと仕上げた丸鶏主体の出汁となっている。これも全てはカエシの醤油感を際立たせる設計図なのかも知れないが、旨みに深みや広がりは感じられず物足りなさを思ってしまった。余分な鶏油のコクなどで、ごまかしてない点は良かったと思いながらレンゲを箸に持ち替えた。

麺の事を記す前に伝えておきたい事があるのだ。本日の二人体制はスープ張りと麺上げと盛り付けを担当する方と、具材の準備や配膳などのホール業務をする方の分業制を行なっていた。しかしお二人のタイミングが噛み合わず、麺上げされても具材が間に合っておらず、茹で上がった麺をシンクに捨てる光景も見られた。もちろん伸びたような麺を客に提供するような店ではないのは讃め称えるべきだが、もう少しオペレーションの連携を見直した方が、最高の状態のラーメンを全ての客に提供できるのではないだろうか。今回もワンタンなどを待つタイムロスでベストの状態ではない事を承知して麺を持ち上げてみた。

麺上げまでジャスト60秒の茹で時間からも繊細さが期待される麺だけに、盛り付けの不手際が心配される。箸先には全粒粉のフスマの色合いが濃く現れた麺肌が見られるが、ハリやコシの強さは全く感じない。そんな中細ストレート麺を一気にすすり上げると、すでに麺肌には溶け出したグルテンが必要以上の粘りを発している。麺同士が癒着する程ではないが、口当たりの悪さに直結するような粘りを持っている。本来は滑らかさがウリと思われる麺質だが、今回は持ち味を発揮していなかった。軟弱な麺を噛みつぶすと、さすがは高級内麦を原料とした外注麺だけに、品のある小麦の香りと甘みが花を咲かせる。是非とも最高の麺ディションで味わってみたいと思える麺だっただけに、モヤモヤが募ってしまった。

具材のチャーシューは特製ならではの豪華ラインナップで、部位や切り方の異なる三種類が盛り付けてある。低温調理で仕込まれた鶏ムネ肉から食べてみると、しっかりと食感が楽しめるように小ぶりながらも肉厚を持たせてスライスされてある。歯応えがありながらも、しっとりとした舌触りが心地良く下味も肉の中心にまで浸み込んでいた。あと二つはどちらも豚肩ロースのレアチャーシューだが、切り方を変えて盛り付けてある。電動スライサーで切り立てに拘った薄切りチャーシューは慌ててスライスされたのか、クズ肉のように見栄えの悪い仕上がりとなっている。盛り付け直前に包丁でカットされた厚切りの方は、肉質が締まっていて硬さすら感じてしまった。味つけが良かっただけに、拘りの切り立てが裏目に出てしまった。

提供のタイミングこそ遅れてしまったが、包みたてのワンタンは素晴らしい出来栄えで、ワンタン皮と餡のバランスも優れていた。鶏ひき肉と海老を叩いて合わせた餡は、双方の良い所が活かされていた。鶏ひき肉のコクのある旨みと海老の香りと食感が相まって、喉越しの良いワンタン皮に包まれ持ち味を発揮していた。

ワンタンの仕上がりの良さに比べて、入れ忘れられていた味玉は残念な出来だった。本来は温め直されて盛り付けられているのかも知れないが、私の催促に慌てて別皿で提供されたので冷たいままだった。漬けダレの浸透や熟成度は低いが卵本来の質が非常に良いので、半熟ゆで卵としては満点だが、味玉としては物寂しさが残る。

こちらでも銀座の人気店のようにナルトを縦切りして結んだ、ビジュアル重視の具材として添えてあったが初見の段階で除外しておいた。

青み役には坦々麺のように青梗菜が長く添えてあったり、薬味にも九条ねぎの笹切りや細かく刻まれた赤玉ねぎが入っている。バラエティに富んだ薬味陣で、いずれも見た目の美しさをアピールする色合いであるはずが、盛り付けに繊細さや丁寧さがないので決して美しくは見えない。

今回はイレギュラーだらけのラーメンだったので本来の完璧な姿ではないと思われるが、目の前のラーメンに対する評価は個人的には残念な結果となってしまった。

つけ麺が主体の店のようだが流行りの要素を取り入れ過ぎて、一つ一つのクオリティが追いついていないように感じる。それがラーメンの中にも現れていて、やりたい事が大渋滞を起こしているようだ。そこには店主さんの思いが詰まっているとは感じるので、オペレーションが整ってくれば見た目の美しさや具材のクオリティも上がってくると思える一杯でした。

投稿 | コメント (0) | このお店へのレビュー: 1件

「ラーメン 並 ¥650+半熟味玉 ¥100」@家系 麺場寺井の写真平日 晴天 17:30 先客3名

〝ニューオープン 探検記〟

本日は夜の会食予定もなかったので、三食目の新店めぐりを行う事にした。前食を終えた江古田駅から池袋で東急東横線に乗り換えると、各停で江古田を出てから1時間かけて最寄りの綱島駅にやって来た。

