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のらのら

男性 - 東京都

はじめまして。レビュー開始から一年が経ち、二年目の目標を全国制覇にしました。一杯のラーメンに出会うまでの経緯も書き記しているので、前置き等が長くなりがちですがお許しください。しかし採点に関しては立地 接客 衛生面 価格設定などは考慮せずに、ラーメン一杯に対しての評価にしています。自分の好みだけで評価しているので不快な文面もあると思いますが、何卒宜しくお願いします。

平均点 73.120点
最終レビュー日 2019年10月16日
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「メンマチャーシュー ¥1300」@杭州飯店の写真日曜日 曇天 17:50 先客20名 後客3名

〝諸国麺遊記 東北編〟

今回の旅も東北四県を周ってきたが、急遽入った明日の予定のために道半ばで帰京しなければならなくなった。現在は酒田駅で特急列車の発車待ちをしている最中だ。前食を無事に食べ終えたものの、帰路のバス難民になってしまい、店から20分かけて雨の中を歩いて酒田駅に戻ってきた。

そこで急遽、東北遠征の最終日の計画を立て直すことにした。さらに足を伸ばして新潟県総合ランキング第1位を調べてみると、残念なことに苦手なJ系の店がトップに君臨していた。J耐性が全く無いのでそちらは諦めて、僅差の第2位の店という事でコチラへの初訪問を決めた。

酒田駅で約一時間半も列車を待って 14:30発 いなほ10号 新潟行きに乗り込んだ。この列車のグリーン車の特徴は半個室のように仕切られた座席で快適性が抜群と言う点だ。周囲の乗客から見えづらいという利点がありリラックス度は最高レベル。快適な車窓の風景も、さっきまでの雨が上がり薄日の差してきた日本海は先ほどのような険しさはなくなり少しだけ優しく見えた。そんな車中でビールを呑みながら二時間ほど走ると新潟駅に着いた。そこからは在来線の越後線で終点の吉田駅まで一時間弱、さらに弥彦線で一駅進めば最寄りの西燕(にしつばめ)駅に三時間以上かけて着いた。

小さな無人駅の改札を出て線路沿いを縫うように歩いて進んでいく。燕三条系の発祥の由来となる板金工場やプレス加工業社が点在する地域を、営業している確信が持てないままに10分ほど歩いて行くと屋上に立てられた「杭州飯店」の看板が夕暮れ時の中で光を放っていた。安堵と共にようやく店にたどり着き、防寒対策の二重扉を開けて店内に入る。人気のない外の閑散とした様子が嘘のように店内には活気があふれていた。店のルールも分からないまま入口近くに突っ立っていると、ご主人だろうか男性スタッフが大きなテーブル席に案内してくれた。卓上メニューから口頭で注文するスタイルのようで、はじめは基本の中華そばにしようと思っていたのだが、遠路はるばる来たのだからとハイエンドらしきメニューにしようと思い直して注文を告げた。これは先週、都内で開催したリッチ麺めぐりでも通用しそうな高額ラーメンになった。

店内を見渡すと奥の厨房や座敷席は見えないが賑わっている様子が分かる。カウンターはなくテーブルとお座敷の客席だが、かなりの大箱だ。店内には「世界のナベケン」のラストサムライ当時のサインも飾られている。上を見ると天井絵が彫られ、壁には大黒天と恵比須様の彫り物が置かれている。中国と日本の文化が交錯している店内を本日は五人体制で回している。すると私が着席して5分ほど経った18時ちょうどに「本日これで閉店となりますが、追加注文はございませんか」と、いきなりの営業終了を告げられた。もしあと10分遅れて着いていたらと思うと恐ろしくなった。RDBでは20時閉店となっているので本日だけの早じまいだろうか。とにかく間に合って本当に良かったと胸をなでおろした。

セルフで水を入れるのだが、グラスの中にモロゾフのプリンのガラス容器が混じっているあたりも田舎らしく和やかだ。ご近所の老夫婦や部活帰りの女子高生たちに囲まれながら、のどかな気持ちで待っていると10分ほどかけて我が杯が到着した。その姿は受け皿の上に乗せられた白磁の屋号入り高台丼の中で圧倒的なボリューム感を見せつける。しかし高圧的に見えないのは気取らない素朴な盛り付けからだろうか。