今回の目的地であるコチラはRDBの新店情報で見つけた店なのだが、先程の江古田でオープンした「鶏そば きらり」と同日デビューのようだ。まだオープン間もない新店を目指して、綱島駅前で夕方まで時間をつぶしてから店を探しに歩いて向かった。

綱島には人気店が相次いで誕生しているが、いずれも駅から離れた場所にある。しかしコチラの新店は綱島駅北口から徒歩1分の好立地にあるので、すぐに店先を見つけられた。店頭の歩道には開店祝いの花がズラリと並び、数々の家系人気店の名前が連なっている。中には「酒井製麺」からの花もあるので「吉村家」の流れをくむ家系なのだろうか。しかし屋号には〝家系〟とはあるが「◯◯家」の店名ではない。しかも修行先は日吉の「武蔵家」となっているので、複雑な系譜の〝お家騒動〟には理解しがたい難しさがある。きっと優秀なインタビュアーさんが詳細は明らかにしてくれると思うので、とりあえずは様子を伺うために店外に置かれた券売機の前に立ってみた。

券売機の中から最も量の少ない並盛りのラーメンと追加の半熟玉子のボタンを押して店内に入ったが、特にスタッフからの席への誘導もないので勝手に白木風のカウンターに座り店内観察を始める。

新店舗らしい明るい店内は最高気温がまだ 30°Cを超えている本日でも、入口の扉を開けっ放しなのに十分にエアコンが効いている。なぜなら、客席上には三連の空調設備が備えてあり、厨房内にもスポットクーラーが完備してある。家系ラーメン店の多くは営業時間内でも常にスープを炊いていなくてはならないので、ガス台の熱量に空調が追いついていない店が多い。しかしこの店は、店主さんの経験から考案されたと思われる十分すぎる空調システムを導入されている。それによって客席で暑い思いをせずに済むだけでなく、家系スープ独特の豚骨臭も排気されて店内の空気はとても清らかだ。

厨房内に目をやると、高熱を発しているスープ炊きの大型寸胴鍋が3台も連なって並んでいる。この三連鍋の設備を見ると〝家系〟のルーツが、博多ラーメンなのを認めざるを得ない。そんな仕事効率の良さそうな店内を本日は三人体制で回しているが、大きな掛け声が響く元気の良さも家系らしさをアピールしている。家系の特徴のひとつでもある、店内の随所に味の濃さや油の量の調整が可能と明記してあるが初訪問なので全て基本でお願いした。またライスの無料サービスも辞退してラーメンだけに集中しようと待っていると、着席してから6分で我が杯が到着した。

その姿を見て、さらに謎が深まってしまったのだ。それは修行先の「武蔵家」で使われる青磁の器ではなく「吉村家」と同じ黒釉薬の高台丼が使われていた。もはや家系初心者の私には理解不能となってしまい〝家道〟のプロのレビューを待つ事にしてレンゲを手に取った。

まずは伽羅色のスープをひとくち。表層には厚めの油膜が張り巡らされているので、灼熱のスープを覚悟してレンゲを液面に押し込んでみた。どろりとした大量の油分と共にレンゲの中に流れ込んできたスープに、ヤケドをしないように慎重に口に含んでみた。すると意外にも率直な第一印象としては生温いスープという事で、自分の唇の感覚を疑ってしまう程だった。常に継ぎ足されて炊かれているはずのスープなので、ぬるい訳がないはずだが二口目も同じだった。雪平鍋と濾しザルを使って寸胴鍋からダイレクトに器にスープを張るスタイルなので、器の冷たさが原因にも考えられるが、それだけとは思えない温度だ。店のルーツやスープの温度で頭の中が混乱してしまったので、麺に取り掛かった瞬間にスープの温度の謎が解けた。

麺上げまで実質 215秒の麺を持ち上げると、薄黄色に輝く麺肌からは湯気が沸き上がっている。それは唇を当てるのを躊躇ってしまう程の熱気を放っているので、スープ自体は熱いのだが表層を覆っていた香味油が冷たかったようだ。ひとくち目のレンゲの中には多くの油分が占領していたので、スープの熱さを緩和してしまったらしい。スープが生温く感じたのは、それが原因だったようで実際には、かなり高温のスープが下層部には潜んでいた。

ようやく合点がいった所で、麺に息を吹きかけてから一気にすすり上げてみる。麺幅と麺厚のバランスから平打ち麺にも見える麺は、滑らかながら切刃のエッジがスクエアな口当たりを生んでいる。そして計算された麺の短さが、ひとすすりで口の中に収まりきるが、すすり込む醍醐味を忘れずに与えてくれる。短い麺でも、すすり心地の良さも楽しめる絶妙のバランスで飛び込んでくる。酒井製麺の家系タイプの麺としては少し細めにも感じるが、モッチリとした歯応えは健在だ。おざなりに奥歯を合わせただけでは噛み切れないくらいに反発力の強い麺なので、しっかりと弾力を確かめるように噛みつぶすと、跳ね返すような歯切れで応えてくれる。その繰り返しが〝食す〟という、人間の持つ本能にも応えてくれるようで悦びすら湧いてくるようだ。ただ残念なのはスープの塩気が異常に高い事で、家系ラーメンを前にしてヘタレな事を言うようだが、これを飲み干せる味覚と胃袋が恐ろしく思える。老いを感じてきている私の胃袋には、カエシが半分でも足りるのではないかと思ってしまった。もし再挑戦する事があったなら、店の方針に従って「味うすめ 脂少なめ」でお願いしようと後悔してしまった。

具材のチャーシューは、やや厚みを持たせた豚バラの煮豚型で仕込まれていた。あまり得意でない脂身が多い部位が切り分けられたが、薄めの味付けが強気なスープの中では箸休め的な存在になってくれた。薄味と言っても豚肉本来の品質が良いので、臭みや脂っぽさを全く感じさせない安心感のあるチャーシューだ。

追加した味玉は、黄身の中心部にまで漬けダレによる浸透圧の効果が発揮されていて、ネットリとした舌触りを生み出している。温め直されてはいなかったと思うが、灼熱のスープで常温以上には温まっていたので冷たさによる違和感なく食べられた。

もはや、ライスのお供にしか思えない大判な海苔も十字4切で三枚も添えてある。無料ライスを注文してので一枚目の海苔をそのまま食べてみるが、香りもなく硬さを残す舌触りで印象は良くない。二枚目はスープに十分に浸してから口にすると、口溶けは良くなったが過剰な塩分に犯されてしまった。最後の三枚目は軽くスープに泳がせてから食べると、塩気は強いが適度な口溶けを残して消えていった。きっとこの状態の海苔でライスを包んで食べるのが〝本家流〟の作法なのだろうと理解できた。

青み役の具材のホウレン草だが、店で茹でられているとは思えない仕上がりだった。青菜独特の香りは皆無で、植物の繊維質を一切残してない歯応えのなさは業務用カットホウレン草ではと勘ぐってしまう。もし店仕込みならば、ここまでクタクタに食感がなくなるほど下茹でしなくても良いのではないだろうか。

序盤で白旗を上げたスープの強烈な洗礼を受けた味覚は、崩壊寸前で中盤までは耐え忍んできたが、スープ以外も完食する事が出来ずに箸とレンゲを置いてしまった。麺ディションは良好だっただけに、スープを初期設定で挑んだ事を最後まで悔やんだ。あくまでも自己責任ではあるが、目の前のラーメンに対する個人的な評価としては低くなってしまった。

本日は三杯のうち二杯も不得手な家系タイプで、自身の〝家耐性〟の向上に努めてみたが、胃袋だけでなく肉体全身にも疲れを感じてしまった。そこで今夜は、明日以降の〝ラ道〟を計画するのと、疲弊した身体を癒す目的を兼ねて、横浜みなとみらいの温泉施設へと向かう事にした一杯でした。

投稿 | コメント (0) | このお店へのレビュー: 1件

「中華そば ¥600+味玉 ¥100」@一陽来福・びんびん亭の写真平日 曇天 10:55 先待ち5名 後待ち2名 後客9名

〝ニューオープン 探検記〟

最近はRDBの中に関東地方で新店情報を見つけると、まずはサウナ付きの宿泊施設を探すようになってしまった。そんな中年男子の欲望のままに生活している中で見つけたのがコチラで、最寄駅は相模原となったいた。

となれば、最初に浮かんだのは相模原に程近い町田のサウナ付き温泉施設だった。しかし昨晩は野暮用を終えたのが午後9時すぎの横浜市内だったので、久しぶりに横浜駅直結の高層サウナに行ってみた。※ しばらくサウナレビューが続きますので不快に思われる方は閲覧されない事をお勧めします。

このサウナの魅力は何と言っても高層階からの景色で、施設の名に恥じない横浜のベイビューが楽しめる。あらかじめ宿泊プランをネット予約しておいたのだが、館内のレストランで使用できる3000円分のチケット付きのプランを申し込んでおいた。ネット予約のおかげでスムーズにチェックインを済ませると館内着に着替える為にロッカーに向かうが、よそのサウナと明らかに雰囲気が違うのは女性も利用できる施設だからだろう。もちろん共有スペースはレストランなどの限られたエリアだけなのだが、普段は中年おやじの集団に囲まれているので自然と浮き足立ってしまう。それは横浜ベイサイドという洒落た立地も関係しているのかもしれない。

肝心の大浴場のサウナだが本日は利用客が少なくいつもよりもで広く感じ、ほとんど貸切状態の中で過ごせた。温度計は 80℃を示しているが、ひな壇の最上段だとプラス 5℃くらいの体感温度に感じる。残念なのはサウナの楽しみの一つでもある〝ロウリュ〟こちらではドイツ式の〝アウフグース〟と呼ばれている熱波を作り出すサービスが、次回は24時と2時間半後だった点だ。前回の21時のアウフグースが終わった頃に来館したので間に合わず、次回を待つには時間がありすぎて断念せざるを得なかったのだ。しかし誰もいない室内で快適に〝ととのう〟方へと向かっていき、着実に身体に溜まった老廃物が流れていく。100℃を超えるサウナでは10分 × 3セットがレギュラーメニューだが、若干温度が低めなので15分 × 3セットと多少時間がかかってしまうのも難点だ。室内にはサウナ定番の12分計でなくデジタル表示の10分計が設置されているが、私はいつも15分の砂時計を利用する。実際には13分くらいで砂が落ち切ってしまう気もして正確性は確かではないが、サウナには砂時計の方がよく似合う。