まずは燕三条系の肝である大量に浮かんでいる背脂が覆い被さり、本来の色が分からないスープをひとくち。レンゲの底で背脂を避けてみると海老茶色のスープが現れた。いかにもそれっぽいスープを眺められただけで燕三条に来た甲斐があったと思える。やはり都内で食べる燕三条系とはテンションの上がり方に違いがある。背脂の油膜を破って立ち昇る熱々の湯気には煮干しの香りもほのかに香る。いざ口に含むと豚由来の旨みと醤油ダレのキレが重なった少し濃いめのスープだが、そこに背脂の甘みとコクが加わる事で塩っぱくならないバランスを保っている。それでも私にとっては、スープだけでは手強そうなので麺を楽しみながら様子をみる事にする。

麺を持ち上げて眺めると、またもや自分が燕三条にいる事を実感できる衝撃を与えてくれる。よく見る平打ちぢれ麺がコクワガタだとすれば、こちらの麺はオオクワガタと言っても良いだろう。太さもさることながら、麺の幅はなかなかお目にかかれない代物だ。スープの色素を吸って色づいた麺肌は、日焼け美女のしなやかな腰つきを思わせる。そんな憂いを帯びた麺を啜ってみると、ひねりは穏やかながら麺の重みで麺尻がスープを撒き散らす。これは啜るというよりは口の中に送り込む食べ方の方が服を汚さずに済みそうだ。麺を束にとって口の中に放り込むと滑らかな口当たりと密度の濃いモッチリと食感が交互に襲ってくる。スープの塩気が気にならないほどに小麦の甘みが発散される。強情っぱりなのに人情もろい麺は、まるで寅さんのようで愛してやまない。

具材の豚モモチャーシューは肉々しさを楽しむタイプだ。流行りのレアチャーシューとは正反対の下手をすればパサつきすら感じでしまうような舌触りだが、アゴが疲れるほど噛みしめると赤身の旨さが滲み出てくる。チャーシュー単体では大好物なタイプとは言えないが、このラーメンの中では無くてはならない存在なのだろう。麺と組み合わせて食べても相性が良く、メンマとのコンビも見逃せない。

その板メンマは見た目のガングロからは想像もできない優しい味付け。下味の醤油感と麻竹の香りの双方が引き立てあっているので、派手な主張はしないまでも個性を発揮している。適度に硬さを残した歯応えが心地よく、麺やチャーシューとの共存関係が素晴らしい。

薬味の玉ねぎはアッシェではあるが、粗みじん切りの表現の方が似合う切り口だ。大きさのバラつきが食感の個性を出しているのは勿論の事、玉ねぎ本来の甘みの強さに驚いた。それは大げさではなく、まるで旬の梨を食べているような豊潤な甘みだった。有料なのか分からないが、隣客が玉ねぎ大盛りにしていたのを見て私もするべきだったと後悔するような玉ねぎだ。少し強気なスープに疲れた頃に転がり込んでくる玉ねぎの甘みがリセットしてくれるので、終盤になるほど欲しくなる薬味だった。

かなりの麺量だったが、具材たちや薬味のサポートを受けて満腹になりながらも完食できた。なかなか再訪の機会もないだろうと思いスープにも手を付けたが飲み干すことは出来なかった。

ラストオーダーを終えて徐々に客が減っていく店内にいると、自分が東京から来ている事を忘れさせてくれるように暖かいスタッフの皆さん方だ。後払いで会計を済ませて店を出る時も寂しさが込み上げてきた。今回は途中になってしまったが、東京に戻るために先ほど降りた西燕駅に向かった。そこからは上越新幹線に乗るために燕三条駅に行かなければならないが、ローカル路線の弥彦線が一時間に一本しかなく、寂しい無人駅の駅舎でたった一人で次の列車を待つことになった一杯でした。

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