こちらのサウナにはテレビがないので静寂の中で耐えなければならないが、テレビの代わりに 100インチは超える大きな窓があり、眼下に広がる横浜の夜景を楽しみながら汗を流せるのだ。普段のアジトにしているの上野のサウナには悪いが、お洒落で優雅に〝ととのう〟事ができるのは横浜でしか味わえないと思ってしまった。水風呂も本日は 17℃と、まずまずの冷たさで冷却効果も十分だ。さらには都内にはあまり無い塩サウナも併設されているので、他では感じられない美肌効果も味わえるのも特徴の一つだ。ドライサウナで適度に温められてから水風呂で一気に身体を冷まし、塩サウナの浸透効果で身体に染み付いた世の中の確執を剥がして磨きをかける。

これぞ、まさしく〝味玉論〟である。

半熟に下茹でした卵を冷水で冷まして殻を剥がし、漬けダレの浸透圧で旨みを加える方法と全く同じなのである。無理やりラーメンネタを放り込んできたように思われるかもしれないが、実際に味玉の心境になりながらサウナの中で人生の熟成を果たしたのだった。

このサウナならではの〝ととのい〟を味わった後は、これまたここならではの生ビールを味わう為にレストランへと足を向けた。ここならではと言っても生ビールの味に変わりがある訳ではなく、男女共有の場所なので普段の男ばかりの食事処とは違った空気を味わえるのだ。特に話しかけるでもなく何がある訳でもないが、上野のサウナとは違う環境にビールが進んで仕方ない。サウナ定番メニューの生ビールセットの冷奴とシラスおろしをつまみに、3000円分のチケットでは全然足りないくらいにサウナ上がりの生ビールを楽しんでから寝床に入った。

翌朝は午前9時とチェックアウトが早いので、横浜駅構内のカフェで朝のコーヒーを飲みながら移動ルートを検索すると開店前に現着できるルートが見つかった。検索結果通りに 10:05発 横浜線快速 八王子行きにて35分で最寄りの相模原駅に着くと、そこからは南口を出て真っ直ぐに歩いて歩いて向かう。環状線を越えて左に入ると駅から15分ほどで、大きなパチンコ店の横にド派手な看板の店先が見えてきた。

周辺には多くのラーメン店がある激戦区の中でもひときわ目立っているが、その看板を見るまで知らなかった情報が隠れていた。それは「びんびん亭」と「一陽来復」のダブルネームでの新店だったのだ。角地に沿って店舗を囲む看板は白地に赤文字で「一陽来復」と、黄色地に赤文字で「びんびん亭」と書かれてあった。

定刻5分前の現着で、すでに行列が出来ていたので八王子の雄がタッグを組んだとなれば相模原での期待も高いようだ。まだ整列の仕方が定まっていないようでバラバラな位置で待機をしながら、店頭の写真付きメニューから本日のお題を決めておいた。定刻ちょうどに真新しい真っ白な暖簾が掛けられてオープンとなった。

六番手で店内に入ると入口右手の券売機の中から、左最上段を飾っているボタンを押して好物の味玉を追加発券した。席の案内がないのでカウンターに向かったのだが、新店なのに床が古い町中華の店のように油で滑りそうになった。内装は新しく見えたが居抜き物件の床のまま利用しているのだろうかと思った。

なんとかカウンターに座り店内を物色すると、家族向けのテーブル席が多く設けられた店内を本日は四人体制で回している。カウンターには八王子ラーメンには欠かせない玉ねぎのウンチクが貼られてあり、信頼できる農家さんから直送された玉ねぎを使われているようだ。時期的には秋の新玉ねぎを楽しみにしながら待っていると、着席して10分の 2nd ロットにて我が杯が到着した。

その姿は白磁の厚手な高台丼の中で〝THE 八王子ラーメン〟と言わんばかりの表情のはずが、私が追加した味玉のせいで王道からは少し外れた景色にしてしまった。しかし味玉を除けば〝らしさ〟を見せつける安定の姿はさすがで、久しぶりとなる八王子ラーメンに期待を込めてレンゲを手にした。

まずは赤銅色のスープをひとくち。見るからに多くの香味油が表層部に浮いており、ラード特有の粒子がハチの巣状に結着して見える。店内の照明を跳ね返してキラキラと輝き、視覚から食欲を刺激する。最初は出来るだけラードに影響されないスープを味わいたく、液面をレンゲの底で円を書くようにしてラードを避けてスープを注いだ。レンゲの中には多少のラードも含まれているが、出来る限り純粋なスープが湛えられている。いざ口にすると最初に感じたのは醤油ダレの力強さで、さすがは八王子ラーメンと思わせる。キリッとしたカエシを包み込むようにラードの甘みが後を追いかけてくるので、第一印象としては甘塩っぱいイメージだ。スープが喉を通過する時に感じるトゲトゲしさが、隠れたスープの塩気を物語っているようだ。旨みの土台は豚清湯なのでラードとの相性は申し分ないが、ラードの甘みに隠れて旨味の底上げを強く感じたのでスープを諦めて麺へと進んだ。

麺上げまでジャスト60秒の麺を引き上げると、黄色みを帯びた麺肌が特徴の中細ストレート麺が現れた。持ち上げた箸先からは、細身で軽やかさのある女性的な麺質が伝わってくる。厨房には八王子の製麺所の黄色い麺箱が積まれてあるので、しっかりと八王子ラーメンの系譜を守られているようだ。そんな王道を貫く麺を一気にすすり上げると、軽やかながらもパサついた感じがない口当たりで飛び込んできた。それは香味油が潤滑油となっているからこその滑らかさだとは思うが、とても心地良い舌触りが食べ手の気持ちを後押ししてくれる。噛めばモッチリとした歯応えがあるが、いつまでこの麺ディションが続くのか不安にもなってしまった。

具材のチャーシューは電動スライサーで盛り付け直前の切り立てに拘っているのは大変に素晴らしいのだが、あまりに極薄スライスなので部位すらも定かではないチャーシューだった。こま切れ肉のように見えるが、脂身の入り具合からは豚ウデ肉を思わせる。しかし食べ応えも味わいも乏しいチャーシューの印象は薄く、あまりにも寂しさが残った。

その分、メンマは大量に盛り付けてあった。細身ながらも適度に歯応えがあり、少しばかり頼りない麺の食感をサポートしてくれる。味付けも薄味なので、スープの強気な塩気を幾分か和らげてくれた。

追加した味玉は程よい半熟加減の下茹でが施され漬けダレの浸透もまずまずだったが、スープの旨味や塩気には敵わずに控えめな味わいとなっている。提供前に温め直されていたかは定かではないが、中盤あたりに食べたので熱々のスープで加熱された温かな舌触りは非常に良かった。

楽しみにしていた薬味の玉ねぎは期待通りに甘みのある秋の新玉ねぎだったが、フードプロセッサーによる機械切りなので切り口の舌触りの悪さが残念だった

十字8切で添えられた海苔は香りも高く口溶けも良かった。オープン直後なので海苔の鮮度が良かったのだろうか、強気なスープの中でも存在感を発揮していた。

序盤から懸念された麺の変化だったが、スープの熱さも手伝って徐々に柔らかくなってきた。中盤以降はスープとの絡みは増したが、噛み応えのない麺には咀嚼の楽しみが無くなっていた。早食いのおかげで麺がダレる前に食べ切る事は出来たが、旨味の強いスープには手を付けられずに残してレンゲを置いた。

食べ終えて席を立つ時に、座っていた丸椅子が床の上で滑り転びそうになってしまった。それくらいに椅子と床の相性が悪いので、来店される方は気を付けた方が良いと思った一杯でした。

投稿 | コメント (4) | このお店へのレビュー: 1件

「醤油らーめん ¥750+味付玉子 ¥100」@石山商店の写真平日 晴天 13:20 先客2名 後客1名

〝ニューオープン 探検記〟

先ほどは小田原でオープンした新店で本日の一食目を満足で食べ終えて駅まで戻ってきた。駅近だったので歩いて駅に着くと小田原 11:28発 ロマンスカー はこね10号が5分後に発車予定だった。急いでホームに駆け降りて特急券を買い足すと、青いロマンスカーに乗車して30分ほどで海老名駅に着いた。

そこからは各停に乗り換えると10分で小田急相模原駅に降り立った。ここに来た理由は、しばらく新店めぐりをサボっているうちに新店情報の中に挙がっていたコチラへの初訪問を果たす為だけである。午前中の前食から一時間も経過してないので、前回も新店めぐりで訪れた駅構内のカフェにて連食スペースが空くのを待った。その間に新店の予習をしておこうとRDBのお店情報を見てみるが、情報が余りにも少なくメニューを決めるのが精一杯だった。そこで本日のお題を醤油系と決めて、いざ店を目指して駅から出発した。

駅の南口を出て5分も歩けば目的地周辺のようだ。ナビの指示通りに進んで行ったが、それらしき店が通り沿いにはない。ふと脇道に目をやると、夏風に揺れる白ちょうちんが目に入ってきた。そちらの方へ歩み寄ると屋号と創業年が書かれた藍色の暖簾が掛かってあり、商い中の立て看板も確認できた。店頭には写真付きのメニューが飾られてあったので、入店する前にお題の見当を付けておいた。店内に入ると入口右手に置かれた小型の券売機の最上段を飾っている醤油系に味付玉子を追加発券し、空席の目立つカウンターに腰を下ろして店内を見渡してみる。

カウンターとテーブル席もある店内を、ご主人お一人で切り盛りされている。全く飾り気のない殺風景な店内ではあるけど、どことなく落ち着く雰囲気がある。おしゃれカフェ風のラーメン屋さんも悪くはないが、実直にラーメンだけに向き合っている店も嫌いではない。さらに調理場に目をやると、総ステンレス張りの壁が全面に広がる無機質な調理場内だ。新品のような新しさはないが丁寧に磨き上げられた鈍い光を跳ね返すステンレスには、新店ながらも老舗店を思わせる重厚さをも感じさせる。目の前にそびえるカウンターの高台が調理工程の手元を隠しているのでオープンキッチンの楽しみは味わえないのが、地元客の会話を聞きながら待っていると着席して5分で我が杯が到着した。

その姿は刷毛目の描かれた厚みのある切立丼の中で、店内の雰囲気と同じくらい飾らない表情をみせている。具材の配置もハイセンスとは言いがたいが実直さが表れ、流行りに迎合しない信念が見られる。そんな落ち着きのある姿に安心しながらレンゲを手にした。

まずは渋紙色のスープをひとくち。ドットに分裂していない香味油が表層を覆ったスープにレンゲを落とし込むと、下層の少し濁りのある半透明のスープから魚介出汁の香りを感じとった。その香りが生み出す懐かしさに包まれながらスープを口に含むと、熱々の温度が唇を襲ってくる。灼熱の太陽の下を歩いてきた後でも、スープは熱い方が本能を喜ばせる。そのスープの味わいは、鰹出汁とカエシの旨みが利いた日本蕎麦を思わせる。やや酸味が強いが夏場のラーメンにはキレとサッパリ感を与えてくれる。多めに思われた香味油も酸味と重なる事で、油っぽさを軽減されていた。土台にある鶏ガラ主体の動物系出汁が、鶏特有の旨みとコクを加えるシンプルでナチュラルな万人向けのスープとなっている。大きな特徴はないが、老若男女に愛されそうなスープに仕上がっている。

続いて麺を持ち上げてみると、麺上げまでジャスト60秒の中細ストレート麺がお目見えした。やや大きめの番手の切刃と思われる細めの麺肌には鋭角なエッジが見られ、色づきも微かな黄色みを帯びている。麺肌から薄っすらと溶け出したグルテンが半透明な層となって、今が食べ時だと合図しているようだ。それに応えるように麺を一気にすすり上げると、大変に滑りの良い口当たりが印象的だ。滑らかさの中にもハリを感じる硬さを残した茹で加減は、尻上がりにピークへと向かう設定のようだ。序盤では芯の強さを味わいながら具材へと移行した。

具材のチャーシューは豚肩ロースの煮豚型で、薄切りなので食べ応えという面では少し物足りなさがある。軽やかな薫香が個性的ではあるが、過剰ではないので食欲をそそる香りだ。

追加した味玉は唇が触れただけでも熱々なのがわかり、盛り付け直前まで温め直されていたと思われる。好みのネットリするような熟成感はないが、適熟された黄身の旨みが味わえる。

薬味の白ネギは小口切りで添えてあったが、あまりの少なさで存在感は全くなかった。青み役のカイワレ大根も、雑な盛り付けがビジュアル的にもボヤけてしまっている。やはりこのタイプのラーメンには、茹でた青菜の方が全体を引き締めると思えた。

海苔は口溶けが悪いと言うよりも硬く湿気ってしまっていた。もともとの品質なのか保存状態の悪さかは分からないが、磯の香りもしない残念な海苔だった。

中盤から麺に戻ると、思っていた通りに変化を遂げていた。序盤よりもスープを吸ってふくよかな口当たりとなった麺を噛みつぶすと、ほのかな小麦の甘みとスープの塩気が渾然一体となって新たな旨みを放っている。細身のながらもグルテンの弾力を感じながら食べ進めていったが、麺が多すぎると思ってしまった。麺が多くて文句を言う事はないのだが、麺の量を減らしてメンマなどの具材に力を入れて欲しいと思った。この店主さんの仕込むメンマならば是非食べてみたいと思えたからだ。

最終的にはスープに若干の獣臭さを感じるようになってきたので、大量の麺とスープは残して箸とレンゲを置いた。

本日いただいた二杯のラーメンは、どちらも哀愁のある王道シンプル清湯醤油系だったので穏やかな気持ちのまま帰京の途につけた一杯でした。

投稿 | コメント (2) | このお店へのレビュー: 1件

「こくうま醤油らぁ麺 味玉付き ¥900」@らぁ麺 桃の屋の写真平日 晴天 10:50 待ちなし 後客8名

〝ニューオープン 探検記〟

久しぶりに東京に戻ってきたかと思ったら、神奈川県内に相次いでの新店情報を入手した。しばらくは都内でおとなしく暮らそうと思っていたのだが、新店が産声を上げたのが小田原と知っては居ても立っても居られなくなった。

それは自身の〝ラ道〟よりも以前から修行を積んできた〝サ道〟の道場とも言うべき、サウナを有する温泉施設が小田原駅前にあるからなのだ。先月の新店めぐりの際にもお世話になった温泉なのだが、深夜にチェックインしても十分に満喫する事が出来る施設なのだ。そこでRDBのお店情報で定休日と営業時間だけを確認しただけで、品川駅に足は向かっていた。

静岡行きの最終の新幹線 22:18発 こだま705号にて一路、小田原を目指した。慌てて乗車したので缶ビールを買ってなかったが、車内販売がなかった事が幸いして結果的にノンアル状態のまま30分程で小田原駅に着いた。新幹線ホームから一番遠い東口を抜けて、3分も歩くと馴染みの温泉施設が見えてきた。新幹線の車内で入手しておいた生ビール一杯とおつまみ一品付きのクーポン画像を片手にフロントでチェックインを済ませた。この世の中で、生ビールの100円割引券と味玉の無料クーポンがあったら迷わず生ビールの方を選ぶだろう。

今回も大好きな夜のネオン街、小田原ナイトに気持ちが動かなかったのはサウナと大浴場とおかげだろう。一階のロッカーで作務衣に着替えると五階の大浴場へと向かった。館内のエレベーターは床が畳で出来ていて、畳の上の生活をしていない現代人には素足の感覚が懐かしくすら感じる。このエレベーターの先には楽園が待っているかと思うと、夜のネオン街の魅力も薄れてしまう。

ルーティンであるサウナ 水風呂 外気浴を3セット繰り返すのだが、ここのサウナの最大の魅力は何と言っても自動ロウリュのシステムだ。通常のロウリュは人手を使って行うのだが、各時間の00分ちょうどになると焼けたサウナストーンに自動に水が散布させるシステムなのだ。ロウリュ直後の地獄のような熱さには、いかなる我慢強い男たちでも逃げ出すほどである。私も24時ちょうどの自動ロウリュに負けてしまい尻尾を巻いて逃げてしまった。人生の中でサウナで死にそうになった経験はそう多くはないが、ここのロウリュはそれにあたる。

さらに屋上階の露天風呂のベンチに横たわり、外気浴で十分にリラックスして心身ともに整えると深夜を過ぎても生ビールや食事が楽しめる三階の食事処へと降りていく。先ほど入手したクーポン券を握りしめ、セルフで生ビールを注いでサービスのおつまみを選ぶ。さすがに深夜なので軽めにしようと玉ねぎスライスをお願いした。クーポンとは思えないような大量の玉ねぎスライスに、卵黄とかつお節が添えられたおつまみと生ビールを5杯ほど楽しむとリクライニングソファーにて眠りについた。

翌朝は9時のチェックアウトを少し延長して掃除されたばかりの朝風呂を楽しむと、いよいよ本題の新店めぐりへと向かう事にした。RDBによると11時開店となっているので15分前にはチェックアウトして、ナビ通りに歩いて向かった。

すると3分もせずにこちらの店先が見えてきたので、この近さは前乗りした甲斐があったと自らの愚行を褒め称えた。明るいポップな外観が目を惹くが、近所の店とは不釣り合いで違和感を感じなくはない。店頭には開店祝いの胡蝶蘭が並んでいて、いかにもニューオープンといった佇まいだ。定刻の10分前の現着となったが、並びは出来ておらず先頭にて待機を始める。

まだ周囲に溶け込めていないオシャレな店の前に並びながら、ガラス窓の向こうに見える店内では着々と準備が進んでいるようだ。そんな店先で立て看板のメニューを見ていると、塩系がトップを飾っていたので本日のお題を悩みながら待っていると定刻通りにオープンとなり入店となった。

店内に入ると券売機はないようなのでカウンターに座り卓上メニューを見るが、先ほど店頭で悩んだ塩系ではなくマイスタンダードの醤油系と味玉を追加注文して店内観察を開始した。

まだ新しい木の香りが残る店内は外観同様に、白とオレンジと木目を基調とした明るい雰囲気となっている。カウンターだけの客席だが白いランチョンマットが敷かれ、箸とレンゲもセッティングしてある。あらゆる所に気配りがされていると感じたのだが、それもそのはず調理の全てを担っている女性が店主さんのようだ。本日は揃いのデニムシャツのユニフォームの女性アルバイトさんとの二人体制で回されているが、初々しいバイトさんとの掛け合いも微笑ましく映った。そんな女性的な店内に流れるBGMが玉置浩二だったで、ミスマッチに思われたが正直キライではなかった。バイトさんに接客や洗い物の指示を出しながら第1ロットの工程に入ったが、その時に店内に流れていた曲が「じれったい」だったのが偶然にも面白かった。

まだまだオペレーションも落ち着いてない店内には次々と来店客が続き、オープン直後すぐに満席となっていた。さらには中待ちイスも埋まり地元客の期待が表れている。そんな中で、のんびりと待っていると着席して10分程かけて我が杯我慢した。

その姿は内装にマッチしたオレンジの刷毛目が描かれた切立丼の中で、思いもよらない表情で出迎えてくれた。それはポップな外観や内装には似つかわしくない、非常に落ち着いた景色だったのだ。しかしこの姿を見た時に、美味しくないわけがないと直感した。先程までの、のんびりムードが一変して早く食べたいと急ぐように透明なレンゲを手にしていた。

まずは明るい弁柄色のスープをひとくち。大まかなドットの香味油がまばらに浮かんだ表層の下には、少しばかり霞んだスープが眠っている。そのスープの香りを揺り起こす為にレンゲを沈めてみると、複雑ながらもシンプルという矛盾した香りが立ち昇ってきた。その香りには派手さや奇をてらった今風な要素が一切なく、潔さの中に豊かな旨みを持っている。そんなスープを口に含む為にレンゲを唇に当てがうと、他店では見かける事のないクリアな樹脂製のレンゲの口当たりが特徴的だった。ガラスや陶器のような冷たさがないのでダイレクトにスープの温度が感じられ、皮膚感覚よりも味覚が先に働いてくれる。最初は見た目重視のレンゲとばかり思っていたが、実務的にも優れていて店主さんの什器選びのセンスを感じてしまう。そんな細部にまでこだわりを見せる店主さんが作り出すスープは、香りに違わぬ旨みを醸し出している。鶏ガラを主体とした動物系出汁と、鰹節や煮干しの魚介出汁がバランスよく味わいを組み立てている。何一つとして抜きん出る旨みを主張するではなく、全ての旨みが互いを助け合っていると感じた。カエシの塩梅も絶妙で醤油のキレは感じられるが、塩気は強く押し寄せてこない。また香味油もサラリとしていて不要な油っぽさを残さない。それは玄人中の玄人が作り出したような味わいのスープで、女性店主さんの中にはオジサンの職人魂が宿っている気がしてならない。この時点で、店構えや設えだけで今風と判断してしまった事を反省した。

続いて麺を箸で持ち上げてみると、麺上げまでジャスト90秒の中細ストレート麺が現れた。細麺に近い番手の切刃のエッジと透明感が見られるが、少しスープの中で麺が絡み合っているのが気になった。箸先には柔らかめな麺質が伝わってきて、しな垂れるように寄りかかっている。そんな麺を一気にすすり上げると、スープを存分に蓄えて口の中に滑り込んできた。強いハリがある訳ではないが、柔らかすぎるといった事もない。ただ、時間の経過と共に変化が早そうに感じたので麺を食べ急いだ。細身ながらも噛めばグルテンの弾力を感じる歯応えがあり、形状通りに喉越しも滑らかだ。適度な小麦の香りと甘みがスープとのバランスを保ち、目立ちはしないが素晴らしい組み合わせだと思った。

具材のチャーシューは豚バラの巻き型が大判で盛られている。箸でつまんでもずっしりとした重みがあり、かなりの厚切りとなっている。じっくりと時間をかけて煮込まれたであろう豚バラ肉は、赤身よりも脂身中心の部位が使われている。年齢とともに脂身が苦手になってきたのだが、このチャーシューの脂身は脂っぽさやクドさがなく甘みが素晴らしいと感じた。真っ白な脂身を活かした、醤油感の少ない味付けも豚肉の持ち味を引き出す仕上がりとなっているのだろう。また赤身質の繊維の柔らかさも特徴的で、食べ応えの中にも口溶けの良さも持ち合わせている。もちろん素材の旨みだけではなく、盛り付け直前にフライパンで表面を温め直している手間もあってのチャーシューだろう。

控えめに盛り付けてある鶏団子も、粗挽きの鶏肉に生姜の風味やナンコツの食感を利かせた男っぽい具材となっている。全体的に食感の少ないラーメンの中で、力強い歯応えを楽しめる鶏団子だった。

ただ追加した味玉は店主さんの方針なのだろうが、提供温度の冷たさが残念だった。下茹での半熟加減や漬けダレの浸透も熟成度のすべてが良かっただけに、冷たさの残る黄身だけが好みからハズレていた。スープや他の具材の温度が熱いので、突然に冷たい口当たりを感じると異質に思えて仕方ないのだ。せめて常温で提供されていたなら異物感なく味わえたような気がする。

メンマも書き手泣かせの特筆すべき点が見当たらないが、それだけ脇役に徹しているという事だろう。味付けや食感にクセがなく、時折見せてくれる滑らかながらも心地よい歯応えがアクセントとなっている。

薬味の白ネギも丁寧に刻まれてはいるが、ネギ本来の風味は消さず野暮ったさも残してある。その素朴な風味がある事でラーメンが落ち着いて感じるのかもしれない。海苔も質が高く保存状態も良いので、香りや口溶けの良さが感じられた。

終盤には麺がダレそうになっていたが、早食いの本領を発揮してコシを残しているうちに平らげる事ができた。最後の最後までラーメンの中にはオシャレな要素をひとつも感じなかった事が、中年のオジサンゴコロを引きつけた理由だと思いながら箸とレンゲを置いた。

すでに並び客もできている店内を後にするのだが、後会計を忘れないように気を付けなければならない。お二人とも調理や配膳に忙しそうにしているので、ポケットから小銭をかき集めて代金ちょうどをカウンターに置いて席を立った。

小田原のサウナとコチラのラーメンを知ってしまっては、これから小田原を訪れる機会が増えてしまいそうだと思いながら次なる連食先へと向かう一杯となりました。

投稿 | コメント (2) | このお店へのレビュー: 1件